妖精が見えた少年   作:HYDRATION

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決意

 ──時は経ち、中学三年生の冬。

 

 もはや文字通り基地と化してしまったあの場所で、僕は六人の艦娘とテーブルを囲んでいた。

 

 

 

 古びた木材と鉄骨を組み合わせ、妖精たちの力を借りて幾度も補強された小屋は、もはや「秘密基地」と呼ぶにはあまりにも本格的だった。

 かつてのベッドは艦娘たちの格納スペースとなり、テントでしのいだ雨風は、いまや太陽電池と換気設備によって管理されている。

 

 この場所はもう、ただの遊び場じゃない。

 

 僕の「個性」の、中心そのものだった。

 

 

 

「明石さん、修理間に合いそう?」

 

 僕が声をかけると、艤装をばらして点検していた彼女が、すこしだけ顔をあげた。

 

「大丈夫ですよ。明日の受験には余裕で間に合わせます。ほら、予備パーツも完璧に揃ってるから」

 

 明石は、中学に進学したばかりのころ、

 僕が“みんなを守る力を支えたい”と思った瞬間に現れてくれた艦娘。

 

 明るく頼れる、お姉さんのような存在。

 彼女がいるからこそ、僕らは安心して活動ができる。

 

 

 

「雷ちゃん! 金剛さんの背中に座ったらダメなのです!」

 

「ちょっとだけ! ほんのちょっとだけよ!」

 

「ほんのちょっとでもバランスが崩れるんデース!」

 

 その向こうで、雷と金剛がじゃれ合っている。

 

 

 

 そして、離れた壁に背を預けながら、川内が眠たそうな顔でつぶやいた。

 

「ん〜……受験かぁ……夜戦なら得意だけど、朝は苦手なんだよねぇ……」

 

 

 

 

 この六人──

 電・雷・あきつ丸・明石・川内・金剛。

 

 いつのまにか、僕の周りには、誰にも代えがたい艦娘たちが集まっていた。

 

 

 

「まもるくん、ヒーロー科受験の願書、出しに行くんですよね?」

 

 電の問いに、僕は小さくうなずいた。

 

「……うん。雄英を受けたいって、先生に話してある。志望動機も、もう書いた」

 

 

 

 数日前、担任の先生から「進路最終確認」の紙が配られた。

 僕は迷わず「ヒーロー科」と記入して、紙を提出した。

 

 電も雷も、明石も──

 みんなが、まるで自分のことのように真剣に、それを喜んでくれた。

 

 

 

「さすがは鎮殿。基礎鍛錬の成果、いよいよ発揮する機会でありますな」

 

 あきつ丸が静かに言う。

 

 

 

 

 ──もう、迷わない。

 

 この力を手にしたからこそ、戦えるようになった。

 

 でもそれ以上に、誰かを守るために必要なのは、法的な「資格」だ。

 

 無免許の個性使用は原則禁止。

 だからこそ、僕はヒーロー免許を取り、堂々と彼女たちと並び、戦えるようになりたい。

 

 艦娘たちは、僕の個性であり──僕自身の意思の結晶だ。

 

 

 

 

 僕は静かに言う。

 

「“僕自身の力”じゃないって言われても、みんなは僕の願いから生まれたんだ。

 だったら、その力で守りたい。……ちゃんと、人を助けるヒーローになりたいんだ」

 

 

 

 言い終えたあと、沈黙が流れた。

 

 ──それは不安でも緊張でもない、静かな「覚悟」の共有。

 

 電がそっと僕の手を取った。

 

「わたしたちは、まもるくんの艦隊なのです。きっと、大丈夫なのです」

 

 

 

 

 ──この六人がいる。

 

 僕の想いが、彼女たちを通じて形になったのなら。

 この先も、きっと。

 

 いや、絶対に。

 

 僕は、ヒーローになれる。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 その夜、僕は母港──僕の精神世界へと意識を落とした。

 

 そこには、海があった。

 穏やかに揺れる蒼い水面と、軍港のように整備された桟橋。

 艦娘たちは、ここから「出撃」し、現実の世界へと出現する。

 

 

 母港は、六人そろったときに「解放」された。

 それまでは存在すら知らなかった、僕の深層。

 

 ここでは、彼女たちと心のままに対話できる。

 

 まるで、魂と魂で向き合うような感覚だ。

 

 

 

「……僕、ほんとはちょっと不安だよ」

 

 桟橋の端に座り、電にぽつりと打ち明ける。

 

 彼女は黙って、僕の隣に腰を下ろすと、ちょっとだけ肩をぶつけてきた。

 

「でも、そう思えるってことは──それだけ本気だってことなのです」

 

 電の言葉には、熱がある。

 

 

 

 

「わたしたちはまもるくんの艦隊なのです。

 どんな嵐が来ても、撃ち抜いて前に進む。……それだけの力は、もうあるのです」

 

 

 

「……うん」

 

 心の底から、頷いた。

 

 

 

 そして、静かな夜風が吹き抜ける。

 

 遠くで聞こえる船鐘の音が、そろそろ時間だと教えてくれる。

 

 

 

 僕は立ち上がり、桟橋の先へと向かった。

 

 出撃の準備は、もう整っている。

 

 ──受験という、最初の戦いへ。

 

 

 

 前に進もう。

 

 彼女たちと一緒に、ヒーローになるために。




評価してくださった方や、感想を書いてくださった方、お気に入り登録をしてくださった方には大変申し訳ございませんが、小説を一度削除し、プロットを再構築して書き直すことも検討しています。

せっかくたくさんの人に読んでもらえるのであれば、もっと良い作品を書きたいと思ったからです。

最初はせいぜい10人ぐらいの同好の士に読んで楽しんでいただけたらな~程度の気持ちで作ったので、正直な話、自分で書いていてわかるぐらい粗が目立つんですよね。
きっと、読者の皆さんならなおさらお気づきのことだと思います。
見切り発車の付けがこうも早く回ってくるとは思いもしませんでした。
今回だってかなりご都合展開を盛り込みましたし、時間もかなり飛ばしました。

駄作でもばっちこい!みたいな人がいればいいのですが、そんなことは多分ないと思います。

まだ数話書くかもしれませんが、エタる可能性が高いです。
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