ってなワケでまずはVol.1対策委員会編からのスタートになります
爆走の黒面とアウトロー
けたたましいアラートの中、彼女たちは肩で風を切り歩む。行く手を阻もうと無数の銃口が絶え間なく向けられるが、彼女たち七人にはまるで意味を成さなかった。
ある者は撃たれる前に逆に撃ち、ある者はいくら撃たれようと物ともせず、ある者は巧みに身を躱す。各々が見せる離れ業に、ついに全てのセキュリティが突破されてしまうのだった。
「ようやく解放されましたわね」
ここは連邦矯正局。この校則違反やテロ行為が横行する超銃社会に置いて、なお悪質な問題児と扱われる誰の手にも追えない魑魅魍魎が収監される施設である。
それが今、不幸にも囚人の脱走を許してしまった。
「この私を貶めた連邦生徒会はどうしてくれましょうか。ウフフ♡」
「久方ぶりの娑婆。大いに満喫したいところですが、私はまず教授への義理を果たしますわ」
「興味ありませんね。日の目から追いやられた哀れな美術品たちを一刻も早く救いに行かねば」
「ククッ、私も研究があるから先にお暇させてもらうさ。そこの君はどうする?」
後に七囚人と呼ばれることとなる者たちが、欲望と美学のため思い思いに動き出す。
同じく、この真っ青なヘイローを輝かせる短髪の少女も己の信じる意志のままに暴れるのだろう。その意思が、「どうする?」と投げかけられた問いによってのっそりと言葉にされた。
「金だよ、金、金。金を集めに行くんだよ」
信じられるのは金だけと語る生徒、《
矯正局を脱走した凶悪犯たちが、七囚人の呼称とともに取り締まられてから早数日が経った。
その一角、黒面はブラックマーケットの空き家に潜伏中だ。ブラックマーケットとは、連邦生徒会の管理が及ばない無法地帯。学校を追われた生徒や反社会的組織が跋扈する犯罪の温床である。黒面にとっても隠れ蓑としてこの上なく都合の良い場所なのだ。
「ひぃ、ふぅ、みぃ・・・・・・。そろそろ次の獲物が欲しいぜ」
鞄をひっくり返し、床にばら撒かれた中身を数える黒面。それは小銭と紙幣であった。
黒面は強盗の常習犯である。キヴォトスには大小さまざまな学園が点在するが、それらを股にかけて見境なしに金品を奪ってきた。各学園から追われる身となっても犯行を一切やめず、行く先々で多大な被害を繰り返す。ある日とうとう矯正局に収監されてしまったが、脱走後にはご覧の通りだ。
「やっぱバイクだな。これがあるのとないのとじゃ、仕事のデキがまるで違うわ」
次なる強盗先を目指し、渾名の由来である真っ黒な覆面を被り、颯爽とバイクに跨る黒面。もっとも、この覆面もバイクも盗品ばかりで固めた装備なのはご愛敬。
盗品でないのは矯正局から上手く回収できた
「このあたりもいつ以来かな。・・・・・・デカルトいねぇし、結構変わっちまったな」
道すがらに娑婆の景色を眺めては一喜一憂する黒面。しばらく視線を彷徨わせていると、手頃なカモを見つけた。
「ギャハハハ。殊の外儲かったな!」
「おう、今回は良い仕事だったぜ!」
あれはヘルメット団。その名の通り、団員の全てがヘルメットを被った不良生徒たちである。
今は派手に豪遊しており、山のようなジュースとお菓子を囲んで談笑に耽っている。そこに黒面は割って入り、太々しくたかりを仕掛けた。
「ほ~ん、そりゃお幸せなこった。私にもお裾分けしてくれよ?」
「あん、なんだテメェは?」
水を差されたヘルメット団は、迷いなく銃を構えた。十人は下らない数に囲まれ、たちまち逃げ場を失った黒面。
しかし、彼女は臆するどころか、覆面の隙間から獰猛な笑みを覗かせている。
「大人しく、身包み置いてけやァー!」
「そりゃこっちの台詞だぜ!」
「とんだ節穴がいたもんだなぁ!」
次の瞬間、鉛玉が飛び交った。硝煙の渦が嵐となって、辺りをメチャクチャに荒らしていく。銃だけでは飽き足らず爆弾まで持ち出す者までいて、騒ぎは激しさを増していく。
やがて乱闘が収まると、最後に立っていたのは黒面ただ一人であった。
「クソ・・・・・・が・・・・・・」
「うぅ・・・・・・」
「たく、ヘルメット団ってのはどいつもこいつも口ほどにもねぇな」
終わってみれば呆気ないものだが、結果は黒面の圧勝。多勢に無勢の戦局を物ともせず、彼女はヘルメット団を単騎で薙ぎ払ったのだ。
そして、倒れるヘルメット団の懐から、金品や物資を盗れるだけ盗っていく。まだ意識のあるものは涙ながらに許しを請うが、非情な黒面にはどこ吹く風。死屍累々を一回りする頃には、バイクの荷台に山ができていた。
「あばよ、ゴミどもが」
「ちょ、ちょっと待って!」
「あァ?」
追い剥ぎが済んだ黒面が帰ろうとすると、何者かが彼女に声をかけた。不意に振り向けば、一人の生徒が息を切らせてこちらに駆け寄ってくるのがわかる。
黒面は始め、ヘルメット団の仲間か通報を受けたヴァルキューレかと思い身構えた。
ところが、そのどちらでもない。見覚えのない、角を生やした赤髪の生徒だ。
「あ、貴女。とっても強いのね! 感激しちゃったわ私、まさにアウトローよ!」
「見世物じゃねぇ、失せろ」
「ヒッ。そ、そんなこと言わず、私の仕事を手伝ってちょうだい!」
「仕事だぁ?」
訝しむ黒面を尻目に、その生徒は揚々と名乗りを上げた。
「私は便利屋68の社長、陸八魔アル。金を貰えばなんでもする、何でも屋よ!」
「金を貰えばなんでもする」その謳い文句に同じ守銭奴として興味を惹かれた黒面。
のこのこと着いていった先で待ち受けていたのは、思わぬ運命であった!
次回【襲撃、アビドス高等学校!】――お楽しみに!