偽・錬鉄の魔法使い   作:syuu

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ハロウィンつー事でイッチョかましてやるぜ(楽しい)





登録者数によっては第三作目として残るかもです(チラ見)


1少年の二面性

髪の白い赤い目の女の子と楽しく一緒に本を読む自分とそれを微笑ましげに見つめる優しい両親の姿。

あるときは森全体に白く化粧を施したように吹き積もった雪が舞い降る冬の景色、お父さんが生きていたときは三人で雪達磨を作って遊んでいた。

あるときはお母さんと一緒に屋敷の裏に生えたハーブを干してお湯に入れてハーブティーを作っていた。

あるときは三人になってしまった悲しみを乗り越えるためにお母さんが俺と妹の二人のために一緒に本を読んでくれた。

他愛無い日常がいくつも記憶という名の映像として色褪せることなく繰り返されていた。

 

 

ああ、またこの夢だ。

 

 

そこは人の目には届かない物静かな深い森の奥に(そび)え立つ古めかしい屋敷。そこが俺の家だ。

嘗て白くて長い綺麗な髪と赤い目を持つお母さんと妹、お母さんとは正反対に黒くて短い髪と黒い目の俺とお父さんの四人で笑い合って泣いて過ごした大事な我が家。

 

幸せが沢山あった何年も前の遠い遠い記憶の中での出来事。

 

そして、いつも最後はノイズの入った出来の悪い古いテレビのように記憶が断片的に流れ最後は崩れ始める。

 

崩れた世界の後に残るのは暗く赤い空と地上に無数に蠢く生き物とは呼べない何かに侵食される地平線の見えない世界。ただそこの中心にいる自分以外誰もいない淋しいけして■■■■■世界。

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、先輩? 大丈夫ですか」

 

「ああ大丈夫だ。今から起きる」

 

後輩が俺の部屋をノックする音と呼び声に目が覚めると俺の視界は暗い世界からカーテンの隙間から差し込む朝日に照らされた自分の部屋の白い天井を見上げていた。

ベッドから起き上がり机の上に置いた眼鏡を掛け扉の鍵を開けると青みがかった髪をした後輩が地元高校の穂群原学園指定制服の上にエプロンを掛け心配そうに俺を見ていた。

 

「おはようございます先輩。随分と魘されていたみたいですけど……」

 

「ああ、おはよう、桜。下にまで聞こえていたのか?」

 

この良く出来た後輩の名前は間桐桜、俺の所属している調理部の募集(掛け持ち可)に集まってた数少ない一年生部員の一人だ。

一年くらい前に自分の作った料理を俺に紹介して来るようになりいつの間にか我が家のメニュー取り仕切るようになっていた。なんていうか、いろいろ際どい視線を感じることもあり。一部の人からはお前ら付き合っているんだろ? という認識が広まっているが基本は放置している(ノーコメント)

 

「いいえ、いつもの時間に起きてこない先輩を起こそうと思って部屋の前に来たら唸り声が聞こえて……最初先輩が風邪でも引いて唸っているのかと」

 

「少し夢見が良くなくなかったからな。目に隈とか出来ているか?」

 

俺が目元を指しながら桜に見やすいように顔を近づけると桜は頬を赤く染めて慌てて答える。

 

「だ、大丈夫ですよ先輩。顔色も良いみたいですし」

 

「そうか、藤ねえは?」

 

「リビングのソファで先輩が来るのを待っています」

 

「そっか。顔洗ってくるから桜は先に戻ってくれ」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

「遅いぞー、お姉さん待ちくたびれちゃった」

 

「食べるのか読むのか見るのかどれかにしろって。テレビ見ないなら消すぞ」

 

俺が顔を洗い寝巻きの上にこの洋館には似合わない防寒用の羽織り着てリビングに下りるとショートカットの二十代半ばの美人(本人談)が行儀悪くも寝転がりながら箸と新聞を持ちリモコンをソファの前にある茶菓子の置いてある背の低いテーブルの角隅に放置しており。本人の生活感と性格が実に表れていた。因みにこんなズボラな人だが俺の学校のクラス担任であり英語科の教師である。

俺の前の家の地主の孫で切嗣(父さん)とはかなり仲が良く。俺と年甲斐もなくよく切嗣(父さん)をめぐって戦い合った戦友であり義理の姉のような人だ。

 

「桜ちゃんの朝ごはん~。今日の献立は?」

 

「鮭の切り身と浅葱の味噌和え、蓮根と人参の金平です」

 

「いや~ん美味しそう。昨日の夕飯が餃子(中華)だったから和食にしてくれたのね。いただきまーす!!」

 

「本当。元気だねぇ、藤ねえは」

 

衛宮切嗣は十年前の出来事が原因で孤児となった俺を引き取ってくれた養父だ。素晴らしく優しくそしてとても■しい人で俺の秘密を知っても一人の人間として見てくれて、俺の秘密を隠すために特別な医(人形)師の作である器具を与えて俺を普通の人間と変わらない生活くれた恩人であり俺のような『異形』を狙う連中との戦う術を教えてくれた師でもあるのだ。五年前に返そうにも返せない恩を返す前に亡くなってしまい。衛宮の屋敷に帰るのが辛くなってしまった。

後俺個人の裏の事情的な理由で海外(修行)留学に二年ほど行っていたのだが。その間、藤ねえが切嗣(父さん)の遺言だか忘れ形見である俺を気遣ってか未だに衛宮邸の管理をやって屋敷が痛まないようにしてくれている。

その理由は勿論………

 

「ううん、美味しい。桜ちゃんこの味噌和えと鮭とっても美味しいわよ」

 

「あ、それは昨日先輩が放課後に作り置きしていたやつです」

 

「へえ、なかなか合うわね」

 

そりゃそうだ、何しろ俺は今日の朝食に鮭が出ることを知って(・・・)いたのだから。

 

「それより藤ねえ、いつもと同じように食べて大丈夫なのか?」

 

「え? ……あ!? いっけない教員会議に遅刻しちゃう!ハッグハンムグ―――ご馳走様!!」

 

壁にかけてある時計を見て藤ねえは慌てて残りをかっ込むと器を台所の水に漬けて椅子の下に置いておいたヘルメットを持って玄関口に止めてあるバイクにエンジンをかける。

 

 

「あ、そうだ。ねえ、あの話考えてくれた?」

 

昨夜の話のことだろう。珍しい藤ねえが修学旅行と飯の献立以外で記憶力を費やすとは。

今思えばあんな夢を見たものあの話が出たのが原因なのかもしれない。

 

「前から言っているけど俺は未だ切嗣(父さん)の家に帰るつもりはないぞ」

 

違う、帰ることが出来ないんじゃない。衛宮の屋敷に帰る資格を俺は海外(修練)に行っている間に捨てたんだ。だって八年前のあの日に俺は……。

 

「昔のことを考えるとあんたにも思うところはあるんでしょうけど、いつまでも引き摺っていると桜ちゃんにモテないぞ~」

 

悪戯気に放ったその言葉の矛盾に俺は思わず笑いを噴き出してしまった。藤ねえがいかぶしげに眉をひそめる。俺が恥ずかしげに反論するとでも期待していたのだろう、生憎とその手の挑発には桁違いに年季の差がある。

 

「プッハハハハ。なら心配ないや」

 

「何よその自信ありげな態度はー」

 

「だって切嗣(父さん)なんか初恋を引き摺っていても藤ねえにモテていたんだから」

 

「……~~~?~!??! ちょっと、なにを言っているのよ!! 話は放課後までにまとめておきなさいよ!!」

 

「はいはい、事故るなよ藤ねえ」

 

照れ隠しのつもりなのだろうバイクを洋館の入り口である門まで走らせて顔を赤くしながら「首洗って待ってろよぉぉお」を奇声を上げ走り去っていった。

 

 

 

 

 

俺は門を閉めて洋館の中に戻りリビングに置かれているテーブルと四つの椅子を見てため息を吐く。

衛宮の屋敷を半ば見捨てまでして引っ越した時、先ず最初にそろえた家具の一つだ。

 

「馬鹿だよな。こんなことをしてもあの頃に戻れるわけがないのに」

 

桜は先に食べ終わったのか台所で藤ねえと自分の器を洗っていた。俺も残っている切り身を口に放り込み食事を再開した。

 

 

 

 

「先輩、こちらの後片付けは終わりました」

 

「こっちも丁度食べ終わったところだ、ご馳走様」

 

「お粗末さまです、一緒に洗いますね」

 

食べ終わり器を重ね台所まで持ってくると桜は俺の持っていた器を受け取り一旦水に漬け未だ泡の残るスポンジで食器を洗い始めた。

最初の頃は、俺が一人でやっていたことなのだが桜が自ら進んで後片付けを手伝うといい始め、いつの間にか台所の水場は桜の指定席になっていた。非常に素晴らしい心意気なのだが俺に関しては一人でやったほうが早いのであるが無邪気な善意を無碍にするほど俺は終わってはいない。

 

「いつも悪いな桜。助かっているよ」

 

「いいえ、私が好きでやっている事ですし」

 

「今夜の晩飯も期待しててくれ」

 

そう答えると俺は、羽織をハンガーに掛け桜が洗った食器の水気を拭き取り食器棚に戻す。

  

「あの、先輩。あの話って何ですか?」

 

「ああ、あれ聞こえてたのか」

 

「すみません、盗み聞きとかするつもりじゃなかったんですけど」

 

桜が不安げに俺に先ほど藤ねえのと話のことを聞いてきた。聞くつもりはなかったのだろうすぐに桜は頭を下げて謝る。

 

「藤ねえの声は無駄にでかいから仕方ないよな。まああれだ今のこの洋館に引っ越す前の家に戻ってきて欲しいんだと」

 

「先輩の前の家……ってあの武家屋敷みたいな噂の」

 

「桜も知っているんだ? まっ、三年も住んでいれば愛着も湧くし向こうの方が学園から遠いから引っ越すとしたら卒業した後だな」

 

「そうですよね。(私の家からも遠くなっちゃいますし)」

 

同意した後の声が小さくなり聞き取り辛く成る。

 

「桜?」

 

「いえ、何でもありません!? それより先輩、今日よろしければ弓道部の朝練を見学しませんか?」

 

何を言ったのか聞こうとしたら誤魔化すように後ろを向きエプロンを脱ぎ畳むと部活の勧誘をしてきた。

何でも三年の先輩たちがこの夏の大会を境に退部したため体育会系の部活は人手不足なのだそうだ。

悪いが桜、俺は武道を習う余裕は無い。それに今日は本当に都合が悪いため断る一択しかないのだ。毎回調理部に尽くしてくれるお前の優しさに答えたいが……許せ。

 

「今日は『庭の手入れ』しなきゃいけないからな。たぶん待っていたら朝練には間に合わなくなるだろうから先に一人で行っててくれ」

 

「わかりました。お先に失礼します」

 

「行ってらっしゃい」

 

「行ってきます。先輩、今日の夕飯楽しみにしていますね」

 

 

 

 

 

 

「さてと、やっと行ってくれたか」

 

俺は、桜を見送ると今まで一般人『衛宮』の顔を外し魔術使い『衛宮』の顔を取る。洋館の本館と裏の離れとを繋ぐ渡り廊下への扉に手を付き魔術を行使するための呪文を唱える。

 

術式(craft)起動(on)汝らが我が道を拒むことは許されん(Does allowed that ye refuse my way)

 

扉が俺の言葉に反応し歪に淀み始めると二枚の赤と金の装飾を持ったカードが歪みから飛び出し俺の前に二、三周飛び回ると門番のように扉の脇に張り付く。その二枚にはそれぞれ、『(The Lock)』『(The Maze)』とそれぞれの名前に相応しい絵柄が描かれており、俺が扉を潜るのを待っているかのように佇んでいた。

 

侵入妨害は継続(Intrusion disturbance continued)再度扉に結界を張れ(Swelling a barrier to re-door)……ふーっ。急かしやがる」

 

扉を開けて中に入り、本当の(・・・)渡り廊下を進むとそこには大きな温室のような工房が広がっている。パッと見ではわからないが工房を形作る防弾ガラスと骨組みに使用されているチタン合金の柱にはそれぞれ一枚一枚に魔術的加工が施されこの工房の主の命令一つで侵入者に対する完全な過剰防衛システムと成り得る。

 

「さてと、準備は重畳」

 

魔力を通しながら透明な硝子扉を開け奥へと進み薬品生成の場から銀の器とビニール素材の手袋と手術用の白衣を着込み、錬金術の修練場からは俺が自分で作った鉈包丁を右手に構える。

 

「来い」

 

眼鏡を外しひっそりと目を閉じ、ゆっくりと開くと工房の中にいる使い魔として飼育している鳩達が一斉に俺の周りに集まる。まるで何者かに心を奪われたかのように自分という個を失ったかのような様子に俺は自分のした事にもかかわらず生唾を飲む。

そのうちの一羽の首根っこを左手でしっかりと掴み上げると、何度も打ち付けた跡のあるまな板に押し付け………。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

緊張に心臓の鼓動が早く鳩の首元に狙いを定めた包丁が大きく振るえていた。

 

「ん、……………………………く、ンッ!!」

 

深呼吸をし、心を沈めて覚悟を決めて大きく振り上げると俺は無邪気に小首を傾げる鳩のつぶらな瞳に一瞬怯むも鳩の小首を切断するのに十二分な威力で一気に振り下ろし…………。

 

 

 

 

 

 

この工房の様子を見ればわかるように俺こと『衛宮』は、魔術師としては性格がかなり悪い。いやそれ以上だ。

 

他の正統派の魔術師が見ればあまりと言えば余りの工房の使用用途に唖然とし目も当てられないことだろう。

 

それで正しい。

 

 

俺は出来損ないだ。

魔術師としても、

錬金術師としても、

魔法使いとしても、

 

そして何より人として『正義の味方(エミヤを継ぐ者)』としても、出来損ないだ

 

自分勝手で

嘘吐きで

無粋で

臆病で

卑怯者で

捻くれ者で

自己中心的で

生きる目標も無いくせに人の命を資源扱いする外道で、

どうしようもなく救えなくて、

救えない存在(バケモノ)だ。

 

ただ一つ誇れるものがあればそれは………。

 

 

 

 

 

 




ただこれだけは言いたい Fate/Prototype 面白そう!! ショートアニメダイジェストしかないのが勿体ねえ!!!(叫)

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