次の日の朝、クラスの話題は一つのことで持ちきりだった。
テスト範囲が変更された
昨日の夕方に堀北グループが図書室で勉強会をしていたところ、色々あり結果としてBクラスよりテスト範囲が変わっていたことを伝えられたらしい。
その場に櫛田がいた事で、この情報はその日中にクラス全体へと伝えられた。
すぐに職員数へ確認に行ったらしいが、ただ悪びれもせず淡々と訂正をする茶柱教諭がいただけだったらしい。堀北さんは、すぐに切り替えたそうだ。
頑張ってるね堀北さん…。
そして今日の朝礼を迎えたのだが…
「先生。テスト範囲が変更になったと聞いたのですがほんとうでしょうか?」
平田がすぐに茶柱先生に聞く。
「あぁ、数日前に中間テストの範囲が変更されていたんだった。悪いな、伝えるのを失念していた。」
「そんな………。今更変更だなんて…。」
平田は明らかに動揺を隠せずにいる。
周りも不満な声がおさまらない。
「なんだ。私が謝罪すればいいのか?」
「どうしようとお前たちの勝手だが、テスト範囲が変更された事実は変わらない。それに私はこの中間テスト、お前たちなら必ず乗り越えられると確信している。」
そう茶柱先生は言い切る。
また含みのある言い方か…。
確かに乗り越える方法はこの特殊な学校ならあるんだろう…。
ただそれとこれとは話がちがうんだよ。
少なくともこっちは退学がかかってる。将来がかかってる。それを「伝え忘れてました」で済ますとは…、しかも一番始めに誠心誠意の謝罪すらない。
いい度胸してるんじゃないですかねぇ…茶柱さん。
俺はスッと立ち上がる。
「なんだ九条。お前も何か言いたいのか?」
「確認ですが、先生はこの報告忘れに対して、何も責任を追うつもりはないという事ですね?」
「先程も言ったが、私をどうかしたところで変更される事実は覆らないし、時間も戻らない。そういう事だ。」
「へぇ…。まああなたがそう言うならわかりましたよ…。」
そう言うと俺は席につく。
周囲からはもっと糾弾してくれ、との声も上がるが言っても意味はないだろう…。
でもいち大人が謝罪も出来ないのはダメだと思うんですよね…、早速動きますか。
幸いテスト範囲変更といっても1年生の1学期だ。入試テストで範囲が違うと言った壮絶なことには幸いなっていない。
クラスの大半は範囲変更との言葉に動揺を隠せていないが、しっかり勉強会を通して基礎は固まりつつある。そこまで深刻に考えることでもない。
とりあえず落ち着くようクラスには話をしていく。
佐倉なんかは同じ教室にいるのにわざわざチャットで『テスト大丈夫ですか?』と送ってきていた。すぐ目の前にいるだろ、とは言わなかったがとりあえず、安心してほしいと言っておいた。
みーちゃん達もアワアワしてたので、とりあえず両手をギュッと握ったら落ち着いた。
逆に堀北さんや松下さんなんかは凄い落ち着いてたのは流石だなあ、と感心してたし櫛田さんや平田君もクラス中に安心を振りまいていたのは流石だった。
あっという間に放課後になった俺はすぐに生徒会室へ向かう。一応昼休みにアポをとっておいたのでいるはずだ。
コンコンコン
「一年の九条です。失礼します。」
中には堀北会長と茜先輩がいた。
呼んでいたのは会長だけだったが、茜先輩もついてきたようだ。
「九条。話とはなんだ?」
世間話などはなく堀北会長は早速本題に入りたいようだ。まあテスト前でどこも忙しいのだろう。
「すみませんね。わざわざ忙しい時に…。」
早速俺は、テスト範囲変更の伝達ミスについて報告した。他のクラスは既に数日前に同時に変更連絡がある中、公平性が担保されておらず、またテスト結果による退学、ポイント数による将来が変わる可能性がある中でこの責任はどうするのか?
そのあたりを事細かに堀北会長に訴える。まあ生徒会長にそれをどうこうする権利はないと思うので、俺としては責任のある立場の人物を引っ張り出して問題として取り上げようと思っている。
その上である程度プライベートポイントでも取れれば良いかなと思っている。
俺の話に堀北会長は考え込む。
茜先輩は「それは大変でしたね…。」とこちらを同情してくれているようだ。
「話は分かった。確かに少なくとも落ち度は教員側にあるのは明白だろう…。ただどういう処遇になるかはわからない。しかしDクラスだけ退学措置の優遇などといったものは恐らくないと思う。あまり言えないが教員含めてのDクラスなんだ…。」
えらい重要なことを言われた気がする…。ということは茶柱さんもDになる理由があるのかも…?
「理事長に今話をしてみよう…。少し待っててくれ。」
「ありがとうございます。」
そういうと堀北会長は、すぐに電話をかける。
その間に俺は茜先輩を観察する。
ほんと小動物のようだ…。癒やされる。
間もなく、電話は終わり今から理事長と面会することが許された。流石会長。仕事できる。
「あっ、堀北会長。これとは別にお願いといいますかできれば契約したいことがありまして…。」
さて、こちらはどうなることか…。
「失礼します。」
早速、俺は理事長のいる部屋へ向かい理事長と会合していた。
「君のことは周知しているよ…。娘を助けてくれたそうだね。本当にありがとう。」
坂柳とあったので、もしやと思ったが有栖の父親だったらしい。
ただ、あの状態にした原因が俺にあるので凄い複雑な気分だ…。
話は今日の出来事になった。
俺は、こと細かに状況を説明。
成績でポイントや卒業先まで直結するこの学校でこのミスはどういうことか。さらに誠心誠意の謝罪すらない。こちらもそれならば出るとこ出るしかない。
そう理事長には訴えた。
理事長は俺の話に考え込んでいる。
何せ初めてのことらしい。
そりゃこんなこと何度もあってたまるか。
「君の話はわかった。茶柱教諭には何かしら処分を…。君たちにも何かしら配慮はしよう…。ただ恐らくプライベートポイントの配布くらいになるだろう…。」
まあ、俺としては茶柱に責任を自覚してもらえたらそれでいい。この行いに対する責任くらい追ってもらわないと…。ポイントの配布もそんな大量は期待していない。まあ小遣いくらいになればいいだろう。
そして、教諭側の聴き取りや実際どのくらいの処分にするかなど数日はかかるとのことなので、楽しみに待っておくこととしよう。
テスト2日前。
「申し訳なかった…。」
教壇の前で茶柱は頭を下げていた。
結果、クラス側には1万プライベートポイントの支給。茶柱側は生徒への謝罪と半年の減給処分となった。戒告でなく減給処分とはこの学校も思い切りが良いらしい…。
あの含みのある言いようが、テストの突破方法のヒントだったとしても流石に謝罪すら無いのは大人としてはおかしいからね。先生にはしっかりと反省してもらわないと。
先生の謝罪についてはクラスは特に注目することなく、どちらかと言うとプライベートポイントが支給されたことに喜びの声が上がっている。ほんと現金な奴らだ…………。
そして、その日の終礼。
「ちょっとみんな注目してもらっていいかな?」
櫛田が教壇に立って声を上げる。
「実は、上級生から中間テストの過去問を手に入れたの。それからこのテスト問題ほぼ同じ内容が出ることも分かったんだ。だから今日と明日はしっかりとこの過去問に取り組んでもらいたいと思ってるの。」
櫛田さんがそういうと、コピーした過去問を配り始める。
そう、堀北会長との取引のうちの一つはこの過去問だ。もともとは自力で乗り越えてもらうつもりだったが…、流石にテスト前に範囲変更となると100%の力とはいかないだろう…。特に堀北組は…。なので過去問を取り寄せた。幸い茶柱も含みのある言い方をしていたのでたどり着くのは簡単だった。
あとは、どう入手するかだったが…、堀北会長とはいい契約を結べたので良かった。
その過去問だが、俺が配っても良かったが櫛田さんには色々負担もかけてるし、今回の、英雄になってもらおう…、ということで櫛田さんにお願いしてこうして配ってもらった。
池らを中心に櫛田を崇める連中が殺到していたが、櫛田は満足そうにしている。
俺としても少しでもストレスを落ち着かせてもらいたいものだ…。
そうして、テスト当日を迎える…。
淡々と進みすぎた気がする…。
まあ気にしない。もっといちゃつかせたいんや…。