学園異能大超人 モブキャラ視点   作:l:pさあびす

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プロローグ

 

 死んだら神様っぽい何かから力を貰って転生した。

 現状の自分を表すとしたらこれだろう。

 テンプレよろしくの出来事だが、本当のことであるのだからしょうがない。

 

 貰った能力は某光の巨人っぽいのになれる能力である。

 最初こそ、力の全能感は凄かったが時間もたてば冷静にもなる。

 故に、気づいてしまったのだ。

 

 ――怪獣、どこ……?

 

 そう、怪獣的な敵は影も形もなかった。

 つまり敵がいない。

 敵がいなければ変身する意味もない。

 

 そして、その内理解した。恐らくは怪獣が現れることもなさそうなことを。

 敵がいた。いるにはいるが人間サイズ。

 

 この世界はどうやら異能学園ものの世界だったようだ。それも多分石鹸タイプ。

 異能者養成学校、よくわからない序列、明らかに治安の悪い街。うん、間違いないな。

 

 ならばこの巨大化能力なんて、こと異能ものにおいてはかなり不利だ。物語において大抵は図体ばかりの木偶の坊でカマセになるのがオチか、それとも敵を羽虫みたいにプチッと潰すかの二択。

 どちらにしても持て余すってのが正しい。

 まさに宝の持ち腐れである。

 

 とは言え、自分も少なからず異能者である以上その学生生活を送ることになった訳だ。

 流石に給料が発生する学生の肩書きには逆らえなかったよ……。

 そんなこんな、何となくで入学から早数か月。隣のクラスで彼を見た。

 

 ――咲崎カナタ。

 

 やっべぇ、絶対あれ主人公だわ。

 なんかオーラ的な、巻き込まれ体質的な感じがプンプンとする。

 軽く調べてみるとちょっとカッコいい二つ名を持ち、序列は下位というドンピシャ。

 

 さらに平均、中央値を地で行くような平凡な少年であるようで、ピアスがトレードマークの地味系主人公といった部類だろう。

 

 そこで俺は考えた。彼と関わるか否か。

 結論を先に言えば、見る専。なるべく関わらないようにロムってることにした。

 自分の力が役に立つかわからない以上、事件の中心になるだろう主人公くんとかかわるのはちょっと怖い。簡単に死にそう。

 故にモブになるのだ。無難に生きていれば主人公くんが事件を解決してくれるだろうし。

 ……そもそもクラス別だからという理由ではないとだけ。本当だからな。別にクラス跨いで会いに行くのコミュ障には辛いとかじゃないからな。

 

 結果出来上がったのは国営異能者養成学校『ラウンダー』、二位階の無難オブ無難生徒。

 一位階からスタートする序列でその一個上。原付免許取るのと同じくらいの難しさの位階だ。そこまで位階にこだわらない生徒の大半はここ。

 それが俺、広井かのんの身分である。

 

 この可もなく不可もなくのモブキャラ学園生活。色々と物騒だが正直めっちゃ楽しい。

 

 

 

 

 

 

 

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『さあ! 始まってまいりましたこの模擬試合! 実況解説はこの私、二位階のナレ子がお送りします!!』

 

 場所は第四スタジアム。少し前にバカが粉塵爆発をやらかして吹っ飛んだらしく、所々にブルーシートが被さっている。

 その中心の舞台には二人の男女がいた。

 片方は、件の主人公くん。

 もう片方は、赤髪の美少女。確か転校生だったはず。属性的には赤髪釣り目の明らかツンデレだし、とりあえずヒロインちゃんとしておく。

 

 ……なにこれすっごい既視感あるんだけど。

『史上最年少の「ジャイアント・キリンガー」であり九位階、「天才」天津契(あまつちぎり)!』

 

『対するは、あの「神仏殺(しんぶつごろ)し」の異名を誇る一位階、咲崎(さきざき)カナタ!!』

 

 スタジアムの観客席に座った俺の耳には、妙に聞きとりやすい声で解説が聞こえてくる。

 ははん、これはあれだな。主人公くんがセクハラまがいの事して決闘って流れだな。

 

 にしても今日の試合の観客は多い。普段の倍以上いるだろうか。百人は入る観客席が半分以上埋まっている。

 特段この学校で模擬戦はそう珍しいものでもない。飯のおごり、罰ゲーム、恋愛沙汰etc……。そのため、ここまで集まるのは一周回って珍しい。

 人が多すぎて、普段なら『ふっ、あいつには見込みがあるな……』と後方腕組で黒歴史作る中二病くん居なくなっちゃったぐらいだ。

 

「なんか人多くないかにゃあ?」

 

 前の席からなにやら話し声が聞こえてくる。

 語尾が『にゃ』の人初めて見たわ。猫耳カチューシャもつけて恥ずかしくないんだろうか。

 その隣の女性は確か教頭先生だったはず。授業は受けたことないが、明らかにメインキャラとかの雰囲気だったし記憶に残っていた。

 じゃあ誰だよこの猫。あれか教師か? ……それはちょっと嫌だな、ぶっちゃけキツイっす。

 

「来月には水晶祭。その前に試合をするバカはいない。……まあ、ここにいた訳だが」

「じゃあ敵情視察……、いやストレス発散の物見遊山?」

「大体の奴らはそうだろうな」

 

 因みに俺はこうして模擬戦を見るのが好きだから、時間があれば大抵は観戦している。

 ミーハー共とは違うのだよ。

 

「けんこちゃんはどっちに賭ける? 私は天津に一万」

「天津に二万」

「それじゃあ賭け事になんないじゃん。……あ、にゃあ」

 

 生徒の試合で賭け事してる。それでいいのか教師。

 そんな思考を中断する様に、実況からの声。

 双方の準備か終わった様であった。

 

『――それでは試合開始っ!』

 

 ブザーの音と同時に試合の幕が上がる。

 先に攻撃を開始したのはやはりヒロインちゃんからだった。

 

「戦火!」

 

 その掛け声と同時に炎が舞う。蛇のようにうねりながら主人公くんに向かって飛ぶ。

 ほう、やはり異能を主軸にした遠中距離型の戦い方。

 あのタイプのキャラはやっぱこうだよねって感じ。

 

『火をものともせずに、咲崎が避ける! 避ける!』

 

 負けじと軽やかな動きで避ける主人公くん。

 それを追いかけるように形を変えながら進む炎。

 完全にいたちごっこ。

 

 お互い無手での勝負。

 見る限りヒロインちゃんの戦闘スタイルは明らかに異能タイプ。対して、主人公くんは確か徒手空拳。こうした試合に限るが純粋な近接での戦闘が基本だったはず。

 

「攻撃を避けながら近づく。言葉にしてみれば容易いけど追われる立場である以上、常に主導権は天津にあるにゃ」

「しかし、それが誘導であったのなら」

 

 確かに言われてみると、どんどんヒロインちゃんの攻撃は単調になっているような。

 これ人間業じゃないような気がするんですけど。

 

「ほほう、ならその種は何かにゃ~?」

「あの少女が史上最年少のキリンガーなら、あいつは同年代最多のキリンガーだ」

 

 腕組みしながら先生は語る。

 なんかめっちゃ訳知り顔なんだけどこの先生。

 てかそんな設定べらべらとしゃべっちゃって良いの? 聞いてるやつここにいますよ。

 

「……時に猫原、格上との戦闘で何が必要か分かるか?」

「藪から棒に何さ。そりゃあ回避一択だけど」

「そうだ。防御、カウンター狙いの受けは論外。被弾がそのまま死に繋がるような相手だ、基本は回避が推奨される」

「……、確かに彼は一度も被弾してにゃいけどさ」

「言っただろう、奴は最多のキリンガー。つまり同年代で一番多くの『()()()』を為した奴だ。その反射神経と回避センスは神がかりの域、未来予知とも評される」

 

 ああ、そういう一芸特化タイプの主人公かぁ。

 

「それでも天津の実力は折り紙付き。避けてばっかりの少年が勝てるとは思えないけどにゃあ」

「だろうな。実際、あいつは勝とうとなんかしていないし勝てやしない」

「成程にゃるほど、じゃあ狙いは引き分けかにゃ?」

「十中八九。大方、接戦を演じて時間切れの引き分けでも狙ってるんだろう」

 

 そんな先生の予想とは裏腹に先に仕掛けたのはヒロインちゃんだった。

 

「――けど、甘いわ」

 

 低姿勢からのタックル。いや、組みつき。

 あ、いま胸がふにんってなった。主人公くんの腹部付近で押しつぶされて変形している胸が見える。主人公くんも心なしか頬が赤い。うーん、思春期だからしょうがないよね。これは避けられないわ。

 

「だ、抱き!?」

「神が相手ならば話は変わるけど、相手は人間。懐に入る事だって起きうるのよ!」

 

 その瞬間、ヒロインちゃんは自分よりも大きい主人公くんを持ち上げ反り返るように投げ飛ばした。

 昔、プロレスの番組で見たことがある技。あれは、そう。

 

『じゃ、ジャーマンスープレックスゥゥ!?』

 

 まさか、あのヒロインちゃん肉体派かよ!? 完全に異能だよりの戦い方してたから騙された。

 しかもなんて美しいフォーム。一朝一夕でできるものじゃないぞ。

 

「あ、がッ!?」

 

 脳天から突き落とされた主人公くんは白目を向きながら大の字で倒れ込み、一方ヒロインちゃんはバックステップで一度距離を取った。

 油断していた人間の意識を刈り取るには十分すぎるほどの一撃。

 

「生憎、舐めてかかってきた相手を倒せないほど、あたしの称号は甘くないわ」

 

 しかし。

 

『おっと咲崎、立ち上がる!』

 

 痛みに強い。というか強くならざる負えなかったんだろう。

 神との戦いで回避しても、衝撃波やらなんやらは当然発生している。

 目に見えなくてもダメージはある。それが同年代最多とも呼ばれるほどの場数を踏んでるんだ。推して知るべし。

 

「一撃とは言え、それなりの攻撃を耐えた……。いいわ、あんたを戦士として扱ってあげる。そして戦士には敬意を表するべきだ」

「そりゃどうも」

「だから、力を見せてあげる」

 

 ヒロインちゃんはゆっくりと歩き出した。

 

「あたしの異能は、最初に殺した神の力を引きずり出す『簒奪者(テイカー)』」

 

 その異能自体はよくあるものだ。この学校でも探せばまったく同じ能力者も数多くいる。しかしその強そうな能力とは裏腹に、校内ガッカリ能力一位の座を維持している。

 理由としては神殺しを為していないためお飾りの能力と化していることが殆どだからだ。キルを譲れる余裕を与えてくれるほど神は優しくないし、高位な神格ならなおさら。そもそも異能を使わなければ一部の例外を除き、神に碌なダメージを与えられない。そんな完全に状況とミスマッチしたこの能力はハズレ扱いされている。

 

「そして」

 

 だが、ヒロインちゃんは明らかに違った。それは史上最年少のキリンガーという称号が否定する。

 つまり。

 灰色の煙がヒロインちゃんの足元から、辺り一帯に広がる。

 

 煙る。

    煙る。

       煙る。

 

 その背後には室内だというのに黒い球体、いや太陽が燦然と輝く。

 

「我こそは黒き太陽、煙る黒曜、夜と鏡。それすなわちアステカ神話が一柱『イパルネモアニ』」

 

 存在感が肥大化する。

 その一挙手一投足はすべてを支配するようであった。

 

「……分かりやすく言うのならば太陽神『テスカトリポカ』。未熟故全能とまではいかないが、戦士の神をどう倒す?」

 

 神は、そう宣言したのだった。

 

 えっとヒロインちゃん強すぎない……? なんかインフレしまくったゲームのボスみたいな事になってるんだけど。

 しかもテスカトリポカと言ったら主神クラスの神。その力を制限付きとは言え行使できるなんてチートも良いところ。さすが史上最年少のキリンガー、予想を超えるどころかタンクローリーで押し潰してくるぐらいのインパクトがある。てかどうやって殺したんだそんな奴。

 

 そうして呆然と見ているだけの主人公くんのとった行動はただ一つ。

 

「まいった」

 

 渾身の両手を掲げての降参。

 ですよね。

 

『しょ、勝負ありぃ! この試合、勝者は天津契!』

 

 拍子抜けしたせいか、間抜けずらしたヒロインちゃん。次第に苛立ちに変わっていく。

 

「あ? ――まだ戦えるのに、戦いもしないで負けを認める?」

「ああ。退学も、ちょうどいい機会だったのかもしれない。それに僕は、神殺しはできても人殺しなんかできやしない」

「は? ふざけ――」

 

 え、なんかギスギスし始めたんだけど。

 これ本当にラノベ展開なの? こっから仲良くなる保険あるんですか?

 

「あんたにはプライドはないの!? そうやって目の前の戦いを適当に済まそうとしているなんて、あたしのプライド以上に自分のキリンガーとしてのプライドを傷つける行為よ!」

「殺しの称号にプライド? すまないけど、僕にそんな物あるはずがないんだよ」

「それ、本気で言ってる?」

「そもそも、他人を蹴落として得た物だ。ここにいるのだって罪滅ぼし以外なにものでもない」

 

 あれ、主人公くん闇深くない? 聞いてて結構痛々しいんだけど。

 

「……退学の件、なかったことにしてあげる」

「……?」

「そのねじ曲がった根性叩き直すのに退学させたら意味ないから。いいわね」

「そりゃあ、まあ」

 

 強く主人公くんに念を押したヒロインちゃん。これツンか? これ本当にツンか?

 

……ちっ。クソ野郎が

「え? 今なんて」

 

 難聴系はここで発揮したらまずいだろう主人公くん! 明らか好感度マイナス。恋愛沙汰に詳しくない俺でもわかるレベルだ。

 もう一度下手でもしたら殺しそうな勢いだ。

 

「あたしはあんたを認めない。そんな生き方をするあんたを」

「ごめんね。僕は、この生き方しかできないんだ」

 

 えぇ……。これ系ってお互いに認め合って終わる流れじゃないのか。

 めちゃくちゃ遺恨残ってそうだけど……。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 ――tips

 

 国営異能者養成学校『ラウンダー』。

 それは表向き、強大無慈悲な神々と戦うための駒を育てる学校。

 それは裏向き、最後の日に楽しかったと笑って終われることを願い作られた施設。

 

 自由な校風と異能の訓練が売りであり、一応は公務員の扱いになる為給料が発生する。

 

 また校内には階級が存在し、一位階から始まり上限はない。

 最高位は、三九位階が書類上存在している。

 

 ……現在、世界の約八割は神々の手によってすでに陥落済み。

 世界終焉まで秒読みの詰んだ世界にある本校は子供たちの最後の遊び場。

 

 正真正銘、負けた後の敗戦処理。

 後の祭りだからこそ、生徒たちは楽しく最後の日まで駆け抜けるのだ。

 

 

 

 

 

 

 




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