「今日はお前たちに報告がある。先日学校でちょっとしたトラブルが起きた。これはこの支給されていないクラスポイントの件にも直結する。そこに座ってる須藤がCクラスの生徒との間で騒動をおこした。」
翌日のホームルーム、茶柱先生からそう報告があがった。
その言葉に教室中がざわざわと騒がしくなる。
そこから淡々と説明が入った。
須藤とCクラスが揉め事からクラスポイントの削減がある可能性が高く、場合によれば停学などの処分もあるとのこと。
そして、結果はまだ出ていないのか?との質問が飛ぶ。
「訴えはCクラスからで、どうやら一方的に殴られたらしい。須藤に確認したところ、それを事実ではないと否定した。先に仕掛けたのはCクラスの生徒たちの方で、須藤は彼らに呼び出され、挑発などを受けた上、向こうから殴りかかってきたらしい。」
「あぁ、俺はアイツらが殴りかかってきたから反撃しただけだ。俺はどちらかというと被害者だ。」
「だが証拠がない。違うか?」
「……。」
須藤はあくまでも自分は悪くないと言い張るが先生からの指摘に須藤は黙るしかなかった。
実際、Cクラスは複数の怪我のあとがあり須藤は無傷。その上、トラブルの報告もせず週末を過ごしていた。心象も良くないだろう…。
「だが、このように意見が食い違っているのは事実だ。そのため結論が保留になっている。どちらの主張が本当かによって処遇も大きく変わるからな。」
「ちなみに須藤たちの喧嘩を目撃した者がいれば挙手をしてくれ。」
その発言に、愛里が少しびくつく。
愛里は俺の方をチラチラ見ているが、俺は首を横にふる。
手を上げる生徒は1人もいない。
愛里には少し負担をかけるが、ここはやはり俺が動いたほうが良さそうな事案っぽい。あの映像から明らかにCクラスからの攻撃。それをCクラスから訴えをおこしている。明らかにDクラスを貶める行為だ。まさかクラス間の競争とはいえ、犯罪紛いな行いまであるとは…。まあ、確実な証拠がこちらにあるとはまさかCクラスは思ってないだろう…。
滑稽に踊ってもらおうかな………。
「残念だが、このクラスには目撃者はいないようだな。」
「くっ……!」
そんな俺の思惑をよそに目撃者ゼロという現状を突きつけられ、須藤は悔しそうにする。
須藤にも少ししんどい立ち位置にしてしまうが、手を出したことの反省がてらそのままでいてもらうぞ。
「学校側も目撃者や証拠集めのため各防犯カメラの確認などを行っている。それぞれのクラスにも今説明をしている所だろう。」
学校も流石に静観するわけにもいかないだろう。
………しかし3ヶ月で傷害事件、暴力事件て…、この学校大丈夫か?
半ば故意の傷害事件だったとはいえ、立て続けに暴力沙汰って治安悪くね?と思うのであった。
「とにかく話は以上だ。目撃者や証拠の有無を含め、最終的な判断は来週中旬までには下されるだろう。それではホームルームを終了する。」
先生が教室から退出する。
須藤も流石に居心地が悪いと思ったのか、教室から出る。
しん、とした空気がクラスに漂う。
「須藤の話、あいつ最悪じゃん。」
誰かが声をあげる。それを皮切りにクラスの不満が溢れ出す。
「あいつのせいで…」
「絶対手出してるじゃん。」
「ついにやらかしやがったか。」
普段の態度も相まって、クラスはほぼ須藤が悪い、という空気に染まっていた。
「ちょっといいかな?」
そんな中、櫛田さんが声をあげる。
彼女は、須藤は悪くないと演説する。
彼も4月のことを反省して5月以降は過ごしていた。彼もクラスの一員で彼の意見を信じたい。そしてみんなで彼を救いたい。
その意見に平田もすかさず賛同する。
クラスの2大巨頭がそんな意見を出してしまえばクラスの考えはすぐに軌道修正される。
流石だわ…。
証拠を握ってる俺は少し罪悪感を持ちながらもそのクラスを黙って眺める。
そして、櫛田・平田中心に須藤の無実を証明する部隊が発足する。俺はその場には静観しようかと思ったが、櫛田さんに頼まれれば断るわけにも行かず……………、
昼休みにそのグループ全員で食堂に来ていた。
俺、清隆くん、櫛田さん、堀北さん、池、山内、そして須藤だ。
平田は別働隊として動き、こっちでまず状況を聞くらしい。
てかほぼ堀北勉強会だが、俺は邪魔じゃなかろうか…。櫛田に頼まれ、鈴音に引っ張られてあれよあれよとこの場に居る。
まあ鈴音も半ば無理やり連れてこられた一人のようだが…。
さっそく鈴音は呆れたようにため息をついた。
「須藤君…。私、口酸っぱくトラブルは起こさないよう注意してたわよね…。」
鈴音は勉強と共に日々喧嘩っ早い須藤を注意していた。その度「そんなことしねぇよ。」と笑っていた須藤だがこのザマだ。呆れるのもわかる。
「友達だから助けてやるよ須藤。なんか奢れよ!」
池や山内はそんなことを呑気に言っている。
お前らもさっきは非難してただろ……。よくもそんなこと言えたな…。
そんな池達に須藤は「悪いな」と軽く謝罪をする。
「それと堀北。また迷惑かけちまったな。でもよ、今回俺はマジで無実だからよ。何とか無実を証明してCクラスをギャフンと言わせてやろうぜ。」
呆れる鈴音を他所に須藤はそう言う。鈴音は眉を吊り上げ、睨みつけるように須藤を見る。
「申し訳ないけれど、私は今回の件、協力する気にはなれないわ。」
鈴音はそう言い放った。
まさかの答えに須藤はキョトンとしている。
「あなたのその態度が気に食わないわ。どうしてそう飄々と入れるのかしら…?事実はどうとあれ、あなたがクラスに迷惑をかけたのは間違いないことよ。それならまずしっかり謝罪するのが筋じゃないのかしら?それが、「俺は無実だ。」って謝罪は無い。おそらく、あなたの一件はポイントが支給されることはなくなるでしょうね。まず反省しなさい。」
鈴音はきっぱりと拒絶の言葉を並べた。
須藤が慌てて追い縋るように声を上げた。
「待てって。そりゃ確かにそうかも知れないけどよ。マジで俺は悪くないんだって! 向こうが仕掛けてきたから返り討ちにしたんだよ! 正当防衛じゃねえか!それのどこが悪い!」
「あなたはどちらが先に仕掛けてきたかを重要視しているようだけど…、そんなことは些細な違いでしかないのよ。そのことに気が付いてるの?」
「些細ってなんだよ。全然ちげえよ、俺は悪くねーんだ!」
鈴音は自分に否がないと本気で思っている須藤を心底気に食わないのだろう。
鈴音の言葉には少なくとも自身の行動で迷惑をかけたことをまず反省して、謝罪する。その当たり前のことすらできない奴に手を差し伸べることはない。そういう意図が見えている。
鈴音もただ否定するだけじゃなくなったところ…、成長してるなあ。
場面はギスギスしているが、俺は鈴音の成長をほのぼのと見つめていた。
「じゃあ、精々頑張ることね。」
「助けてくれねーのかよ! 」
鈴音はさっさと立ち上がり、その場を後にする。ちらっとこちらを見て「将君は戻らないの?」と言いたげな顔をしていたが、俺は一旦残ることにした。
立ち尽くす須藤は「なんなんだよ…。」と不満げにしている。
全く鈴音の意図は伝わってないようだ。
…………はあ、あまり乗り気ではないが……、少し手を差し伸べるか…。
俺は全く反省の念がない須藤を諭すことにした。若干罪滅ぼしでもあるが…。
「なあ、須藤。鈴音は何故お前に協力しなかったか分かるか?」
「はあ?知るかよ。」
……だめだこりゃ。
「鈴音の言ったこと覚えてるか?「事実はどうとあれ、クラスに迷惑をかけたのは間違いない。そこをまず謝罪するのが筋では?」そう言ったんだ。」
「だから俺は悪くないんだよ!」
………、本気で見捨てたくなってきた…。
「……。あのな、須藤。…………、いやそうだな。じゃあ別の例で考えてみよう。お前はプロバスケ目指してんだよな?」
「…あぁ。」
「プロなら野次なんか日常茶飯事だ。お前はその都度突っかかりに行くのか?」
須藤はバスケの話と紐付けた途端黙り込む。
「特にNBAなんか凄いぞ。プライベートで怪我の恐れのあるスポーツをしただけで罰金。少しの遅刻でも罰金。中指たてるだけで100万以上の罰金。暴言なんかも場合によっては500万以上。それこそ今回みたいな須藤の暴力事件。事実はどうとあれ、お前は手を出したんだ。相当の処分だろう…。」
「バスケでそんなことしねぇよ!」
確かに話は飛躍してるが、喧嘩っ早い須藤だ。今のままだと問題しか起こさないだろう。
「いやいや。こういうのは普段の素行から直さないと絶対にどこかでやらかす。プロなんか特に忍耐力や素行は大切だ。自分だけでなくスポンサーにも多大な迷惑をかけるからな。今回で言うとクラスに迷惑をお前はかけている。実際クラスポイントの配布が保留でもしかしたら差し止めの可能性もあるからな。プロバスケならそれこそ、出場停止、場合によっては素行不良でリリースされるかもな。」
少しずつバスケと紐付けることで、自分の行いの重大さを理解させる。須藤も反論せずに話を聞いている。
「その上で聞くがお前には本当に落ち度は全くないのか?」
「…………………チッ、………………悪かった。」
少し不貞腐れているが、自分の過ちを少しは気づいたのか須藤は謝罪する。
「…分かったならいい。今回はもう過ぎたことだ。ただ今後は…そうだな、プロに行く練習だと思って我慢してみたらいい。そうすれば幾分マシだろう。」
「……………、あぁみんなごめんね。俺ばっかり話して。それに空気も悪くなったね。俺がいたら雰囲気悪そうだし一旦抜けるよ。何かあったら言ってくれて。」
説教したからか空気はよろしくない。それに普段俺と反りが合わない山内らも居る。櫛田さんがいなければ崩壊してるかもしれない。なので、櫛田さんには申し訳ないが一旦離脱させてもらおう。
ーーーー清隆Sideーーーー
九条が抜けたが、九条…、このメンツでどう話し合えと…?
言いたいことだけ言って逃げたな…。
このメンツで生産性ある作戦なんか練れるわけ無いだろう…。
「なんだよ、あいつ。」
「説教したかっただけじゃねーか。」
………、山内らもダラダラと不満を垂らしているし。
須藤は黙ってるし、櫛田も流石にどうしようかオロオロしてるし…、俺にはどうにもできん。
俺は山内らに同調するわけでもなくただ静観を貫く。
そこからなんとか櫛田が中心にまず、須藤のいざこざまでの流れを確認した。
須藤曰く、Cクラスのバスケ部の近藤と小宮から呼び出されたらしい。2人とは前から関係は良いとは言えずにいた。そんな中…自分がバスケのレギュラー候補になったため、その辺の話だろう、と思い呼び出しに応じたそうだ。
場所は特別棟で目的地につくと2人に加えて、Cクラスの石崎がいたみたいだ。いくつかの嫌味を言われた俺は馬鹿らしくなり帰ろうとし、その時不意に殴りかかかってきたらしく、反撃に出たそうだ。ただ須藤曰くそれぞれ1発くらいしか殴ってなくまさかそんな重大事件になるとは思っていなかった。また自分はそもそも正当防衛であると、改めて主張した。
須藤の言い分だと、恐らくCクラスは須藤を貶める目的なんだろう。ただ、普段の行いや状況からこちらの分は悪い…。
それから、櫛田は自分の人脈を使ってAクラスやBクラスへ目撃情報などないか放課後聞きに行こう、と話になった。
ただ、張本人の須藤を動向させるわけにも行かず、池や山内も頼りにはならないだろう…。多分、櫛田もそう感じていたのか、「誰か動向してほしいなあ…。でも須藤君には仲のいい池君や山内君が着いててほしいから………。」と自然に視線はこっちへ向かう。
やめてくれ…。櫛田と2人なんて俺には身が持たない…。それに池らの憎しみのこもった視線が気になって仕方がない。
「なら九条も連れていけばいいんじゃないか?あいつもそこそこ顔は広いだろう…。」
俺は悪あがきとして、九条を召喚する。
それでも池達はブーブー言ってるが結局その案は採用され、放課後に聞き込みへ行くことへなった。
動き出した暴力事件。
ただ、すでに茶番…。証拠を簡単に提示しない九条はどうする?
いちゃつきが書きたいけど、話も進めないと…。
あとなんだかんだ3日ペースで書き溜めを投稿するのが今のところあってそうです。書き溜めはすっからかんですが10日ほど全く新しいところ書かずに放棄したら筆が戻りつつあるのでできればこのペースを維持したい…。