夜は8時を過ぎた。この時間になると男子は女子寮への立ち入りが禁止される。ただその逆は何故か許されている。
ただ単に男女の乱れ禁止するならどちらも禁止すればいいのに…………。
どういう意図で許されているのかわからないのだが、俺も許されていることを活用している身なので何も言えないか…。
ピンポン
ほぼ約束通りの時間にチャイムが鳴る。
俺は深呼吸を一回して、ドアを開ける。
その瞬間、俺は身体に衝撃を感じる。
真澄が突っ込んできたらしい……。
「あらあら……。」
廊下には、有栖が俺と真澄の方を見て面白いものを見るように眺める。
有栖は呼んでないんだけど……。最近メスガキ感が増してきてるんだよな…。
なんかムカついたので俺はドアを閉める。
「なっ。開けてください!!!」
有栖はなんか言ってるが、そのまま無視してやろうかと考える。
ドンドンドンドン
ドンドンドンドン
ただ、夜で周りにも部屋はあるのでドアを開けることとする……。
「………、九条君なんて嫌いです……。」
ジト目でこちらを見る有栖だが、色々知っている身なので全く怖くない。
「あーごめんごめん。」
俺は有栖の頭を撫でる。
すぐに大人しくなるあたりとても扱いやすい。
ただ今この間にも俺の胸には真澄が張り付いている。
「真澄、有栖。とりあえず部屋に入ろう?」
部屋の中へ移動するが真澄は、なお離れる気配を見せずにいる。現在、俺はベッドに腰掛け真澄は対面に抱きついている。
有栖も断りなく俺の横に腰掛ける。
「真澄。心配かけたのは悪かった……。ただ見ての通り俺は全く無事だ。もう心配することはないから…。」
ここまで全く無言の真澄に何かアプローチを取ろうととにかく声をかける。
しかし、真澄は反応することはない。
「ほんとごめんな。」
俺は声をかけたり、背中をさすったり撫でてみたりアプローチを続けた。
なお、効果は見られない……。
しばらく格闘し続けるが、時間が過ぎるのみ。
「あの……、私もいるのですが?」
そんな状態に痺れを切らしてか有栖が杖で俺の足を突きながら不満そうに声をあげる。
いやいや、どう見ても真澄優先だろう。それに有栖は本来呼んでない。
とは言わないが………。
「有栖は大丈夫そうだし、この状態の真澄をほっとけと?」
「今の状態面白くありません。」
君は何を求めてるの?
ただ有栖と関わって分かったことがある。元々好戦的な才女と言った印象からあの一件から丸くなった。ただ根本的には子供っぽい。というより容姿も相まって女児という言葉が似合う。
「なんだか、失礼なことを考えてますね…?」
そんな俺の思考を読んでか有栖が俺の足先を杖でグリグリと動かす。
めんどくせぇ……。ただ自信喪失していた時から回復したことは素直に誇らしくも思う。
「ごめんて。後でかまってあげるからちょっと今は我慢してな?」
かろうじで片手で有栖を撫でる。
「むぅ………。なんか私の扱い雑じゃないですか?」
そう不満を垂らしながらも俺の手を受け入れる。
女児だからかチョロくもある…。変な男に騙されるなよ…有栖…。
しかし、そう有栖にかまっていると今度は真澄が面白くなかったのかゴソゴソと動き始める。
足を俺の背中にまわし、木にしがみつくコアラみたいな形になる。
ただやはり言葉は発しない…。
俺はされるがままに抱きつかれるが、正直どうすればいいのかお手上げ状態でもある。
「真澄?暑くないの?」
かなり密着している。俺はじんわり汗ばんできていた。
ただそれでも真澄の返事はない。
流石にずっとこのままとは行かないので何かアクションを起こそうかと模索する。
そこで俺はくすぐってみることにした。
真澄の腰をもにもにしてみる。
ピクッ
少し反応を示す。腰も少し捩る。
次は脇を攻めてみる。
「ふっ…。」
少し声が漏れた。
ただまだ応答はない。
そのため、脇や腰を弄る力を強める。
真澄は逃れようと捩り続けるが、ついに我慢できずに声をあげる。
「ふっ、やっ………やめて////」
声色は悪くなく俺は安心する。くすぐる手も一旦止めた。
「やっと声を聞けたよ……。真澄?」
「はぁ……はぁ……はぁ……。」
真澄はよほど我慢していたのか息が切れている。その吐息になんだかいけない事をしたように感じてしまう。
「まず改めて心配かけてごめんな。電話にも出れなくてごめん。」
改めて謝罪を入れる。
「…………………、私がどれだけ心配したと…………、許さないから。」
簡単には事は進まないらしい。
「ほんとごめん。許してほしい。」
「ダメ。もう私がずっと一緒にいる。」
重い………。目が据わってるし…。どないしよ。
真澄の圧に俺は圧倒される。ただ流石に四六時中一緒にいるわけには行かない。
「怪我も軽傷だし、ずっと一緒だと真澄に申し訳ないよ。」
俺はやんわり断りを入れる。
「だめ。私が一緒にいないと……。また将が傷ついちゃう。将って優しいもんね。だってこんな私を救ってくれるんだもの。出会ってすぐの赤の他人にここまで尽くしてくれるんだもん。突き放さずに寄り添って毎回毎回嫌な顔一つせずに私の話を優しく聞いてくれる。坂柳のこともだった…、詳細は知らないけどどうせその優しさで懐柔したんでしょ?おかげで坂柳も将の前では乙女の顔だし。って別にそれはどうでもいいの。そう、何が言いたいかって将は優しいの。どうせ今回のことも誰かのために身体張ったんでしょう?えっ、って顔してるけどやっぱり図星?そうだもんね。将は誰か困ってると誰でも手を差し伸べるもん。別に誰か助けてあげるのは将のいいところだと思うし……、少し妬いちゃうけど…。けどそれじゃ今回みたいに傷ついちゃう。今回は無事だったけどそんなんじゃあ、いつか大変なことになるに決まってる。そんなの私が耐えられない。将が誰と一緒にいようと誰と付き合おうと誰と愛し合おうと私は将が幸せならなんでも受け入れるけど、将がいなくなるのだけは耐えられないの。それならいっそ私が、ずっと一緒にいてもしもの時は私が身代わりになる。私のために私のそばにいて?」
………………………………………(思考停止)、
チラッと有栖を見てみるが不干渉するらしく、明後日の方向を眺めている。
なんだよ、都合悪くなれば関係ないってか!
……………、ってそんなこと考えても仕方ないよな…。真澄の事は俺がちゃんと見るって決めてたんだ。俺がちゃんと向き合わないとな……。
「真澄?」
俺は真澄の顔を目の前にして目線をあわせる。
「ありがとう。そんなにも俺のことを想ってくれてたんだな。それなのに俺はそこまで思い詰めるくらい心配かけた。何回でも言う。本当にごめん…………。」
俺は真っ直ぐに真澄を見つめて話を続ける。
「それからやっぱりこの性格は治せない…。これは俺の性分だから…。でもこれだけは言える。絶対真澄より先にいなくなることはない。」
「……今の状態だと説得力ない……。」
真澄はそう呟く。
ぐうの音も出ないが俺はさらに続ける。
「確かにね……。でもこれは納得してもらうしかない。俺はあの日君と色々話してから君を守ると決めている。達観してるようで孤独で壊れそうだった君に俺は笑ってほしいって、そう思ってた。そんな君を支えたいって思った。今、確かに君を不安にさせた。そんなこと言う権利はないかもしれない。けどそう俺は決めた以上君が望まない限り、いや君が望んでも君のそばから離れることは絶対無い!!!絶対だ!!!」
俺は宣言する。
まだまだ教官みたいにはなれない……。
ただ俺も俺なりに真澄や有栖、他にも多くの娘達には笑っててほしい。まだ不甲斐ないことばかりだが、それは本心だ。
真澄には俺の言葉が伝わったか分からないが顔を伏している。
ただ俺の本気は伝えたと思う。
真澄は肩を震わせている。
「…………そんな言葉………卑怯じゃん…………。」
バッと真澄はこちらに顔を向けるとそのまま俺に向かって…………………、
唇に唇を押し付ける。
特に舌を絡めたりすることのない、ただ押し付けるだけのキス。
ただ俺はそれをそのまま受け入れる。
有栖……?知らんそんなの、今は真澄の時間だ。
どれくらいたったか、真澄が離す気がないのかずっと押し付け続けているので、流石に一旦俺は離れようと後方へ頭を引く。
「…ンッ…………ダメ…………もっと……。」
ただ真澄の許しは出ずにもう一度唇同士が重なる。
今度は真澄の腕が俺の後頭部をがっしりと固定する。
ただ相変わらず押し付けるだけのキスらしい……。
「はっ!!………思わず見入っていました………。なーにしてるんですかー!!!私がいる前でイチャイチャと!!」
終わらない口づけに思わず有栖から待った、がかかる。てかお前見入ってたとか言ってたな。女児の癖してムッツリなのか?
俺と真澄は有栖によって引き剥がされた。ただ真澄は恍惚とした表情で有栖の反対側を陣取る。
もちろん腕は俺に絡めている……。
「真澄さん?流石にそれはライン超えではありませんか?」
有栖は青筋を立てながら真澄に問う。
「将は満更でもなさそうだけど?」
真澄の言葉に有栖の鋭い視線は俺の方に向く。
「…………はい。なんかすみません。ただ俺からしたらご褒美です。ありがとう真澄。」
真澄は俺の言葉に勝ち誇った顔をする。一方有栖はぐぎぎ…、といった顔。
有栖はイジリがいがあるなあ…。
しみじみそう思っているが、有栖から思わぬ一言が飛んでくる。
「いいですよ。私も九条君とキスは済ませてますから。(15話参照)」
「はぁ?」
真澄の顔が一瞬で般若になる。
おい有栖。何爆弾投下してるんだ。てかあれだろ?人工呼吸のことだろ?何それをキスとカウントしてるんだ。そんなんでマウント取るなよ。
「真澄。誤解だ。医療行為だ。人工呼吸だ。」
思わぬ迫力に俺はカタコトになりながらも端的に事実を伝える。
「ふっ。そんなことだと思ったわよ。」
再び真澄は勝ち誇った顔になる。
「ぐぎぎぎ………。………それなら……」
真澄がいつの間にか表情が戻っているようで俺はホッとしていた。目も生き生きとしている。
二人のやり取りをよそに俺はそんなことを考えていたのだが、不意に有栖の方に顔を向けさせられる。
おいおいお前もか………。
ただ俺はやられるがままになる。有栖の手が俺の頬を掴む。主導権が有栖っぽいのがいただけないが今は身を任せる。
「…チュ…ンッ……チュ…ンハァ…チュ…チュ…」
真澄と違い有栖は拙くも舌をねじ込んでくる。やっぱりムッツリらしい……。
ただ真澄が黙ってる訳もなく……
「何濃厚なのしてるのよ!!////」
「それに将も何簡単に許してるの!」
真澄ごめん。今の俺は受け身なんだ…。
形勢逆転。今度は有栖が勝ち誇った顔を向ける。
「あらあら、真澄さん。まああなたは押し付けるだけのお子様ですからね…。」
有栖、やめな。そんなに煽ると…………
「くっ………。将!!!!!」
俺の顔を無理やり自分の方へ向ける真澄。
やめて、首イタイ……………。
そのまままた顔を近づけ………
カッッッ
「いっっっ……………。」
慣れてないからか歯がぶつかる。
勢いよく顔を寄せたため結構な衝撃が来る。
思わず真澄は口元を抑え涙目になっていた。
「フフフ。ほら、まだまだお子様じゃないですか。」
さらに有栖は勝ち誇り胸を張る。
「ふん。そんな貧相な身体でなにがお子様ですね、よ。そのまま言い返してやるわ。」
真澄の強烈なカウンターが炸裂する。
「なっ!」
真澄、それは巨大な地雷だ………。
有栖、煽り過ぎなのはクソガキにしか見えないぞ……。
俺を挟んで言い合う二人に俺はただ口を挟むことなく静観する。
こら、有栖杖を持ち出すな。
真澄、貧乳超えて無乳、はやめてあげなさい。有栖が涙目ですよ。
有栖、無乳じゃありませんって脱ごうとしないで…、あなた淑女なんでしょ?
真澄、さらにそれを見て鼻で笑わないであげなさい。
「二人とも。そろそろ止めなさい。有栖はじゅうぶん魅力的だし、俺は君で欲情もします。真澄、君もその男を知らないピュアさが俺にはドストライクなので、全然気にするどころかステータスだと思ってください。以上!!」
よし、なんとか締めた!!!!!
ん?有栖、何顔赤くしてるんだ?
じゃあ触ってみます?欲情してもいいんですよ?じゃありません。
真澄?男を知らないピュアさがいいならあんたが色々と教えなさいよ。じゃあないよ?
あっこら、服を脱ごうとしない。
その手どこ触ろうとしてるの?
てかなんか目が血走ってないか?
大丈夫だって?いやいや、明らかにヤバい顔だよ?
ステーイステーイ!ステイ!だからステイだって!!
チュンチュンチュンチュン
両サイドにスヤスヤ眠る二人。
とても気持ち良さそうに眠っているようだ。
……
………
………………
……………………………
何も無かった!!!!!!
いいね!?
真澄の長文(君を想って…♡)
誰かに重め長めの想いは言ってもらいたかった……。何名か候補はあったのですが、まずは真澄にお願いしました。
あとナニがあったかはみなさんの想像におまかせします。
多分お泊り会でもしたんでしょ(すっとぼけ)