剋盾神聖譚《シールド・オラトリア》   作:ソレルス

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 今はただ皆様に謝辞を………投稿2週間空いちゃった…


 もし〜お気に入り登録とか高評価とか感想とかしてくれたら嬉しいな〜毎週投稿も頑張れちゃうな〜……なんて(チラッ)

 読んでくれてる方がいらっしゃるとわかるのが嬉しいので!ぜひお願いします!!




『正義』見★参

 

 

 「えぇ、赤い髪の女の子なのだけれど………まだ町には着いてはいないかしら?」

 

 「先ほど、門兵に尋ねましたが………あなた方以外は町に入っていないようです。他の門に訪れてるやもしれませんが………」

 

 

 

 『英雄』を目指し続ける少年と『正義』を探し続ける赤髪の少女の邂逅から、約2時間の時がたったころ。

 

 カルモネアの北東の門には、大勢の人であふれかえっていた。モンスターの討伐に向かった騎士団の八割ほどの団員と、運が悪くも良くもあった二十名ほどの商人と護衛の隊商。

 自分たちの身に降りかかる脅威(モンスター)の観測されていた大部分が討伐され、誰もかれもが緊張を解き安堵の表情を浮かべていた。

 

 そんな集団のから少し離れた木陰では()()と、一柱の()()が話し込んでいた。

 

 誰であっても一目見ればわかる。

 彼女が善神にして、慈悲、あるいは慈愛に満ちた神物(じんぶつ)であることを。

 それほどまでに彼女の纏う空気は優しく、正しく、清らかだった。

 胡桃(くるみ)色の長髪は背に流れ、双眸(そうぼう)は星海のごとき深い藍色を帯びている。

 女性らしい、なだらかな線を描きながら、けれどしなやかな肢体を包んでいるのは、(けが)れを知らない純白の衣。その物腰を含めて貞淑な貴女を彷彿させるが、深い谷間を作る双丘だけは悩ましいと言ってよかった。

 『女神』という言葉は彼女のためにある。

 そう宣言していいほど、彼女は清廉で、潔白で、美しかった。

 女神アストレア。

 アリーゼの主神であり、『正義』を司る超越存在(デウスデア)である。

 

 しかし美しい女神と、そして隊長の表情は周りの人々と比べてどこか暗いものを含んでいる。

 隊長は、彼の善性から幼子への心配で。

 女神は、己の初めての眷属の遅い帰りに彼女の眉をひそめ目には憂いが満ちている。

 

 

 「森で迷ってしまったのかしら……………それともまだモンスターを?」

 

 「『ヘルハウンド』の本隊はわれわれが。そして、散らばった小さい群れもあの二人が倒しきっていはいると思うのですが………おや?この声は……」

 

 「あら………」

 

 

 いくら神の恩恵(ファルナ)を刻まれているとはいえ、まだ9歳の子供がモンスターがいる可能性も残っている森に一人。安否を心配するのはごくごく自然な行為である。

 アストレアは目の前の騎士に捜索依頼(クエスト)を出そうと、隊長は己が捜索をすることを女神に申し上げようと互いの胸の内で思い描いたとき。

 一人と一柱の心境など知るすべがないと言わんばかりに、明るく空気の読めていない少女の声が。少年とおっさんの声も加えて森の中から聞こえてきた。

 

 

 「さっきから思ってたけど、バルメテウスは長いわね………ねぇ、バルおじ様!アルに任せてあなたって戦ってはいないけれど、すごく強いのがわかるわ!Lvいくつかしら?」

  

 「…………………スゥ~……おじ様………おじ様かぁ〜〜〜」 

 

 「?どうしたの、おじさん?」

 

 「アル………やっぱ、おじさんだよなぁ〜俺………」

 

 「「?」」

 

 

  声に続いて、少年のアル、おっさんのバルメテウス、そしてアストレアの探し人の少女のアリーゼが森の陰から、隊商が通ってきた土道へと姿を現した。

 バルメテウスは心へのダメージはともかくピンピンしてい、アルとアリーゼも服は泥で汚れ顔には疲れも含んでいるが、特に目立った外傷もなく無事に町へと到着できていた。

 そんな己の眷属が五体満足で帰ってきたことを見て、アストレアは安堵とともに顔をほころばせた。

 

 

 「あっ、アストレア様!ただいまこのアリーゼ・ローヴェル、無事帰りました!!」

 

 「えぇ、傷もなく帰ってきて私もうれしいわ。………ところで、アリーゼ?」

 

 「はいっ!準備もせず一人で突っ込んでいってしまったのと、アストレア様をお一人にしてしまったことは申しわけありません!」

 

 「私の方は、隊商に他の護衛もいたから良いのだけれど………あなたへの心配もわかってくれているのなら、私からはもう何もありません」

 

 「アストレア様に心配されるのはとてもうれしいですが!………それは、本当にその~~………ごめんなさい………」

 

 「フフッ、別にいいのよ?」

 

 

 その敬愛する『正義』の許しに、また嬉しくも申し訳なさも膨れ上がるがとりあえず落ち着き、アリーゼはいつものはじけた笑みを浮かべる。

 だから、彼女はこの優しく気高い女神の最初の眷属になったのだ。

 

 

 「あっ、バルおじ様にアル!紹介するわね、この御方が………って、どうしたのアル?」

 

 「アリーゼ………………この人、なんなんだ?」

 

 

 

 自身の感激もひとまず置いておきモンスターの戦いを共にした二人に女神を紹介せんと意気込む。アリーゼが振り返るが、バルメテウスはただ目を細めているのに対し、アルからは殺気が膨れ上がっていく。

 アルの突然の変わりようにアリーゼは困惑するが、そんなこと今の少年には届かない。

 

 この下界に降りてきた神は、人が出せない『神威(しんい)』をまとっている。

 子供達が神を見分けられるのは、その神威(しんい)のおかげなのだ。

 しかし知識としてか知らない異世界生まれの少年(アル)は、どこかで感じたことはあるが得体のしれないその覇気に体の筋肉が熱くなり始め、鋼蜘蛛が入っているポーチに手を伸ばしてしまう。

 

 

 

 「あら………アルといったかしら?神を見るのは初めて?」

 

 「()………あなたが?」

 

 

 

 顔が険しくなっているが、心のうちで不安がっているアル。

 そんな下界の子供に、アストレアは優しく微笑みを返す。

 あなたを傷つけたりはしないと、目で語りながら。

 

 その女神が、その自分を思う神の姿が、どこか()()()と重なってアルは口を開いたまま、止まってしまう。

 髪も目の色も違うのに、彼女の慈悲をもうアルの魂は知っている。

 

 

 

 「えぇ、私は女神アストレア、アリーゼの主神よ。アリーゼと仲良くしてくれてありがとうね?アル」

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 「………アル?」

 

 「………………」

 

 「お~~い、アル!」

 

 「ん?どうしたの…………ってアリーゼとアストレア様は?」

 

 「町に入るときに、『町へ訪れた目的など、確認したいことがある(キリッ)』………って隊長が連れてってただろ。」

 

 

 

 それが、カルモネアに戻ってから呆けていたアルの開口一番に放ったセリフであった。

 南東の門の広場には、無事に帰ってきた騎士団を迎える者や町に訪れたばかりの商人などで賑わっている。

 バルメテウスは隊長を茶化しながら、横の少年の問いにこたえる。

 しかし、アルは心ここにあらず……というより美しい女神(アストレア)神威(しんい)を受けてから浮かび上がってくる問に、考え込んでいる。

 

 思考の海を泳ぐアルを訝しく思ったバルメテウスが声を掛けるも、アルは再び海に沈んでいく。

 

 

 (あの変な感じが神なら、あの人……いや、あの(ひと)か)

 

 

 元のアルが、前世の自分が前世の世界の神に生まれ変わらせてくれた。

 

 冷静に思考をまわすことができる今。改めてアルは自分がこの世界に来たきっかけを思い出す。

 人を転生させることができます……なんて存在、人より上位の者に決まっている。

 

 人を超えたものが、なぜ転生を?なぜ前の妹…あいつを守れなかった弱い自分を?これは神の、いわゆる試練なのか?

 

 考えないようにしていた疑問がとりとめなく浮かび、アルを悩みで一杯にしていくが、その原因(あの神)がいないこの場では答えが出るわけもない。ただただアルの活力(エネルギー)を無駄に消費するだけに終わる。

 

 

 (まぁ、今考えても意味のないことだよな………)

 

 

 無駄な疑問を無理やり追い出そうと、小さい頭を横に振る。

 眉をひそめたり、諦めた表情で息を吐いたり、コロコロ変わるアルに、柄にもなくバルメテウスは本気で心配してしまう。

 

 

 「ほんとにど〜したアル。頭打ったか?…………アリーゼ嬢ちゃんに惚れたか?」

 

 「いや…………初めて神だって認識して会ったから、なんか緊張して……」

 

 「()()()()?…………まぁ、いいか。ほら、それよりもお前がお待ちの一人と一柱がやって来てるぞ」

 

 

 アルへの心配もほどほどに、無事に町へと入れたらしいアリーゼとアストレアが歩きながら談笑しているのを見つけ教える。

 

 

 「それでですね!アルがズバババーーってモンスターを………あ!待っててくれたの?アル」

 

 「いや………待ってたわけじゃないんだけ───」

 

 「だいじょーぶだいじょーぶ!この美少女の私をドキドキしながら待つのも、なにも恥ずかしいことじゃないわ!照れ隠しなんてする必要ないのよ!!」

 

 「………………美少女以外、全部間違ってんだけどなぁ………」

 

 

 「神アストレアよぉ、お宅んとこの嬢ちゃん。もうちっと落ち着きを持った方がいいんじゃねぇの………」

 「う~~~ん………………これがアリーゼなのだから、あまりとやかくは言いたくないのよ」

 

 

 聴取が終わったアリーゼが、そのLv.1の脚力でアストレアをおいてヒュン……と一瞬でアルの目の前に立ちペラペラと喋り始める。

 カルラとレーム以上に猛()撃を仕掛けにかかるアリーゼにアルは苦笑いを浮かべながら一歩、また一歩と後ずさる。しかしアリーゼも一歩、また一歩と近づき二人はぐるぐるといたちごっこを繰り広げる。

 

 

 アルは、前世も今世も身近に関わる人(神)が少ないだけで内向的とも社交的とも言えない性格である。

 

 ………妹が関与することは、その限りではないが……。

 

 だがしかしたかし!!アリーゼ·ローヴェル(人の話を聞かないランキング上位の少女)の毒牙にかかったアルは、自分でも気づかぬうちに『|異性の名前呼び《生真面目妖精が顔を真っ赤にするハレンチな行為》』の偉業を成し遂げていた!!!

 

 満面の笑みで寄ってくるアリーゼと対照に、引きつった笑みを顔に貼り付けながらもどこか年相応のあどけなさを、アリーゼと共に見せるアル。そんな二人を、バルメテウスとアストレアは苦笑を交えながら見守っている。

 

 穏やかなな空気が流れる四人だが、おもむろにアストレアがバルメテウスへと尋ねる。

  

 

 

 「ねぇ、バルメテウス……いえ、元【ゼウス·ファミリア】、Lv.7【地ノ王(モラクス)】」

 

 「…………そんなに俺の名は、世界に轟いてたのか?」

 

 

 唐突に自分の素性を言われたバルメテウスは隣に立つ女神の横顔をチラリと見、目を細めていく。

 ある種の警戒とともに、元『英雄』として己の名声の広がりへの期待を膨らませ、ワクワクしてしまう。

 

 ……が、

 

 

 「残念だけれど………私が隊長に教えてもらったのよ」

 

 「あ、ソウデスカ…………」

 

 

 込み上げる笑みがバレないように押さえつけていた苦労は何だったのか。

 慈悲深い女神のアストレアに慈悲もなくニッコリとした笑顔のままあっさりと告げられ、バルメテウスは口も言葉もカタコトになってしまう。

 

 やはり、この町に来てから扱いがひどくなってる気がする………

 

 そんな自分の悲しい現状を隅に追いやり、中年のおっさんが咳払いで露骨に話題を変える。

 

 

 

 「ゲフンゲフン!!……と、ともかく用件は何だ?」

 

 「それは………あなた(Lv.7)に、アリーゼを鍛えてほしいの」

 

 「んぁ?」

 

  

 通常、後輩が教えを乞う先達は同じ家族(ファミリア)が多い。理由は単純明白、神の恩恵(ファルナ)に刻まれたスキルや、剣や槍を扱う技を見抜かれる。すなわち、己の強さのカラクリが知れ渡り弱みを晒すということ。

 

 自分の眷属が不利になることを堂々と頼む女神に、元冒険者だったバルメテウスは眉間にしわを寄せ怪訝な目を向ける。

 

 しかし、そんな欠点(デメリット)があろうと、今のアリーゼには、Lv.7から受ける特訓は頼み込む価値のある利点(メリット)とだと女神は判断したのだ。

 

 

 「他の派閥に頼むか?普通……」

 

 「それは、あなたがアルを指導していると聞いたから……他派閥だろうとLv.7に教鞭してもらえる機会を逃してはもったいないないと、そう思ったからよ。女神(わたし)だと、冒険者として必要なことは教えられないもの」

 

 それにね?と、眷属への愛から溢れ出る笑みを持って言葉を紡ぐ。

 

 「何より、今のアリーゼにはともに進み、成長する仲間が……アルが必要だと思ったの」

 

  

 あの二人を見たらね?と同意を求める『正義』の女神。

 笑いかける彼女にバルメテウスは顔を向けない。石畳の広場に視線を落としたままである。

 

 

 「………………」

 

 「もちろん、できる限りの報酬は出すのだけれど……どうかしら?」

 

 

 アストレアが対価を話しても、バルメテウスの顔は曇ったまま。

 

 彼は、元……あぁ、()【ゼウス·ファミリア】だ。

 かの『英雄達』の派閥は、もう物語を残したのみで影も形も存在しない。情けなくも、アルのおかげで自分に踏ん切りはついたつもりだ。

 だが、本来なら裏切りにも含まれる事柄に、是と返すのに躊躇する。

 

 

 バルメテウスの瞳に死んでいった家族(ファミリア)の仲間たちが映る。蹴落とし、罵り、夕飯を盗まれ、女に黒歴史を伝えられ、共に進んだ『英雄達』が映っている。

 

 ────久しぶりに、神と家族(ファミリア)というものを見たからだろうか?理由(わけ)がわからない。

 

 こんなものは妄想だ。感傷だ。幻想だ。

 敗北者(バルメテウス)に都合の良い幻影だ。

 

 バルメテウスの仲間たちは、失望した目を向けるでもなく、ニマニマと小馬鹿にする笑みを向けてくる。

 

 ……何を笑っている?俺の女々しさにか?

 心で問いかけても、幻なんてものが答えるはずもない。

 彼らは、奴らがどうするか容易に思い浮かべれる仲間だったバルメテウスの思い出が作り出したものなのだから。

 実際にどうするか、()()に予測できるだけ。

 

 その思い出の皆が、指を差し次々とバルメテウスの瞳から消えていく。

 その先に、彼らの希望があるかのように。もう、思い残すことはないと言わんばかりに。

 

 

 そして、その指先には………二人の『英雄の卵』がいた。

 

 

 

 

 

 「お、おじさん!俺からもお願い!」

 

 

 アルとアリーゼがいつの間にか、元『英雄』の前に、彼の腰を抜かすほどの背の小さい二人が並んで立っていた。

 

 

 「……アル、どうしてだ?」

 

 「それは………アリーゼが、その………」

 

 

 バルメテウスが未来を見た少年は、己の目で、身振りで、自分の熱を伝えてくる。

 見つけたんだと、隣に立つ少女も自分が目指す誰かを守る『英雄』のようだと。

 

 バルメテウスが出会ったばかりの少女は、己の声で、手振りで、自分の理想を伝えてくる。

 見惚れたんだと、隣に立つ少年が自分が目指す折り曲げられぬ『正義』のようだと。。

 

 

 

 「っ!誰かを守る、『英雄』みたいだったから!………だから俺も、アリーゼと一緒に……」

 

 「バルおじ様!私も、おじ様みたいに………アルみたいに強くなりたいの!だから、お願いします!!」

 

 

 自分達ができる精一杯の懇願のをし、二人揃って頭をバルメテウスに向かって下げる。

 『英雄の卵』達に、元『英雄』は思い出す。

 何のために自分はここで、まだ生きているままなのかを。

 

 

 「アル、それに嬢ちゃん。顔を上げな」

 

 

 静寂の風が少し流れた後、バルメテウスがおもむろに口を開く。

 頭を下げていた二人は、おずおずと彼の顔をうかがう。

 アルとアリーゼがその時に見た『英雄』は、ただ彼らを見ていなかった。

 『今』ではなく『未来』を見ている。

 

 

 

 「これだけは、アルにも改めて聞いておく。…………どうして強くなりたい?」

 見つけたんだと、彼女も自分が目指す誰かを守る『英雄』のようだと。

 

 

 

 「今度こそ!あいつを守れる『英雄』になるために!」

 

 「私が持つ、『正義』のために!」

 

 

 

 思った通りの、アルの、そしてアリーゼの誓いが告げられ、笑いが込み上げてくる。しかしその笑みは、決して侮蔑や嘲笑なんてものではない。

 

 そうだ、そうなのだ。アルが『英雄』になるまで待つのだった。

 何を今更悩む必要が、気後れする事柄があろうか。否、あるはずもない。

 アルに、また立てると言われた………ならば、尻込みなんて情けないこと、する必要があるはずもない。

 

 己が待つ、『英雄の卵』が一人増える……喜ばしいことだ。

 元『英雄』はまた一つ、アルの隣に立つ輝きに瞳を閉じて低くのどを鳴らす。そんな彼は歯をむき出し、ニンマリと笑みを浮かべている。

 

 今が心底楽しそうに。

 

 

 

 「…………わかった。アルにアリーゼ、二人とも俺が強くしてやる。……あぁでも神アストレア、報酬は別にいらん。アルも俺がやりたいからやってるだけだしな?」

 

 

 

 バルメテウスの答えに、アリーゼとアルは顔を見合わせて互いに花咲く笑顔を見合わせる。

 

 

 「ホントに!?ありがと、バルおじ様!それとあらためまして、これからよろしくね、アル!」

 

 「えっ……あぁ、うん。あらためまして、よろしくお願いします。………会ったばかりなのに、何であらたまってんだ??」

 

 「フフッ、良かったわね。アリーゼ」

 

 

 

 

 

 

 「んで、【アストレア·ファミリア】はどのくらいこの町にいるんだ?」

 

 「そうね…………3ヶ月ほど、アリーゼを見てくれたら十分だと思うから、それくらいかしらね」

 

 

 どこか熱も冷め、空の太陽も西に傾いてきた頃。

 三人と一柱は、とりあえず話も一段落し、彼ら彼女らの予定を話しはじめた。

 

 

 「じゃぁ、まずは宿探しですね!商人さんたちにあずけたままの荷物も置いておかないとですし。ねぇアル〜、どこかきれいで安いところ知らな〜い?」

 

 「安い?……金ないのか?」

 

 「えぇ!商人さんに会う前はアストレア様と二人きりで、その辺に生えてたカラフルなキノコのスープを毎日飲んでたわ!!」

 

 「………………あぁ、そっか…………うん、そっか……」

 

 

 自分の問いに、迷わず恥じないもなく堂々と黒歴史と呼べるものを語るアリーゼにアルは「アリーゼは…『英雄』みたい!!」……感動はどこへやら、若干ひいてしまう。

 流石に、無視はできない……!!

 しかしそうは思うが、アルはこの町に来たときも運よくすぐに定住できる家を見つけたので宿など泊まったことがない。

 なので、どの宿がおすすめどころか、どんな宿があるかも知らない彼にはハッキリと言えず悩んでしまう。

 

 アルは、自分では無理だと宿暮らしのバルメテウスのほうをチラリと、どこかいいところ知ってないかな〜、と見る。

 

 自分を見上げてくるアルの意図に気づいたバルメテウスだが、迷いがあるのか少し悩んだ顔をしながら頰をかく。

 

 

 「あ〜〜〜アル、お前んちにはどうなんだ?マールさんも、食料はたくさんもらってる……とかなんとか言ってたろ?」

 

 「へ?……あぁ、そうだけど………」

 

 「そんなら、孤児院で手伝ってもらうついでに、泊めてやったらどうだ?」

 

 

 アルの期待とは違うが、コレならどうかと目の前の子供たちと女神に案を告げる。

 宿を紹介してくれることを望んでいたのだが、今のアル家に滞在させるのはどうかと、予想外の提案にアルはポカンと呆けて気の抜けた返事を返してしまう。

 

 その提案に、女神であっても下界の絶対的社会ルール(お金は大事!)には逆らえないのか困った笑みを浮かべながら、お願いをする。

 

 

 「情けない話なのだけれど………アリーゼの言った通り、お金も気にせず使えるほどの貯蓄はないの……もし、迷惑でなければお願いできるかしら?」

 

 「う〜〜〜〜〜〜ん…………カルラとレームは喜びそうだけど………」

 

 「なら決まりね!ねぇアル!荷物取りに行って、今から一緒にそのアルの家に行きましょ!!」

 

 「えっ!ちょっ、まだわかんない………って力つよおおおおおおおおおお!!???」

 

 

 「…喜びそう…」しか聞こえていないのか、積極的(ポジティブ)の塊であるアリーゼはアルの言葉を濁したのも無視したまま、再び彼女の主神(アストレア)を置き去りにアルの手を引いて走っていってしまう。

 

 いくら鍛えていると言っても同年代の神の恩恵(ファルナ)を持っているアリーゼに力でかなうはずもなく、片手をつかまれたまま彼女にLv.1の速度でばびゅ〜〜ん……と運ばれていく。

 

 

 女の子が笑顔のまま、急展開に目を回したままの男の子を、子供とは思えない速度で引きずっていくショッキングな光景。

 「最早恐怖(ホラー)と言って差し支えないものだった……」、目撃した住民に後々そう語られることになるのだった…………

 

 

 

 「あいつ、また自分とこの主神を置いていきやがった…………」

 

 「あらあら………なら、道案内と護衛(エスコート)はあなたにお願いするわね?バルメテウス」

 

 「……………………………あぁ」

 

 「あら?変態紳士(ゼウス·ファミリア)のあなたを、女神(わたし)では満足させられないかしら」

 

 「いや、あんたは確かに綺麗だか……女は意味不明★発狂女ども(ヘラ·ファミリア)でコリゴリなんだよ………」

 

 

 本人たちに聞かれたらおっかなびっくりな……しかし否定のできない言葉で会話する女神とおっさん。アストレアは神らしく微笑みながら、バルメテウスは色々あった大人らしくげんなりしながら、二人の子供のあとを歩いて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 「それで………なんであんな提案をしたの?」

 

 「……………コレだから、何でもかんでも見通しやがる神は苦手なんだよ………!!」

 

 「フフッ…それで、どうしてかしら?」

 

 「ハァ〜〜〜………アルには、一緒に強くなるやつが()()()必要だと思っただけだ。あんたと同じだよ……」

 

 「それは……………アルを愛しているのね?」

 

 「………………うるせぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 




The.説明できなかった補足

•前回の話で バルメテウス「糸をしまえ!」←これの理由


 アルが鋼蜘蛛で仕掛けたサイコロステーキ先輩量産装置に、アリーゼがアルの後ろから気づかずに突っ込んできたので、恩恵あるとはいえあの鋼蜘蛛の鋭さだと危ねえな……と思いとっさにしまえと指示しました。

 もしアリーゼがモンスターを仕留められなくても、バルメテウスの待機させてる魔法で守れると判断したのもあります。(バルメテウスのステータスはいつか後書きで書くつもりはあります)


 

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