ガンダムシリーズ【魔を滅する転生頑ーSEEDー】   作:月乃杜

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第29話:砂塵の中で

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「キラ・ヤマト、ストライク――出ますっ!」

 

「ムウ・ラ・フラガ、ルブリス――出るぞっ!」

 

「ユート・オガタ、ガンダムアストレイシルバーフレーム・龍式――出陣()る!」

 

 先ずストライクガンダムが発進、次にルブリスが出て最後にシルバーフレーム・龍式が出陣し、そしてスリーマンセルで動き始める。

 

 マリュー・ラミアスによる第一戦闘配備が発令されて直ぐ、故にアンドリュー・バルトフェルドも驚きの早さでMSが展開をされていた。

 

 とはいえ、彼も負けじと戦闘ヘリを使い先制攻撃を敢行するが……

 

「甘っちょろい、飛去器戟(ブーメランショット)!」

 

 シルバーフレーム・龍式が放った黄金の鎖が、数機の戦闘ヘリへと向かって高速にて飛んだ。

 

「こんなもの!」

 

 戦闘ヘリは躱すものの、ブーメランの名の如く戻ってきた星雲鎖が一機の戦闘ヘリを貫く。

 

「なにぃ!? うわぁぁぁっ!」

 

 ZAFT兵が悲鳴を上げて敢えなく爆散した。

 

「このぉ!」

 

 残りの戦闘ヘリが、ミサイルを連発で放つ。

 

「喰らうか! 投縛之網(キャスティングネット)!」

 

 だけど蜘蛛の糸の如く編み込まれた鎖の網に、ミサイルは絡め取られて威力を喪っていた。

 

「莫迦な!?」

 

 驚くZAFT兵。

 

「おいおい、何なんだい? あの銀色の機体は」

 

 外したと思えばまるで返す刃で斬り裂いたかの様に攻撃を当てるし、幾つものミサイルを一斉に無力化してしまう銀色――シルバーフレーム・龍式に対して、驚愕してしまうアンドリュー・バルトフェルド。

 

 ストライクガンダムは原典の通りランチャーストライカーを装備し、ユートがミサイルを止めたり牽制をしたりしていた為、ストライクガンダムも320mm超高インパルス砲アグニを悠々と放って墜とせている。

 

 ムウ・ラ・フラガ少佐の乗ってるルブリスも、手にしているレシーバーガンを撃ち放っていた。

 

 原典ではランチャーストライクガンダム一機のみで、砂に足を取られたり射角も上手く取れなかったりしていたのが嘘みたいに優勢だ。

 

 更に、七基のビットステイヴで墜としていく。

 

「こいつぁ……まさかの事態だな。バクゥを出せっ!」

 

 アンドリュー・バルトフェルドは主力となっているバクゥを出す。

 

 バクゥは基本が二足歩行の人型機動兵器である他のMSと違い、獣型で四足歩行を行うのが基礎となっている少しばかり特殊なMSである。

 

「出たな、バクゥ! だけど狩猟之罠(ワイルドトラップ)!」

 

〔うおっ!?〕

 

 星雲鎖が獣を嵌めるトラバサミの如く変化し、バクゥの両脚へとガッチリと食らい付いた。

 

「今だっ!」

 

 キラ・ヤマトは、320mm超高インパルス砲であるアグニを撃つ。

 

「うわぁぁぁぁぁっ!?」

 

 当たったバクゥは一発で大破し、パイロットは明らかに死亡。

 

 更にユートはシルバーフレーム・龍式を軽やかに空へと飛翔させて、追加で一二基のビットを操作するとバクゥへとビームを放つ。

 

「征けよ! 龍式闘牙(ドラゴンファング)ッ!」

 

「ギャァァァッ!」

 

 正しくバクゥは、龍の顎に喰い付かれた獲物の如く傷で爆散した。

 

「前以てユートさんから言われていた通り、砂漠にOSを対応させたのが良かったみたいだ」

 

 自身のストライクガンダムも、ムウ・ラ・フラガ少佐のルブリスも同じく、砂漠の砂に足を取られず動き回れる事からキラ・ヤマトはOSを弄っていたのを安堵する。

 

 シルバーフレーム・龍式が淡い蒼色に輝く翼を展開して、一瞬だけ屈伸で屈むとジャンプしつつ風を受けながら大空へと大きく飛翔をした。

 

 (さなが)ら、龍が翔ぶ様に。

 

 シルバーフレーム・龍式みたいに飛翔が出来ないストライクガンダムとルブリス、普通であればコロニーで造られた事に加えてOSが未完成だし、環境の変化に併せられず足を砂に取られてしまっていただろう。

 

 原典みたいに……だ。

 

「まさか、MSが翔ぶかね」

 

「驚きましたね」

 

 アンドリュー・バルトフェルドもかれの副官であるマーチン・ダコスタも、空中を自由自在に飛翔するMSというのに仰天をしていた。

 

 MSとは抑々が宇宙空間か地上での運用が主だったのや、未だに造られて年数が然程には経過もしていない事から、技術的な熟成も成されていなかったので未だに翔べない。

 

 MSが空を往くには専用の飛翔機が必要である、即ちそれはMS支援空中機動飛翔体グゥルと云う。

 

 ZAFTは地上でこのグゥルを使って空中を往く。

 

「さぁ、お前の罪を数えろ!」

 

 シルバーフレーム・龍式は、その腰に佩いている妙法村正を抜刀してバクゥの首を切断した。 

 

 空からの襲撃は想定外だった為、バクゥは簡単に討たれてしまう。

 

 この妙法村正はロウ・ギュールが駆る機体、ガンダムアストレイレッドフレームが腰に佩いている菊一文字(ガーベラストレート)とは異なり、実は嘗ての先祖が信頼の証しにという名目で第八代将軍・徳川吉宗より賜わった初代村正が鍛った実物、徳川家に三代呪ったとされる村正を敢えて下賜する事が信頼の証しに成るとしたからだ。

 

 経緯は兎も角、手にした先祖――の弟は神隠しに遭ってしまい、その先がハルケギニア大陸だった事からユートの直接的な先祖に成った。

 

 妙法村正を受け継いだ後、ハルケギニア系統の魔法――保全の魔法である“固定化”を丹念に掛けているし、硬さ鋭さを増す為の魔法も掛けてあるから折れる曲がるは於ろか刃毀れすらしない。

 

「参ったねぇ、地を往く獣では空を翔ぶ龍には敵わないのか」

 

「どうしますか、隊長?」

 

「もう少し戦力評価しておきたい、然し無策では此方が良い様に討たれて御仕舞いでしかないな」

 

 マーチン・ダコスタの質問には答えを窮する。

 

 本来の自分達の目的とは戦力評価の為の威力偵察だったのに、現状では只徒(ただいたず)らに自軍の戦力を磨り減らされているだけに過ぎなかった。

 

 戸惑っているのはZAFTだけでは決して無くて、それは“明けの砂漠”なるゲリラの集団も同様だ。

 

「ど、どうなっている?」

 

「判りません、まさか今までは宇宙に居た連中が砂漠であれだけ動けるとは! 想定外ですな」

 

「それに、あの銀色のフレームのはアストレイ? 現在モルゲンレーテで量産を進めているM1アストレイのプロトタイプだよな? あっちは赤いのが元だが」

 

「そうですね」

 

「何で翔んでる? フライトユニットを装備したM1アストレイだってあんな自由に翔べないぞ」

 

 現在、モルゲンレーテ本社でエリカ・シモンズにより量産が進められているM1アストレイだが、プロトタイプに当たるレッドフレームなどに装備がされていない、新型のフライトユニットが装備されてはいるのだけど、決して自由自在に翔べる翼として作用をしている訳では無い。

 

 金髪の少女も、それに追従する男もそうだが、余りに性能がおかしいシルバーフレーム・龍式に対して、自分達の常識が通用しないと頭を抱えてしまうしか無かった。

 

「砂漠でバクゥが王者じゃ無くて悪かったな? 龍式戦爪(ドラゴンクロー)ッッ!」

 

 ガシャリと右手首に装着されている黄金の爪がセットアップ。

 

「ストライクレーザークロー!」

 

 バクゥの本体が引き裂かれる。

 

「レセップスに打電だ。直ぐにでも敵艦を主砲で……っ!」

 

「隊長?」

 

「ヤバい! 此方を狙っている!」

 

「なっ!?」

 

 シルバーフレーム・龍式がビームライフルを構えており、その狙撃の狙い先はあからさまな程にアンドリュー・バルトフェルド達の場所。

 

 ユートはアンドリュー・バルトフェルドの場所を特定し、バクゥを斬り裂いて直ぐビームライフルを向けてやったのである。

 

 エネルギーを最低限にまで絞り、アンドリュー・バルトフェルドとマーチン・ダコスタが居る場所へ放つべく引き金を引いた。

 

「回避だ! ダコスタ君!」

 

「は、はいぃぃっ!」

 

 本当に最低限だったとはいえど、元々はMSを破壊する為の兵器であるビームライフル、必死になって躱そうと動いてやっとである。

 

 ふと見遣れば、これ見よがしに人指し指を立ててチッチッチとばかりに横へと動かしていた。

 

「余計な真似はするなって事だろうかねぇ?」

 

「それって、此方が捕捉されてるだけじゃ無いって事ですか!?」

 

「みたいだね……」

 

 次は無い、と言われているのだと理解をする。

 

 そして、これまでは全く以て茫然自失状態だった“明けの砂漠”だったが、これを好機と見たのか装甲車でミサイルポッドから射撃を行う。

 

 バクゥは兎も角としても、流石に戦闘ヘリが直撃を受ければ墜ちた。

 

「なにぃ! 莫迦な、此方が優勢だったのに要らん色気を出したな?」

 

 原典ではギリギリの闘いを強いられていた上、レセップスからの砲撃やストライクガンダムのフェイズシフトダウン寸前な状況、だからこそ危険であっても“明けの砂漠”の介入には助けられたのだと云えた。

 

 然しこれはストライクガンダムを餌に地雷源へと誘き寄せるで無し、完全に連中の暴走にしかならないであろう余計な御世話でしかない。

 

 しかも、アンドリュー・バルトフェルドに目を付けられただけでしかない愚行とも云えよう。

 

 とはいえ、カガリ・ユラ・アスハを拾っておかないといけないから、介入をされたならされたで彼女との接触が容易に成ったのも確かだ。

 

「さて……と……」

 

 ユートはジト目で“明けの砂漠”を見詰める。

 

 アンドリュー・バルトフェルド達は撤収をしてしまったらしい、南東に二〇kmは先に居るであろうレセップスも撤退していくのを感じた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 機体を降りるユート達。

 

 目の前には“明けの砂漠”のリーダー格だと思しき男共と、カガリ・ユラ・アスハと護衛として付けられたレドニル・キサカが立っている。

 

 ユートから視ると不機嫌そうな、ドヤッているみたいな、複雑怪奇な表情に見えて少し不快を感じた。

 

 尚、ユートは享年が二〇一四年、詰まり最新の噺は識り様が無いから数年後の彼女も識らない。

 

 装甲車から降りてきた男共は一応ではあるが、レジスタンスという事になる連中なのだろう。

 

 ユートはマリュー・ラミアスに連絡を入れる。

 

「悪いが降りて来てくれ。流石にアークエンジェルの責任者不在で話す訳にもいかないだろう?」

 

〔そうね。取り敢えず銃口を向けて来ないなら、敵対をする意志は無いのでしょうから〕

 

 帽子も被って完全な地球連合軍の正規軍服姿と成り、ヘルメット無しでパイロットスーツ姿の侭のムウ・ラ・フラガ少佐と共に出てきた。

 

 ユートに促されたからとはいえ、一応の用心として拳銃で武装をしているし、アークエンジェルの出入口には矢張り武装した者が居る。

 

「初めまして、私は地球軍第八艦隊所属マリュー・ラミアスです」

 

「俺達は“明けの砂漠”。俺はの名はサイーブ・アシュマン」

 

 髭面の男が代表として名乗る。

 

「まったく、余計な事をしてくれたものだな?」

 

「あ?」

 

「大方、自分達の敵を討つ為にとか言いたいんだろうけどな。此方は優勢で進めていたからはっきり言えば邪魔でしかなかったのさ」

 

「チッ!」

 

 ユートの物言いに、サイーブ・アシュマンは舌打ちをした。

 

 自覚は有ったのだろう。

 

「まぁ、僕は傭兵だからな。地球連合軍としての話には口を出さんよ。だけど態々、“砂漠の虎”に目を付けられてまで遣る事かと思うがね」

 

 ユートの告げた科白に目を見開くマリュー・ラミアス。

 

「“砂漠の虎”? アンドリュー・バルトフェルドが指揮する!?」

 

「そうだよ。レセップスを確認している。あれはアンドリュー・バルトフェルドの母艦だからな」

 

「そうだったのね……」

 

 マリュー・ラミアスは、未だに相手の指揮官を知らなかったのだ。

 

「どうしてお前があんなのに乗っているんだ?」

 

「は?」

 

「あれは確かオーブが造ったアストレイだろう、それともヘリオポリスで火事場泥棒かよ!?」

 

「確かに造ったのはオーブだな」

 

 名乗りもしないで糾弾をしてくるKYな小娘に、ユートは阿呆を視る目をして鼻で嗤ってやる。

 

「アストレイを造ったのは、確かにオーブ所属の軍事産業であるモルゲンレーテ社だ。とはいえ、それを主導したのは地球連合との取り引きを含めて現代表首長のウズミ・ナラ・アスハじゃ無く、五大氏族である内の一つサハク家だろうに」

 

「な、に?」

 

 一応だけど、ウズミ・ナラ・アスハが主導していた訳では無い事など、エリカ・シモンズからも聴いていたのかも知れないが、其処まで突っ込んだ話までは流石に知らなかったのかも知れない。

 

 或いは、オーブの裏事情まで知られていた事に驚いたのか? 少なくとも、レドニル・キサカは驚愕に目を見開きつつユートを視ていた。

 

「そして、サハク家当主ロンド・ミナ・サハクの双子の弟であるロンド・ギナ・サハクは、自身が乗るMBFーP01アストレイゴールドフレーム以外を破棄すると決定して破壊をしようとしていた。従ってサハク家はMBFーP02からMBFーP05までの所有権を放棄したんだ。そうなればレッドフレームやブルーフレームをジャンク屋や傭兵が拾った時点で、所有権の主張をしても別におかしくあるまい」

 

「なっ!?」

 

 尤も、ユートの場合はフライングで手にしたから確かにパクった事に間違いは無かったけれど。

 

 いずれにせよ、ユートが獲ていなければいずれライブラリアンが拾ってしまい、ミラージュフレームという形で使っていたのだから同じ事。

 

 現状ではレッドフレームはロウ・ギュールが、ブルーフレームは叢雲 劾が、ゴールドフレームはロンド・ギナ・サハクが、グリーンフレームには担い手は居ない、そしてシルバーフレームに乗っているのがユートという訳である。

 

「お前も何で連合のストライクに乗っている?」

 

「……それは」

 

 カガリ・ユラ・アスハが今度は、キラ・ヤマトへと絡んでいく。

 

「阿呆が」

 

「な、何だと!?」

 

 ユートに言われてカガリ・ユラ・アスハが気炎を吐いた。

 

「ヘリオポリスがZAFTの攻撃で崩壊したんだぞ、命を守る為には手近に在ったストライクガンダムに乗るしか無かった。そしてアークエンジェルではMSのパイロット候補が軒並み殉職していたし、フラガ少佐はMA乗りでMSの訓練なんてしていなかった。僕はシルバーフレームに乗っていたからストライクガンダムにはキラ以外乗れなかった。情報通ならアークエンジェルがZAFTに狙われていたのは知っているだろう、MSに乗って闘える人間が闘うしか無かったんだ。何でもへったくれも有るものかよ、なし崩しに乗り続けているだけだ」

 

「ぐぅ……」

 

 ユートの皮肉混じりの説明には、カガリ・ユラ・アスハはぐぅの音しか出なかったのだとか。

 

 まぁ、崩壊にはストライクガンダムも関わっているのだけど。

 

「ま、御宅らにとっちゃ災いの種だとか言いたいんだろうな。元より連合にもZAFTにも属している心算の無いアンタらだからな。だけどその時々によって支配権が変われば巻き込まれるからな。前は連合で今はZAFTってね」

 

「此方の事情はお見通しか」

 

「傭兵は情報が命だからな」

 

 遣り難そうな表情になるサイーブ・アシュマンだったが、話が通用しないという訳でも無さそうだと苦虫を噛み潰した顔で応じてきた。

 

「僕から言える事は、邪魔さえしなけりゃそれで構わないって事だ」

 

「なっ!?」

 

「タッシルにムーアにバナディーアだったか? お前らレジスタンスは主に其処ら辺から集まって来た集団だった筈だが、違うかな?」

 

「其処までも把握しているのか! まぁ、焼かれてなけりゃな」

 

「焼かれてなけりゃ……ねぇ」

 

 ユートは肩を竦めるしか無かったのだと云う。

 

 

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