異世界シンジ   作:憲彦

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3話

「動画の再生数が下がってるな~。やっぱり、新作の都市ガス 対 氷魔法がよくなかったみたいだね」

「天然資源の無駄とか、えらい言われようだったわね」

「今日から無駄遣いは禁止だね。オークションもしばらくは止めないと」

 

 送料無料で物品のやり取りを覚えてからと言うもの、今や生活に必要な家電のほとんどはネットオークションで購入した。型落ちと言っても、1世代前程度であれば現役で充分に活躍できる上、パソコンやスマホの周辺機器に至っては3世代前までならギリ使える。そうやって、2人は生活の遣り繰りをしていた。

 

「僕は取り敢えず、これで最後だね」

「なにそれ?」

「セガ○ターンソフト読者レースの最終結果が載ってる本だよ。ゲーム実況とか取り入れようと思って、取り敢えず買ってみたんだ」

(何故業界から撤退した会社のを?)

 

 ○天堂とかSO○Yのゲーム機で実況しろよ。と思ったが、口には出さなかった。早速読んでいるシンジだったが、そもそもこっちにいたときゲームなんてほとんどやっていなかった。ミサトの介護にアスカのサポート、使徒との戦闘にエヴァとのシンクロ実験。ゲームで遊ぶ余裕が全く無かった。過去に遊べなかった分を取り返すつもりでやっているのだろうが、正直、見ていてどこか痛々しい姿だ。

 

「あぁ。最後はパソコンの美少女ゲームの移植作が1位なんだ。知ってるソフトは……特に無いや」

「その結果は意外なの?」

「評価とか見る限り全うだと思うよ?と言っても、上位ほとんど恋愛の移植とかだね」

「でも2位はオリジナルソフト。RPGの」

「RPGか……動画のネタにはしたくないかな」

「そうなの?」

「長くなりそうだし、こっちにいた時ちょっとだけ触ったけど、次の日起動したら前回何してたのか忘れて、どこ行っていいか分からなくなるんだ」

「そうなんだ……」

 

 コーヒーを飲みながらそう言うシンジに、綾波はよくエヴァの操縦覚えたなと言いたくなった。

 

「あ、そう言えば異世界でもRPGみたいな出来事があったよ」

「え?」

「イキュラス・エルラン」

 

 この前のように記憶を映し出すが、そこに映っていたのは畑仕事に使われる道具を構えシンジに襲い掛かる村人たちの姿だった。

 

『クソ!サキュバスめ!!貴様のような腐れ淫魔には負けんぞ!!』

 

「え?なにこれ?」

「あぁ。これは村に着いたばっかりの時だね。早送り早送り」

 

 数分分早送りすると、ボロボロになり頭に包帯を巻いた村長らしき人が、先程までと打って変わって穏やかな表情でシンジの相手をし始めた。

 

『実は、村の西にある炎の祠に伝説の魔炎龍が復活しておりまして。このままでは村が焼き尽くされてしまうのです』

 

 場所は変わり、根本にドアが付いた巨大な木の前にシンジと村長がいる場面に。

 

『魔炎龍を倒せるのは、この村の氷の一族に伝わる凍神剣のみ。しかし、その一族の末裔が少々厄介者でして』

 

 そう言いながら開かれたドアの先には、大量の氷に囲まれた1人の少女がいた。年齢はシンジとそう変わらないだろう。

 

『この娘はメイベル。彼女の心の氷を解かさない限り、凍神剣の封印は解けませぬ』

『……子供の頃、バルキード山の頂上で母さんと見たポワポワの花。綺麗だった……な』

 

 その言葉を聞いて、シンジは村を出て行く。この姿に綾波はポワポワの花を取りに行ったと思ったが、次の瞬間にはシンジに首を切り落とされている魔炎龍の姿が画面に映っていた。

 

「僕は炎の祠に直行して、魔炎龍を倒した」

「なんで?!」

「本当に大変だったよ。でも、工夫して攻撃パターンを覚えたらなんとか倒せたんだ。こっちでの訓練が役に立つなんて──」

「そうじゃなくて!バルキード山でポワポワの花採ってきてあげなよ!」

 

 流石に綾波でも声を荒らげたが、シンジは覚えられないとキッパリ。村に戻って村長に報告したのだが……

 

『え?魔炎龍を倒した?…………ありがとうございます』

 

 ふて寝したメイベルを少し見た後に、シンジに向き直り礼を言った。言葉がそれ以外見付からなかったのか、それ以上なにも言うことなく、その村での出来事は終わってしまった。

 

「とても感謝されたよ」

「……うん」

 

 映像が終わった直後、玄関のブザーがなり来客を知らせる。来客に心当たりがあった綾波が向かい、荷物を受け取り中身を改める。

 

(セ○サターン本体とソフト20本セット……オークションのお勧めに出てきて、安かったから買っちゃったけど……)

「綾波?宅配便?」

「えぇ。その、これ」

 

 無駄遣い止めるように言われた直後だからか、少し気まずそうにしながら届いたものをシンジに見せた。まさかゲーム本体が出てくるとは思っていなかったシンジ。しかしこれで実況がいつでもできるため、とても喜んだ。いつでも実況を始められるように、1通り入っていたソフトたちで遊んだのは言うまでもない。

 夜になると、少し買い物をするために外にでる。年末のお陰か、夜には人がほとんど外に出ていなかった。その光景を見て、シンジは異世界とは偉い違いだと言う。部屋に戻ると異世界の年越しについて訪ねる。いつものように魔法で映像を映し出し、向こうの年越しを軽く説明した。

 

「年越し行事みたいなものだよ。越冬のための神々の感謝祭。この日は領主からご馳走が振る舞われるんだ」

「へぇ。豪華ね」

 

 綾波の言う通り、豪華な食事たちがテーブルの上に並んでいる。酒でハイテンションになり、隣にいる人と肩を組んで飲んだりと非常に楽しそうにだ。

 

『ようし皆!盛り上がって行こうぜ!』

『『『おぉおお!!』』』

 

 みたいなテンションに、当然シンジはなることができず、1人で適当に食事をとり宿に戻っていた。

 

「え?」

「……あぁ美味しかったよ。鶏肉の丸焼き」

「味じゃないわ!お祭りなのにこれで終わったの?」

「うん」

「いつものツンデ──悪口の人は?」

「あの人は居なかったね。この後も何も無かったよ」

 

 普通はイベントが起こるときに、何も怒らなかったと言う衝撃の事実に、綾波は言葉を失った。気まずい沈黙が流れたが、シンジの「そう言えばメイベルが押し掛けてきた」と暴露。その部分を見ることに。

 また映像を再生させると、部屋の中にシンジとメイベルがいる場面に。

 

『何故ここに?』

『教えて、ほしくて。1人で龍を倒した貴方のように、強くなりたい。どうすれば、ダメな自分を捨てられるの?』

『ダメな自分?……ダメって誰が決めたの?』

『え?』

『誰か言った?』

『そ、村長とか?』

『君は何ものにも縛られてないんだ。だから、やりたいように生きて良いんだよ。僕にはできなかったからさ。自分のやりたいように生きらるな、やりたいようにやれば良いと思うよ』

 

 少しシンジの闇が見える励ましかただったが、それでもメイベルを励ますには良い言葉だったようだ。綾波もそう思い、その世界でのシンジの行動に感心した。

 

『君は、今までどうやって生きてきたの?』

『へ、部屋に籠って、心を閉ざして生きてきた……』

『それで良いんだ』

『え?……でも、』

『それで良いんだよ。僕は引きこもりたくても逃げ出したくてもできなかった。いつも強引に連れ戻され変なロボットに乗せられ戦わせられて、引きこもるなんてできなかった。だから僕は自由に生きると決めた。君はどうする?他人から与えられた人生を歩むの?それとも……』

『……良いの?』

『良いんだ』

『……フフフフフ』

 

 シンジの言葉にダメな方向へと一気に進んでしまった。人生に正解がないと言えども、確実に間違った何かに突き進んでしまっている。

 

「こうして、自分の道を選んだ彼女は村へ帰ったんだ。あ、あと剣を貰ったんだ」

『凍神剣をどうぞ』

『いやいいよ。なんか冷たそうだし』

『そう……』

「いや。断ったのか。まぁだいたいこんな感じだったね」

「碇くん。年越し蕎麦食べましょう」

「お、良いね~。お湯お湯」

 

 その後、2人で仲良く蕎麦を啜り、年を越した。




次回はアスカが登場。ポジションは当然あの人です。
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