無個性と呼ばれた提督   作:HYDRATION

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長らくおまたせして申し訳ありません。
こんなに待たせておいてストックは無いです。せっかくアンケートを採ったのに結果を無視して申し訳ないのですが、不定期投稿になります。
待たせている間に赤城さんともケッコンカッコカリを行いました。一航戦が嫁です。
呉のリアイベにも行ってきました。私服加賀さんのアクリルボード買っちゃった。


第十九話

 朝。

 新しい家の、真新しいリビング。僕が雄英の制服に袖を通していると、その隣で、吹雪も準備を整えていた。彼女が着ているのは、雄英の制服ではない。僕が初めて出会った時と同じ、見慣れたセーラー服とプリーツスカート。彼女は今日から、僕の『個性』として、僕と一緒に雄英高校へ通うことになる。

 

「司令官、準備できました! いつでも出撃できます!」

「うん。ありがとう、吹雪」

 僕が苦笑すると、彼女は「はい! 学校といえど、司令官と共にある以上、油断はできません!」と胸を張った。その真面目さが、少しだけ僕の緊張を和らげてくれる。

 

 四人で囲む、朝食。卓袱台の上には、湯気の立つご飯と味噌汁が並んでいる。

「提督、雄英にはプロヒーローが教師として在籍している。くれぐれも、軽率な行動は慎むように」

「油断は禁物よ。あなたの力は、この世界の理から外れている。そのことを、決して忘れないで」

 

 長門と加賀さんの忠告に、僕が力強く頷くと、吹雪もそれに続いた。玄関では、加賀さんと長門が、僕たち二人を見送ってくれた。

「吹雪、提督を頼みます」

「うむ。何かあれば、即座に連絡しろ。……いってこい、二人とも」

「はいっ!」

 

 僕たちは、二人の信頼を背中に感じながら、新しい鎮守府の扉を開けた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 やがて、僕たちの目の前に、巨大な校舎──雄英高校が、その姿を現す。

 僕と吹雪は、ごくりと唾を呑み、その巨大な門をくぐった。

 

 個性に配慮したバリアフリー設計のためか、異様に大きな教室の扉には、『1-A』と書かれている。

 僕が意を決してその扉を開けると、そこには既に、個性豊かなクラスメイトたちが集い、騒然とした空気が渦巻いていた。

 

 いかにも育ちの良さそうな眼鏡の少年が、見るからに態度の悪い金髪の少年に詰め寄っている。

「机に足をかけるな! 雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」

「思わねーよ! てめーどこ中だよ 端役(はやく)が!」

 

 その光景に、僕と吹雪は少しだけ気圧された。

 自分の席を探して座る。僕の席の隣には、もう一つ椅子が用意されていた。吹雪はそこに、背筋を伸ばして静かに腰を下ろす。その異様な光景に、周囲の生徒たちの視線が、ちらほらと僕たちに集まるのが分かった。

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここは……ヒーロー科だぞ」

 

 突然、教室の入り口から、気だるげな声がした。

 見ると、寝袋に入ったまま、ゼリー飲料をすする、無精ひげの男が転がっている。なんだ、この人……。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」

 

 おそらくこの人は先生……ということは、プロヒーローなのか。

 僕は、加賀さん達と確認した教師一覧を思い出す。

 

(確か、相澤先生だったかな?)

 

「担任の相澤消太だ、よろしくね」

 

 自分の記憶があっていたことに安堵しつつ、考える。

 

(確か、個性は『抹消』。純粋に自分の身体能力と技術で戦うタイプのヒーローだ。何か参考になるかも知れないな)

 

 自分の戦闘スタイルと似ているヒーローが担任になったことに、少し喜んだ。

 さて、担任が来たということは入学式の準備などが始まるかな、と僕が姿勢を正したとき──

 

「早速だが、これ着てグラウンドに出ろ」

 

 そう言って、相澤先生は無造作に体操服を突き出した。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「『個性』把握……テストォ!?」

 

 グラウンドに整列した僕たちに、相澤先生は、あまりにも唐突な課題を突きつけた。

 

「入学式は!? ガイダンスは!?」

 

 茶髪のショートボブの女子生徒が、当然の疑問を口にする。

 

「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事出る時間ないよ」

 

 先生は、一切取り合わない。

 

「爆豪。中学の時ソフトボール投げ何mだった」

「……67m」

「じゃあ 個性使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい。早よ。思いっきりな」

 

 爆豪君は、ボールを受け取ると、大きく腕を振りかぶる。

 

「んじゃまあ……」

 

 その手のひらから、凄まじい爆風が巻き起こる。

 

「死ねぇぇぇ!!!」

 

 爆発音にも負けない大声でかなり物騒なことを叫ぶ。

 そしてボールは爆音と共に空の彼方へと消えていった。

 ピピッ、と先生の持つ計測器が音を立てる。画面に表示されたのは、『705.2m』という数字だった。

 

「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

 先生の言葉に、クラスの空気が変わる。

 

「なんだこれ!! すげー面白そう!」

 

 誰かが、そんな呑気な声を上げた。その瞬間、相澤先生の纏う空気が、明らかに変わった。

 

「……面白そう、か。ヒーローになるための三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい? よし。トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」

「はあああ!?」

「生徒の如何は先生(おれたち)の自由。放課後マックで談笑したかったなら、お生憎。これから三年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。“Plus Ultra(更に向こうへ)”さ。全力で乗り越えて来い」

 

 そして、除籍のかかった個性把握テストが始まる。

 

 最初の種目は、50m走。かなり鍛えたから、まず平均よりは速いだろう。けど、それはさっき先生が言っていた通り、個性禁止の体力テストの場合だ。個性ありでやったら、僕より速い人は何人も出てくるだろう。

 

(……今、僕にできる最速で50m進む方法、か)

 

 かなりリスキーだが、やってみるか。

 

「碧海、前へ」

 

 先生に呼ばれ、僕と吹雪がスタートラインに向かう。

 

「吹雪、頼む」

「はい、司令官!」

 

 吹雪が腰を落とし、バレーのレシーブのように固く組んだ両腕を僕の前に突き出す。周囲の生徒たちが「なんだ?」とざわめく。僕は、数歩助走をつけると、その腕を、力強く踏み台にした。

 

(ぐっ……!?)

 

 僕自身の踏み込みと、吹雪が僕を突き上げる力が合わさり、僕の身体は砲弾のように前方へ射出される。凄まじいGが身体にかかり、一瞬、意識が飛びそうになる。なんとか空中で体勢を立て直し、僕はゴールラインの先で着地した。

 

「──3秒48」

 

 計測器の無機質な音声に、クラスが静まり返る。

 

「な、なんだ今の連携……」

「人間カタパルトかよ……」

 

 人間カタパルト、か。言いえて妙なその表現に、少し笑ってしまった。

 

 次の種目、握力測定。これは……申し訳ないけど、吹雪に任せよう。

 

「次、碧海」

 

 先生に呼ばれると、僕は一歩下がり、吹雪に「お願い」とだけ告げる。吹雪が頷き、計測器を握った。華奢な指に、ぎゅっと力を込める。

 

「186kg」

 

「ひゃ、ひゃくはちじゅうろく!?」

「あんな可愛いのに……」

 

 女子生徒の出したとは思えない数値に、クラスがざわめく。吹雪は注目されたのが恥ずかしかったのか、少し赤くなった顔で計測器を返した。

 

 立ち幅跳びでも、僕が跳ぶ瞬間に、背中を爆発的な力で突き飛ばしてもらうことで、かなり遠くまで着地してみせる。その度に、周囲のどよめきは大きくなっていった。

 

 そして、ボール投げの時間が来た。

 先生の言葉に、僕は吹雪に目配せする。彼女はこくりと頷き、円の中に入った。

 

 次の瞬間、彼女の背中と両腕に、淡い光と共に、機械的なパーツが出現する。

 ギギギ、と。鋼鉄のこすり合う音が、静かなグラウンドに響いた。

 

「なっ……!?」

 

 クラスメイトたちが、息を呑む。

 そこに現れたのは、彼女の艤装である、12.7cm連装砲A型だった。

 

 吹雪は相澤先生からボールを受け取ると、砲身の一つに装填する。そして、空の彼方を、まっすぐに見据えた。

 

「目標、地平線の先。──撃ち方、始め!」

 

 その声は、もう、ただの少女のものではなかった。幾多の海戦を駆け抜けた一隻の軍艦の、凛とした声だった。




作者ページに生存報告などをするかも知れないXのリンクを張っておきました。
また、クロスオーバーではない新作の艦これ小説を現在執筆中です。乞うご期待。

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  • ヒロアカ
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