シチーとジョーダンを道連れに普段からお世話になってる病院に駆け込む。レントゲンは取られまくってるし先生なら何かしら知っているはずだ。
「あれ、奥沢さんじゃないですか。珍しいですね、無傷で病院に来るなんて」
「普通がおかしいんすよ。というより、先生どこにいますか!?急ぎの用事なんです、今すぐ呼んでください!」
着くなりまくしたてるように受付の人を急かす。オレの様子を見てただ事じゃないと思ったのか直ぐに先生に取り次いでくれた。
「もう少ししたら来るみたいなのでかけててくださいね」
「ありがとうございます」
「沢さん、何で知らないの?頭洗う時わしゃわしゃやってれば普通気付かない?」
「マジに気付かなかったよ。それに気づいてたらあんな意味分からんカチューシャ着けんだろ」
「じゃあなんで片方だけなの?普通なら両耳あるはずだよね」
「耳切り落とされた奴にそれ言う?ていうか、状況自体がもう普通じゃあない。考えても仕方ねぇだろ」
2人からの質問に答えていると奥の方から先生が歩いてきた。
「やぁどうも。どうしたの」
「いやいや先生見てくださいよコレ!俺今まで気付かなかったんすけど、先生何か知りませんか!?」
「うん、知ってるよ」
「知ってんすか!?」
先生は簡単に言ってのけた。まるでおまえなんで知らねぇのと言っているかのように。その様子に3人で面食らう。
「知らなかったのかい?」
「はい」
「ああじゃあ説明するから診察室においで。レントゲンでも見ながら教えてあげるから」
先生について行き診察室に入る。すると奥から薄いファイルを持ち出してくる。多分俺のレントゲン写真か。それを後ろが光ってるよく分からない機械にセットしていく。
「普段完全に倒れてるから隠れてる感じだけどほら、若干盛り上がってるでしょ?」
「ホントっすね。なんで教えてくれなかったんすか」
「知ってると思ったから。まぁ結論から言おうか。君は限りなくウマ娘に近い人間だよ」
「どういう事っすか?」
結論を出して頂いて大変申し訳ないが言ってることがまるで分らない。そんな曖昧な生物ってこの世に存在するのか?
「医学的に言えばキメラって奴だね」
キメラ…?ゲームとかでよく聞くあのキメラ?
「長くなるから簡潔に言えば双子で生まれるはずだった赤ん坊が何らかの理由で片方死んでしまった。もう片方が死んでしまった片方の体組織を吸収して起こる現象…早く言えば解除不可能なフュージョンだね」
「何すかそれ」
「まぁそこまで調べては無いけど君の耳はお姉さんか、妹さんのモノになるね。DNA鑑定をやれば詳しく分かるはずだよ」
「シチー、どういう事?センセは何て言ってるの?」
「つまり、奥沢は中途半端な状態って事」
「半分あってるけど…言い方なんか無かった?」
しかし…記憶と全然違う。俺は誰にも耳について言及されなかった。今日に至るまでただの一度もだ。子供の時に…それこそクソ親父とか吉花に何か言われててもおかしくないはずなのに。
「それじゃあついでだし聞いちゃおうかな」
「先生がすか?」
考えこんでいると先生から質問されることになった。質問されてもまともに答えられないと思うけど。
「君、左耳と尻尾って不慮の事故で失った系?」
「…は?」
「いやね、レントゲンをよく見るとね、左耳の辺りに何かしらの跡があるんだよね。話したくないならそれでいいんだけど」
「ちょっとすいませんね、タイムを頂きます」
腕でTを作ってくるっと回って二人と会議を始める。
「お前ら、俺の話を覚えてるか?」
「吉花の事でしょ?確か左耳と尻尾を切り落とされたって」
「でもそれおかしくね?まるで沢さんが吉花ちゃんみたいじゃん!」
「そうだ、明らかにおかしい。死んだはずの亡霊が俺自身だったなんてことになりかねない。そこでだ、俺の下瞼を引っ張って黒目の下に三角形みたいなほくろをが二つないか見てくれないか?」
これでほくろが存在してたら色々と終わりが確定する。亡霊なのは俺だったぁってヌケサクのようなマヌケになってしまう。有ってくれないことを切に願う。
「おっけ。じゃあめくるよ」
「バッチコーイ!」
シチーが下瞼に指をかけ下に引っ張る。すると二人が目を見開いた。見たくない反応を見せてくれやがって…。指を話してジョーダンが言う。
「あったよ。沢さんが言うように確かに二つあった」
「…マジかよ。どうなってんだってばよ」
既にパンクしそうな頭を抱えて先生に向き直る。
「先生の言う通り、確かに切り落とされた…んじゃないすか。俺にはもう、何が何だか」
「まぁ言いにくい事だろうからね。何かしら調べて欲しいことがあったらすぐに来てね」
そんなこんなで病院を後にする俺たち。吉花が亡霊になって出てきてると思ったら俺の外見が吉花そのものときた。どうなってる?
とにかく、この耳を公表するわけにはいかない。この二人にも口外しないように釘を打っておこう。
「二人ともさ、この耳の事は黙っててくれない?結構な騒ぎになりそうだから」
「わーてるって。あたしだって面倒になるのは嫌だし」
「アンタだって色々と整理したいでしょ。それに話すなら奥沢、自分の口で話しな」
「ありがと。そうしておいて」
「…そうだお前ら、人を集めるならどのタイミングがいいと思う?」
「集めて何する気?」
「俺の耳の事を話しておこうと思ってな。隠して見つかるたびに騒ぎになるんじゃメンドクセェから喋った方が早いと思ってな。吉花の事もある。情報網は広いだけ良い」
俺がそう言うと二人が立ち止まって目を見開く。お互いの顔を見合った後俺の顔を見つめる。その顔には冷や汗のようなものが浮かんでいた。
「アンタ、さっき自分が何言ったか覚えてないの?」
「はぁ?言ったも何も、俺は耳の事を話そうとしか言ってねぇよ」
「沢さん、言ってることおかしくね?話すなって言っておいて自分から話すって」
「待て、お前らこそ何言ってやがる?俺はそんなこと言ってねぇぞ?」
「いや言ってたし!アタシもシチーもしっかり聞いてたかんね!?」
「い~や言ってないね!誰と話してやがったんだ?」
その後も言った言ってないの水掛け論を展開したので二人とはいったん解散した。しかし…理解できない。思考を張り巡らせたところで分からないものは分からない。とにかく、今日はいったん帰ろう。そして寝よう。