女たらしが往く実力至上主義の教室   作:俺は社畜

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38話 励まし

 

目の前には泣いている女の子。

関わりはほぼ皆無と言って良いと思う。

 

一応、聞き込みの時にちらっと顔は合わせたくらい……、名前は確か白波さん。

 

 

 

「………誰ですか?」

 

 

 

人気を感じたのか、白波は顔をあげる。

目元は赤く泣いていたのが分かる。

 

 

 

「30分くらい前に通った時からずっとそんな状態だったから心配になってさ。」

 

 

 

「大丈夫ですのでほっといて下さい。」

 

 

 

彼女は俺を突き放す。

 

一見そっとしといた方が良さそうだが、本当に一人でいたいのなら自室に帰ればいい。人目がゼロじゃないところで長時間泣いているのは本心で一人になりたいわけではないのだろう…。

 

 

 

ドスッと俺は白波さんのとなりに座る。

 

 

 

「はいこれ。」

 

 

 

俺は飲み物を彼女へ押し付ける。

彼女はなにか言いたげだがそのまま飲み物を受け取る。

 

 

 

 

 

そこからしばらく沈黙が続く。

 

特に何かするわけもない。ただ前や空を眺める時間が過ぎていく。

 

 

 

そんな状態を破ったのは白波だった。

 

 

 

「…………、何も聞かないんですか?」

 

 

 

「無理に聞くのも負担だろう。話して楽になるなら話してみ?」

 

 

 

どしたん話聞こうか?は弱ってる女性に下心満載の男が女性目的に声をかける行為として有名である。

ただ言わせてほしい。善意で話を聞く男もいるはずだ。

 

 

 

「………振られたんですよ。大好きだった人に告白して。」

 

 

白波さんはぽつぽつと話し始める。

 

 

「確かに勝算は低いとは思っていました……。ただやっぱりいざ振られると喪失感もですし、情けなさもですし、後悔もしちゃって…………、どうしたら良かったんでしょうか…。」

 

 

白波は俯きながら、そう呟く。

 

 

 

「…………そっか。………まずその告白するってそもそも凄い勇気のいることだよね。現状から一歩変えたい、って大変なことだと思う。君はまずその勇気があることを誇ってほしい。」

 

 

そもそも告白することすら敬遠する人もいる。振られるかもしれない、今後の関係性が変わってしまうかもしれない、そんな考えも出てしまう中で、さらに同性に告白するなんておそらく並大抵の覚悟ではなかっただろう…。

まずその事実を俺は褒める。

 

 

「……でも振られたら意味ないじゃないですか。」

 

 

 

「確かに今は振られたって事実に支配されてると思う。でもさ、その相手の子に今回で意識してもらえたって考えてみたらどう?」

 

 

 

「………、どういうことですか?」

 

 

俺の言葉に白波は少し顔をこちらに向けながら問いかけた。

 

 

 

「まだこの学校に入って3ヶ月。その短期間じゃあまだまだ友好関係もできたところだ。だからその相手の子もまだ白波さんのことを多く知ってたわけじゃ無かったと思う。だから、今回「好き」と伝えることで少なくともその子にとっては「私のことを好きでいてくれている子」って意識をうえつけれたと思うんだ。つまりこれからもまだどうなるかわからないってことだよ。」

 

 

 

「………………でも。」

 

 

 

白波さんにとっては、今回の振られた事実がやはり重くのしかかっているようだ。

 

 

 

「誰しも1回振ったから可能性が無いってことじゃないんだ。もちろん難しい人もいるけど、逆に意識し始めてくれる人もいるからさ、今はまだそう考えれないかもしれないけど、君のような素敵な子が勇気持って告白した人だ。多分、そんな冷徹な人では無いはずだ。まだチャンスはあるよ。」

 

 

 

「………本当にまだ好きでいていいんですか?迷惑にならないですか?」

 

 

 

「もちろんアタックし続けることで迷惑になることもあるかもしれない。それは頭に入れとかないといけないね。でも君はそうやって迷惑になるかもしれない…、って考えれてる時点で相手のことも思いやれる子だ。もし、不安なら俺もいつでも相談乗るし、またその好きな子と腹を割って話してみるのも良いかもしれない。」

 

 

 

「そう……ですか………………。」

 

 

 

 

 

そこからまたしばらく静寂が流れる。

 

 

 

ーーーー白波Sideーーーー

 

 

 

振られた振られた振られた振られた振られた振られた振られた振られた。

 

 

 

その言葉が頭の中を埋め尽くす。

 

 

覚悟はしていたはずだった。

ただ、いざ振られるとどうしようもない負の感情が埋め尽くす。

 

帆波ちゃんは「これからも仲良くしたい。」的なことを言っていたと思うがほとんど内容は入って来なかった。

 

 

 

私は溢れる感情を抑えれずただ泣いた。

 

こんな姿、誰にも見せたくないはずなのに何故か部屋には戻りたくなかった。

そして私は寮近くの少し奥まったところにあるベンチに腰掛けた。

 

じっとするとまた色々な感情に飲み込まれて私は人目をはばからずに泣いた。

 

いったいどのくらい泣いたか分からない。

 

ふと目の前に人気を感じる。

見られたくなかった。ただこんなところで泣いているのは私の責任だ。

 

顔をあげると一人の男が立っていた。

私はその男を知っていた。

 

 

数日前、私のクラスに来たDクラスの男。ガタイがよくけして顔は悪くない。ただ別にそのくらいの印象。その上関わりもない。あと星之宮先生が話題に挙げていた人。

 

ただ、私は昔から男という存在が苦手だった。

 

 

 

小さい頃、まだ私が男に苦手意識が無かった頃、まわりの男の子は私や友達にちょっかいをよくかけてきた。「やめて」と言ったら余計調子付いてちょっかいをかけてくる。

幸い、小学校も高学年になるに連れそういう行為は減ってきた。ただその時には男の存在に苦手意識を持っていたと思う。さらに中学生になると今度は教室でいやらしい話をする奴らが現れる。あろうことか一部の女の子にセクハラじみたことをする男もいた。それに水泳なんかでは、特にいやらしい視線を常に向けてくる。

それが本当に気持ち悪くてどんどん男が苦手になった。

 

 

だから、私は男と仲良くする気はさらさら無かった。そんな中、クラスに現れた一之瀬帆波という人物。彼女は誰にも分け隔てなく手を差し伸べ、勉強もでき、気配りもでき、私にもいつも笑顔を向けてくれる、『太陽』みたいな人。入学間もなく、私は彼女の虜になった。そして一緒にすごしていくうちにそれは恋愛感情なのだ、と悟った。それから彼女を見ると心がポカポカした。幸せな気持ちだった。

だけど、彼女はクラスを超え、学年でも屈指の人気を誇る。そうなると男どもの視線も彼女に向かう。その視線には下心を向ける輩も一定数いる。そんな奴らに帆波ちゃんを取られたくない。そんな気持ちと自分の好きという気持ちがどんどん溢れ出し、ついに告白を決意した。

 

 

結果は見ての通り。そして私の前にはその苦手な男がいる。

 

 

私はその男を拒んだ。だいたいの男は少しキツくいうだけでこちらから手を引くことは学んでいた。

ただ、その男はあろうことか私の横に座り、飲み物を差し出す。

 

ここから離れようか…、そんな気持ちも出てきたが何故か私はその場に居座り続けた。

 

 

 

 

 

彼から何か聞かれることはなく時間が過ぎる。流石に痺れを切らして私から問いかけてしまった。

 

その上、気づけば私は彼に告白して振られたことを言っていた。

多分、心の奥で誰かに吐き出したかったのだと思う。

 

彼は聞くに徹するだけでなく、私の全てを許容してくれた。その上、まだ好きでいていいんだと諭してくれる。

 

 

私ってこんなにチョロかったっけ?気づけば彼にどんどん問いかけていた。

 

 

 

 

 

 

 

話が一段落つき、再び静寂が流れる。

 

 

私は彼に対しては苦手意識が無いことに気づいた。

 

 

……………、いやこれは弱みに漬けこまれたからに決まっている。確かにこれまでの男とは少し違うが根は結局男は男なんだ。

 

私は彼を許容している自分自身にそう言い聞かせる。

ただ、彼の言葉ひとつひとつにはけして下心は無く真剣だった。もしかしたらこの人は違うかもしれない。

 

そんな気持ちが拮抗していく。

 

 

そんなことを考えていると今の状況をふと思い出す。

 

 

夕方のベンチ。男女2人…。

少し動けば肩が触れ合いそうなほどの距離。

 

 

いつか見た恋愛漫画と同じ状況に急に恥ずかしくなる。

 

 

 

 

思わず私は立ち上がり、

 

「暗くなってきましたし、失礼します!!!」

 

 

そう言って、一目散にその場を立ち去る。

 

 

顔が熱い気がするが、けしてあの男を意識しているからではない。

私はそう言い聞かせながら、自室へ帰った。

 

 

 

 

 

ーーーー九条Sideーーーー

 

 

俺は一人ベンチに取り残されていた。

 

 

 

多分、嫌われては無いとは思う………。

いや…、俺のやるべきことはやった。彼女に嫌われようと立ち直ってもらう、それが俺のやるべきこと。

ならば問題ない。

 

 

 

俺はベンチを立ち自室へ帰る。

 

流石に7月になるとこの時間でも蒸し暑い。

 

ベタッと肌に制服がひっついている。

 

 

 

帰ったらまずシャワーを浴びよう…。

 

 

 

そんなことを考えながら、自分の部屋まで戻ったのだが…、部屋の前に見慣れた黒髪の女子生徒が立っていた。

 

 

 

 

 

「将君。少し須藤君の事件のことについて相談してもいいかしら?」

 

 

 

 

 

 

俺は、鈴音を自室へと招き入れた。

 

 

 

 




大枠は決まってても細かいところが中々難産でした……。
千尋ちゃんにとって九条は男の中では特別との認識になったのかもしれません。
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