必要を感じた場合都度変更します。
嫌な音が絶えず響く。
秒針のようにも、
『────』
何を言っているのかも判然としない、そのおぼろげな声。うわごとのように耳に入ってくるその声を聴くたびに、この体は焼けるような痛みを覚えた。まるで罰とでもいうように。
やめろ。
『────』
違う。お前じゃない。
『──そうだ。お前が殺した』
俺が、殺した。
……お前を。
◆◆◆
・【疾風騎兵】イグニッション
「はーラクチンだぜこりゃ」
「後で交代してくださいね」
「なんで俺が馬車を引くんだよ」
「そりゃあ私が引いてるんですから、マスターも引いてくださいよ」
ある場所への途上、そんな他愛のない会話を繰り返していた。
【モルド】の一件でゴタゴタしていたのも落ち着いて、そろそろ旅を再開しようというところであることを思いつく。
『移動手段を持とう』
『は?』
……うん、あの時は俺の言い方が悪かったな。
珍しくデュラがマジギレしててちょっと怖かった。
『馬車ね、馬車』
『……』
ずーっとデュラに乗ってるのも良いんだけど、やっぱり移動しながらもくつろぎたいってのが本音だ。何時間も跨ってるとどうしても尻とか腰が疲れるし、何より精神的な疲労がある。
そんなわけで弁解タイムを経て許可が下りたので馬車を購入することにした。
予算は
一番安いの選んでも4万リルだったからまぁまぁ財布には辛い。だが長旅の快適さをこの値段で買えるなら安いと思い、結果買った。
そんなこんなで馬車を購入し
……道行くマスターやティアンがデュラの姿を見て腰を抜かすなんてことはチラホラあったが。
デュラが引いてばっかは嫌だというので俺と交代でくつろいでもらおう。
できるマスターはパートナーを慮るものである、なんて言うし。主に俺が。
上級職もカンストした今のステータスだと馬車を引くのもお手の物だ、台車を押すくらいの力で馬車を引けた。引くと押すじゃ違うだろという意見もありそうだがお口チャック!
「……フッ」
「笑うな!!」
アイツ鼻で笑いやがった!確かに変な光景だとは思うけどさ!
なんかロバの風刺画思い出した……。
悪態もついたが旅路は順調である、モンスターとかが出てきてもサクサク狩れて大した障害にならないのが現状だ。
カンスト様様だぜ。
【大騎兵】がカンストしたものだから別のジョブを上げようということになり選ばれたのがこの【
【
代わる代わる交代し移動し続ける事数時間。今までいたアルターとは地面が違っていることに気が付いた。
「この感じだと、どうやら向こうに
「これで別の国に行くのは何度目でしょうか?」
「2……いや、あの事故含めれば3か」
レジェンダリアに迷い込んだアレをカウントしていいのか疑問は残るが、行ったといえば行ったのだ。文句は無いだろう。
砂漠から始まり森に迷い込み、そして草原にたどり着き……今こうして、新たな土地に踏み入れた。その様相は一言で言ってしまえば、
地面は乾き、特有の割れが発生しており、遠方を見渡せば空に伸びる黒煙。
黒煙、それを見たときに一瞬身構えたがすぐに正気に戻る。なにせ腕を見れば元凶がいるんだからな。
【
「
「機械の国とも呼ばれていますね。何かいいものがあったらいいのですが」
「ま、ぼちぼち期待だな」
ドライフ皇国。中央大陸北西部、アルター、レジェンダリアと続く西方三国の一つであり【Infinit Dendrogram】において唯一の
アルターとも仲が良く、アルター側の第一王女?なんかもドライフに留学しに来ているらしい。
黒煙はどうやら煙突から出ている煙のようで、町が近いのだろう。俺も相棒もステータスに問題はないが精神的な疲労は蓄積している、馬車の中で休めるといっても限度ってもんがあるからな。
「……そういえば」
「ヴォルフさん、確かドライフに行くって前言ってましたよね」
「そうか、アイツいるじゃん!」
ずいぶん前に別れた友人がいるとなれば気分も盛り上がってくる。連絡手段を持ち合わせていないから連絡はできないが、アイツが今も留まっているなら再開の日も近いだろう。ちょうど土産話は数多くある、再開を祝うには十分な量だろうさ。
「そうと決まれば!微速前進!目標は前方の街!出発進行!」
「えい、えい、おー」
ふわりと風が背中を優しくなでる。まるで俺たちの旅路を祝福するように、こころなしか爽やかに……高まる俺たちの気持ちのように勢いが強くなっていく。
背中をなでる風は次第に強くなり、後押しするように強くなっていく。空にでも飛ばしたいかのように。
「……なんか強くね?」
「正直踏ん張ってるので精一杯です」
何かがおかしい、そう思ったときにはすでに手遅れだったようで。
どうやら俺たちは嵐に巻き込まれたようだ。こんなところでいきなり起きるもんなのか……?
「ちょちょちょマジでやばくないか」
「ぶっ飛びますねコレ、覚悟決めてください」
浮遊感が体を襲う。視線が上がっていく、馬車ごと。
あーこれ飛んでますわ。嵐で馬車飛ばされてますわこれ。
「──デュラ戻れ!」
「いわれなくても戻ります!」
相棒を紋章に戻し、馬車につかまる。しかし無情なことに馬車は廉価であり耐久性に自信は無かった。当然ながら馬車は嵐に飛ばされることを想定されてはいない。
故に、粉砕した。
「俺の旅、順調にいったことあるかなぁ!?!?」
嵐に飛ばされ陸路の旅が今や空の旅、落ちた先が海だったら陸海空制覇できるね!やったね!
いや良くない。
旅をぶち壊してくれた嵐をにらみつけると、一際風が吹き荒れている場所があった。嵐の中心とでもいうようなソレにだんだんと近づく形で風に流され、そして見た。
目を凝らしてやっと見えたソレは……モンスターだった。
純白の体、天使を思わせるような純白の翼、そしてこれまた天使を思わせる円環。
それらを携え現れたのは群れ、そして中でも一際巨大なボス。
小粒の名は【ヘイロー・ドラゴン】、そしてボスの名は────。
「【環竜王 ドラグヘイロー】……そのツラ覚えたぜ」
圧倒的な強者は、たまたま巻き込まれた羽虫を気にかけることはなく悠々と空を泳ぐ。
【環竜王 ドラグヘイロー】:神話級UBM
いつも感想、評価、お気に入り登録ありがとうございます。これからもドシドシしていただけると私がニコニコします。