女たらしが往く実力至上主義の教室   作:俺は社畜

15 / 44
15話 天才少女降臨

 

 

「さて…………。どうしたものか。」

 

 

俺は今、ある生徒を自室で待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

遡ること2日前

 

いつものように真澄は俺の部屋で話をしていた。

 

そんな中、ふと真澄が話を始める。

 

 

「……、実は話しておきたいことがあって………。」

 

 

真澄によると少し前に同じクラスの生徒から接触があったらしい。

問題はその内容だ。なんと入学間もない頃に未遂に終わった万引きだが、ビール缶をかばんに入れるところを俺以外に撮られていたらしい。

あろうことか、それをネタに自分の配下になるよう迫られたそうだ。

 

 

「…………へぇ。」

 

 

俺は怒りを抑えきれなかった。

そういう搦手などを使うことについては俺自身も使うことはあるだろう。ただ自分の身内がその毒牙にかけられたのだ。それに気づかなかった自分自身にも腹が立つ。

ただやられっぱなしで終わるわけにはいかない。

どうやってそいつを始末しようか……。

俺は考えゆるあらゆる方法を巡らせる。

 

 

 

そんな状態の俺に、真澄は話しかける。

 

 

「ねぇ…、ちょっと怖い…。」

 

 

思わず、殺気立っていたようだ。

真澄に怖い思いをさせてしまった…。反省。

 

 

「ごめんな…。ただすまない。怒りをおさめることはできそうにない。」

 

 

顔だけは冷静を装う。

そんな俺の心情を感じたのか、真澄は…

 

 

「ごめん。先に言っておくべきだった。別に私は嫌な思いをしてるわけじゃないの。」

 

 

そう俺に告げた。

 

 

脅され、下僕にさせられたのだ。嫌じゃないわけがない。

俺は、釈然としない顔で真澄を見る。

 

 

「…なんて言うんだろ?なんかそいつ私と似てるような気がするんだよね。入学当時の私みたいな感じ?表面上はお嬢様気質で横暴でドSで最悪な性格に見えるんだけど…、多分対等な仲間がいた事がないんだろね。だからなのか、どこか寂しさがあるように思えて……………。って、別にだからってそいつのこと特別に感じてるとかじゃないんだけど!勘違いしないでよね!!」

 

 

真澄は一人でに焦っている。

 

真澄は俺が真澄はそいつに気があると勘違いしたとでも思ったのだろうか…。必死に弁明する真澄は凄い可愛い。

 

それにしても、真澄の言いたいことは概ね分かった。つまり友達の作り方すら知らない可愛そうな子なのだろう…。

 

 

 

「わかった。でもそうだな…。俺も一度そいつと話してみることにするよ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして今に至るわけだ。

 

真澄にそいつの連絡先を聞きコンタクトを取り、今から会う約束をした。

 

真澄は反対した。会うにしても私も同席すると譲らなかった。説得させるのには骨が折れたがなんとか納得してもらった形だ。

 

 

ピンポーン

 

 

そんな時、家のチャイムが鳴る。

どうやら来たようだ。

 

 

 

ガチャ

 

 

「わざわざごめんね。坂柳さん。」

 

 

ドアの前には薄紫色のセミロングヘアをした小柄な女子生徒が立っていた。

右手には杖をついている。

 

 

「こちらこそ。あなたとは一度お話したいと思っておりましたので…。」

 

 

坂柳を、部屋の中へ招き入れる。

 

 

「大丈夫。手伝うよ?」

 

 

杖をついているので、一つ一つの行動はゆっくりになる。

躓かれたりしても大変だ。俺は手を差し伸べる。

坂柳さんは感心したようにこちらを見るとすぐに笑顔で答える。

 

 

「お気遣いありがとうございます。日常生活程度なら問題ありませんが、今回はお言葉に甘えさせてもらいましょうか。」

 

 

そういうと、坂柳は俺の手を取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に入り、坂柳はぺたんと床に座る。

 

 

「坂柳さん。そこの椅子とかベッドに座りなよ。」

 

 

しかし、坂柳はここで大丈夫とこちらに返答する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分な頻度で真澄さんとこちらでお会いしているようですね。」

 

 

坂柳はそう話し出す。

俺達の関係はある程度把握しているようだ。

 

 

「まあ、仲良くさせてはもらってるよ。」

 

 

「クラスでは、あまり他と関わりを持とうとしていなかったのに、あなたには随分心を許しているみたいですね。」

 

 

坂柳は、こちらをじっと見つめて話す。

 

 

「せっかく私が、一番に真澄さんと『お友達』になるはずでしたのに…、あの時あなたが邪魔したので…。少しあなたには嫉妬してしまいます。」

 

 

恐らく、万引き未遂したあの時のことだろう。俺としたことが、まさか俺の他にも真澄を見ていたやつがいたとは…。

 

 

「それで、私は気になっていたのです。どう真澄さんとこうも仲良くなったのか…。」

 

 

坂柳は不敵な笑みを浮かべる。そして続けて俺に問いかける。

 

 

 

 

 

 

「あなたも脅したんですか?」

 

 

確信を得ているような表情で俺にそう問いかける坂柳。

 

 

「まさか。君とは違って真当に仲良くやらしてもらってるよ。」

 

 

俺は、坂柳に嫌味っぽくそう伝える。

それでも、坂柳は余裕の表情を少しも崩さない。

 

 

「…。まあいいでしょう。しかし未遂であることはいえ、高校生がかばんに缶ビールを入れている写真など、もし画像が広まれば皆さんはどう考えると思うでしょうか?」

 

 

坂柳の言葉に俺は眉をひそめる。

 

…、始まったな。真澄には坂柳について聞いていた。坂柳はあの現場での写真を持っているということは俺と真澄の関係は間違いなく掴んでいるだろう。

その上で俺との接触を了承したのだ。

まさかただ会うだけのわけがない。

向こうもそれなりに何か仕掛けてくるはず…。それに坂柳の性格的におそらく人の弱みが自分以外も持っていることが気に入らないだろう…。少なくともそうなると俺と坂柳は対等な立場だ。

そうすると坂柳はどうにか俺を立場を下にしたいと考えるはずだ。俺を徹底的に潰すか真澄と同じように脅すか。それが今回は真澄を使って脅してきたのだろう。

 

 

 

 

「おやおや、黙り込んでしまいましたか。私にコンタクトを取ってこられたので何か策があるのかと思っていましたが…。それとも今、強引に私からスマホを奪い取ってみます?」

 

 

坂柳は、挑発的にそう聞いてくる。

 

 

中々いい性格をしているようだ。真澄に言われていなかったら、思わず手を上げていたかもしれない。

ただ、俺も坂柳を見て真澄と同じことを感じていた。

手段は褒められたものではないが、坂柳にとっては本当に仲間集めなのだろう…。

坂柳は自分の挑発に、俺が怒りで震えているとでも考えているかもしれない。

ただ、今の俺は「必死に友達作ろうと頑張ってるんだね。今も必死に交渉しようと可愛いね。」といった母性マックス状態である。つまり煽りに対して無敵状態た。

でも、話はしっかりしないと坂柳に失礼なので俺は話を続ける。

 

 

「坂柳さんは一体何が目的なのかな?」

 

 

「ふふふ。あくまでも冷静を装いますか。そうですね。あなたも私と『お友達』になっていただきたいのです。」

 

 

「あなたのお噂は前々から聞いていますよ。学力も運動も非常に優秀。さらに学校のシステムも早いうちに気づいていたようで…。その優秀さを是非私のために発揮していただきたいのです。」

 

 

坂柳のいう『お友達』とは、あくまで自分の手下という意味だろう。

 

 

「そうだね。でもせっかくのお誘いだけど君の意味合いでいう『お友達』なら遠慮させてもらおうかな。」

 

 

「そうですか。残念です。振られていましました…。では、これならどうでしょう?あなたが『お友達』になってくださらないのであれば、真澄さんの秘密を広める…、それならばお気持ちは変わりませんか?」

 

 

坂柳は真澄の弱みを盾にする。

こうすれば、俺は反抗できないと考えたのだろう…。

だが…、甘いよ…坂柳さん、俺がその程度で怯むわけないじゃないか。

 

 

 

「ばらまけばいいじゃないか。どうぞご勝手に。」

 

 

俺の返答に、坂柳は初めて表情を歪める。

 

 

「……、あなたの学校内での態度なども聞いておりました。交友関係も良好なようで…。まさかこんなにも非情な方だったなんて。想定外でした。」

 

 

坂柳はやれやれと答える。

 

………。何か坂柳さんは勘違いしているようだ。別に俺は真澄を切り捨てる訳ではない。あの写真をばら撒かれたりしたとて俺は今まで通り真澄と接する。周りの噂?視線?、別に未遂なのだから何も問題ないだろう。それに仮にクラスで冷遇されようが、俺がいるのだ。俺が味方でいる限り、真澄は何不自由なく過ごさせれる自信がある。何も問題はない。

 

 

 

俺の態度に坂柳は揺すれないと判断したのか、ため息を一つ吐く。

 

 

 

 

「では、話を変えましょう。あなたはチェスの経験はありますか?」

 

 

唐突に坂柳はそう俺に問いかける。

 

 

「まぁ、それなりにはやったことあるよ。」

 

 

「そうですか。それは良かったです。せっかくわざわざ九条君の部屋まできたので、一局指しませんか?」

 

 

「まあ、それくらいならいいが…。」

 

 

別に断る理由がないので俺は了承する。

 

 

 

 

 

坂柳は、かばんから簡易のチェス盤を取り出す。わざわざ持ってきたようだ。

 

俺と坂柳はせっせと駒を盤上にセットしていく。

 

 

 

「さて、九条君。ただ一局するだけだと味気がないので………、何か賭けてやりませんか?」

 

 

「…………、まあいいが……、あまりにも人権に配慮しないようなものは無しだからな?」

 

 

坂柳さんのことだ。人権度外視の提案も喜んで行うことだろう。流石にそこは釘を刺させてもらう。

 

 

「フフフ、怖じ気づきましたか?」

 

 

坂柳は、俺の提案に対してこちらを挑発する。

 

 

「まさか、逆だよ。坂柳さんみたいな綺麗な子だ。坂柳さんが負けたら俺が何するか分からないからね。」

 

 

「……。少しあなたの評価を修整する必要があるようですね。まさか性犯罪者予備軍だったとは…。」

 

 

坂柳は俺を軽蔑するような目で見る。

 

 

もちろん冗談だ。でも坂柳さんみたいな可愛い子に対して何でもしていいなんて言われたらそりゃ少しくらい考えてしまうだろう。俺も健全な10代男子なのだ。

 

 

「ごめんごめん。冗談だよ。でも坂柳さんは可愛いんだから気をつけなよ。」

 

 

「大丈夫ですよ。そんな相手がいたとしても叩き潰すだけですので…。」

 

 

当然のように、坂柳は答える。

 

そうじゃないんだけどなあ…。坂柳さんはあくまで日本のような平和な世界しか見たことないからそんなことを言える。もし法も人権もないようなところに坂柳さんが行ったとしたら………………………、身体にハンデを背負う坂柳さんはひとたまりもないだろう。

坂柳さんはおそらく相当頭もまわるし、カリスマ性なんかもあるが、発揮することなくフェードアウトする。

そういう世界があることを少し知ってもらわないとな…。

真澄に言われてるし別に潰したりなんかはしない。

ただ………、そうだな…、少し教育してあげるのも優しさだからな…。ちょっとわからせようか。

 

俺は、そう心の中で決心する。

 

 

「まぁ今回はいいでしょう。常識の範囲で一つ『お願い』を聞く。これでどうでしょうか?」

 

 

坂柳は俺にそう提案し、俺も了承する。

 

 

「では、私から言い出しましたし…、先手は譲りますよ。」

 

 

坂柳はこちらを見下しているのだろう。チェスはかなり先手有利だ。それを当たり前のように譲るとは、チェスを知らないか舐めてるか、そんなところだろう。

 

 

「こっちがかなり有利になるけど、いいの?」

 

 

「えぇ。問題ありませんよ。」

 

 

坂柳は余裕の笑みを崩さない。

 

 

 

 

 

 

勝負が始まった。

 

序盤は特に俺は動くことなく、盤面をすすめる。

流石こちらを見下していることだけはある、かなりやり手なようでこちらも最善手を打ち続けるが対して進展はない。

 

少し早いが、こちらも仕掛けることとする。

 

 

 

 

 

ーーーー坂柳sideーーーー

 

チェスはその指し手の性格や思考を写すと言われる。私は今回、自分の手駒を増やせたら良い、とは思っていたが一番は真澄さんといの一番に接触したこの男をこの目で確認することだった。事前の情報通りの部分もあったが、接触したからこそ分かったこともあったので今回はまあ及第点だと言えるだろう。

あとはチェスでサクッと勝って少しでもこちらが、有利な形に持っておこう…、そう考えていたのだが、思った以上に目の前の相手はやるようだ。先手を譲ろうが、こちらの勝ちは揺るがないと考えていた。

 

ただこちらがいくら揺さぶりをかけようが場は崩れることなく淡々と進んでいる。

まだ負けそうな形ではないが、勝ち筋は全く見えない。

 

 

 

 

 

そんな時だった…。

 

 

ヒュッ……………

 

急に心臓が掴まれるような感覚に私は陥った。

 

 

 

冷や汗が出てくる。

 

 

 

身体も硬直してくる。

 

 

 

「坂柳さん。大丈夫?」

 

 

そんな私に、彼は声をかけてくる。

私は平静を装って彼に目線を向ける。

 

 

 

「ヒッ……………。」

 

 

彼を見た私は思わず声をあげてしまった。

先程からの感覚。その元凶は彼から発されていた。

 

 

 

 

 

 

ーーーー九条sideーーーー

 

俺が行ったのは至ってシンプル。

俺は世界中を巡った。その中で直接『死』を経験することがそれなりにあった。それは本気で殺意を向けられることも、逆にこちらが殺意を向けることもあった。そういう命のやり取りを本気でやってきた。

坂柳さんは、そういった本当の命のやり取りを知らない。まあ坂柳さんだけじゃなくほとんどの人間は知らないだろう。

だからこそ、その『死』をこの場で見せつける。

よっぽど肝の座ったやつでも初見でこれに対応することは難しい。坂柳さんも、そんな命のやり取りなんて経験は無いだろう。おそらく相当の、恐怖を感じていることだ。

まあ、いい経験になったことだろう。

自分が容易く手を出すことで虎の尾を踏むこともあるんだと、自分のルールを超えてくる理不尽なんかが世界にはたくさんあることを…。

 

 

 

そこからは、坂柳さんはありえないようなミスが続く。

 

『蛇に睨まれたカエル』

 

まさしく、こんな状態だったのだろう。

 

 

 

 

 

 

「………チェックメイト。」

 

間もなくして、勝負は決した。

坂柳も中々粘ったが、結局は思考が上手く巡らなかった。後手後手になり最後は呆気なく投了した。

 

 

「さて……、坂柳さん。どうであろうと君の負けだよ。」

 

 

「……………、あれは何だったのでしょう…………。」

 

 

坂柳さんは、あの感覚がまだかなり残っているのか、焦燥しきった表情でそう尋ねる。

 

 

「うーん。まあ世の中踏まないほうがいい尻尾もあるってことだね。」

 

 

そんな坂柳さんの問いに、俺は誤魔化しながら答える。

 

 

「そうですか…………………。」

 

 

そんな俺の答えに坂柳さんは一言呟く。

 

 

バタッ…………………。

 

 

その一言を最後に坂柳が床に伏した。

 

 

「おい!坂柳さん!?」

 

 

瞬時に俺は坂柳を仰向けにする。呼びかけるが答えはない。

呼吸、脈を確認する。動きがない。

 

俺は急いで救急に連絡、そして胸骨圧迫を開始する。蘇生はしない。俺は迷わず、人工呼吸も行う。

 

 

そうしているうちに救急が到着する。

 

 

 

 

俺は状況を説明し、一緒に搬送先の病院へ。

坂柳はすぐに治療室へ運ばれ、俺は待ち合い室で待機する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やべぇ……、絶対やりすぎた………………。

 

 

後悔しても、もう遅い……。




賛否両論はあるかと思いますが、俺はとりあえず有栖ちゃんを分からせたかった。
ただ頭脳戦って思った以上に考えるのが難しい!
結果脳筋的思考になってしまいました。
それと坂柳はホワイトルームで主人公のことは覚えていなかったようです。もしかしたら見学の場にいなかったのかな?
あと主人公も一般学校出ないので中々おかしいやつ、というのは徐々にわかってきたのではないでしょうか。

引き続き温かく見守っていただけたら幸いです。
それから毎日投稿してましたが、少し空けます。すみません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。