女たらしが往く実力至上主義の教室   作:俺は社畜

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小話が続きます。


11話 4月のとある日常1

 

 

ーーーー水泳部の勧誘ーーーー

 

六助との死闘の末、競泳で1位を獲得した。

 

そんな俺に対して、ある一人の生徒が話しかけに来た。

 

 

「あの…九条君。水泳部に入りませんか!」

 

 

いきなり、そう話し始めたのは女子での競泳で1位を獲得した小野寺かや乃だ。

髪は短く、いかにも運動してますと分かる容姿をしたスポーツ女子だ。

 

 

「何で敬語?笑 小野寺さんも1位おめでとう。」

 

 

俺と話すのは初めてということもあり、敬語になったのだろう。

 

 

「あっ…ごめんね。話したことなかったから…。それよりも、水泳部に!入りませんか!」

 

 

先程より語気を強めて問いかける。

あまりの勢いに思わず笑いそうになる。

 

 

「勧誘ありがとうね。けど、ごめん。俺は今のところ部活に入るつもりは無いんだ。」

 

 

俺はやんわりとことわりを入れる。

 

 

「も…勿体ない!それは勿体ないよ、九条君!まず九条君の筋肉!広背筋、三角筋、僧帽筋、大腿四頭筋。どれをとっても理想的な筋肉量。全体的にも肩から脚にかけてのバランスの取れた逆三角形。鍛えられて綺麗なおしり。運動…いや…この身体は水泳をやるために生まれてきたようなもの。そんな肉体を持つ九条君が水泳部に入らないなんて勿体ない。いや、これは日本の!世界の損失!」

 

 

いきなり始まった止まらない小野寺のマシンガントーク…。

 

 

「落ち着いて!小野寺さん。」

 

 

とどまることを知らない小野寺さんに俺は両肩にてを置いて静止する。

 

 

「そんなに詳しく見てくれてたんだね。ありがとう。」

 

 

褒められてることには変わりないので、とりあえずお礼を言う。

 

 

「ふぅ…。ごめんなさい。ついつい熱くなっちゃった。」

 

 

一旦、落ち着きを見せる小野寺。

 

 

「水泳部に入ることは出来ないけど、小野寺さんに教えてほしいことがあってね。実は俺、成長してから水泳してなくてどうも泳ぎに感覚的なズレがあったんだよね。それをぜひなおしたくて…」

 

 

水泳の時に感じていた違和感を小野寺に伝える。

 

 

「九条君みたいな理想的な身体なら、すぐになおせるよ!」

 

 

ノータイムで小野寺は答える。

 

 

「じゃあ水泳の時間にでも、また教えてもらおうかな?」

 

 

「水泳部に来たらつきっきりで長時間手取り足取り満足するまでやってあげるのになー。」

 

 

残念そうに小野寺はそう答える。

 

無自覚系ってやつなんだろう…。

 

 

「とりあえずやっぱり、九条君は水泳部だと入るべきだよ!」

 

 

話題は、また振り出しに戻る。

 

そこからは、入るべき、入らないの押し問答で時間だけが過ぎた。

 

俺があまりに縦に頷かないので、小野寺は頬を膨らませてゆく。

俺は、そんな小野寺の頬を左手でクシャッと挟む。

 

 

「はにふるほ〜(何するの〜)。」

 

 

そんな姿に、俺は無意識に呟く。

 

 

「可愛い。」

 

 

「へっ/////」

 

 

そこからはどこかよそよそしくなる小野寺。

そこから会話が弾むことはなく、とりあえず水泳部は保留とした。

俺は発言には気をつけようと反省するのだった。

 

 

 

まあ可愛いかったから仕方ないよね。

 

 

 

 

 

 

ーーーー茜先輩は頼られたいーーーー

 

 

俺は、廊下を歩いていた。

清隆は用があるようでここにはいない。

 

そんな中、向こうの方から顔が隠れるほどの資料を抱えた生徒が歩いてくる。

右へ左へヨタヨタ歩く姿はとても危なっかしい。

 

俺は思わず声をかけた。

 

 

「運ぶの手伝いますよ。」

 

 

向こうからは、こちらが見えてなかったのだろう。俺の声にビクッ、と肩を震わせてしまった生徒は足を躓かせ、資料もろとも俺の方に倒れかかってきた。

 

 

「ひゃあああ。」

 

 

俺は、咄嗟に左腕をその生徒の腰に手を回し右手を床につける。

 

なんとか支えきった俺は、その生徒の顔を見る。

 

………、茜先輩だったようだ。

 

 

「大丈夫ですか茜先輩。」

 

 

向こうもこちらを見る。

 

 

「ごっごめんなさい。……、あっ九条君…。」

 

 

茜先輩は申し訳なさそうに言う。こちらにも気づいたようだ。

 

 

「いえいえこちらこそごめんなさい。急に声をかけたせいで驚かせてしまったようで…。」

 

 

「そんなことありません。私がドジなばかりに…。」

 

 

そこからも茜先輩の自分に対する卑下が止まらない。

 

茜先輩は俺と抱き合っているような形になっていることには気づいていないようだ。

 

 

「あのー、茜先輩。とりあえず今の体勢どうにかしませんか…?」

 

 

俺は、話を遮ることに申し訳なさそうに話すと茜先輩も気づいたように飛び上がる。

 

 

「/////。も…申し訳ありません。」

 

 

「その動きなら怪我はなさそうですね。良かったです。荷物運び手伝いますよ。」

 

 

顔が真っ赤になる茜先輩を他所に俺は散らばった資料を集め始める。

 

 

そんな俺に茜先輩は…

 

なんで、そんな冷静なんですか…。

 

 

と文句を言いながら、資料を集め始める。

 

もくもくと資料を集めていたその時、茜先輩が俺の右手を見て声をあげる。

 

 

「あっ、九条君!右手のひらに火傷ができてます!」

 

 

恐らく、茜先輩を支えた時に右手が廊下との摩擦で火傷したのだろう。俺は別に対したことじゃなかったので、そのまま放置していた。

 

 

「このくらい大丈夫ですよ。」

 

 

「だめです。ちゃんと処置しないと!私のせいで怪我したんですから。さあ、保健室行きますよ!」

 

 

そういうと、茜先輩は俺の手を引っ張って保健室へ連行するのだった。

 

資料は……、とりあえず触れないでおく。

 

 

 

 

保健室に担当教諭はいなかった。

勝手に備品を使うのはどうかと茜先輩に言うが、茜先輩は「任せて下さい。これでも生徒会ですから!」とテキパキと処置用の備品を出す。

そんな姿に、俺はなすがままとりあえず冷水で患部を冷やしていた。

 

俺は、そんな手際よく動く茜先輩に声をかける。

 

 

「茜先輩って、こういうお世話したりするの得意なんですね。今の先輩、すごい頼りがいありますよ。」

 

 

そんな俺の言葉に、茜先輩はぱーっと表情が明るくなる。

 

 

「そうですか!まあ私は先輩なのでこのくらい当たり前ですけどね。」

 

 

謙遜する茜先輩だが、その姿は犬ならしっぽをブンブン振ってるだろう…。

 

ただ、それを指摘するのもあれなので俺はここぞとばかり茜先輩を褒める。

 

 

「そんなことないですよ。処置の手際もですし、そもそもこの学校で生徒会に入るような人です。あの堀北会長を補佐してる人物ですよ。頼りがいがあるに決まってます。」

 

 

俺の言葉に照れつつも処置する手は止まらない。

そうしているうちに、手にはガーゼが張られて処置が完了する。

 

 

「茜先輩。ありがとうございました。」

 

 

「いえいえ、元は私が転んでしまったせいですので…。」

 

 

「そんなことありません。俺が声をかけたからであって…。」

 

 

フフフフフッ……

 

 

互いに自責的な考えに、思わず二人は吹き出す。

 

 

「茜先輩、本当に頼もしい先輩だなって思いました。この学校まだ色々ありそうですし、いっぱい頼らさせて下さいね。」

 

 

俺は、そう茜先輩に告げる。

茜先輩はそんな俺の言葉に目を見開いたと思うと…、

 

「いーーっぱい、頼って下さいね!」

 

 

そう、満面の笑みで答える茜先輩だった。

 

 

あっ、資料……。

 

 

置いてきたことを思い出した茜先輩はやはりどこか抜けているようだ…。

 

 

 

 

 

ーーーー図書室の番人ーーーー

 

4月も後半に差し掛かり、俺は図書室へ訪れていた。

ここに来るのは2回目になる。

 

かつては小説などと触れ合う機会がなかった。知識として、小説家や題名などはあったが実際に読むのは、研究論文や一部の哲学書くらいのものだ。

 

そんな俺は、小説がどんなものか興味がありここへ訪れていた。

前はとりあえずどんな本があるか一通り徘徊して図書室を出たが、今日は何か借りてみようと思っていた。

 

 

恋愛、ファンタジー、SF、ミステリー、歴史…………

 

俺は、何に手をつけようか迷っていた。

 

とりあえず、有名小説家の作品を借りてみるか…?夏目漱石、太宰治、芥川龍之介…、いや…、海外作品の方がいいか…。

 

 

そんなことを、考えていると目の前に一人の女子生徒がこちらを覗き込んでいた。

 

 

「っ!!!!」

 

 

「あのぅー、すみません。声をかけたのですが、何やら考え込んでいらっしゃったようで…。」

 

 

「あぁ…。すみません。何を借りようか少し考えてまして…。」

 

 

俺の返答に彼女はぱぁっと明るくなる。

 

 

「まぁ!何か気になる本があるのでしょうか?」

 

 

「実は、今まで本にほとんど触れて来なくて…、でも興味があったから借りに来ては見たものの何から手をつけようか迷ってまして…。」

 

俺は、彼女に迷っている旨を伝える。

 

 

「でしたら、私がいくつか紹介しても…?」

 

 

そんな俺に対して彼女はそう提案してくる。

 

 

「いいんですか?助かります。」

 

 

彼女の好意にあやかろう………。

 

 

 

 

そこからは、彼女による本の講座が始まった。名前は椎名ひよりと言うらしい。同じ学年でCクラス所属だそうだ。彼女は同じクラスに同じ趣味の生徒がいなかったそうで、本仲間が欲しかったみたいだ。楽しげに本を紹介する彼女には、こちらまで楽しい気分になった。

 

こちらもつい色々と質問をしてしまったようで気がついたら外は暗くなっていた。

 

とりあえず、椎名に勧められた本を数冊借りて、その場は解散となった。

 

 

 

勧められた本は中々面白くて、すぐに読み切ってしまった。

 

それを椎名に伝えると嬉しくなったのかそこから、ほぼ毎日のように新しい本を勧める電話をしてくるようになった。

 

流石に別の用もあるので毎日読み切るのは不可能なので、「まだ読めてない。」と返すのだが、しょんぼりとした返事が返ってくる。

そんな返事を聞いた俺は、しばらくの間日々全速力で本を読み漁るのだった…。

 

 

流石に目がバキバキになった様子を見た椎名が「目を休ませることも必要ですよ。」と言われてからは、少し読むペースは落ち着いた。

 

 




日常回でした。
ボーイッシュ無自覚系女子も好物なので小野寺の話は入れようと決めていました。
椎名との出会いはやっぱり図書館になっちゃいますよね…。他に構想が、練れない…。

日常回はもう少し続きますので明日もお楽しみに。
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