女たらしが往く実力至上主義の教室   作:俺は社畜

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13話 本当の始まり

五月に入った。

チャイムが教室に鳴り響く。それと同時に茶柱先生が教室に入ってきた。

 

彼女の表情はいつも以上に目つきは鋭く、視線は険しい。

 

あぁ、ついにこの学校の化けの皮が剥がれるのか…。

その視線に俺は、茶柱先生が今から行うことを想定する。

 

先生の険しさに他の生徒達も異様に感じたようで教室内は静まりかえった。

 

 

 

「佐枝ちゃんセンセー! 生理でも止まったんですか?」

 

 

そんな空気を断ち切るように、池がふざけて問い掛ける。

 

池‥、お前のコミュニケーション能力は認めるが、それは流石に限度超えだろう。

 

 

 

「これより朝のホームルームを始める。が、その前に何か聞きたいことがあるはずだ。質問がある生徒は今聞くように。」

 

 

セクハラ発言を茶柱先生は完全に無視し、そう言った。

 

 

 

「あの、朝確認したらポイントが振り込まれてなかったんですけど…。ポイントは毎月一日に支給されるんじゃなかったんですか? ジュース買えなかったんで焦りましたよ…。」

 

 

一人の生徒が質問を投げかける。

 

 

「ほう…。ポイントが振り込まれていなかったのか。それは確かに一大事だ。」

 

 

 

他人事のように面白そうに嗤う茶柱先生に、多くの生徒は困惑する。茶柱先生はさらに続ける。

 

 

「だが安心しろ、ポイントは毎月一日に振り込まれている。学校側でも確認は行っているが、こちらの不備は一切ない。」

 

 

茶柱先生はそう言い切る。

 

 

「えっ? で、でも実際振り込まれてないですし…。」

 

 

茶柱先生の言葉に生徒たちは「何を言っているんだ?」と顔を見合わせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──お前らは本当に愚かだな。」

 

 

 

 

突然、茶柱先生は生徒を罵る。表情も相まって生徒達は何も言えないでただただ静かな時間が流れる。

 

 

 

 

 

「もう一度だけ言おう。ポイントは確実に振り込まれた。これは間違いない。このクラスだけ忘れられた、ということはない。」

 

 

 

「???」

 

 

そんな茶柱先生の言葉にクラス内は困惑する生徒がほとんどである。

 

 

あぁ…、このクラスはゼロポイントが支給されたのか‥。あれだけ騒いでたんだ‥。ある程度覚悟はしていたが、まさか1ヶ月で全て吐き出すなんてなあ‥。まあこの反省を活かして頑張ってもらうしかないか。

 

俺は、周囲のクラスメイトを見ながら推考する。そんな中、一人の生徒が声をあげた。

 

 

「ははは、なるほどねティーチャー。私は理解出来たよ。つまり、このクラスには0ポイント支給された、そういうことだねえ。」

 

 

 

高円寺が高らかに笑う。

 

 

高円寺の言葉にまだほとんどのクラスメイトは気が付かないようだ……あっ、堀北さん気づいたっぽい。

 

 

「なんでだよ?毎月10万ポイント振り込まれるって説明してたじゃねぇか‥‥‥。」

 

 

「私はそう聞いてはいないがねぇ。そうだね、将?」

 

 

六助…、なんで俺にふるんだ…。

 

 

「……、ポイントは毎月1日に自動的に振り込まれることになっている。確か茶柱先生はそう言っていた。」

 

 

 

 

 

「高円寺と九条の言う通りだ。私は毎月10万ポイント振り込まれるとは説明していない。」

 

 

 

 

 

「先生、質問良いですか?」

 

 

 

そんな中、平田が手を挙げる。率先してこういう役割を引き受けるのは流石平田。

 

 

平田は、何故自分たちにポイントが振り込まれていないか、を茶柱先生に問いかけた。

 

 

遅刻欠席は3桁に迫る勢い、口にするのも恥ずかしいほど回数を重ねた授業中の私語や居眠り、携帯弄り。

 

そういった行動や態度がクラスの成績としてポイントに反映された。その結果、10万あったポイントをDクラスは吐き出しきり、0ポイントが支給されたと、茶柱先生は粛々と説明した。

 

 

「さて、本題に移ろう。」

 

 

そう言うと、茶柱先生が厚手の紙を取り出し、黒板に貼り付ける。

 

Aクラス940

Bクラス650

Cクラス490

Dクラス0

 

AクラスからDクラスの名前とその横に数字が記載されていた。

 

 

 

「毎月生徒にはこの評価に100を掛けた数値が振り込まれることになっている。」

 

 

茶柱先生は、そう説明する。

 

 

 

「なぜ、クラス間でこんなに差があるんだ………。」

 

 

 

ふと、クラスの一人が呟いた。

その呟きに対して、茶柱先生が答える。

 

 

「この学校では、優秀な順にクラス分けされるようになっている。優れた生徒はAクラス。ダメな生徒はDクラス。」

 

 

「つまりこのDクラスには不良品が集められたと言うわけだ。」

 

 

そこからも、茶柱先生の嘲笑が止まらない。不良品と言われ怒る堀北を綺麗に論破し、須藤に0ポイントより下がることはないから安心しろと馬鹿にしていた。

 

それはもうクラスは錯乱状態だ。

 

 

 

まあ、大方予想通りだわな…。まだ細かい確認はいるだろうが…。しかし1ヶ月でここまで差が出るのは笑えるな…。

 

 

俺は、反省とか後悔とかはない。クラスで真面目に受けていた子たちは可愛そうだけど、身から出た錆だろう。

 

 

そんなことを考えている中、茶柱先生は続ける。

 

 

「そもそも、なぜ疑おうとしなかった。ヒントはそこらじゅうにあったというのに。結局気づいたのは………、」

 

 

ん?目線がこっちに………?

 

 

 

「九条、良かったな。お前への口止めもここまでだ。」

 

 

おい、茶柱先生?なぜそんなことを言う?

 

 

「こいつは入学して数日で、この情報にたどり着き、ましては学校と契約まで結んだ初めての生徒だ。」

 

 

茶柱先生は、したり顔でこちらを見る。

 

 

こいつ、300万も掠め取られたこと根に持ってやがる…。

契約に守秘義務を適応してなかったことを俺は酷く後悔した。

 

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

 

 

「…契約ってなんだ?」

「知ってたの?」

ザワザワと俺の方に視線が集まる。

 

 

助けて、清隆……。あっ、視線反らせやがった!

 

 

とりあえず、何か言わないと…。

 

 

「…今は茶柱先生の説明が優先だろう。気になる子には後でちゃんと説明するから。」

 

 

とりあえず後回しにした。

 

 

俺への視線は無くならないが茶柱先生は貼り出した紙を指差しながら説明を始めた。

 

 

「この数値は、毎月支給されるポイントに連動するが、もう一つ重要なことがある。それが各クラスランクに反映される。具体例を出すと今回、Cクラスが490ポイントだった。仮にお前達のクラスポイントが491以上だったら、Cクラスに上がっていた。」

 

 

それは、分かった。ポイントが行動で下がるのも分かった。あとは身近に何で上がるか。そこの説明がいると思うんだが…。

 

 

「もう1つ、お前達に伝えることがある」

 

 

そんな俺の思いとは別に茶柱先生はそう言うと、別の紙を黒板に貼り付けた。そこにはクラスメイト全員の名前と横に数字が記載されていた。

 

 

「これは先日行った小テストの結果だ。お前たちは中学で何を勉強してきたんだ?」

 

 

茶柱先生が言う小テストとは、先日唐突に行われた非常におかしなテストだ。

ほとんどが高校レベルとは思えないほど簡単な問題で構成されていた。そんな中で、ラスト3問だけはレベルが違う。てかラストなんか大学数学のグラフ理論を用いるとか到底解かせる気があるとは思えなかった。

 

クラスメイトはだいたい60点あたりの生徒が多かった。

ただ須藤を筆頭に一部は目も当てられないくらい悪い。

 

 

「良かったな。これが本番だったら、7人は退学していた。」

 

 

 

そう言うと、茶柱先生は点数順に並んでいる名前の七番目の名前の上に赤線を引いた。

 

 

「はぁ!?なんだよそれ!!退学なんて横暴だ。」

 

 

赤点のやつだろう…。あっ山内だった。納得いかないと立ち上がり叫ぶ。

 

 

 

 

「ティーチャーが言うように、このクラスには愚か者が多いようだねぇ。」

 

 

そんな声に、高円寺が高らかに話す。

 

 

「何だよ、お前だってどうせ赤点だろ!」

 

 

「ふっ、どこに目がついてるのかね。よーく見たまえ。」

 

 

高円寺の名前の横には90点の文字があった。

 

山内は六助をバカだと思っていたらしいが逆だろ。俺なんか六助なら、100点でもおかしくないと思っていたんだが…?

 

 

「話を続けるぞ。この学校では定期テストで1科目でも赤点を取ったものは退学になる。今回の小テストで言えばさっき言った32点未満の生徒のことだな。」

 

 

茶柱先生が説明する。

 

 

『今回の』……。もういい加減この、遠回しな言い方は飽きてきた。まあ別に100点とれば問題ないんでしょ?

俺は平均点うんぬんより、どうクラスに説明しようかの方が大切なんですよ…。

 

 

さらにこの学校の謳い文句でもあった希望の就職先や大学先を無条件で叶えれるのがAクラスだけだと爆弾発言もさらっと飛び出す。

 

 

クラスはもう、むちゃくちゃだ。そんな光景に茶柱先生は満足したのか、教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

茶柱先生が出ていった教室だが、暫くざわつきは収まらない。しかし、徐々に落ち着きを取り戻し、それとともに先程の言葉を思い出したのか俺の方へ視線が集まり始める。

 

さて………、視線が俺に集まっている。

 

 

「なあ…、九条。さっきの説明してもらおうか。」

 

 

幸村がそう切り出す。

 

 

「茶柱先生の言うとおり、俺は3日目にはこの学校のシステムについて概ね把握していた。」

 

 

俺の発言にクラスはざわつく。

 

 

「なっ…。なら何でポイント減るって注意してくれなかったんだよ!」

 

 

「そうだ! お前がその時注意してたらこんなことにならなかったんだぞ!?」

 

 

「ふざけんな!」

 

 

俺に対しての誹謗中傷が止まらない。

 

 

 

「ちょっと、みんな落ち着いて!」

 

 

平田や櫛田が思わず仲裁に入る。

収集がつかなさそうだったので、ほんと二人とも助かるわ…。

 

 

「平田、櫛田さん助かった。続けるぞ。その情報を元に俺は茶柱先生の元へ向かった。情報の確認だな。そこで、俺は口止めを要求された。「本来5月に入って初めの朝礼時に公表される決まりになっているから他言無用で頼む。」ってね。そこで俺は口止めの対価としてポイントを受け取った。そういう「契約」を行った。それだけの話だよ。」

 

 

初めからポイントかすめ取りにいったのは流石に言えねぇし、概ね嘘はついてない。それに逆に隠し過ぎても反感買いそうだし…。

 

 

「………。じゃあ俺らのポイントを引き換えにお前は一人ポイント獲得したってことかよ…。」

 

 

山内がそう呟く。

 

 

えっ、自分のこと棚に上げすぎだし話飛躍しすぎじゃね、こいつ。

 

 

「減った俺らのポイント補填しろよ!」

 

 

「そうだそうだ!」

 

 

山内の言葉を皮切りに一部の生徒たちが非難を強める。その空気はどんどん伝染していく。周りの目が少しずつ敵対視していくのが分かる。

 

 

 

 

 

 

…………あぁ、こいつ等………ほんと救えねぇなぁ……………。

 

 

 

 

こいつら…………、ちょっと思い知らさねぇと………………。

 

 

そんな状況に俺は静かにキレる。

俺は別に聖人ではない。こんなクズ達に与える慈悲なんかない…。

 

俺は、一つ息を吐く。

周りは、非難することに夢中で俺の変化に気づかない。

 

 

 

 

 

さて…………、少し黙らせようか……。

大丈夫…、ちょっとビビらせるだけだから…………。

 

 

 

 

俺は、騒ぎ立てる元凶の喉元へむかって一撃を加える………、

…………………………………いや、加えようとしたその時…、

 

 

 

「やめなよ!!!!」

 

 

俺と非難する生徒の間に入る女子生徒がいた。

 

 

「あんた達恥ずかしくないの?そもそもポイント減らしたのは私達が騒いで携帯触って遅刻して、全部私達が悪いじゃん!」

 

 

その生徒は篠原だった。

 

 

「そうだよ。そもそも九条君はちゃんと授業受けてたんだよ。九条君はなんにも悪くないじゃん。」

 

 

佐藤も篠原に続く。

 

 

「てか、九条君って初めの方ちゃんと授業受けてって注意もしてたよね?聞かなかったのあんた達じゃん。」

 

 

さらに松下が追随する。

 

 

彼女達の声に非難の声が止む。

そして、だんだんと風向きが変わってゆく。

 

 

「で、でももっとちゃんと注意してりゃ俺だってちゃんと授業くらい受けてるわ!」

 

 

山内が苦し紛れに非難を継続する。

 

だが、流石カースト上位の女子の発言だ。周りは既に非難する空気は無くなっていた。

 

 

そんな状況に俺は憤りを落ち着かせる。

というよりもう篠原を筆頭に佐藤、松下が頼もしすぎた。

今度、一日中褒めちぎりまくろう…とか考えていた。

 

 

 

 

一部の生徒は未だに不満げな表情を見せたが一旦事態は収拾した。

 

 

とりあえず、篠原らにはしっかりお礼を言っておいた。少し照れながら「私が間違ってると思ったから言っただけだから!」と言われた。思わず抱きしめたけど俺は悪くないと思う。

 

あと、ご飯を奢る約束をした。

 

 




九条の本性が少し出ちゃった…。綾小路は無機質だけど九条は感情ある分、優しさもあるけど怒りの感情もあるから…。
ただちょっとビビらせるで喉元いくのはまずいでしょ…。

佐藤・篠原・松下まじファインプレー。

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