──雄英高校入試、当日。
僕は、仮設された都市型試験エリアのスタートゲートに立っていた。
まるでテーマパークのように作り込まれた街並み。
そして、この中に「仮想ヴィラン」が潜んでいる。
それらを倒して、ポイントを稼ぐ。
ただ、それだけの試験。
事前に知らされた情報はそれだけだった。
「ヒーローってのは、ヴィランを倒すのが仕事だろ? ポイントを多く取った奴が合格って話だよ」
隣の受験生がそう言って肩を回している。
僕も頷くふりをしたけれど、内心は落ち着かない。
──本当に、それだけなのか?
僕は目を閉じ、静かに“個性”にアクセスする。
母港──僕の精神世界。
すでに六人の艦娘が、出撃の準備を整えていた。
蒼い海の桟橋に、艤装を身にまとった彼女たちが整列している。
明石が手早く出撃シーケンスをチェックしていた。
「ブースター起動、連携リンク確認、接続も問題なし。……大丈夫、準備万端です!」
雷が拳をぐっと握る。
「よーし! 試験ってんなら、全力で暴れちゃうんだから!」
電は落ち着いた声で言った。
「まもるくん、無理はしないで。いつも通りやれば、きっと大丈夫なのです」
川内が伸びをしながら呟く。
「ねえ、これ夜戦じゃないんだよね? ……ちょっとだけ手加減してあげようかなあ」
あきつ丸がぴしりと姿勢を正した。
「作戦行動、開始準備完了であります。鎮殿、指令を」
そして金剛が、ふわりとウィンクして言う。
「Yes! 私の実力、見せてあげるネー!」
僕は深く息を吸い、拳を握りしめた。
──これは、僕の「個性」。
──僕の「意思」で出撃する、僕の「艦隊」だ。
◇ ◇ ◇
『ハイ、スタート!』
急なその声に、周りはポカンとして動かない。
『どうしたぁ? 実践じゃカウントなんざねぇんだよ! 走れ走れぇ!』
慌てて一斉に走り出す受験生たちの中で、僕は立ち止まったまま、声に出す。
「第一艦隊、出撃!」
次の瞬間、空間がゆがみ、白い光の中から、艦娘たちが順に出現した。
──雷、電、金剛、あきつ丸、川内、明石。
試験エリアに現れた六人の艦娘は、地面を蹴って跳躍し、各自のポジションへと散開していく。
周囲の受験生たちが、一斉に驚きの声をあげる。
だが、僕は構わず走り出した。
自分の艦隊を信じて。
「雷、左の路地! 複数機体接近中!」
「了解! ってー!!!」
ドォン、と砲撃が炸裂する。
ロボの胴体に直撃し、1体、2体と吹き飛んだ。
すぐさま電が反対側に回り込む。
「はぁっ……! まもるくん、2時方向に3体! 援護いくのです!」
ビルの屋上からスライド降下し、稲妻のように敵を貫いた。
「金剛、援護射撃お願い!」
「オーケー! 撃ちます! Fire~!」
金剛型の主砲が砲火を撒き散らし、ビルの一角を崩しながら、模擬ロボたちを一網打尽にした。
視界のすべてが、戦場と化していた。
僕は無我夢中で走り続け、指示を出す。
明石は後方から艤装の修復や情報リンクの補助をし、あきつ丸は飛び交う破片から僕の盾になってくれる。
川内は、すでに影の中から敵を制圧していた。
「ふふ、夜じゃなくても、やれるもんだね」
──これは、僕一人の戦いじゃない。
でも──
「助けて!!」
その声が、廃ビルの影から響いた。
反射的に僕は飛び込む。
──受験生。瓦礫に脚を挟まれ、動けない。
そこに、三体の模擬ロボが迫っていた。
(間に合わない!)
「川内! 至急、右上から援護を!」
「了解ッ!」
僕は必死で瓦礫をどかしにかかる。
電が手伝いに飛び込んできて、全力で鉄材を押しのける。
──何とか、引っ張り出せた。
模擬ロボがあと数メートルで到達する。
「雷! 今だッ!」
「そーれっ!」
雷が錨を振り下ろす。
ロボットは煙を上げ、沈黙した。
「大丈夫? 怪我してない?」
受験生が、震える声でうなずいた。
「た、助かった……ありがとう……!」
その瞬間、胸の奥に何かが満ちていく感覚があった。
◇ ◇ ◇
試験終了のアナウンスが流れ、僕たちは待機エリアへと戻ってきた。
艦娘たちは、母港へと帰投する。
明石が静かに言った。
「……よくがんばりましたね。艦隊も、全員無事です」
「うん。ありがとう、明石さん。みんなも──ありがとう」
川内が、ふっと笑って言った。
「当然の結果ね」
電が小さく頷いた。
「まもるくんの願いがあったから、わたしたちは動けたのです」
──試験の結果は、分からない。
でも、僕はやれるだけのことをやった。
艦娘たちとともに、僕の「個性」で、人を救った。
それだけは、胸を張って言える。
あとは──信じて、待とう。
というわけで、この作品はこれにて終わろうと思います。
初めての作品ですので、削除するのはやめにしました。記念に残しておきます。
また、これが投稿されるのと同時に、プロットを組みなおした新作を投稿しております。
この作品を見て少しでもいいなと思ってくれた方は、ぜひぜひそちらも見てくださるとありがたいです。
この作品を読んでくださった方々全員に、最大の感謝を。