妖精が見えた少年   作:HYDRATION

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本当に申し訳ないです。プロローグが長引く可能性が高まってきました。
最悪、雄英高校受験パートからでも読めるように調節するつもりなので、「自分はヒロアカを見に来たんだ!」って人はまたその時お読みください。

その代わりに艦娘要素はどしどし入れていく予定です。お付き合いください。
今回文字数少なめです。


ひかり、ふたつめ

 ──ヴィランの襲撃から、二週間が経った。

 

 教室は、あの事件が嘘だったかのように、静かな日常を取り戻しつつある。

 

 黒板に書かれた漢字の筆順を写しながら、僕は窓の外をぼんやり見ていた。

 

 クラスの空気も、以前とは違ってきていた。

 

 電の存在が受け入れられてきていて、彼女に話しかける子も増えてきた。

 

 ──それは、嬉しい。

 

 でも僕の胸の奥には、ずっと拭いきれない“なにか”が残っていた。

 

 電が来てから、確かに状況は変わった。

 

 けれど僕は、あの日、自分が何もできなかったことを忘れられなかった。

 

 教室の隅で震えて、ただ願っただけの僕。

 

 電は、そんな僕の願いに応えて、命がけで戦ってくれた。

 

「……僕は、彼女に……任せすぎてるんじゃないか」

 

 授業が終わり、帰り支度をしているとき。

 

 肩に乗っていた妖精が、ぽつりと話しかけてきた。

 

「まもる。今日も、あそこに行こうか?」

 

「……うん。そうしよう」

 

「電ちゃんの顔を見てるときのまもる、最近ちょっとだけ、心配そうな顔してるから」

 

 僕はランドセルの肩紐を握り、頷いた。

 

「……そうかも」

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 秘密基地へと続く林道を歩きながら、僕は口を開いた。

 

「電がいなかったら、きっと……今の学校の空気はなかったと思う」

 

「うん。でも、それだけじゃないよ。まもるの“願い”が、電ちゃんを呼んだんだから」

 

「……そうだけど、僕は何もしてないよ。戦ったのは、電だ」

 

「でも、まもるは願った。“守りたい”って。あの願いが、本当だったから来てくれたんだよ」

 

「……もしまた同じことが起きたら、電ひとりに任せるなんて、もうできない」

 

 妖精が僕の頬を見上げ、そっと言った。

 

「……実は、昨日の夜から気配があるの。新しい“かけら”の反応」

 

「かけら……?」

 

「うん。艤装のかけら。まもるの気持ちが強くなると、記録が目覚めて、現れるの」

 

「……それって、また誰かが来るってこと?」

 

「もしかしたら、そうなるかもね」

 

 僕は立ち止まり、足元の落ち葉を見つめた。

 

「……僕が無力だからって、また誰かを呼ぶのは、甘えじゃないかな」

 

「まもる、それは“逃げる”ための呼び方?」

 

「……」

 

「それとも、“支える”ために呼ぶの?」

 

 しばらく、黙っていた。

 

 でも──胸の奥から、ひとつの思いが浮かんできた。

 

「……電だけに全部を背負わせたくない。僕も、彼女を守れる誰かを支えたい。……そう、思ってる」

 

「じゃあ、大丈夫。まもるはちゃんと、願ってるよ」

 

 妖精が優しく笑った。

 

「今のまもるの願いなら──きっと、次の子も来てくれる」

 

 ◇ ◇ ◇

 

 夕焼けが秘密基地の奥を染める頃。

 

 妖精に案内され、大きな木の根元まで来ると、土の中にわずかに光が漏れていた。

 

 僕が手で土を掘ると、そこから赤銅色の金属片が現れた。

 

「これが……かけら?」

 

「うん。電ちゃんのときと、似た反応だよ」

 

「これを使えば……また、誰かが……?」

 

「うん。でも、まもるの“想い”が届かなきゃ、扉は開かない」

 

 僕は欠片を胸に抱いた。

 

「──もう一人、必要だ。僕が無力だからじゃない。今度こそ……“支える”ために」

 

「建造、開始!」

 

 妖精たちの声が重なり、欠片が強く光り出す。

 

 建造の光が広がり、風が巻き起こる。

 

 そして──

 

「ふあぁ……って、ちょっとまぶしいじゃない!」

 

 茶色のボブヘアー、跳ねた髪とヘアピン、どことなく自信に満ちた薄茶色の瞳をもった少女が姿を現した。

 

「え、えっと……」

 

(いかずち)よ! (かみなり)じゃないわ!」

 

「……は、はじめまして?」

 

 その瞬間、電が駆け寄った。

 

「雷ちゃん!」

 

「電!? あんたも来てたの!?」

 

「うん、まもるくんが呼んでくれたのです」

 

 雷がこちらに振り向く。

 

「わたしが来たからにはもう安心しなさい!」

 

「雷……って、名前なんだね」

 

「そう。雷よ。雷さまって呼んでくれてもいいけど?」

 

「あ、あはは……雷、よろしく」

 

 電がふんわり笑って、言葉を添えた。

 

「雷ちゃんは、わたしと同じ艦娘で、姉妹みたいな存在なのです」

 

「姉妹?」

 

「はい。わたしは四番艦で、雷ちゃんは三番艦。だから……お姉ちゃんみたいなもの、なのです」

 

 僕は驚いた顔をした。

 

「……じゃあ、ふたりとも、元々は“何か”の……?」

 

 妖精が降りてきて、そっと答える。

 

「まもる。わたしたちが建造する艦娘たちは、記録から来た存在なんだよ」

 

「記録?」

 

「うん。この世界に散らばる、過去の艦の記憶のかけら。それが、“艤装の欠片”っていう形で現れる」

 

「じゃあ、欠片が出現するのは……」

 

「まもるの気持ちが、強くなったとき。誰かを必要としたときに、“記録”が呼応して、浮かび上がるの」

 

 雷は腰に手を当てて、にかっと笑った。

 

「つまり! 雷さまは、ちゃんと選ばれてきたってことよ!」

 

「……雷ちゃん、ほんとうに来てくれてありがとう」

 

「ふん、当然でしょ? これからは私もいるんだから、ちゃんと頼ってよね!」

 

 電がくすっと笑って、雷の腕をそっと引いた。

 

「頼もしいのです」

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 基地の中で、ふたりの艦娘が並んで座っている。

 

 妖精たちが肩や髪にとまり、嬉しそうにくるくると飛んでいた。

 

 僕は、ひとつ、深く息を吸った。

 

「……これが、僕の個性かぁ」

 

 妖精が頷く。

 

「うん、そうだよ。まもるの願いが、新しい力を呼んだんだ」

 

 ふたりの艦娘と、光の妖精たちに囲まれて──

 

 僕は、「ひとりじゃない」という実感を強く抱いた。

 

 そのとき、手に持っていた欠片が、静かに淡く光り──ふっと、消えていった。

 

「これは、この子を呼ぶための扉だったんだよ」

 

 妖精の声が、柔らかく響く。

 

 もう二度と戻らないけれど、確かにあった“始まり”。

 

 この力が、どこまで続くのかはまだわからない。

 

 でも、もう逃げない。

 

 ──僕は願う。そして、支える。

 

 誰かを──仲間を、守るために。




最後までお読みいただきありがとうございます。
ストックが尽きましたので投稿頻度は下がると思います……。
もともと週一投稿予定だったので許してくださるとありがたいです。
感想、評価、お気に入り登録などしていただけるとおそらく筆が乗って書き上げるペースが速くなると思うのでぜひぜひよろしくお願いいたします。
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