今から遥か昔。
この世界には、“個性”と呼ばれる力など存在しなかった。
それでも、人類は確かに、命を燃やして生きていた。
文明は栄え、科学は進歩し、空を飛び、海を越え、地球の隅々までその手を広げた。
しかし、人類が海を制したと信じたその瞬間に、それは現れた。
──
海底より湧き上がり、あらゆる海域を蹂躙し、艦船を沈め、港を焼き、航路を奪い、物流を断ち、そして都市を孤立させた。
それは、まるで「海そのものの怒り」であるかのようだった。
人類は抗おうとした。
最新鋭の兵器を揃え、艦隊を組み、空から爆撃を試み、戦術を編み出し、あらゆる知恵と力を注ぎ込んだ。
だが──届かなかった。
砲撃は通じず、航空機は落とされ、潜水艦は深海に飲まれた。
人類は、初めて“海を敵に回した”と知った。
希望が消えかけた頃だった。
ある日、一人の少年が言った。
「……妖精が、見える」と。
その言葉は最初、笑われた。
誰もが絶望していた時代に、そんなものを信じる余裕はなかった。
しかし──やがてその少年は、少女を生み出した。
それは人の姿をした兵器。
人類の希望の光。
そして、艦娘を生み出すことができる者たちの存在が世界に知られ始めた。
彼らは、いずれも「妖精が見える」と語る。
目には見えず、音にも聞こえない存在と交信し、兵器を建造し、艦娘を導く。
人々は彼らをこう呼ぶようになった。
──提督。
──そして、その力を持つ者の資質を、提督適性と。
世界各国は提督を集め、艦隊を結成し、艦娘を建造し、深海棲艦との戦争に挑んだ。
それは数十年にも及ぶ壮絶な戦いだったが、最終的に人類は勝利した。
深海棲艦はすべての海から姿を消し、世界に平和が戻る。
──そして、それと同時に、艦娘に関するすべての記録もまた、世界から消えていった。
誰かが意図して隠したのか。
あるいは、艦娘たち自身が望んだのか。
真実は誰にも分からない。
だが確かなのは──
今この時代に、“艦娘”という言葉を知る者は誰一人として存在しない、ということだ。
かつての戦争は忘れ去られ、提督の存在は歴史から抹消された。
残されたわずかな断片も、やがて“創作物”と化し、荒唐無稽な物語として語られるようになった。
そして時代は巡る。
突如として人々が異能を手にするようになり、“個性”と呼ばれる力が世に溢れた。
ヒーローとヴィランが生まれ、新たな秩序と混乱が生まれた。
世界は、また違う形での“力の時代”を迎えていた。
海は静まり返り、戦火の記憶も風化し、艦娘という存在も、すでに“伝説”と化して久しい。
──しかし。
伝説とは、いつか再び語られるためにある。
そして今、ひとりの少年が再び言葉にする。
「……妖精が、見える」と。
最後までお読みいただきありがとうございます。前作とはプロットを一新し、新たに書き始めております。
世界観は今後変わることはないと思うので早めに投稿させていただきましたが、本編は執筆途中です。
ひとまず矛盾点の無いよう、ヒロアカルート合流まで書ききってから投稿し始めようと思います。お気に入り登録やしおりなどをしてお待ちください。
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