その女に自由はなかった。
世襲的に代々連邦軍に入隊している男系の家で、家族に落胆されながら生を受けた。
残念なことに彼女の他に子宝に恵まれず、彼女は妥協点として教育を受けさせられることになる。
家柄だけはそこそこなのに、時代錯誤も甚だしい男尊女卑の家風で施される教育なぞたかが知れている。加えて、当時の当主──────父が極右のスペースノイド排斥主義の思想に取り憑かれていたのが運のつきだった。
分単位で管理される時間。
娯楽なぞ与えられる余裕もなし。
交友関係すら介入され、似たような思想に囲まれる日々。
これを当たり前だと思うことができれば、どれほど幸せだったことか。
不幸にも、彼女はこの環境が異常である認識を持ってしまっていた。
晴れて連邦軍に入隊しても、日常の延長線上でしかない、訓練の日々が過ぎていく。
せめて、この環境を打破してくれる何かがあればよかったのに。思想的に敬遠され続け、周りにも馴染めず、居場所がない彼女の心は、長い時間をかけて殺されていった。
その男に正義はなかった。
彼の生まれも育ちも地球──────生粋のアースノイドであった。コロニー落としなんて未曽有の災害を起こし、人類の半分以上を死に至らしめたジオンになぜいるのか、と聞かれれば、それは成り行きとしか答えようがない。
両親が死に、難民として重力から勝手に放り出された。才能があると言われ、よくわからない研究所に引き取られた。
そこで受けた実験は筆舌に尽くしがたいものだった。
指先から臓腑……それから脳まで隅々弄られた末、薬で誤魔化し続けなければ日常生活すらままならないほど、彼の肉体はボロボロであった。
健全な肉体は精神から、なんてよく耳にするが、逆説的に言えば──────肉体が終われば精神も終わるということ。
男は肉体よりも先に、精神の方が殺されてしまった。
そんな国に愛国心なんてものは持ち合わせず、もはや記憶が薄れて実感が沸かない故郷に投下される。
役割は鉄砲玉だ。できるだけ多くの連邦軍を巻き込んで死ぬだけ。
このままただの道具として浪費される。そんな末路が約束されるはずだった。
こんな二人でも、初めて戦場に出た時のことは鮮明に覚えていた。
殺せば生きる。殺されれば死ぬ。
そこにあるのはわかりやすい優劣のみ。
戦争は、
今まで抱えていた鬱屈とした感情は。
今まで嬲られ続けたこの肉体と精神は。
この瞬間のためにあったのだと──────歓喜した。
軍規を乱すな。家名に傷をつけるな。
人の命を何だと思っている。
そんなことを耳にしても気にならない。
次の戦いが待ち遠しい気持ちでいっぱいだった。
そうして彼らは数多の惨劇を駆け抜ける。
数え切れないほどの機械を破壊した。
投降を表明した敵兵を笑いながら撃ち殺した。
逃げ惑う民間人をゴミのようにすり潰した。
自由も正義もいらない。
二人は異なる戦場で歓喜に震えた。
この生存競争の場に居場所を見出した。
二人の心は燃やされ続け、そして殺された。
女は弱火でじっくりと。男は強火でさっと。
だから、
そうしなければ、
そんな形でしか、生きられないような存在になってしまった──────
戦争が終わり、合法的に趣味ができなくなってしまった彼らが、サイド6のクランバトルに目をつけるのは必然だった。
街灯に集まる虫のように同類が集まって来る中でも、「あ、こいつだ」と互いの存在をすぐに見つけることができた。
似た者同士、同じ臭いをしていたから。
なし崩し的に組んだMAVも、そこそこ長い付き合いになる。
戦績は連戦連勝。負けた者を生きて帰すこともなし。ほどほどに
数が少ないのは物足りないものの、それでも短いスパンで戦争ができるのは、作戦で待機を命じられるのが最も苦手だった二人にとってはとても都合が良かった。
そこらで勃発するようなテロリズム組織に身を寄せなかったのはそれが理由だ。
……一年戦争で、ジャブローで出会った時のことはお互い今でも鮮明に思い出せる。狂ったように前線に出て、殺戮に酔いしれる姿は鏡を見ているような心地であった。
思い返せば、あの出会いは良くも悪くも──────まさに“運命”と言えるだろう。
今日は待ちに待った“赤いガンダム”たちとのバトルの日……そして、木星から入手した最新鋭機のお披露目となる記念すべき日であった。
雇い主から詳細は語られなかったが、曰く、この
技術士にはそんな変態がいてもおかしくはないが、それでも些か倒錯的な趣味でもしているのだろうか、と女の方は思ったが、余分な思考は切り捨てられることとなる。
まあ、相方の方が変態であるため今更気にすることでもないし、何より──────
「おい、
性能はお墨付きであることを目の当たりにしたからだ。
ミノフスキー粒子下においても、従来の
このボリノーク・サマーンと呼ばれる機体は索敵能力が非常に高いことが売りだと聞く。愚鈍なように見える造形でも、運動性能は軍から払い下げられた
「あら? 赤いガンダムじゃなくって? 軍警ってこと?」
「ちげーよ、よく見ろ。11時の方向」
“ブス”と呼ばれた
今か今かとバトル開始の合図を待っていた矢先に現れた乱入者。しかも相手が最新鋭機の
それは──────化物であった。
四対の羽を携えた、肩と胴体が一体化した寸胴体型の
宇宙に溶け込むように全身を黒く塗られ、ジオンの象徴たる巨大な赤いモノアイが軌跡を生みながら近づいてくるではないか。
ブスはジオンにいた身である。似たような量産機が生まれては消える、その繰り返しを見ていた。
あんなものもあってもおかしくないと思う価値観はあった。
化物と感じたのは、その搭乗者だ。
強化された五感が嫌というほど感じさせてくる。
まるで本能が理解を拒むような、根源的な恐怖を。
あまりの突然の出来事に股間が一気に萎む感覚がした。
きっと相手は彼よりも遥かに死体を積み上げてきた猛者なのだろう。
漆黒の宇宙に溶け込むような黒に塗装された
確証はないものの、この殺気は明らかに普通じゃない。そんなものに当てられ続けては、とてもじゃないが平静ではいられなくなるだろう。
「なんなのあの……なに……なにあれ? 怖ゎい! 怖いわぁ! 何なのぉ!?」
「うっせえブス。さっさと距離取るぞ。近づかせたらウチら二人とも秒で殺られる。そんな気がする」
「あらやだ。クラバ始まる前に横槍とかマジ
しかしブスの方も最初から正気ではないため、冷静に対処を始める。
背後のバーニアを吹かせて距離を取ろうとするものの、一向に離れる気配がない。むしろ、赤いモノアイが徐々に大きくなっていく。
彼らの
「埒が明かん。引き撃ち上等だな。ブス、援護
「
「きっも死ねオカマ」
ブスは振り向いて相手に銃口を向ける。
後退中の進路は僚機に任せ、それに引っ張られるようにパラス・アテネは片手間に操縦する。
彼が駆る機体──────パラス・アテネは豊富な火器を積んだ砲撃機。対艦用を想定された造りにはなってはいるものの、その過剰な火力は
手に持った二連ビームが数発放たれる。
おまけにシールドに備えていた小型のミサイルも添えてやる。
たとえ慣れない機体であっても、その特性から瞬時に適切な役割分担を判断できるのが彼らであった。
女のエントリーネームは、ダーリン。
搭乗機は“ボリノーク・サマーン”。
男のエントリーネームは、ブス。
搭乗機は“パラス・アテネ”。
かつては敵同士であった両名。
それでも今は言葉すら不要な息のあったコンビネーションを見せている。バトルの相手を必ず絶命させる人でなしであることを除けば、理想的なMAVと言えるだろう。
「私の
弾幕はどれも正確に乱入者の進路上に置かれている。
回避行動は必至。しかし、減速すれば彼らの進路から離れざるを得ない。
そんな正確無比な狙いは──────黒い
速度はそのまま。ただ体勢を傾けてミサイルを全弾躱し、ビームは何か火花のようなものを散らしながら軌道を反らせた。
反動でくるりと一度の旋回をするものの、一瞬で姿勢は元通りになる。
呆気にとられてしまった。
機動兵器は操縦者よりも大きく、すぐには止まれないもの。
旧世紀から連綿と続く道理をこじ開けるような、生の肉体のように自由な動きを見せつけられ、
戦闘中にもかかわらず──────見惚れてしまった。
「やだ……すっごい綺麗な動き……濡れちゃう……」
「ちっ、つっかえな。しゃーなしウチ
「その前に死んだらウケるわね。特攻ガンバ♡」
接触回線を終えた二機の進路は枝分かれする。
パラス・アテネはそのまま後退。
ボリノーク・サマーンは切り替えしをする形でシールドのついたヒートクローを構えて突進する。
パラス・アテネが影になっていたために視界外からのシールドバッシュが敵
「そら、ふっ飛べ──────なにぃ!?」
ところが、敵の巨大な腕がそれを掴み、そのまま宙返りするようにして彼方へ放り投げた。
機体重量はボリノーク・サマーンの方が重いはずなのに、相手は追いかけてきたスピードの反動をそのまま殺さず利用したとでも言うのか。
ダーリンは何をされたか一瞬わからなかったものの、すぐに視界一面に現れた大きな赤い目に無理矢理意識を集中させられる。
反射的に抜いたビームサーベルが相手の手の甲についたビームサーベルと衝突する。鍔迫り合いに付き合うと碌なことがないと察知しているダーリンは、そのまま蹴り飛ばそうとする。
すると、突然──────機体が左側に傾く。
こんな時に急にバランスが悪くなるなんて機体の不良か、と悪態をつくダーリン。しかしそれはすぐに思い違いだと思い知らされた。
「あ、っぶねぇな!?」
先程まで衝突していたサーベルが突如引かれ、今度は反対側の拳についたサーベルがコクピットめがけて近づいてくる。
傾いた重心を利用したアンバックで辛くも躱す。
バーニアをふかして間合いを取る際、宙に浮いている
その上で、相手の全体像を見れば、己と対象となる膝から爪先まで展開されたビームサーベルが轟々と光を放つ。
ダーリンは戦慄した。
あの一瞬──────自分が蹴りの動作をする前には相手は既に足のサーベルで切り落とされていたことに。
「化物が、くそったれ!」
悪態とともにシールドに内蔵された粒子砲を放てば、これも最低限の動きで躱され、そのまま懐に入れられる。
右拳で輝く光もまたビームサーベル。
一体、どこまでサーベルを積んでいるのか、わけがわからずダーリンは混乱していた。
『お前、知ってるか? せっかく貰ったガンダムの足にサーベルつけろとか言ったガキの話。
ありゃあ傑作だぜ? 剣は多く持っていた方が強い、なんてバカみたいな発想なのに、本当に使いこなした奴がいやがったんだ。笑えるだろ?』
ふと、ダーリンは思い出す。
一年戦争時、配属された部隊の隊長がそんな話をしていたのを。
彼もダーリンと同じく戦場でしか生きられない男だったが、彼女よりも生き方が上手かった。
どうしようもない人でなしに対しても理解を示し、いい使い方をしたからこそ、戦争中でも彼女は軍属のままでいられた。
上官なんてクソ、と思っていた彼女が唯一認めてやっていいと思った男。そんな男の“野獣”のような戦い方と
かろうじて覚えていた与太話の象徴が、今、目の前に現れている。全く、笑えない冗談だ。
「なっ」
そうこうしている内に懐に潜り込まれてしまった。
構えた光る拳がみるみるコクピットへと吸収されていく。
「ほいそこ、
その隙を、
接触しているダーリンの下より、腕部のメガビーム砲を構えたブスのパラス・アテネが狙いを定めていた。
僚機を巻き込まず、敵の死角をつく射線。
それは奇しくも、赤いガンダムが初のクランバトルでジークアクスを助けるべくハンマーを投じた位置と似ていた。
絶対的なタイミングで放たれるそれは回避を許さない。容赦なく引かれた引金は、そのまま黒い
爆炎が宙を舞う。
煙から出てきたのは僚機と……件の敵
互いに無傷、否、僚機のクローがついた腕部がなくなっていた。
ブスは苦笑いを抑えきれない。
彼は見ていた。
粒子砲が放たれた瞬間、機体と接触する寸前で身を傾けて回避し、その上で右足で宙返り──────サマーソルトを放っていた。
爪先から生えたビームサーベルに僚機の肩から下を分断されたことに伴った爆発が、今、宙を舞う爆炎の正体だった。
「あらまぁ……ちょっと
「おいぼさっとすんじゃねぇよ! 助けろマジで死ぬ!」
「見たらわかるわよんもぅ。しょうがないわねぇ。囲んで
ブスはサーベルを抜いて突貫する。
パラス・アテネは対艦戦闘がコンセプトであるが、接近戦用に両足にクローを備えている。決して接近戦ができないわけではない。
常軌を逸した動きに度肝を抜かれたものの、数の有利は揺るがない。連携で詰めていけば相手はジリ貧になっていくはずに違いないのだから。
定石と言える判断だ。
……最も、それが普通の相手であれば、であるが。
こうして白兵戦を仕掛けた自らの判断を呪うのは──────その僅か三十秒後であった。
◆◆◆◆◆
「前提として、“黒い天使”には基本のMAV戦術は通用しません」
手に持ったグラスを置いたシャリアはぽつりと語る。
カラン、と、洋酒に入った氷の音が細く響き渡る。
普段より薄暗い間接照明でも、ここは彼がイズマコロニーにやって来てからほぼ毎日のように通っているバーであった。
もはや自宅のようにカウンターで寛いでいる様子は大人としての色気が醸し出されている。
ここでひとつ口説き文句でも口にすればさぞ雰囲気が出たことだろう。しかし語った内容は、かつて戦争で戦った相手のことであった。
「彼の判断能力と操縦技術は、教本の常識では考えられない挙動を可能にしています。
……これだけではわかりにくいでしょうね。では、例え話で説明してみましょう。
想像してみてください。例えば、前方からミサイルが飛んできたとします。それを避けようとする際、搭乗者側はどのような処理をしているでしょうか?」
シャリアは片手を開いた。
そのまま一つずつ指を折り込んでいく。
『目標を視認する』
『退路の判断を下す』
『操舵を動かす』
『
「大まかに分ければ大体このようなものでしょうか。一連の処理を、己の脳から体、体から
戦場では何気ない通常の回避動作においても、機械的な信号のように出力すればここまで細分化される。
日常的な動作も同じだ。人間は大脳により
故に、人間の脳は宇宙においても未だブラックボックス扱いをされている所以ではあるのだが、それはそれ。
「──────では、これを
この話の本質はそこにあった。
あろうことか、シャリアはそんな与太話を口にする。
根も葉もない話のように聞こえるものの、どこか確信めいた物言いであった。
「脳の指令を肉体に伝達させるまで、人間が持つ反応速度は0.11秒が限界──────と言われていますが、彼はそれを遥かに凌駕している動きを実現している。
それは彼がニュータイプとして特に秀でている空間把握能力と先読み、そして、その情報を二人分の思考速度で処理し、行動に移すことで成り立っています。
余人がああしよう、こうしよう、と考えている間に、彼は既に動いている……ええ、
断言するシャリアは、一年戦争最後の戦闘を思い出していた。
サイコミュ兵装搭載機、二機同時のオールレンジ攻撃をほぼ無傷で躱し、赤いガンダムとの近接戦闘においてもシャアの行動と同じタイミングで同じ動作で迎え撃つあの動き。
そして、ここ数日語り合う中で感じた彼……イセリアの中に感じるもう一人の存在。
以上が、シャリアが分析したかの“黒い天使”の力の本質である。
この場に本人がいれば間違いなく息を呑むことだろう。彼が内に抱える半身まで踏み込めたのは、この世界において
その上で「きも。俺のこと大好きかよ」と目に見えて嫌そうな顔をして悪態をつく瞬間まで幻視したが。つい笑みを浮かべそうになったシャリアは抑えて話を戻す。
「故に、
そうして視線を移した先は、店内に設置された大型モニター。
本来ならクランバトルが開始される前の待機画面が映し出されるはずの映像には、突如来襲した黒塗りのゾゴックのような何かが映っていた。
二機同時の白兵戦において全く引けを取らない。
あらゆる部位から展開されるサーベルにより苛烈に攻めながら、敵の攻撃は最低限の動きで躱し、あまつさえカウンターを入れ込む始末。
息を呑むほどに綺麗な緩急とキレは、相手どころか傍から見ている者すらも圧倒させられる。
木星製の
むしろ連携による攻撃が成立すること自体、シャリアにとっては快挙に思える。普通ならそんなことをする前に墜とされても何らおかしくないと言うのに。
「出し抜くためには、圧倒的な機動力でひたすら距離を取り引き撃ちに徹するか。圧倒的に硬くて厚い装甲を用意して耐久戦をするか。
それとも、彼すら想定し得なかった確率の低い博打を打つ他ありません。
……ここだけの話、彼って好んでアドリブするのに、される方はあまり得意じゃないんですよ。実に面白いとは思いませんか?」
再びグラスを手に取るシャリア。とうとう我慢ができなくなってしまい、上機嫌に笑いながら残った洋酒を呷った。
「……随分楽しそうにお話されていますけど」
ここでようやく、彼が語りかけていたカウンター越しの人間が口を開いた。
肩の位置まで丁寧に切りそろえられた金髪はどこか感涙を覚えるほどの懐かしさを感じさせる。
しかし、そんな美しい髪を持つ女性の目は──────非情とも言えるほどに冷めたものであった。
「貴方、先程まで店の前でぽつんと座っていたのをお忘れになったのかしら?
あのまま居座られるのも迷惑でしたから仕方なく店を開けたのおわかり?」
「ははは、その節はご迷惑をおかけしました」
少し時を遡ると、いつものように店にやってきたシャリアは、扉が開かないことに気づいた。
臨時休業の貼り紙を見て、ソドンに戻るか暫し考えたものの、持ち前の勘により居座ることを決断する。
そうして店の前で体育座りを決め込んでいると、偶然にもイセリアの雇い主でもあるオーナーが様子を見にやってきてしまったのだ。
本当なら彼女も軍警に突き出したい気持ちで一杯だったが、この店は合法と言えどあまり目をつけられたくない場所であった。それに、どうせ無駄に終わるだろうという勘が働き、仕方なく臨時で店を開くことにしたわけである。
「申し訳ありませんが、少しは大目に見ていただきたいですね。恥ずかしながら、私も興奮を抑えきれないもので」
その癖、このような形だけの悪びれる様子を見せながら、無駄に解像度の高い彼の話を展開され──────オーナーの機嫌は最底辺まで落ちてしまっていた。
それに、言動がどこか
何なのだこいつは。
誰かこいつをつまみ出してほしい。
「ところで、一つお伺いしたいのですが」
まだ口を開くかこの男は。
あれほど彼のことをペラペラと語っていたのだから、もう知らないことなんてないだろう。
わざわざわかっていることを敢えて聞いてくるのであれば、もう一言も口を交わさず追い出すつもりでいたオーナーであったが。
「彼──────どこかで目を悪くされましたか?」
予想外の問いには、目を見張る他なく。
突如──────モニターから眩い閃光が発せられた。
◆◆◆◆◆
数分前までは新品同然だった木星の最新鋭機たちは見るも無残な姿となっていた。
ボリノーク・サマーンは片腕、片足ともに切断。
パラス・アテネも足のクローはサーベルの熱により歪み、つい先程腰の下──────ちょうど股にあたる部位に足裏のサーベルを突き立てられ、胴体が二つに千切れる寸前だった。
ブスは好んで投擲武装をそのあたりに忍ばせる癖があった。偶然持ち込んでいた閃光弾が誘爆し、パラス・アテネの股間が輝きを放つ。
「何だ? 急に動きが止まったぞ?」
「あらン? 閃光弾が効きすぎたかしら?」
命を奪おうとしていた手足はだらりと垂れる。
脅威的な立ち回りを見せた背後のバーニアも静かに眠る。
生気を感じられない様子はまさに宙を漂うのはデブリのようだ。
──────
二人はすぐに距離を取る。
このまま無抵抗のままサーベルを突き立てる選択肢は二人の頭にはない。先の白兵戦で機体中、至るところからサーベルが出てくる悪夢を見せられれば近寄りたくないと考えるのは当然の思考だ。
「よし、決めるぞブス!」
「オッケー、ダーリン! アタシに任せて!」
パラス・アテネは照準を合わせる。
放つのは背後にマウントしていた対艦用大型ミサイル全弾。
この戦いの前に乗った時は
生半可な火力で相手を起こしてしまうと、今度は何をされるかわかったものではない。
対、赤いガンダム戦のために残しておくべきかと思ったが、出し惜しみをすれば殺されるのはこちらだ。
「教えて、あ・げ・る♡」
ブスは恍惚な表情を浮かべながら、迷い無くそのカードを切る。
戦っている内にわかった……否、思い知らされたが、この乱入者はおそらくジオン国内で恐怖の象徴たるあの──────
……もはや確かめるまでもないことか、と引金を躊躇いなく引いた。
このミサイルはミノフスキー粒子下においても誘導性能は格段に高い武装として、このパラス・アテネの目玉とも言える虎の子の兵器であった。
もはや今から後退してももう手遅れだ。
逃げるなんて選択肢はもう、残されていない。
これで証明される。
たとえ本物のニュータイプが相手でも、あの“黒い天使”が相手であろうとも──────
「オカマはいつだって負けないのよぉ〜〜!!」
放たれたミサイルは寸分の狂いもなく黒塗りの
戦場においてはよくある話だ。
どれほど伝説的な活躍をしたエースパイロットであろうと。
存外──────命を失う瞬間というものは、呆気ないものなのだ。
◆◆◆◆◆
「羞明なの、彼」
映像越しに無防備な姿を晒すゾゴックにオーナーは胸に手を当てながら告白した。
羞明──────つまり、光過敏症。
個人差はあれど、一般人にとってなんてことのない太陽光や照明光に過敏に反応してしまう症状だ。
重度のものになれば日中、目を開けていることすらできなくなり、中には光を当てられる肌にも影響を及ぼすものになる。
「原因はわからないわ。戦争が終わってから極端に光に弱くなって、サングラスがなければ日中外すら歩けなくなってしまったの」
「…………」
イセリアにとっては特に視覚に対する症状が重かった。太陽光は勿論、電子機器の映像の光、間接照明すら手元に置けないほどに症状が酷いものであった。
彼が常に身につけているサングラスは確かに変装目的のものでもあるが、何よりなければ生活すらままならない必需品であった。
今はどうにか外を歩くことはできるまで回復しているものの、本人としては苦痛であることは変わらない。とてもじゃないが、日中の仕事なんてできるわけもない。
得意の電子工作すら満足にできない体になってしまった彼の心情を慮るだけで、オーナーは胸がきつく締まる思いだった。
そんな彼があえてバーマスターという職業を隠れ蓑として使っている背景には、こういった事情があったのだ。
オーナーが話を終えるまで、シャリアは黙って耳を傾けていた。
あの現場に立ち会った人間として、原因に思い当たる節があるものの、確証が持てないために口を閉ざす。
「……では、
あの規模の閃光弾が目の前で展開されたのであれば、視界どころか失神してもおかしくありません」
代わりに、戦況の様子を淡々と語る。
奇跡的に噛み合ったMAV側の隠し玉に見事に嵌ってしまった。コクピットの中では一体どんなことが起きているのか、想像するだけでも気分が悪くなる。
ただ、わかるのはこの状況を相手が見逃すはずもなし。現に、対艦用のミサイルが彼の元へと放たれている。
万事休す。打つ手なしと思われる絶望的な状況だ。
「困った人。心配なんかしてないくせに」
「貴女もでしょう?」
しかしそれを見守る二人の感情は共通していた。
偶然なのか狙われたのかはさておき、敵の術中に嵌ってしまったイセリアの迂闊さに対する呆れ。
この程度で彼を追い詰めたつもりでいる相手の想像力の乏しさに対する呆れ。
視界が塞がれたところで、だから何だというのだ。
気絶しているとしても、だから何だと言うのだ。
オーナーは、彼女がよく知るもう一人のニュータイプが口にしていた言葉を引用するように唱えた。
「心配ないわ。彼──────後ろに目がついているもの」
◆◆◆◆◆
結果だけ語ると、パラス・アテネの放った大型ミサイルは花を咲かせることはなかった。
「──────は?」
その瞬間を、二人は唖然と見ていた。
狙いが悪かったわけではない。
ミサイルが不良品であったわけでもない。
ただ、敵
たったそれだけで全てのミサイルは無力化された。
展開された両腕と──────閉じられた両翼の側面に展開されたビームサーベル、計四本。翼にサーベルが仕込まれていたことに今更驚くこともない。
だが、これはおかしいだろう。
サーベルの熱で誘爆してもおかしくないはずなのに。あの化物は、あの状況で
「三味線弾いていやがったのか、クソったれェ!」
ダーリンは咆哮する。
茶番に付き合わされていたことに激怒し、離れた距離から唯一残された武装である炸裂弾を構える。
それが宇宙に放たれることなく、一瞬で距離を縮めたゾゴックの腕が、無残にもその身を穿いた。
「ぐふっ……」
「ダーリン!」
「っせぇ!」
ボリノーク・サマーンの片腕が、ゾゴックに組み付く。身動ぎをされても振りほどかれないように、残った足を胴体へと絡みつかせた。
もう助からないと悟った彼女はもう──────己の命の使い道を決めていた。
「ぼけっとすんな! さっさとやれ!」
この機体を一緒に地獄へ連れて行く。
機体の馬力でいえばどちらも拮抗している。
だが、向こうは万全な一方で、こちらは爆散寸前。
長くは保てない、あと数秒も経たずに無駄に終わるのは明らかだった。
だからこそ、トドメは誰よりも信頼している相棒に委ねるしかない。
「愛しているわ! ダーリン!」
意図は正確に相棒へと近づいていた。
パラス・アテネは折れたビーム砲を捨て、決死の思いでサーベルを振りぬいた。
相棒の死を決して無駄にしないために、この一撃で必ず敵の息の根を止めなければならない。
この距離なら回避も防御も叶わない。
やれるものなら、全身に嫌というほど仕込まれたサーベルでも展開してみせろ。
たとえそれに阻まれても、この剣は決して止めさせてたまるか──────!
ここで、ブスは判断を誤った。
あれほど思い知らされたにもかかわらず、近接戦で決着をつけようと、安易な選択肢を選んでしまった。
一度、幸運に救われたが故の油断と言えるだろう。
この戦いを観戦している、とある人物が口にしたように。
──────“黒い天使”は、
「……嘘、でしょ?」
決死のビームサーベルは届くことがなかった。
振り下ろした剣は虚空を切り、そのままゾゴックのサーベルに突き立てられてしまっている。
ブスは己の腹部に刺さったサーベルが、伸びてきた先を辿る。
一般的な
「隠し腕、なんて……もう、いやらしいんだから」
サーベルから引き抜かれたパラス・アテネとボリノーク・サマーンは両機とともに乱雑に放り投げられる。
投げられた先は、先程ゾゴックが切り裂いたミサイルが宙を舞う空間。もう逃れられない死がすぐそこまで近づいてきている。
でも、ブスは思った。
こうして最期に二機……否、二人が接触する機会を作ってくれたのは、果たして何かの偶然であろうか?
「……ねぇ、ダーリン?」
「……んだよ」
残された僅かな時間で開かれた接触回線。
ダーリンの声も、今まで聞いたことのない、穏やかなものだった。
ああ、でも。
こんなにも清々しいのはなぜだろうか。
きっと、同じ気持ちであろうとブスは思う。
思い返しても、碌でもない人生だった。
悪事しか重ねていない、とてもじゃないが誰にも誇れない所業を重ねてきた。
彼らの戦争はいつだって自分のため。
自分が生きるために必要だから
けれど、この瞬間においては。
「わるくなかった──────わね」
「──────ああ、そうだな」
暗闇の宇宙、花火のように広がる爆発。
それは善人だろうと悪党だろうと──────残酷なほどに同じ光を放っていた。
◆◆◆◆◆
「あ゙あ゙ぁ……頭が割れそうだ……」
まるで頭の中から金槌で叩かれたような、形容することすら背筋が凍るほどの痛みが未だに存在を主張する。
ちょうど今がクランバトルの開始時間だ。
目標時間通りの殲滅完了……となったものの、この一連の介入は終始俺のペースというわけには終わらなかった。
キマイラは問題なく動いてくれたが、純粋に相手のパイロットが想定よりも巧かった。
敵の連携は大したものだし、近接戦においても十秒以上も粘られるなんて思わなかった。
極めつけには──────あの閃光弾だ。
「なんで股間から閃光弾が出てくるんだよ……」
こんなの先読みしたところで幻覚だと考えたくもなるだろう。
光るんだぞ? パラス・アテネの股間が?
何を言っているかと思われるだろうが、こっちも何をされたかわからない。まさか本当に光るなんて思わなんだ。
明らかにパイロットの趣味だろうが、この広い宇宙世紀において過去未来ともに最低レベルの下品な兵器と言わざるを得ない。
前世の知識にも、あんなものはなかった。あってたまるか。
え、前世? 腹抱えて笑いまくっているが何か?
お前、それで俺は死にかけたんだが、それでいいのか?
──────そんな無様な死に方しなくてよかったね、だって?
そっか。死んでしまえ。
「っと、まだ一仕事残っているな」
件のクランはこれでバトル参加不可能となり、クランバトルは続行不能になった。
だが、あくまで俺の立ち位置は乱入者だ。
このまま帰れば襲われなかったポメラニアンズが刺客を送り込んだものだと疑われてしまう。
なので、ずっとこちらの状況を伺っていたジークアクスに向けてバーニアを加速させる。
「動かなくていいからな。そのまま適当に盾構えていればすぐ終わる」
乗っているニャアンとも事前に話をしている。
適当に盾を構えていれば、後は盾に何度か攻撃して去っていく手筈になっている。
赤いガンダムのパイロット……シュウジと言ったか。彼にも話を通してもらっているはずだが……赤いガンダムの動きがどこかおかしい。
まあ、あくまで俺が襲いかかるフリをするのはニャアンのジークアクスのみ。気にせずそのままスパーリングを決め込もうとする。
「ん?」
ここでまたひとつ違和感が。
いつの間にか、閉じていたはずのジークアクスのカメラアイが開いていた。
シャリアから聞いた。
あれは、オメガ・サイコミュが起動している証だと。
……つまり、
「──────っと、危なっ」
俺の攻撃は躱され、上空よりヒート・ホークが振るわれる。
だが回避は充分間に合う。
回転して回避……の、ついでに盾のあった部分に蹴りをお見舞いしてやった。
少し近づけばすぐになくなる程度の距離が開く。
……俺は自分の
モーションキャプチャーで写し取ったかのようだ。さすがにこれは俺でも驚きを隠せない。
「ニャアン……お前……」
……いや、なんで????
なんでニャアンがあの動きをするのか全く見当がつかない。
突然どうした、と聞こうにも、この場で接触回線なぞ開けばマッチポンプが露見されてしまう。
結果的に目的は果たせたのだ。
ニャアンの真意は明日のバイトで聞けばいいか、と踵を返す。
奥の手の一つは出してしまったが、まあ結果は上々か。
……ああ、そうだ。
どうせこの映像も木星にいるアイツも見るだろうし──────この際だ。言ってやろう。
「首──────洗って待ってろ、天才」
カメラの視覚一杯に写るように顔を近づけ、そう言い放ってやった。
どうせコクピット内の戯言だ。遠く彼方の木星まで届くわけもなし。
まあなんだ。こちらも覚悟は決めている。
来るなら来い、相手してやる。
しかし、今はそれはそれとして頭がものすごく痛い。ガンガンと今も頭に響く残響がやかましいくらいに。
帰ったら泥のように眠るとしよう。後の事を考えるのはそれからだ。
……この時の俺はまだ幸せだったはずだ。
コロニーに帰ると待っているのは──────あの人からのとびっきりの歓迎が待っていることを知らなかったのだから。
◆◆◆◆◆
「結局、彼の最も恐ろしいところはこれなんですよね」
飲み終えたグラスの縁を指でなぞりながらシャリアは今回の戦いを総括する。
たとえジオン最強のニュータイプと呼ばれる彼でも、あの大型ミサイルへの対処は、全く同じ真似をしろと言われればさすがに難しいと言わざるを得ない。
閃光弾のダメージは間違いなくイセリアに届いていたことは確かだ。その中であのような曲芸めいた真似をやってみせた。
……となると、やはり彼の能力の真髄は、先の思考速度の速さだけに留まらない。むしろ根幹を成すのはもっと別の才能なのだ。
「自分の才能の使い方をすぐに戦いに結び付けられる点は恐ろしいものです──────アムロ君も共通してそうですが」
シャリアは自らが撃墜寸前まで追い詰められた時のことを思い出していた。きっと、シャアが間に入らなければ間違いなく死んでいただろう。
思えば、あの瞬間こそニュータイプが、戦いに利用されるという未来の方向を決めてしまった瞬間であったかもしれない。
物思いに耽っていると、手元に革で包まれた伝票が現れた。
「そろそろお暇してくださらない? 私、彼とお話しないといけないことがあるので」
「ええ、わかりました」
余韻に浸る間もなく、オーナーは淡々と帰り支度を急かした。
いつもならこの後はイセリアとだらだらと昔話の輪が広がるのだが、いかんせん彼女は身持ちが固い。
出会い方が良かったのか、それとも悪かったのか。
もしものことを考えるのは後にして、今は母艦へ帰るのが先だ。
見たいものは見れた。
それに、準備をしないといけないこともできた。
ふと、シャリアはコートを羽織りながら思い出したように口を開く。
「彼には是非ともお手柔らかにお願いしますね。私も色々言いましたが──────彼の性根は自罰的すぎるだけの普通の人間ですから。怒るのはほどほどに。むしろ褒めて自己肯定感を上げて差し上げるとよろしいかと」
「……言われるまでもありません」
「貴女にはおせっかいでしたね。失礼しました」
老婆心ながらの助言は意味がなかった様子だった。
この二人の仲は一言で形容できない関係のようだ。
せいぜい進展を願いながらも、野次馬として成り行きを楽しむことにした。
「私からも一言よろしいかしら?」
「何でしょうか?」
「兄の手綱をちゃんと握ってあげてくださいね。目を離したまま放っておくと、何をしでかすかわかりませんから。
……私に鬼子なんて呼ばせないでください。たった一人の、血の繋がった家族なんですから」
「────────────ええ、勿論」
シャリアは振り返らずに返事をする。
自分でもどんな顔をしているのかわからないような表情を見せるわけにはいかなかったから。
外に出れば、しとしとと雨が降りしきる。
天気の予定は見ていたのに、気持ちが急かされるあまり傘を持ってくるのを忘れてしまった。
しかし、シャリアは傘を持ってこなくて良かったと今ならば思える。
この高揚と、なんとも形容しがたい感情を落ち着かせるのに。この降りしきる雨の冷たさがちょうど良かった。
「流石、貴方の妹君ですね。
かき上げた前髪は湿気と水分により昔のように片目へめがけて落ちていく。
懐かしい視界の先。幻視する赤い影の存在は、果たして今どこにあるのだろうか──────?
〈人物紹介〉
■イセリア(今世)
光過敏症という強烈なデバフを抱えているものの、その強さは折り紙つき。突然変異的な“反射と思考の融合”じみた能力と、歴戦の戦士となったホワイトベースクルーたちと比べても抜きん出ており、
自由なのに不自由な宇宙空間において、誰よりも自由に動けることができる存在とされている。その華麗な動きは過去に何人もの脳を焼いているのだが、自己肯定感がマイナスを更に下振れているため全くの無自覚である。
え、こんなチートじみた力を持っている癖に一年戦争じゃ守りたいもの何も守れなかったんですか?
しかも今回、股間からの光で危うく死にかけましたよね?
帰った矢先、仁王立ちしていたオーナーにこっぴどく叱られた模様。もう少し……手心というか……。
■イセリア(前世)
人wのw股w間wのw光wwwww
■ニャアン
わぁ……マスターすごい綺麗な動きだなぁ。
私もあんなふうに動けたらいいのになぁ。
確かこうやって、こう……あっ、できた!
…………えっ、嘘。マスターに攻撃しちゃっ、た?
うわやっちゃったやっちゃったやっちゃった!
いつも調子に乗るとこうだ! マスターは私のために頑張ってくれたのに何てことしてるの! ばか! あほ! まぬけ!
あっ、聞いてよマチュ! え、マチュ……なんでそんなに怒ってるの? マチュ?
■アマテ・ユズリハ(マチュ)
え……誰がジークアクス乗ってるの?
え…………何あの
は? 私のジークアクスが同じ動きしたんだけど?
誰だ! 誰なんだよ! そこは私の場所なのに! 私があんな風になりたいのに!
ニャアン………………嘘でしょ…………?
■シュウジ・イトウ
高熱で途中から寝ていた、と、ガンダムが言っている。
■ソドンクルーの皆様
えー、一年戦争で“黒い天使”に遭遇もしくは目撃したことのある皆様は、アイディアロールお願いします。
成功した方は、かのゾゴックが正真正銘の本人であることに気づいてしまいます。
さあ、SAN値チェックをお願いします。
■シャリア・ブル
行きつけの店の前で体育座りをする“まちぼうけ”のおじさん。“白い悪魔”と“黒い天使”のことになると通常の三倍近く早口になる。
いつも通り平然とした表情をしているものの、“彼”の前線復帰と“彼女”との思わぬ邂逅にここ数年ぶりに情緒をぐちゃぐちゃにされる感覚を無理矢理雨に打たれて心を鎮めている。
……しゃあ! シムス中尉! キケロガ一丁お願いします!
■エグザべ・オリベ
アイディアロール対象外なのでSAN値は下がらず。
しかし日中付き添ってくれた彼が“本物”だと思い知らされ、「僕は戦場でこの人に会ったら、殺せるのか……?」と打ちひしがれている。
なお当の本人からの好感度は高めなので戦場で出会っても説得フェーズから入ってくれるので安心してほしい。
■オーナー
とうとうサイド6入りをした彼女。
あのシャリア・ブルと一歩も引けを取らずに会話する女傑……一体何者なんだ……?
次回「再会、イセリアとオーナー」
君は──────生き延びることができるか?
■????
クラバの試合とは関係ないのにカメラを回させた張本人。
終始、ゾゴックの意味不明な設計思想に宇宙猫状態だったものの、最後の隠し腕に大興奮。さらに最後のドアップで己の存在に気づいていることを知り思わずアズラエル笑いをしてしまう。
しゃあ! こうしちゃいられねぇ! ジュピトリス! サイド6に向けて全速前進DA!
え、到着まで二年くらい? ならなんで
ということで相変わらず出禁をくらっている様子。もう来ないからねー。
ちなみに勝手に自分の自信作の股間を光らせた者に対しては「血祭りにあげてやる……」と憤怒の形相を浮かべていた模様。もう死んでいるけど。
〈機体・武装紹介〉
■ビーム・サーベル
搭乗者本人の戦闘スタイル及び持病により、全て同時に展開されることはないが、全て同時に展開すれば〈AGE-1 タイタス〉もビックリな全身ピンクに輝きを放つこととなる。偉大な相手というのは輝いて見えるものだヨ。
「なあ、さすがにこんなにサーベルはいらなくないか? 支援機とドッキングする前提とはいえ、エネルギーの消費は馬鹿にならん。せめて各部位に一本くらいに……」
「人間には215本も骨があんのよ、たかが数十本くらいのサーベルぐらい何よ!」
「……スゥーッ」
テム・レイはキレた。
■隠し腕
キマイラ、ひいてはゾゴックの奥の手のひとつ。
脇腹および腹筋より出る謎の黒い腕。その腕は通常の
ただ、隠し腕にしては本当に
「君ィ! これだけ武装を抱えながらこんな複雑な内部ギミックまで求めるか! 大人しく仕舞わせておけこんなの!」
「でもそこにあるのに使わないなんて勿体なくないですか? 別に隠し腕の展開中は胸部のサーベルは使えなくていいですから。あ、でも脇腹から腹筋まで自由に稼働できれば良いですね! そうしましょう!」
「………………スゥーッ」
テム・レイはキレた。
■パラス・アテネ
木星のあの人が開発したPMXシリーズの一機。
あくまで試作機という立ち位置のため、カラーリングや駆動部、推進力と言ったか細部はZガンダム本編よりも劣っているものの、機動力含め、ゲルググ(ジム)よりも性能は上である。とは言え、元々後述のボリノーク・サマーンももう一機の連携を前提とした設計思想であり、かつ限られた
ゾゴックに追い詰められたものの、癖の強い搭乗者の意向によって搭載された閃光弾によって、連邦の英雄を窮地に追い込むことに。やはり木星脅威の技術は侮れんな……。
■ボリノーク・サマーン
木星のあの人が開発したPMXシリーズの一機。
大抵の通信機器が駄目になるミノフスキー粒子下における偵察や索敵を主に置かれた機体。大まかな内容は先述のバラス・アテネと同じような事情を抱えているものの、索敵から入るクランバトルにおいてはかなりの優位性を得られるに違いない。
〈人物紹介〉※オリキャラ注意
■ダーリン
代々連邦士官として軍に入隊している家系に生まれたものの、ひとりっ子として生まれ、当時サイド3であったオンとの関係も緊張していたことにより仕方なく軍に入隊させられた女。
幼い頃から“指導”を受け、碌な人間関係も形成されないまま幼少期及び思春期を過ごし、入隊してからも他の同期の士官との人生経験のキャップに苦しめられ、十数年かけて心を殺された過去がある。
その鬱憤が初陣の時に弾けてしまい一気に問題児へと変貌。
数々の隊をたらい回しにされたものの、とある隊の隊長から理解を示され、彼から戦い方を指導された結果、他のエースパイロットと遜色のない戦果を挙げるまで成長を遂げ、一年戦争はその隊にいたまま終戦を迎える。
終戦後は軍を退役し、サイド6で敵軍であったブスと出会い、MAVを組む。
ちなみに、クランバトルに登録されたエントリーネームはMAVであるブスにより命名されたもの。不服がある場合はすぐに不満をぶちまける性格の彼女であるが、このエントリーネームに関する所管については当の本人にも口を閉ざしている。
■ブス
元はアースノイドであったが、戦争孤児になった矢先にジオンに連れ去られた挙句に実験体として“強化”され、一瞬で心を殺されてしまった哀れな男。
その凄惨な非人道的な実験は、彼の記憶や人格まで変えてしまい、結果的にオカマへと変貌を遂げてしまった。なんで?
そのまま一年戦争に身を放り投げられたものの運良く生き延びた彼は終戦のどさくさに紛れてジオンを出奔。サイド6で偶然出会ったダーリンとMAVを組む。
木星の
なお、
ちなみに、クランバトルに登録されたエントリーネームはMAVであるダーリンにより命名されたもの。このエントリーネームは本人としては何よりも大事にしている。
ジークアクス本編のように転々とする視点を文字で書くのは難しいですね。
しかも本編は濃いキャラが1話で大きな爪痕を残すので、1話限りのオリキャラを出すにしても苦労します。
かと言って愛着が湧いて退場させられなければそれはそれで本末転倒ですし。……結果、生まれたのが人殺しをしないと生きていけない“男のように生きることしかなかった女性”と“オカマ”でした。正気か?
まあ今回は黒い三連星(ニ連星)の代打として、やむを得ない処置でしたので、今後はオリキャラが出ることはないかと。
ほら、シロウズ君も見てないでこっち来て。
君のためにケーキを作ったんだ。僕はいらないから気にせず食べてくれ。