無個性と呼ばれた提督   作:HYDRATION

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毎日投稿、一週間が経ちました。
自分を褒めてやりたい。

今回は前回、前々回の文字数が多かったため文字数控えめとなります(言い訳)。

fgrさん、有沢ゆうとさん、感想ありがとうございます。
マジで励みになります。最早感想書いてくれる人たちのために書いている状態。


第二十九話

 ──ドォォォォォォォォォォォォォォォンッ!! 

 

 USJの入り口の扉が、凄まじい衝撃と共に粉々に打ち砕かれた。視界を覆う砂塵の向こう側に、金色の髪を逆立たせた巨大な背中が現れた瞬間、張り詰めていた空気が一変した。死柄木の指先がバイザーを掠めた絶望の淵。逆転への希望が見えた瞬間だった。

 僕は震える指先を握りしめ、喉の奥で詰まっていた息を吐き出した。

 

「もう大丈夫だ。何故って? 私が来た!!」

 

 勇壮な声が響き渡る。それと同時に、平和の象徴は一瞬で相澤先生を蹂躙していたヴィランたちを無力化した。瞬きをする間に広場の脅威を掃除してみせたその速度は、まさに圧巻の一言だった。

 そして、オールマイトは脳無へと弾かれたように踏み込む。激突の衝撃波が広場を揺らし、僕たちの体を激しく叩く。

 

「吹雪、球磨。蛙吹さんと先生を守って。衝撃に備えていてね」

 

 僕がお願いすると、二人は即座に応えてくれた。吹雪が前方に艤装を突き出して盾となり、球磨が負傷していない方の腕で蛙吹さんの頭を抱え込む。僕はその隙に、ぐったりとした相澤先生の体を背負った。相澤先生の体の重みに耐えながら、僕たちはひとまず安全な瓦礫の陰へと撤退を開始する。

 

「蛙吹さん、先生を連れて一度下がっていて。……吹雪、球磨。掃討の前に補給させて。僕の側にいてほしい」

 

 瓦礫の裏に滑り込み、僕は己の内に眠る提督適性へと意識を向けた。

 視界の端で、小さな妖精たちが慌ただしく現れ、僕が絞り出した精神力を資材へと変え、吹雪と球磨の艤装へ流し込んでいく。

 こめかみを焼くような鈍い頭痛が走り、鼻から生暖かい血が流れてくるが、まだ耐えられる範囲だ。

 

 戦場の中央では、死柄木が自身の首を掻きむしりながら、独白する声が聞こえる。

 

「さすがに速いや、目で追えない。けれど……思った程じゃない。やはり本当だったのかな……?」

 

 死柄木の濁った瞳に、確信が宿っていく。

 

「弱ってるって話……」

 

 死柄木の言葉は、僕が抱いていた違和感とも一致していた。平和の象徴といえど、明らかに全盛期と比べて精彩を欠いている。

 脳無がオールマイトの放ったカロライナ・スマッシュを真っ向から受け止めるが、怪物は微動だにしない。それを見た僕は、声を張り上げた。

 

「オールマイト、だめです!! その脳無には、ショック吸収だけじゃなくて……超再生の個性もあるんです!!」

 

「碧海少年! 大丈夫!!」

 

 先ほど吹雪たちの攻撃を瞬時に無効化した、あの異常な再生能力。その警告を受けながらも、オールマイトはニカッと笑い、さらに脳無へと肉薄していく。しかし、どれほど重い拳を叩き込んでも、脳無の肉体はその衝撃をただ飲み込むだけだった。

 

「マジで全っ然……効いてないな!!!」

 

 オールマイトが歯を食いしばり、驚愕を叫びに変える。

 

「脳無にダメージを与えたいなら、ゆうっくりと肉をえぐり取るとかが効果的だね……それをさせてくれるかは別として」

 

 死柄木が勝ち誇ったように笑った。だが、その言葉を聞いた瞬間、オールマイトの瞳に鋭い光が宿る。

 

「わざわざサンキュー、そういうことなら!! やりやすい!!」

 

 オールマイトは脳無の腕を掴むと、その巨体を持ち上げ、凄まじい速度で反転した。

 

 オールマイトのバックドロップによって地震のような揺れが起きると共に、脳無の頭部が深く地面にめり込む。だが、勝負は終わらなかった。

 

 地面に埋まっていたはずの脳無の上半身が、突如としてオールマイトの背後から噴き出した。

 

「何ッ!?」

 

 ゲートを通り抜けた脳無の腕が、オールマイトの脇腹を、無慈悲に掴み上げる。

 

「コンクリに深くつき立てて動きを封じる気だったか? それじゃ封じれないぜ? 脳無はおまえ並みのパワーになってるんだからな。

 いいね黒霧。期せずしてチャンス到来だ」

 

「グッ、グウゥゥゥッ……!!」

 

 オールマイトの苦悶の叫びが広場に響く。黒霧のワープゲートは無慈悲にその体を上下に分断しようと歪み、脳無の指が脇腹の傷口に深く食い込んでいた。平和の象徴が、まさに引きちぎられようとした、その瞬間。

 

「オールマイトォォォッ!!」

 

 真っ先に飛び出したのは、緑谷くんだった。

 無謀とも言える速度で、彼はオールマイトを救うために広場の中央へと駆け出す。その必死な姿に、僕の心臓が強く跳ねた。

 

「──どっけ邪魔だ!!」

 

 緑谷くんに重なるようにして、凄まじい爆風と共に爆豪くんが空を舞った。

 彼は推進力を生かして黒霧へと肉薄し、首元の防具を正確に掌で捉える。ドォォォン! という爆発音が響き、黒霧の霧が激しく散った。

 

「デク!!」

 

 爆豪くんの怒号に呼応するように、地面を猛烈な勢いで氷の牙が這い寄る。

 轟くんだ。

 彼が放った氷結は、一瞬にして脳無の右半身を、そしてゲートの出口ごと凍りつかせた。氷の侵食によって脳無の細胞が活動を停止し、オールマイトを拘束していた力がふっと緩む。

 

「……助かった。感謝する!」

 

 拘束を脱したオールマイトが、凍りついた脳無の手を強引に引き剥がし、モヤから飛び出した。

 

 さらに、切島くんも硬化した腕を振りかざして死柄木へと殴りかかった。

 

 死柄木は切島くんの攻撃を間一髪で回避するが、もう少しで詰むところだった盤面は、クラスメイトたちと艦娘たちの介入によって粉々に打ち砕かれた。

 

「クッソ!!! いいとこねー!」

 

「かっちゃん……! 皆……!!」

 

 爆炎と氷結の牙が入り混じる広場の中央。危機を脱したオールマイトの背中を見つめ、緑谷くんが膝をつきそうなほどの安堵を漏らす。

 黒霧の実体である首元の防具を組み伏せ、爆豪くんが掌から小規模な爆発を繰り返して獲物を威嚇していた。その瞳は、まさに獲物を追い詰めた猛獣そのものだ。

 

「スカしてんじゃねえぞ、モヤモブが!!」

 

 さらに、隣に立つ轟くんの冷徹な一言が、氷の粒が舞う広場に重く響き渡る。

 

「平和の象徴は、てめェら如きに殺れねえよ」

 

 その言葉は、絶望に支配されていたこの空間をヒーロー側の盤面へと完全に固定した。

 最強の駒である脳無を凍らされ、退路を断たれ、完璧だったはずの計画を子供たちに覆されたヴィランたち。その様子を確認し、状況の安定を確信した僕は、重い瞼を押し上げて前へ出た。

 

「吹雪、球磨……! 皆を、援護して。死柄木を逃がさないように、退路を塞いでほしいんだ」

 

 僕は吹雪の肩を借り、崩れそうな体をどうにか支えて立ち上がった。鼻から垂れる生暖かい感触を手の甲で無造作に拭う。提督適性の行使に伴う、脳を直接灼かれるような鈍い頭痛が視界を歪めるが、奥歯を噛み締めてそれをねじ伏せる。

 指揮官がここで折れるわけにはいかない。

 

「了解です、司令官! ……これ以上、好き勝手はさせません!」

「任せろクマー! 球磨をこんな姿にした屈辱、全力で晴らしてやるクマ!」

 

 吹雪の連装砲が金属音を立てて旋回し、その砲口が死柄木の眉間を一点の狂いもなく捉える。球磨は傷ついた身体を弾ませ、凍りついた脳無の死角──死柄木の逃走経路を遮断するように回り込んだ。

 さらに上空からは、加賀さんの第二次攻撃隊が威圧的なレシプロ音を響かせて低空で通過し、死柄木の周囲に逃走を拒絶する影を落とす。

 

「……チャンスだ。あの男を、ここで逃がすわけにはいかない」

 

 僕は吹雪に支えられながら、死柄木の喉元へ、最後の大攻勢を告げる手を真っ直ぐにかざした。

 血の混じった吐息を吐き出し、戦ってくれている3人へ届くように、声を絞り出す。

 

 

「これより、追撃戦に移行する!」




読了ありがとうございます。
感想、評価などいただけると本当に頑張ることが出来ます。

ふふふ、自分で書いてて最後の主人公のセリフに痺れました。
吹雪と球磨の似たようなセリフが夜戦突入時のボイスなんですよね。

どちらの作品に興味があってこの小説を読んでいますか?

  • ヒロアカ
  • 艦これ
  • 両方知らない
  • 両方知っている
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