クラゲオーグとクモオーグの話。

pixivにも出しています。

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美しい嘘を刺す

 人の傷となる真実に、一体どれほどの価値があるのだろう?

 俺は、現実世界ではなく、夢の中にこそ幸せがあると考えている。

 

「君は、どう思う?」

 

 友、クモオーグに尋ねた。

 

「この世には、安らぎなどありませんよ」

「俺の意見とだいたい同じだね」

 

 俺が、SHOCKER上級構成員のクラゲオーグとして管理している場所では、人々は覚めない夢の中にいる。

 俺の触手がもたらす毒は、人間に幸せな夢を見せられるからだ。

 

「貴方の毒は、貴方には効かないのでしょう?」

「うん」

「それなら、貴方の幸せは?」

「俺は、この触手(うで)が届く人が幸せなら、それでいいのさ」

「謙虚ですね。自己犠牲的とも言えますが」

 

 クモオーグは、俺を見つめて言う。

 

「いつか、貴方も幸せになれるといいですね」

「俺は、だいぶ幸せ者だよ。君がいるし」

「それは何より」

 

 俺とクモオーグは、たまにこうして穏やかに話した。

 しかし、俺たちの幸せは終わらせられてしまう。

 彼は、裏切り者のバッタオーグを始末しに行き、戻って来なかった。

 君は、この世から去って、幸せになれただろうか?

 どうか、彼に安らかな眠りを。

 俺がまだ、月島海(つきしまうみ)という人間だった頃のことを思い出す。

 俺は、無力な子供で、自分の腕では何ひとつ守れなかった。あの不甲斐なさは、一生忘れないだろう。

 また大切なものを喪った俺は、泣きも喚きもせず、ただ波間を漂うように過ごした。

 やがて、俺の元にもバッタオーグがやって来る。

 

「クモオーグの仇討ちをさせてもらうよ」

 

 戦闘態勢に入った。

 

「チェンジ…………」

 

 クラゲオーグは、何本もの触手を自由自在に伸ばすことが出来、その触手には猛毒がある。

 俺の毒は、キロネックスの毒。シーワスプとも呼ばれている。

 まあ俺は、ハチオーグとはあまり気が合わないが。

 バッタオーグは、強かった。俺の触手を千切り、掻い潜り、距離を詰めて来る。

 

「クラゲオーグ」

「なに?」

「僕を恨んでいるのか?」

「さあ、どうかな」

 

 実のところ俺は、燃えるような復讐心も、ドロドロとした恨めしさも持ち合わせていない。

 ただ、君にも知ってもらいたいだけだ。相容れない信念を持つ俺たちでも、ささやかで幸せな生を謳歌したかったということを。

 俺の一生は、誰にも否定させない。

 人間を守りたいらしいが、君は、俺たちを救うことには間に合わなかった男なんだよ。

 オーグメントだって、普通の人間なんだからね。

 俺は、ここまでみたいだけれど、自分の意志のままに生きたことを後悔していない。

 

「悪くない人生だったよ」


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