あれから数日がたった。
搬送して、暫くは病院に残っていたがすぐにはどうにもならないとのことで寮に返された。
そして坂柳はなんとか一命は取り留めたらしい。その連絡を受けた時、俺は本気で安堵した。
俺の殺気で人が死にましたなんて話にならない。容易く使うものではなかった…。
様々な検査を行っていた影響で、坂柳本人とは中々連絡がつかなかったが今日、連絡がついたので一目散に面会に行く。
授業中、全く落ち着きがなく過ごしていたので、あの他人に対して鈍い綾小路にすら「何かあったのか?」と聞かれた。
面会を約束した10分前に俺は受付に声をかける。
部屋番号を聞き、俺は部屋に向かった。
コンコンコン
「どうぞ。」
坂柳の声が、聞こえた。
ガラガラガラガラ
部屋に入りると、奥のベッドで入院着に身を包む坂柳がいた。表情はあの時のような獰猛な笑みではないが穏やかな笑みを浮かべている。
俺としては、アレがトラウマになっていないか心配だったがひとまず大丈夫なようで安心する。
俺がベッドまで近づく。
ビクッ……………………。
坂柳の肩が少し揺れる。
……………………あっ(察し)
「坂柳さん。まず謝らせてほしい。大変申し訳ございませんでした。」
坂柳さんの状態がどうであろうとまず俺は頭を下げ謝る。
「………。いえ………。大丈夫です。」
部屋に入った時の状態の坂柳さんはどこへ行ったのか、今は大人しくなってしまった。
………。絶対俺に対してトラウマになってるやつ。多分俺が来るまではいけると思ってたんだろうな…。ただ実際近くに来たら身体が言う事を聞かなくなった感じか。
明らかに坂柳の身体は強張っていた。
「ほんとにごめん。俺と居るのも辛そうだから帰るね。何かあれば携帯に連絡入れといてくれれば対応するから。」
流石に長居するのも申し訳ないと思い俺は来たところだが帰ろうとドアの方へと身体を向ける。
そんな俺の腕に小さな手がかかる。
「待ってください。…大丈夫ですから。」
「でも坂柳さん…。明らかに身体は拒否反応を起こしてる。まだ身体も本調子じゃないし、流石にやめといたほうがいい。」
俺はそう断りを入れる。
しかし、腕を掴む手の力は余計強くなる。
「………お願いします。」
結局、俺は病室へ残っている。
俺を引き止めた坂柳だが、今は黙り込んでしまっている。体感5分くらい経ったろうか。未だに坂柳の手は俺の腕を拘束している。
「………、私は自分の弱さや甘さを痛いほど痛感しました。」
坂柳はそう話し始めた。
よほど自信を無くしたのだろう。坂柳は自身がいかに驕っており、いかに狭い世界で天狗になっていたのかを話し、反省の言葉を繰り返していた。
俺としては、ここまでするつもりはなかった。ちょっと別世界のことも知ってもらおう、くらいの感覚だったが相当堪えたようだ。でも確かに『死』なんてごく一般の学生が経験したら精神なんか持たないのか…。
俺はいかに自分の感覚がズレていたか実感した。まだ、坂柳さんは幸い自我をしっかり持てている。なんとか少しずつでも元の坂柳さんに戻ってもらいたいものだ。
そう考えている時にも坂柳は反省の言葉を並べる。
そんな坂柳を静止するように、俺は坂柳さんの頭に手をおいた。
一瞬、ビクッとする坂柳だが俺は気にせずに話を始める。
「坂柳さん。君の反省の念はよく分かった。もう大丈夫だから。」
「いえ…。全て私が悪かったのです。」
坂柳の卑下は留まるところを知らない。
やべぇ…。思った以上に重症みたいだ。心がポッキリ逝ってる。
俺は焦る。
わからせが効きすぎた。
どう声をかけてあげるのがいいのか。
真澄にもどう説明したらいいのか。
俺の頭の中はぐるぐる回る。坂柳を見るとボソボソと「ごめんなさい…。」を繰り返している。
俺が来たことでめちゃくちゃ悪化してないか?
おそらく、一度負の感情が出てそれが増幅して歯止めが効かなくなっているのだろう…。
俺はさらに焦る。
このまま帰るなんてこともできるはずがない。
どうなるかわからないがとにかく俺は行動を起こすことにした。
まず、坂柳の脇に手を入れ抱える。小柄なこともあり非常に軽い。
「なっ……何を………。」
強張り、困惑しているようだが知ったことではない。
そのまま、俺はベッドに腰掛けその膝の上に座らせる。そしてそのまま、坂柳の耳元で話始める。
「そう自分を卑下するな…有栖。」
坂柳はビクッと肩を震わせ「そんなこと…」とまだ否定するが、かまわず俺は話し続ける。
「まず有栖は可愛い。その透き通った肌に艶のある髪。まるで完成された芸術のようだ。その上、ベレー帽、ガターベルト、杖どれだけ要素を入れ込んでるんだ。そこを全部ひっくるめて有栖は可愛いんだ。」
「それに有栖は賢い。チェスで感じたけど相当な実力を持ってる。俺が後手ならまず負けていた。それに有栖はAクラスなんだ。それこそ実力がある証明だろう?それに真澄も、言ってたよ。相当頭がキレるみたいだね。真澄が他人を褒めるような人物なんだ。それは凄いに決まってる。わかったか?君は凄いんだ。」
とにかく俺は有栖を全肯定する。
「でも…………。」
それでも有栖の顔は晴れない。
それからも俺は有栖を褒め続けた。容姿も学力も性格もなんでも全肯定した。
頭も撫でた。手も絡めた。抱きしめた。
30分は経っただろうか…。おれは夢中で有栖を褒め続けていた中……、
「もう………、分かりましたから//」
有栖は俯いてそう呟いた。
一旦は俺の熱意は伝わったらしい…。
そうして、俺は有栖をこちら向きに座り直させる。俺は有栖のおでこに俺のでこをくっつけ
「有栖…。確かに君は世間知らずだった。だけどまだ15歳。知らないことなんてたくさんあって当たり前なんだ。それを知って反省出来ること自体、有栖は素晴らしいんだ。だから自分を否定するんじゃなくて認めてあげること。分かった?もし、認められないときはその時は俺を頼ればいい。君が認められなくても俺がそれ以上に君を認めてあげよう。」
俺は有栖と目を合わせてそう告げる。
「はい///。分かりましたから………、近い。」
有栖は頬を赤らめながら了承する。
その言葉を聞き、俺は顔を離しそして抱擁する。
「君はすごいんだ。」
耳元でそう俺は呟く。
そして、有栖をベッドへもどす。
有栖を見ると表情もかなり良くなったのが分かる。とにかく俺の対応は間違いではなかった。
そこから俺は少し有栖と話し、そして病室を後にした。
そこから数日で、有栖は退院し、そして学校にも戻ったらしい。
良かった。良かった。
そんな中、真澄から連絡が入る。
『ねぇ…。坂柳が妙にあんたのこと聞いてくるんだけど、あんた何かした?』
あれ、俺なんかやらかしちゃいました?
主人公が自分で落としておいて上げるって悪い男だな…。