ちなみに当作品は某所で先んじて投稿していたのですが
今回の感想で「名前秒で忘れた」とか言われちゃいました・・・ぴえん
銃弾が飛び交うアビドスの校門前。戦局はまさに鍔迫り合い、互いに譲らない持久戦にもつれ込んでいた。それも、なにか決め手さえあれば途端に傾くかもしれない。
「来て、黒面ッ!!!!」
アルの合図に応じ、戦場に激しい轟きが割って入る。
それはバイクのエンジン音、銃声の波の中にあってなお飲まれることのない爆走。その響きに、誰もが手を止め振り向いた。
「ヒャッハアアァァァァーーーーッ!!!!」
さながらモトクロスのような、派手なアクションとともに彼女は現れる。爆走の黒面。その異名に違わぬ暴れっぷりだ。
「ちょっと、今度はなんなのよ~!?」
「ん、新手!」
黒面の奇襲に、アビドスの生徒たちは動揺を隠せない。
「まさか・・・!」
黒面の姿に、ノノミは堪らずそう呟いた。
「・・・・・・」
ホシノは色違いの目を見開き、声も出せずにいた。
狼狽えるアビドス勢に向かい、黒面は容赦なく突っ込んでいく。遮蔽物が並ぶ戦場を巧みに分け入り、すれ違い様にSMGを浴びせた。
「オラオラ、これでも食らえやァァ!!」
「皆、今のうちに立て直すわよ!」
黒面の撹乱に合わせ、便利屋68は態勢を整える。秘密兵器様様、拮抗していた戦局が傾こうとしていた。
しかし、アビドスはもはやそれどころではなかった。
「貴女、ミズチ先輩ですか?」
「・・・・・・ハッ」
「どういうこと?」
ノノミの呼び掛けに、黒面は鼻で笑いながらバイクを止めた。二人の対話を前に、一同は空気が変わったのを感じる。
「ネフティスの箱入り娘が、馴れ馴れしく呼んでんじゃねぇよ」
「やっぱりミズチ先輩だ」
「あとは知らねぇ顔だな。ホシノはどうした?」
「うへ~、こっちだよ」
黒面の前に、ホシノは素直に姿を出す。その態度はいつもの昼行灯のようで、見る人が見れば鬼のようでもある。
「おう、別人かと思ったわ。プッ」
「ん~、なにがおかしいのかな~?」
「なにって、オメェのその様がよ。まるでユメ先輩みたいじゃねぇか?」
「・・・・・・」
二人の間に剣呑な雰囲気が漂い、離れていても身が竦みそうだ。
それ以上に、アルは黒面とアビドスの関係が気になる様子。理解が追い付かず、問いたださずにはいられなかった。
「ちょっと黒面、貴女たち知り合いなの!?」
「社長、それも聞いてなかったの? 黒面はアビドス生だよ」
「なななな、なっ、何ですってーーーーーーー!!!???」
黒面の代わりにカヨコが教えてやると、アルはいつもの絶叫を上げるのだった。
「改めてご挨拶を。私は人呼んで七囚人の一人《爆走の黒面》」
勿体ぶるように一泊置き、彼女は覆面を外す。そして、カーキ色の短い髪に、猛獣のような鋭い眼光が露わとなった。
「またの名をアビドス高等学校の停学生、
「七囚人・・・・・・停学中・・・・・・」
「・・・・・・アビドスの、鱗平ミズチ!?」
爆走の黒面、もとい鱗平ミズチの名を聞き、シロコとセリカが驚きの声を上げる。校舎内で待機しているオペレーターのアヤネも同様だ。
「なんだ、私のことなにも聞いてねぇのか?」
「ちょ~っと言えるはずないかな~」
「そりゃそうだ。なぁノノミ~、お前も大変だったもんな~?」
「・・・・・・ッ!」
なにせアビドスでミズチを知るのは、ホシノとノノミの二人のみ。当時の二人は、わけあって彼女の存在を後輩に隠していたのだ。
それが今、いきなり現れて自分たちを襲ってきた。さぞ、衝撃を受けたことだろう。
「ねぇ、大人しく矯正局に戻ってくれないかな?」
「嫌なこった。あそこじゃ金を貰えねぇんだよ」
「そっか。じゃあ、無理やり戻すしかないか」
話し合いは通ず、両陣営は再び銃を向ける。
しかし、ホシノは内心で焦っていた。実のところ、アビドス側はミズチによって少なくないダメージを受けている。ただでさえ数の差が開いている上に、体力を削られてはいよいよ危うい。このままでは負けてしまうだろう。
アビドスが勝つには、ホシノがミズチを抑えることが必須。戦いが正念場に突入しようとしていた。
“待って!”
ところが、どこかから制止の声が上がった。
皆が視線を移すと、校舎から何者かが二人向かってきているのがわかる。一人はアビドスの生徒、オペレーター担当の奥空アヤネ。もう一人は今キヴォトス全土が注目している、外から来た大人だった。
「あァ、誰お前ぇ?」
“私はシャーレの先生だよ”
「シャーレ・・・・・・あ、そういや町で名前聞いたな。なんか用?」
ミズチは水を差されたのが気に障ったのか、あからさまに先生を邪見にしている。もとから鋭い目付きをより険しくさせて、今にも噛みついてきそうだ。
しかし、先生はそんなもの怖くもないようだ。彼女を真っ直ぐ見据え、改めて対話を持ちかけた。
“君は、どうしてこんなことを?”
「別に、金で雇われただけだ」
“それは、仲間を裏切ってまでほしいもの?”
「欲しいね。世の中金が全てだろうがよ。それは、大人のお前のほうがわかってんじゃねぇのか?」
ミズチには、先生がなにを言いたいのか理解できない。ただ、聞けば聞くほど煩わしいようで、どんどん顔をしかめていく。
一方で先生は、悲し気に眉をひそめていた。
“そんなこと、本気で思ってるの?”
「関係ねぇだろ、この出しゃばりがッ!!」
先生はミズチがアビドスの一員と知るなり、戦ってはいけないと思ったらしい。助け合うべき仲間同士が、互いを傷つけるのを見過ごせなかった。危険を顧みず飛び込み、身を挺しても止めようとしている。
しかし、その想いはミズチには伝わらない。先生には預かり知らぬことだが、それだけの理由が彼女にはある。
(キーンコーンカーンコーン)
「・・・・・・あ、定時だ」
「今日の日当てだとここまででね。あとは自分たちで何とかして。みんな、帰るわよ」
「は、はぁ!? ちょ、ちょっと待ってよ!!」
そうこうするうちに、時間が経ってしまったようだ。
便利屋たちが雇った傭兵たちは、給料以上の働きなど決してしない。
「なんか、すごいところに居合わせちゃったね」
「ねー? 皆に自慢しよう」
「こらー!! ちょ、どういうことよ!? ちょっと! 帰っちゃダメ!!」
「・・・・・・ケッ。悪いなアル社長、無駄話が過ぎたみたいだ」
誰も傭兵を引き留められず、むざむざと帰りを許してしまった。こうなっては数の利は失われ、便利屋68の勝ち目はない。
「運が良かったな、ゴミども」
「こ、これで終わったと思わないことね! アビドス!!」
「あはは、二人とも、完全に三流悪役のセリフじゃんそれ」
「黒面、バイク出して!」
「悪いなアル社長、このバイク1人乗りなんだ!!」
「そんな~~!!!???」
口惜しいが、襲撃は失敗。そうと決まれば、彼女たちは一目散に逃げ去った。
「待って! ・・・・・・あ、行っちゃいましたね」
「うへ~逃げ足速いね、あの子たち」
校門前に残されたホシノたちは、なんとも言い難い雰囲気だ。便利屋68の間抜けさに呆れたが、ミズチの横暴な振る舞いも凄まじい。
特に先生は、あれほど口汚く拒絶されてさぞショックだっただろう。
それに、ノノミとホシノとの間になにがあったのか、気にならないはずがない。
“ノノミ、ホシノ。ミズチって生徒のこと説明できる?”
「う~ん、まぁ少しだけなら良いよ」
「はい。皆にも、そろそろ話しておくべきだと思います」
なにはともあれ、襲撃を退けることはできた。傷の手当に、戦場の後片付け、それからミズチの事情説明。今はやるべきことをやろう。
教室に戻る道すがら、ホシノはゆっくりと語ってやった。
退却したのも束の間、再戦に燃える陸八魔アル。しかし、黒面ことミズチが給料未払いだったことに気づき、思い切り詰められてしまった。
無理にでも金を工面しようと便利屋68が向かったのは、なんと暗い噂の絶えない闇銀行だった。
次回【出動!覆面水着団】――お楽しみに!
※鱗平ミズチの名前の由来について
鱗平 →「クロコダイル」を「ウロコダイラ」と訛らせたもの
ミズチ→「鮫」の別読み、古代日本語では「鮫」を「ワニ」と呼んでいたことにちなむ
つまるところミズチはワニをモチーフに形成されたキャラクターになります
※書き溜めを一度に投稿しましたがこの先はリアルタイムでの更新になります
場合によっては次回までかなり時間が空いてしまうかもしれませんがご容赦ください