ヘリオポリス宙域で先遣隊とザフト軍の間で戦端が開かれている頃、日本の首相官邸ではヘリオポリス襲撃に関する情報収集が行われていた。
またヘリオポリス襲撃を受け、内閣はそのまま国家安全保障会議へ移行し、軍における最高統帥機関である統合参謀本部から制服組のトップであり、参謀総長を務める古代 剛空軍大将が新たな参加者として臨席していた。
そして今後の対応について協議していたところに、先遣隊が宇宙要塞安土に送信したヘリオポリス宙域の映像が転送されてきていた。
「・・・・ヘリオポリスが・・・完全に崩壊しているのか・・・?」
「一体どれだけの犠牲者が出ているのか・・・・検討も付かないし・・・考えたくもないな・・・・」
転送されてきた映像に誰もが言葉を失い、皆一様に顔色が失われていた。
「参謀総長、先遣隊からの状況報告はまだ何も入ってないのか?」
「はい、恐らく先遣隊もヘリオポリス宙域に入ったばかりでまだ状況把握の段階だと思われます」
「そうか・・・・なら報告が来るまで待つしかないな。ところで外務大臣、オーブから何か返答は得られたのか?」
外務大臣は軍事技術流出の件で、オーブとの緊急電話会談を行っていた。
「オーブでも我々と同じタイミングで知ったようで、どうやらウズミ・ナラ・アスハ氏は知らなかったようです。只犯人の目星は付いているらしく、現在目下捜索中だそうです」
「そうか、その犯人を逃がさないようオーブにはよく言っておいてくれ。轟局長、万が一があっては事だ、君の所の別班を動かせるようにしておいてくれ」
そして国家安全保障会議の参加者たちが今後の対応を話し合っていた時、会議室の扉が強く叩かれ、国防省の士官が強張った表情を張り付かせ入室すると、古代の元に向かった。
そして1枚の紙片を渡すと、緊張した声で告げた。
「安土からの特一級暗号通信です」
受け取った紙片に目を通した古代は、熱の篭った息を吐いた。
「ヘリオポリスに向かった先遣隊からの緊急通信が、安土を経由して送られてきました」
「先遣隊から?緊急事態かね?」
「先遣隊が戦闘中のザフト・連合軍に接触。停戦するよう求めたところ、ザフト軍からの攻撃を受け、フリゲート艦真鶴が撃沈され、生存者はいないとの事です」
この報告に誰もが声を失った。
中には今にも卒倒するんじゃないかと思うくらい顔色を失った者もいた。
この会議の議長でもある榊の鼻から熱の篭った息が吐き出された。
そして榊は、外務大臣の方へ顔を向けた。
視線のあった外務大臣は、力なく首を横に振った。
それを見た榊は、徐ろに立ち上がると声を上げた。
「緊急動議を掛ける。現時点を持って我が国は対プラント宣戦布告を行う。賛成の者は起立願う」
榊の言葉に誰もが押し黙った。
しかし1人また1人と起立すると、軍参加者を除く全員が起立し、対プラント宣戦布告が満場一致で可決された。
それを受け榊は矢継ぎ早に指示を出した。
「官房長官、番記者たちにザフト軍によるヘリオポリス襲撃の速報を流せ。あと野党党首たちと緊急会議を捩じ込ませろ。外務大臣、在プラント公使に緊急連絡、プラント政治部に対し宣戦布告文章の手交を準備させろ。国防大臣、宇宙軍にヘリオポリスへの救援艦隊を派遣するよう厳命。また宇宙軍にフォールド航行の許可も出せ」
榊の指示に、所管大臣たちが動き出した。
離席しようとした外務大臣に榊が付け足した。
「それからオーブの件は棚上げし、今次大戦終結後に再度話し合いの席を設けることを伝えたまえ」
榊の言葉に、外務大臣は一礼すると足早に去った。
榊に古代参謀総長が声をかける。
「宇宙軍にフォールド航行を許可されましたが、宜しかったのですか?アレの存在を知られると諸外国、特に東アジア共和国と大西洋連邦が黙っていないと思いますが・・・」
「騒ぎたければ勝手に騒がせてれば良い。我が国は地球連合に属していない。一々奴らのことを気にしていたら国が滅ぶ」
榊はそう断言した。
更に榊は、官房長官を呼び止めると、宮内庁長官に連絡を取り、陛下との会見の場を作ってもらうよう伝えた。