女たらしが往く実力至上主義の教室   作:俺は社畜

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少し難産でした…。


25話 つかの間の休息/堀北鈴音の独白

 

 

今日は放課後久々に図書室へと向かう。

 

前から1ヶ月近く経ってしまった。

 

 

熱心に本を紹介してくれた椎名さんには悪いことをしてしまった。クラスの事情とはいえかなり期間を空けた。

一応椎名さんには勉強会を行うためしばらく図書室にはいけなくなったとは伝えてある。

椎名さんもクラスの事情ならば仕方ありませんね、とはいってもらったが彼女はクラスで本仲間がいないと日々嘆いていたので、気にはなっていた。

ただテスト対策のプリント自作など中々時間が取れずに、気がつけば6月になっていた。

 

 

図書室に入ると、いつもの窓側の席に見慣れた顔が見えた。本に集中しているようでこちらには気づいていない。

 

 

相変わらずのようで、俺は安心する。

 

 

 

 

俺は彼女の方へ歩いていく。彼女の横にまで行っても彼女は気づいていないようだ。

 

 

ガタッ

 

 

「隣失礼します。」

 

 

その言葉に彼女はハッとこちらを見る。

 

 

「まあ、九条君!お久しぶりですね。」

 

 

本を置き、俺の手を取る。満面の笑みでこちらを見つめる。

あまりに真っ直ぐな瞳に俺は少したじろぐ。

 

 

「ごめんね、中々図書室に来れなくて。なにより元気そうで良かったよ。椎名さん。」

 

 

「いえいえ、クラスの事情もありますし、仕方ありません。それよりもまたこうしてこの場所で九条君とお話できること自体が幸せなんです。」

 

 

率直な喜びを椎名さんは俺に伝える。

 

 

ここまで真っ直ぐな女性は初めてなので、俺も正直どぎまぎしてしまう。

 

 

一切下心がない目、心からの言葉、なんて穢れのない女性なのだろうか…、この子は絶対このまま真っ直ぐに生きてもらいたい。いや、そう俺がする。

 

俺は心に決めるのであった。

 

 

 

 

そこから、いつもどおりおすすめの本を教えてもらい数冊本を借りた。

そこからしばらく椎名といたかったのだが、あいにく予定があるので先に図書室をあとにする。

 

またすぐ来るから…椎名さん…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図書室を出て、俺は自室へと戻っていた。今日はあるクラスメイトと約束していたので部屋に招いていた。

 

 

早めに夕食の支度をして、その生徒を待つ。

 

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

18時半に差し掛かった頃、チャイムがなった。

 

 

 

 

「よく来てくれたね。堀北さん。」

 

 

 

 

……、なんか女性ばっか最近招いてね?

と思った人、それは気のせいだ。

 

 

 

 

 

 

「まず前にかなりキツイ当たりをしてしまってごめんね。ずっとそれが気がかりでね。謝ろうと思ってたんだ。」

 

 

 

まず、一番に俺は堀北さんに謝罪する。

本人のためとはいえ、中々きつく当たってしまったのでそこはしっかりと謝ろうと思っていた。正直嫌われても仕方ないとは思っている。

 

 

ただ、堀北さんは「寧ろ感謝している。」といってくれたのでとりあえず一件落着としておく。

 

 

 

 

「さて、それで話は何かな?」

 

 

 

今日は堀北さんからコンタクトがあったので、本題に入ろうとそう訊ねる。

 

 

 

 

 

 

「……ありがとう。兄さんと引き合わせてくれて……。」

 

 

 

あぁ…、会長さっそく接触したんだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、あの日テスト範囲変更について生徒会室へ訪れたときのこと。

俺はいくつか堀北会長と契約を交わすこととなった。

 

 

まず俺がお願いしたのは、テストの過去問。これはポイントなど見返りによってすぐに取引の合意を得た。

 

それから2つ目。これは、堀北さんの成長に関わることだと感じたので会長が堀北さんに本音で話す機会をつくってほしいとお願いした。

会長は眉間を寄せ、何をお前は言っているのか…、とはぐらかされたがなんとか、今のままだといつまでもあなたの幻影を追いかけ続けてしまうこと、彼女なりにAクラスへ行こうと思考はしていること、あなたの言葉が何よりも彼女の成長につながること、など力説して説得に至った。

 

そしてもう一つは………、これは今は関係ないのでまたその時になれば出てくるだろう。

 

 

 

見返りにこちらからはまず「堀北さんを押さえつける堀北会長の写真」の削除を申し出た。これを言った時の堀北会長は「お前もか……。」と眉間を指で押さえていたのが面白かった。

あともう一つが堀北さんをしっかり支えること、悪意から排除すること。裁量は俺に一任された。しかし「じゃあこちらからの条件も付け足そう…。」なんて言われた時は何を言われるかドキドキしたが……、あなたもよっぽどシスコンだろ………。真面目な顔して中々妹大好きなようだ。

まあ俺も各学年を見て回ったときに2年に少し感じの悪い人を確認していたので、恐らく主にそいつ対策だろう。なのでこれは来年以降の話の契約が主になるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

簡単に回想するとそんな契約があったわけだがテストが終わり会長から堀北さんへコンタクトがあったらしい。

 

 

 

「私はどうにか兄さんに追いつこうと必死になってた…。ただ…これからは「私」は「私」として努力していこうと考えを改めたわ。」

 

 

そう堀北さんはきっぱりと宣言する。目には迷いがないようだ。

 

 

やはり兄は偉大だったらしい…。堀北さんがとてつもなく生き生きしてる。よほど兄さんの本音を聞けてご満悦のようだ。

 

 

 

「凄いやる気だね。どうしたの?頭でも撫でられたの?」

 

 

俺は少し茶化すように堀北さんに訪ねた。

 

 

「なっ……。あなたまさか見ていたの!?」

 

 

………図星だったらしい。何いちゃついてんだ。

 

 

「いや、冗談だよ……。まさか本当だとは…。まあお兄ちゃん大好きな堀北さんだから仕方ないね。」

 

 

「忘れなさいっ。///」

 

 

堀北さんは恥ずかしくなったのか赤面しながらそう言う。

 

しかし、入学時からまだ2ヶ月だが、堀北さんもだいぶ丸くなったように感じる。初日なんてそこら中を威嚇するかのような目つきをしていたが今は可愛いものだ。

うん、子供の成長は早い…。

 

 

「そういえば、ちゃんと言ってなかったけど勉強会お疲れ様。無事退学ゼロで乗り越えたのは堀北さんの努力あってだったよ。」

 

 

「別に私は……。結局綾小路君や櫛田さんのフォローあってだったし、それに最終的には過去問も……、あっ聞こうと思っていたのだけれど過去問も櫛田さんが配っていたけど、兄さんからあなたが手に入れたと聞いたのだけれど?」

 

 

そう卑下する堀北さん。

少し前までなら私のおかげ、とか言いそうなのに凄い変わりようだ。

 

 

「まあ櫛田さんの方がクラス全体の信頼高いし効果的だと思ったから頼んだよ。」

 

 

櫛田さんの自尊心のためとは言えない…。

 

 

 

 

「ところで、勉強会成功させたら何かご褒美って言ってたけど何か考えた?」

 

 

 

俺は話題を反らす。

前に冗談混じりに提案したら案外乗り気だったのだ。

 

 

 

「え……。」

 

 

ただ堀北さんもまさか本当とは思ってなかったのか、目線をあちこちに動かし、狼狽えている。

 

 

 

 

 

こちらを覗ったかと思うと目線をそらし時間だけが流れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー堀北sideーーーー

 

目の前にいる彼、九条君の第一印象は軽い男かつ頭のまわる人だった。

いきなり人の容姿を褒めたり、かと思えば考えつかないようなことを考えていたりしていた。当時の私は他人と関わることなんて全く考えてなかったから、特に深く彼についてそれ以上考えることは無かった。

ただ、入学間もなく兄さんと関わりを持ったことは驚愕だったわ。あの兄さんがこんな男と関わることを許すなんて…、正直嫉妬していたと思う。

そこからの彼は傍から見ていても分かる有能ぶりだった。運動能力は高いし、話す機会があれば教養の高さも見える。ただやはり軽い男。それだけはマイナスだと思う。

 

状況が変わったのは5月。学校のシステムが判明してクラスはパニック状態。その中で彼は入学早々にこのシステムを看破したらしい。その時やっと兄さんが関わった理由が分かった。彼も兄さん側に立つ人物だと。ただそれ以上に私自身が不良品扱いされたことにその時は頭でいっぱいだった。すぐに先生に説明を求めに行ったわ。ただ確信に迫ることはできず、途中現れた九条君、綾小路君の成績から彼らもなぜDクラスなのかに疑問を持った。

 

疑念は払拭しなかったがとにかく私は兄さんに認めてもらうため、Aクラスに何がなんでも上がらないといけない、そう決意した。そこで彼らはAクラスに行くための駒として必要だと思ったわ。今考えると何様だと思う…。だけど当時の私は協力なんて弱い人達がやる行為程度に見下していたの。

 

私はAクラスへ上がる第一歩として中間テストの成績向上を目標にした。平田君らの勉強会へも参加しない勉強苦手組を対象に私の手で学力向上を目指したわ。

ただ蓋を開けてみればあまりの不出来っぷり、さらに向上心のかけらもない。私はすぐに彼らを切り捨てる選択に変更した。

 

次の日、九条君にその件を聞かれた。私は別に悪びれもなく切り捨てることを伝えたわ。それについて九条君は私を批判した。はじめ私は憤りしか感じなかった。彼は彼らの悲惨さを見ていないからそんなことを言えるのだ、と…。ただ彼の実績や私の不甲斐なさ、その現実をまじまじと突きつけてくる。終いには兄さんと同じような失望の目でこちらを見てくる始末。私はいつの間にかどうしていいのか頭の中でグチャグチャになったわ。

「じゃあどうすればいいのよ!」

私は幼児のようにただただ叫んだ。彼は引き続き冷たい視線だったけれど、兄さんと違って道筋を示してくれたわ。そしてこんな私に最後には期待の声をかけてくれた。

 

ゾクッ

 

身体の奥が震えるような感覚があったけれど、とにかく私は再びやり直そう、そう思ったわ。

 

 

その日の夜は分からないけれど少し身体の火照りがあって中々寝付けずひたすら勉強会のこと、それから気が付けば彼のことを考えていた。

次の日には早朝から彼の部屋に押しかけた。今思えば軽率な行動だった。けれど私は自分の考えを彼にとにかく聞いてもらいたかったのだと思う。

彼は私の意見を優しく認めてくれた。その上でアドバイスもくれた。

あぁ彼についていけば間違いない、いつの間にかそんな考えさえ私の中では出ていた。しかし彼は全ての道筋は教えてくれず、自分でも考えて見ることも大切だと説いた。私はその瞬間、また失敗したらどうしよう、だとか彼に失望されたらどうしよう、とか不安な気持ちが溢れた。ただ彼はもし成功したらご褒美考えとかないとね。と優しい笑顔でそう言った。

その顔に私から不安という文字は消え去っていた。

 

 

テストは無事に終わった。

テスト範囲変更変更という不測の事態が起きたけれど、櫛田さんが過去問という手段で事なきを得た。私が主導した勉強会は結局意味があったのかは定かではない。私がやった事に意味があったのだろうか…。

そんな思考が巡る私に彼は「お疲れ様。」と一言声をかけてくれた。負の感情がスーッとなくなるのが分かる。

 

そこから間もなく、兄さんから接触があった。その時私は何かやってしまったのか…、不安になった。

 

ただ、兄さんからは今まで強く当たってきたことへの理由と謝罪。私に対して自分自身の思うように歩んでほしい旨の話を聞いた。

そして、これは九条君によってこの場を設けられたことも伝えられた。

 

 

彼はどれほど私の心を乱せば気が済むのだろうか……。

 

 

とにかく無事に兄さんと和解も出来た。九条君には感謝しかない。直接言いたい気持ちが溢れ、私は彼にアポイントを取り、彼の部屋へ訪れた。いきなり謝罪された時は驚いたが彼の誠実さを再確認した。少しそこからも話をして、

 

「ところで、勉強会成功させたら何かご褒美って言ってたけど何か考えた?」

 

そう彼は私に言う。

 

正直、私の勉強会といよりは過去問あってのテスト結果だ。別に成功とは言えないだろう…。ただそんな気持ちとは裏腹に私は、彼と一緒に話したい、出かけたい、また相談に乗ってほしい、一緒にいてほしい……………、様々な思考が瞬時に巡る。

 

 

 

 

 

 

あっ、私は彼のことが好きなんだ。

 

 

そう気づく。一度気付くと頭が真っ白になってとても恥ずかしくなった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー九条sideーーーー

 

 

堀北さんはまだだんまりを続ける。

よっぽど悩んでいるのだろうか…。ただ堀北さんを見ると褒美を言うのが恥ずかしがっているようにも感じる。

チラチラこちらを覗ったり顔を赤くしたり何やら騒がしい。

 

 

ギュッ

 

 

そんな堀北さんの右手を握ってみる。

 

 

 

「っ////」

 

 

堀北さんは驚いたみたいで目を見開きこちらを見る。

 

 

「そんなに難しく考えることないよ。」

 

 

俺はそう言う。

 

 

「…………………、正直勉強会は成功とは言えないわ…。過去問あっての成功だわ。」

 

 

堀北さんは少し考えるとそう呟いた。

さっきまで色々葛藤してそうな感じだったが、結果的に自制心が働いたのだろうか。否定的な言葉を呟く。

 

 

「何言ってるんの。彼らに手を差し伸べるのがどれほど大変なのか…。それを行ったことじたい君の功績だし、実際最低限学力はついてきてる。しかも君はまだ授業ごとに彼らにわからないとこはなかったかこまめに聞きに行ったりもしてる。君がいてこその彼らなんだよ。堀北さん…、君は誇っていいんだよ。」

 

 

俺はそう諭す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………、じゃあ………あの叱ってくれたあの日みたいに名前で呼んでほしい…です。」

 

 

恥ずかしいのか、俯きがちにボソッとそう言う彼女。

 

 

「鈴音?これだけでいいの?」

 

 

 

俺としては、これは褒美になるのか?と疑問に残るが堀北さんはとても満足そうなので、良しとしよう。

 

 

 

「……、そんなことより…いつまで手を握ってるのかしら………。」

 

 

 

「あっ、ごめん。」

 

 

 

堀北さんの指摘に俺は離そうとするが、堀北さんは反対に指を絡めてくる。

そのまま俺を引き寄せ、彼女の顔が俺の胸に吸い込まれる。

 

 

「………、将君。………本当にありがとう。」

 

 

 

そう呟くと、バッと離れ部屋を出ていった。

最後にチラッと見えた顔はびっくりするほど真っ赤だった。彼女らしくない行動だったのでよほど恥ずかしかったんだろう……。

 

 

 

 

 

それにしても、あんなにツンツンしてる子のデレがこんなに破壊力満点だとは……、堀北会長がシスコンになる理由がよく分かった…。

 

 

 

お兄さん………、鈴音さんのことは必ずや守ってみせますからね。

 

 

 

 




まだ1学期なのに順調に被害者がふえている。
歯止めはまだまだ効かないようだ…。

それからまたアンケートご協力お願いします。
夏休み小話について出してほしいキャラを募集します。
基本、前回までのアンケートで人気だったキャラからにしてます。まだ関わりないキャラだったらどうしよう…。

夏休み小話誰の話見たいですか?

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