学園異能大超人 モブキャラ視点   作:l:pさあびす

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第一章 水晶前夜祭編
主人公のいない平和な物語 Ⅰ/七月一日


 

「彼、あのまましばらく入院させとけません? 半年ぐらい」

「ええと、全治三週間ってところかな……」

 

 学校附属の病院。その診察室に天津契(あまつちぎり)がいた。

 特段病気にかかった訳ではなく、思い……友人である咲崎カナタの付き添いで訪れていた。

 神との戦闘の後、気絶同然で倒れこんだ彼を病院に運び込んだのだ。

 

 その次の日、一応は付き添い人として彼の現状を聞いていた。

 

「まあ検査したら出るわ出るわ。擦り傷、打撲、左腕部骨折、肋骨数本の骨折、全身の内出血多数。まるでダンプに撥ねられた、いや爆発に巻き込まれたみたいだね」

「尚の事このまま放牧したら、また怪我しそうで心ぱ――……心拍数が止まって死んだら困るんですよ。まだあたし蘇生能力使えませんし」

「使えたらいい問題なのかい、それ!?」

 

 医者はパソコンに向かっていた体を、天津に向け言った。

 

「――でもまあ、しばらく彼はあのまま安静だよ。心配しなくてもね」

 

 

 

 

 

 

 

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 七月に入り、この暑さに冷やしモブキャラ始めました。広井かのんです。

 ラノベ一巻みたいな事件から数日後の本日は日曜日、そして俺は空を仰いでいた。

 今日は、空が青いな……。

 

 俺が立ち尽くしていたのは学内外掲示板の前。

 そこには堂々とポスターが一枚。

 そういえばそんなのあったな、と絶望中。

 

水晶前夜祭(すいしょうぜんやさい)

 

 本祭である水晶祭はまだあと半月以上ある。

 ただ水晶祭の規模は大きく、同様に規模が大きくなってしまう前夜祭はそれなりに早い時期でやってしまうのが伝統だ。水晶前夜祭は水晶祭武芸大会に出場する人を決める、いわゆる学内トーナメントだ。勿論出店もある。参加者は位階が五以上のエリートが多い。勿論一だろうが二だろうが参加できるけど、俺は興味なさ過ぎて毎年スルーしてた。故に完全に忘れていた。

 ただこれ自体は毎年やっているからそう問題ではなのではない。しかしだ。

 

 しかし主人公くんが一巻を終わらせたのだ。必然的にその意味が変わってくる。

 この手のイベントはお約束と同義だ。

 つまり次のストーリーの始まりの合図。

 

「あるるぇぇぇえ、主人公くんまだ入院してるんだけどぉぉ!? もう次の巻かよぉぉぉぉぉ!?」

 

 これまずくない? まずいよ。まずいわよ。まずいですわよ。

 主人公のいない物語とか破綻してる。世界が終わる。

 ああ、死ぬ前に見るアニメの選定しなきゃ。

 

「……、」

 

 いや待て、落ち着け。これはアレだ。

 そうだこれは二巻とは関係ないんじゃないのか。

 だって主人公くんが入院している以上大きな事件は起こらないはず。

 

 その時、俺の脳裏に一つの言葉が。

 

 ――スピンオフ。

 

「じゃあ、大丈夫だな。……俺知らねーっと。帰って寝よ」

 

 逃げに走ることしかできそうにない。

 

 

 

 

 

 

 

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「あァ? 前夜祭出禁?」

「せやせや。平くんいっつも会場半壊させるし」

「ンだよ。そンぐらいカッコつけねェと生徒会としての威厳がよォ」

「この前の第四スタジアムの件、忘れたとは言わせんよ? 修繕費、ウチ持ちや」

「うぐ」

 

 生徒会室、ではなく高等部二年の自教室で二人は話していた。

 ナイフ舐めてそうなチンピラ同然の風貌をした男、平一(たいらはじめ)

 高身長糸目関西弁の裏切りフラグ役満の男、善本良太郎(よしもとりょうたろう)

 今日はやけに天気が良く、窓から入ってくる風は心地がいい。

 

「ただでさえ警備やら進行やらで人が足りんのや。そもそも、そういうことは山田副会長で十分」

「あのクソ中二病が。自分だけちゃっかりと出場済ませやがって」

「先輩にクソはないやろ」

 

 難問議題が一つ、山田副会長。

 副会長という責任ある役職に似合わずのゴリゴリの中二病。そして生徒会で唯一の三年である。

 ……高校三年生が中二病で良いのかという疑問ももっともだが、気にしたら負けだ。

 

「チッ、しゃあねェな。こうなったらクソ猫の足引っ張って遊ぶか」

「……見た目チンピラの君に言われると、めっちゃ犯罪臭するんやけど」

「うるせェ、見た目裏切り男」

「ああ! ソレ気にしてるんやけど! もう、ひっどいなぁ平くん。……そんな裏切り裏切り、言われるとしたくなるのがウチってもんやのに」

「!? フリじゃねェからな恐ろしい」

 

 ぶるりと体を震わせた平。目の前にいる善本の薄ら笑いにはかなりの破壊力があった。

 

「冗談冗談。会長のおかげで今のウチがあるんや、裏切るなんて死んでもせん」

「オマエの冗談は冗談に聞こえないっつうの。まあその意見は同感だがよォ」

 

 生徒会における会長への信頼は絶対。

 それは役職によるものではなく、会長本人の人徳によるものだ。

 会長は生徒会で唯一『難問議題』ではない。それどころか、位階は中の下である三位階。

 おおよそ、能力だけを見るのならば生徒会長にふさわしいとは口が裂けても言えない。

 

 国営異能者養成学校ラウンダー生徒会長、伊賀仁(いがじん)

 高等部一年にして会長の座に上り詰めた傑物。

 その異能は『他人が受けるダメージの肩代わり』という、お人よしの会長らしいものだ。

 あと、恐ろしく書類仕事が早い。

 

 彼らもまた、会長に救われたのだ。

 あの底抜けのお人よしに。

 もしも、この世から神を一掃する救世主がいるとすれば彼のような人物を指すのだと、それがこの学校の共通認識だ。

 

「で、当日のシフト表なんやけど」

「適当でいい」

「じゃあ、全部」

「殺す気か!?」

 

 

 

 

 

 

 

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 私はまだ生きていた。

 『アード』の作戦から早数日。未だ、例の物の入手報告は上がってきていない。

 それどころか、独断専行で作戦を混乱させたとして、私は組織内のつまはじき者だ。今こうして学校にいるのだって、その意味合いは厄介払いに変わっている。

 

 その学生寮の一室。私の自室にソレはいた。

 

「まもなく、開幕の時……。舞台に上がらぬ役者は舞台袖にいるというもの」*1

 

 なんなのだろうかこの人は。

 大それた動きに意味の分からない言葉。

 改造された制服に、夏の暑さで薄手の服でも暑いのにトレンチコートを羽織っている。

 頭がおかしいのではないだろうか。

 

「しかし、しかしだ。心を持して待つがいい。役者には相応の舞台がある。――我がそれを保証しよう」*2

 

 ……何言ってるのだろうか、この人は。

 凡そ、人間とは思えないような言葉で意思疎通が取れていない。

 あれか? 異能で頭がぱあになってしまった人と言う奴ではないのか?

 

 ならば心当たりがある。

 アードでも実験の末、そうなってしまった人を何度も見たことがある。当然、私の知り合いにも。

 そうか、それならばしょうがない。

 

 しかし、相手に害意がないのは何となくわかる。

 どうせこのままお払い箱になるのはわかっている。もしかしたら私を殺しに来る者がいるのかもしれない。

 ならば、このままこの人に寄り添うのもまた一興か。いつか来る終わりの日まで。

 

「フハハッ、フハハハハハ!! 我はサン()フィールド()。難問議題が一つ、ラウンズに集いし者よ。さあ共に行こうか、従犯よ」*3

「……はい。わかりました」

 

 やっぱり何言ってるのかは全くわからないが。

 頭おかしいよこの人。

 

 

 

 

 

 

 

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「そこ! にゃにゃめ四十五度」

「会計! にゃに言ってるかわかりません!」

「分かれボケ!」

 

 視界の端には、男子生徒をぶん殴った少女の姿があった。

 前夜祭のための設営中。

 教頭でもある私も、当然立ち合いの監督として来ていた。

 

 暫く、晴天の中で見ていると先ほどの少女が駆け寄ってくる。

 

「わざわざご足労いただいてすいません、咲崎絢子(さきさきけんこ)先生」

猫原(ねこはら)、猫を被るな」

「わかったよん」

 

 ピースピースと自己主張してくる猫原に溜息をつく。

 

「うーん、設営は多分明日の放課後までには終わるんじゃないかにゃ」

「今年はずいぶんと手際がいいな」

「ありゃ、褒められちゃったにゃん」

 

 去年は確か、庶務がこの仕事を請け負っていたはずだ。

 そのため、設営予定日数を三日過ぎた上、爆破して一からやり直しになったのだ。そんなことのあとだからか褒めることだってする。

 

「そう言えばさ。けんこちゃん、弟くんの様子見なくていいの?」

「あいつは死んでも死なない奴だ。心配なぞするだけ無駄というもの」

 

 不肖弟である咲崎カナタの頑丈さは折り紙付き。

 勿論心配していない訳ではないが、仕事を放棄して見舞いに行くほど身内贔屓に徹しているわけではない。

 

「嘘言ってもー。ほんとは見舞いに言って頬擦りの一つでもしたくてたまらないのに。ツンデレさんだにゃあ」

「お前は私をなんだと思ってるんだ」

「素直になれない時代遅れツンデレ」

「おい」

 

 ニヤニヤと小馬鹿にした表情で私をからかってくる。

 こいつには年上を敬うという気持ちはないのだろうか。

 

「そんなんじゃあ、私が横からかすめ取っちゃうよ? こんな感じで――」

 

 そう言うと猫原はとびっきりの笑顔と、大それた動きで。

 

「――イェーイ。弟くんの彼女だにゃん」

 

 瞬間、私の右拳が猫原に向かって飛んだ。

 猫原の顔をかすめ、後ろの報告に来た男子生徒が衝撃で吹っ飛んでいく。

 

「やっぱブラコンじゃん」

 

 その言葉は聞かなかったことにして。

 

「す、すまん! そこの男子生徒、大丈夫だろうか!」

 

 遥か後方に吹き飛んでいった男子生徒の様子を見に走った。

 

*1
もう少しで前夜祭です。あなたがスパイなのは分かっています。ここで消すつもりはないので大人しくしてもらえませんか?

*2
そう悪いようにはしません。あなたもまた、我々が守るべき生徒なのですから

*3
私は山田、生徒会の一員です。とりあえず、しばらくは共に行動してもらいます。いいですね?




なんか主人公くん、本編開始時にいなくなっちゃった。おかしい、プロットにはそんなこと書いてなかったのに。
ちなみにスピンオフだと主人公は納得してますが、普通に本筋です。
実はこのストーリー自体、趣味で書いていた他作品のプロット流用してます。主人公ありきの物語、主人公いないとどうなるか気になるね。
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