審議5日前の放課後……
「……、それで話とはなんだ?」
日も暮れ、暗くなった頃…、
俺は、生徒会室で堀北会長と対面していた。
「1年生で暴行事件があったのは耳に入っていますか?」
「あぁ…。今年の一年は少し血の気が多いようだな…。」
やれやれと堀北会長は少し呆れ気味に呟く。
「それについての証拠を今日は持ってきました。」
「………、なぜそれを生徒会に?」
ごもっともな疑問である。
「あなたは信用できますし融通も効くと思いましてね。」
「今度は俺に何をやらせたいんだ?」
話が早い。
堀北会長は、突っぱねることなく話を聞いてくれるようだ。
すでに生徒会が審議の話に介入することは事前に確認している。あとはこちらの要望を聞いてくれるか…。
「まず、これを見て頂きたいのです。」
俺は、愛里のお手柄映像を会長に見せる。
「ふむ…。」
映像を見る会長はそれが、現場映像だとわかると食い入るようにそれを見つめる。
「これは……、あまりに決定的なものだな…。これを何処で手に入れた?」
映像を見終えると、堀北会長はこちらに問いかけた。
「本当にたまたま現場に、知り合いがいたらしく……、映像に残したそうです。」
「それで、この映像をお前はわざわざ生徒会に提出してきたのか?」
「提出はします。………ただ、少し泳がせて欲しいのです。」
「ほぅ……。続けてくれ。」
「今回、見ての通り明らかに虚偽告訴による事件です。ただこれをすぐに提出して判決を出してもどうかと思いましてね…。学校の対応も見たいですし、まさかこんな証拠をCクラスも持ってるとは思ってませんし…、少しお灸を据えようかと…。審議の場があるみたいなので、是非双方の主張を聞いてから見せてあげてほしいのです。」
「九条…。中々な性格をしてるようだな…。」
少しこちらに対して苦笑いしながら堀北会長は答える。
「向こうが仕掛けてきたのですから、それならこちらも少し意地悪に仕返しても許されるでしょう。」
「…まあいい。ただお前ならこれでもっとポイントを稼ぐ手段はあるだろう。なぜこの方法を取った?」
確かにこの証拠でCクラスと交渉する手などもあった…。
ただ俺としては、学校側の対応や今回仕掛けたCクラスの動き、他クラスの動きを見たりする方が良いと考えた。、またこういう偽証行為はクラス間競争ではまた出る可能性がある。それに対して今回晒しあげることでの他クラスに釘を刺すのと、実際の罰則がどの程度なのか…、それを確認するためでもある。
確かに俺のクラスに仕掛けたからそれへの私怨もあるが…。
まあDクラスにも良い危機感を持ってもらえる機会だと思うので成長につながればと思う。
「ただ、クラスとして個人としてこの手段が一番丸く収まると思っただけですよ…。」
それから、さらに会長と話を詰め宣誓文や宣誓書の作成や映像を見せるタイミングなどを話し合った。
まあ堀北会長ならそのあたりは上手いことしてくれるだろう…。
「それにしても、鈴音さん入学からかなり成長してますよ。」
話もまとまったところで俺は少し雑談がてら妹のことを話す。
この兄弟5月末に話して以来何度か食事を共にしているようだ。
共にブラコン、シスコンだったらしい…。同じ血がかよっていることがよくわかる…。
ただ、俺の言葉に堀北会長はただ「そうか。」と興味なさげに答える。
多分、恥ずかしいのだろう。
「それに恐らくこの審議も彼女が弁護に入るでしょう…。是非その成長を見てあげてください。」
審議に場面は戻る……
ーーーー綾小路Sideーーーー
橘書紀の準備が整い、映像が流れ始める。
『お前さ、自分が不良品なのわかってんの?』
『その不良品のDクラスの中でも落ちこぼれだよなw』
『目障りだからバスケ部辞めろよ。』
映像にはCクラス3人が囲んで須藤を挑発している。
「なっ!」
「なんだよこれ…。」
あまりの衝撃映像にCクラスメンバーは顔を青くする。
「これは……………。」
堀北も思わぬ映像に呆気にとられている。
「言い分は映像確認後聞きますので、今は静かにして下さい。」
その映像にざわつくが生徒会は有無を言わせない。
『ちっ、付き合いきれねぇ。』
Cクラスの挑発に須藤は背を向けその場を後にしようとする。
『何逃げようとしてんだよっ!』
そんな須藤に対して、石崎が殴りにかかる。
どちらから手を出したかの決定的な映像である。Cクラスはどう言い逃れようか3人共気が気ではないようだ。落ち着きが無くなっている。
そこから3対1の取っ組み合いが始まるが、須藤の言い分通り、それぞれ身体に一発ずつで殴り倒して顔には一切手を出してないことが分かった。
そして須藤が場を後にして映像は途切れる。
「これはあまりに用意周到ではありませんか?Dクラスの罠ではないのか?」
いの一番に坂上が声を荒げる。
こいつはあくまで教員だろう…。そこまでCクラス贔屓なのは大人としてどうなんだ?
「そっ、そうだ。俺達は貶められてる!」
「こんな映像デマに決まってる。」
坂上に便乗してCクラスメンバーも声を荒げる。
「黙れ。」
騒ぎ立てるCクラスに対して、堀北会長が一言声を出す。
そのオーラに一瞬でCクラス陣営は静まった。
「言い分は聞くと言っただろう…。そんなに騒ぎ立てると何かやましいことがあるとしか思えんぞ?」
そして、堀北会長は橘書紀に目を向ける。
「では、この映像について………、Cクラスの方が何か言い分がありそうなので……、述べていただいて結構です。」
橘書紀がCクラスに発言の許可を出す。
3人は誰か代表して言うか目を見合わせ、そして小宮と坂上が席を立つ。
「まっ、まずこの映像はどこから提供されたのですか?」
「事件内容が内容なだけに生徒会も独自に情報を集め、その中で手に入れた。提供者については守秘義務、報復からの保護の観点から公開はできない。」
「そんな情報元も分からない映像なんて信用できないに決まってるだろう!」
「ほぅ…。こんなに分かりやすいものが信用に値しないと…?」
「こんなもの偶然の産物なんてあり得ない。Dクラスが陥れるために作った映像に違いない!」
Cクラスの悪あがきが続く。
「………、小宮と言ったか…。これほど声も姿も鮮明にある映像が編集してつくられたものだと…?世界中の叡智を結集させてもできないだろうな。つまりお前の言い分は破綻している。」
堀北会長は冷静にその言い分を論破する。
その言葉に小宮は何も言い返せない。
「そっそもそもなぜ今になってこんな映像を出すのですか?」
坂上が今まで映像を出さないことに疑問を呈する。
「双方を意見が割れていたので、生徒会としても虚偽告訴もあると考えていた…。その中で証拠の確保をして、真実は掴んだ。『他クラスを陥れる』クラス間の競争を推奨している学園ではあるが、犯罪行為を認める訳にはいかない。この場はそれを確認する最後の場であった、ただそれだけだ。」
教師に対しても毅然と発言する会長…。
これだとどちらかが大人かわからんな…。
「ぐぅぅ………。それでもDクラスがこちらを殴ったのは事実だ!実際映像にもあっただろう!こちらは倒れ込むほど殴られているんだ!」
「それについてもですが…、そもそもCクラス生徒の言い分とえらく内容が違うようですね…。それから学園協力のもと彼ら3人についてこの後の動向を追ってみました…。」
橘書紀に変わり、そういうといくつかの防犯カメラの映像らしき画像を映す。
「カメラに欺こうと…、彼らは顔を抑えながら帰宅していたようですが…、ほらここ見てください。全然健康的な顔をしています…。」
画像は全く顔が腫れていない3人が並べられている。
「そりゃ腫れるまでには時間もかかるだろう!」
「そもそも先程、須藤さんは彼らの顔を殴っていませんでしたよ?」
「映像に映ってなかったんだ!あの後に殴られたんだよ!」
「そっそうだ!」
Cクラスは苦し紛れにそう言い逃れる。
ただ…、すでに言っていることが支離滅裂になってきているのだが、彼らは気づいているのだろうか。
「………、まあいいでしょう…。さらに彼らの足取りを追ってみましたが…、学生寮方向ではなく、ケヤキモールなどの方へ行ったみたいですね。残念ながらケヤキモールにあるカメラには映り込んでなかったようですが…、それから2時間後の映像です。これは学生寮近くのものですね。」
橘書紀は淡々と話を続け、3人の画像をあげる。
明らかに顔が腫れ上がっている。
「ほ、ほら時間が経って腫れてきているだろう!」
Cクラスはそういう。
ただ、彼らは気づいていないのだろうか…。さっきの画像との矛盾に……。
「……。もう一度石崎さんの先程の写真と今の腫れている写真を比べますね。…………………、暴行事件後すぐには彼は左目を常に押さえています…。ただこの写真…、及び今の彼を見てみると……、怪我してるのは右目側なんですよ…。」
そういうことだ。もう矛盾しかない。
流石に坂上も言い逃れようがもうないと悟ったのだろう。気の抜けたように席に座る。
「………、さて結論は出たようだな。」
堀北会長は周りを見渡す。
「今回の事件だが…、結論として須藤は無罪。」
…………シャァ
須藤は小さくその場でガッツポーズをする。須藤はあまりに切り替わる場面に後半は終始ポカンとしていたが、『無罪』と言う言葉は理解できたようだ。
「それから……、Cクラスの3名については、大きく2つの罪がある。須藤を陥れるための虚偽告訴とこの審議での偽証行為。これは非常に悪質行為と判断する。」
「須藤、お前は無罪と言ったが…、」
対象が須藤に戻る。
会長の言葉に浮かれていた須藤の顔がこわばる。何か罰則があるのか………。
「3対1という場だ。暴力行為はあまり褒められた行為ではないが、今回は正当防衛を認めよう…。それから報告しなかった件は口頭注意としておく…。あと反省文などの有無は生徒指導教員に一任しよう。追って連絡する。」
須藤はその言葉にホッとし、「うっす!」と元気よく答える。
「次に……、坂上教諭…。あなたはCクラスの担任教師という立場は理解しましょう…。ただ大人としてあまりに自クラスに加担し過ぎです。私からは簡単な注意で済ませますが、この件については学園側に報告させてもらいます。追って連絡をお待ちください。」
坂上は「クソッ……。」と唇を噛む。
「そしてCクラスの3名…。」
ついにきてしまったと3人はビクビクしている。
「一つ確認だが、これは3人独断の行為なのか?それともCクラスとしての行為なのか?」
堀北会長は恐らく、ほぼ間違いなく裏がいる事は分かっているのだろう…。それでも彼らの口からそれを聞こうとしている。
3人は何も言わず、俯いている。
その姿自体、もう裏がいると言っているものだが黙秘を貫く。
「まあいい…。それで罰則だが……、まず須藤への慰謝料について。これは須藤の名誉を傷付けたことに対するものだ。それぞれのプライベートポイントより10万ポイントとする。」
なるほど、名誉毀損も適応されるらしい…。
「それから、次にクラスポイントについて。1対3の個人的事件とはいえ、結果的にCクラスはDクラスを陥れる行為になっている。そのため100クラスポイントをCクラスからDクラスへ譲渡。それからその悪質性から残りの全クラスポイントを没収とする。このような犯罪行為、生徒会として見逃す訳にはいかない。」
おぉ……、中々厳しい判決のようだ。
……、ただ普通に犯罪行為になので当たり前なのか?
もうCクラスには言い返す余力すらないようだ。
「それから最後に……、小宮、近藤、石崎についての処分だが、生徒会としては退学が妥当だと考える。」
『退学』その2文字に3人は震え上がる。
それだと、10万ポイント利用須藤に一括払い出来なかったらどうするんだ?
俺は冷静にポイントについて考える。
「ただ…、これは独断の行動と認めた場合だ…。この後3人は詳しく取り調べる。……誰の指示か知らんが楽になれよ…。」
まるで見透かしているように堀北会長は述べる。
「それから、生徒会としては退学、と言ったが最終判断は学園上層部になる。ポイントについてもある程度こちらの裁量に任せられるが事態が事態だ。上の判断を経ての判断となるだろう…。そのためそれまではCクラス3名は停学と取り調べになる。ポイント配布などはもう少し時間がかかるだろう…。結果は追って連絡とする。」
堀北会長はそう言い切る。
「では、今回の審議を終了いたします。速やかに学園内で協議の上各所連絡いたしますのでよろしくお願いします。」
橘書紀の言葉でそのまま審議は終了となった。
もはやCクラス陣営は屍と化していた。
まだ確定はしていないが、俺達Dクラスは圧倒的勝利でこの事件の幕を下ろしたのだった。結果は事件発覚時には決まっていた運命なのだがな……。
おっと、退学という厳しい判決が…?
ただ、まだ学園上層部の協議があるので結果はお楽しみを。
犯罪行為の処分って学校によって違うんでしょうけど、どんな処分が妥当なのでしょう?
私のところでは学内トイレで男女でおせっせして退学したという人はありましたが…笑