無個性と呼ばれた提督   作:HYDRATION

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まさかの連日投稿。
素敵ですね。
マグネリボンさん、ニコにコさん、感想ありがとうございます。本当に励みになります。
評価もモチベーションになります。感謝です。


第二十二話

 ひとまず、吹雪とチームメイトの瀬呂くんのところへ向かう。セロハンテープを模したヘルメットの戦闘服だ。

 

「ええと、君が……」

「俺は瀬呂範太。よろしくな、碧海! と……吹雪ちゃんでいいのか?」

「うん、よろしく瀬呂くん」

「はい! よろしくお願いします、瀬呂さん!」

 

 挨拶を済ませた僕達は作戦会議を始めた。

 

「八百万さんと常闇くんが相手か……」

「八百万って個性把握テストで一位だったよな? ちょっと怖いな……」

 

 実質戦力は3対3、か。他のグループなら数の利を取ることが出来て有利だったのだけれど。そして、第一戦と第二戦の間に考えていたが、八百万さんにされると最も厄介なことがある。

 

 それは、"創造した有害なガスを核のある部屋に撒かれること"だ。

 

 ガスとガスマスクを創造し、部屋の中に居座ればそれだけで僕達は敵チームを捕らえることも核を回収することもできなくなる。

 そして、個性の持ち主じゃない僕が思いつくぐらいだ。雄英に推薦で入るほどに優秀な八百万さんがそれを思いついていないはずがない。そして吹雪に聞いてみたところ、ガスの類が効くかどうかは不明らしい。リスキーなことをさせるわけにはいかないから、吹雪にガスが効く前提で作戦を考えなければならない。

 

 だから、僕が今するべきなのは最悪な状況……ガス散布を回避すること。

 僕は、準備をしている八百万さんに話しかけに行く。

 

「やあ、八百万さん」

「あら、碧海さん」

「始まる前に言っておきたいことがあってね。『吹雪にガスの類は効かない』よ」

「……なぜ、それを私に?」

「一方的な勝負になるのもつまらないから、ただのハンデだよ。じゃあ、いい勝負をしよう」

 

 そう言って、八百万さんから離れて瀬呂くんの下へ戻る。

 

「いいのかよ、碧海。そんな情報を開示しちゃっても」

「いいんだよ。と、いうか……ここだけの話だけど、あれは嘘だ」

 

 瀬呂くんは驚いた顔をする。

 

「ブラフをかける必要があったんだ。僕達は、核のある部屋にガスを撒かれるだけで詰みの状況になりかねない。だから、八百万さんに"ガスを撒いたときのデメリット"を伝えたんだよ」

「どういうことだ?」

「今、八百万さんの頭の中ではガスを撒いたときと撒かなかったとき、そして僕が伝えた情報が嘘だったときと本当だったときについて考えているだろう。ガスを撒いて、僕が伝えた情報が本当だったときは、吹雪につけているガスマスクを壊されて自分がガスを吸ってしまうことになる。つまり──」

「必勝の一手が必敗の一手になりかねない、ってことか」

「そういうこと。今まで見た感じ、八百万さんはかなり自分の力に自信を持っていてプライドも高い。そんなリスクを取るとは考えづらいんだ」

 

 そして訓練が始まり、瀬呂くんと僕、吹雪は建物の中へと乗り込む。

 

「ん、暗いな……」

「おそらく、常闇くんの個性のためだろうね。多分だけど、彼の個性は暗ければ暗いほど強化される個性だ。気をつけて進もう。吹雪、索敵をお願いできるかな?」

「はい! 了解です!」

「マジか、吹雪ちゃんそんな事もできるんだな」

「うん。軍艦が人になったようなものと考えてくれたらいいよ」

「へえー……。それはまた、めちゃくちゃ頼もしいな」

 

 僕達は暗がりの中をゆっくりと進んでいく。建物内部は窓という窓が塞がれ、昼間だと言うのにかなり暗くなっていた。見えるのはだいたい5m前後といったところだろうか。

 

「ん……? 瀬呂くん、あそこにテープを投げてみてくれない?」

「ああ」

 

 瀬呂くんがテープを射出すると、バチッ! と乾いた音とともに、床に張ってあったであろう網が釣り上げられる。

 

「おお、危ねぇな……」

「この暗さで仕掛けるとは、やってくれるね」

 

 所々に八百万さんが仕掛けたであろうワイヤートラップや感圧式トラップがあったが、瀬呂くんの個性によって近づく前に作動させ無力化することが出来た。

 また、進みながら瀬呂くんに指示を出し、テープを壁や天井にくっつけてもらう。

 

「瀬呂くん、そこの柱とあっちの壁にもう一本貼り付けて」

「了解」

 

 順調に進み、二階へ登る階段にたどり着いたその時だった。

 

「司令官! 瀬呂さん! 上です!!」

 

 吹雪の鋭い警告が、静寂を切り裂く。僕が顔を上げるより早く、階段状の闇がどろりと濃密な質量を持って膨れ上がる。

 

「──深淵を覗くものよ」

 

 どこか古めかしい……というか、厨二病じみたセリフだが、それすらもこの状況下では畏怖を纏う。

 闇の中から、常闇くんの個性である黒影(ダークシャドウ)が弾丸が如き速度で飛び出してきた。

 

「ここは通さん……!」

「くッ──!」

 

 狙いは、先頭の僕だ。ダークシャドウの鋭利な爪が、空気を切り裂く音とともに迫る。僕は咄嗟に身を引くくし、無様ながらも床を転がって回避を試みる。しかし、ダークシャドウの動きは柔軟で、かつ執拗だった。一度交わしても、すぐに軌道を変えて追いかけてくる。

 

(速い……! それに、重い! その上、闇に紛れて攻撃が見づらいな……ッ!)

 

 かすめた風圧だけで、肌が粟立つ。常闇くんは分かっているんだ。このチームの指揮官であり、かつ肉体的に最も脆弱なのが僕であることを。僕さえ落とせば、このチームは瓦解する。

 

「フッ、まさか初撃をかわすとはな……。だが、逃げ場はない! 行けッ、ダークシャドウ!!」

「アイヨッ!!」

 

 階段の手前に立つ常闇くんが、腕を組みながら冷徹に告げる。威勢の良い掛け声とともに、黒影がさらに巨大化し、逃げ惑う僕を押しつぶして行動不能にせんと大きく鎌首をもたげた。

 吹雪が助けに入ろうとするが、彼女が動くよりも僕が潰される方が早いだろう。

 

 ──絶体絶命。常闇くんは、そう確信したはずだ。

 

 だが、その攻めへの偏重こそが、僕達が待っていた瞬間だった。僕は床から顔を上げ、喉が裂けんばかりに叫ぶ。

 

「吹雪! ダークシャドウは無視して常闇くんを狙い撃て!!」

「はいっ! 撃ち方始めッ!」

 

 吹雪が即座に反応し、常闇くんへ向けて連装砲を向ける。鈍色に光る連装砲の砲口が、常闇くんを捉える。本来、分厚い鉄の船を沈めるための破壊の筒。それが、生身の人間に向けられた。

 

「──ッ!?」

 

 常闇くんの顔色が変わったのが、見えずとも感じ取れた。恐怖は、理屈を超えて本能に訴えかける。

 

「戻れ、ダークシャドウ! 守れ!!」

 

 その言葉に反応し、常闇くんは素早くダークシャドウを自分の元へ戻す。攻撃こそ最大の防御だが、相手の火力が桁違いの場合は例外だ。常闇くんは攻めを捨て、自らの身を守ることを選ばざるを得なかった。僕を襲っていたダークシャドウが瞬時に反転し、主人の盾となるべく猛スピードで戻っていく。

 

 常闇くんと、戻ってきたダークシャドウ。2つの標的が、一箇所にまとまる。それこそが、僕達の狙いだった。

 

「そうすると思ったよ! 今だ! 瀬呂くん、全力で巻き取れ!!」

「応ッ! 一網打尽だ!!」

 

 瀬呂くんが両肘を突き出し、今まであちこちに貼り付けてきたテープの端を思い切り引き絞るのと同時に新たなテープを奔流のように射出した。

 

「らぁっ!!」

 

 バシュッ!! と乾いた音が連続する。主人のもとへ戻り、身動きが取れなくなっていたダークシャドウと常闇くんを大量のテープが襲った。テープは複雑に絡み合い、その上八百万さんが仕掛けたワイヤートラップの部品を巻き込んでいたため引きちぎるのは難しいだろう。防御のために固まっていたことが仇となり、二人は瞬く間にぐるぐるまきになり、行動不能となった。

 

「悪いな、常闇! お前らが固まってくれりゃ、俺のテープの餌食だ! ……まぁ、まさかここまでうまくいくとは思ってなかったけど」

「ぐ……ッ! 碧海、俺たちを集めるためにわざと隙を晒したのか……!」

「はは……。けど、ギリギリの賭けだったよ」

 

 拘束テープを巻き付け、常闇くんをリタイアさせる。拘束された常闇くんはしばらく悔しそうに唸っていたが、やがてふっと力を抜いた。

 

「……完敗だ。こちらの攻撃衝動を利用されたか」

「君のダークシャドウは強すぎるからね。まともにやり合ったら勝ち目がなかったよ」

「フッ、謙遜するな。……行け、ヒーロー」

 

 潔く負けを認めた常闇くんに背を向けて、僕たちは上階へと向かった。




八百万と主人公の頭脳戦が書きたいのに作者より賢いキャラクターが書けないせいで魅力的なものが書けない…。
自分にはこれが精一杯だ…。

次に建造される艦娘はあの娘に決まりました!皆さんコメントありがとうございました。
引き続き募集はしておりますので、活動報告の方で皆さんの好きな艦娘を教えていただけると嬉しいです!

どちらの作品に興味があってこの小説を読んでいますか?

  • ヒロアカ
  • 艦これ
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