百合カップルの誕生を影から見守って(たまに助けて)いたら、ヒロインたちの俺をみる目がおかしい件   作:攻める女の子って可愛いよね

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私も『恋愛相談部』に入れさせてください!

 

 

 

 

「ふんふふ〜ん♪」

「……」

 

 職員室と俺たちのクラスは階段で一階分離れており、廊下を含めるとそこそこ距離が長く感じる。少なくとも、何かを雑談するくらいの余裕はあるだろう。

 

 しかし、目の前のこいつによって俺は教室から半ば強引に連れ出されたにも関わらず、こいつは話しかけるどころか鼻歌を歌いながらスキップしてるかのような軽い歩調で職員室に向かった。俺がついてくるのを確信しているのか教室を出た時には手は離されており、担任ときたのであろう、迷いのない足取りで職員室に向かっていた。

 

 仕方なくついていくことにした俺だが、ここまで何もないと逆に困る。様子を見るになんか上機嫌っぽいし、率直に聞くか。

 

「おい。恋ヶ崎、俺を呼んだ目的はなんだ?」

「えー、急に呼び捨てにタメ口? そんなじゃモテないぞっ」

「別にお前に好かれようとかおもってねぇ。早く目的を言え」

 

 ニヤニヤと揶揄うような……なのに苛立ちよりも可愛さが勝るあざとい表情で振り向いた恋ヶ崎は楽しそうに応えた。

 

 ……俺が恋ヶ崎に強く当たるのは嫌いだからでもなんでもなく、彼女と一定以上の距離を取るためなのと、あとは『うっかり惚れてしまわないように』するためだ。ぶっちゃけ可愛すぎて困る。やめろ、その笑みは俺じゃなくてヒロインに向けてくれ。

 

「ん〜、どーしよっかな〜?」

「言わないなら俺は戻るぞ」

「警戒しすぎだってば。分かった分かった、ちゃんと言うから」

 

 原作において恋ヶ崎は裏表が無く善性であり、正直警戒するだけ無駄だ。そして俺の知識からして、今の恋ヶ崎はかなり上機嫌だと言える。しかし、原作通りなら、この時点で恋ヶ崎がここまでテンション高いのは見た事がない……俺の中にあるのは困惑と原作にない展開という若干の恐怖であった。

 

「八社宮くんが、『恋愛相談部』を作ったって本当?」

「……なんだ、そんなことか」

 

 しかし、恋ヶ崎のセリフを聞いて俺の中の疑問はすっきりと解消された。

 

「やっぱそうなんだ。実はね、私もそんな活動をしてみたいって思ってたんだ!」

 

 知ってる。てかお前をマネして作ったんだよ。なんて言えるわけもなく、俺は恋ヶ崎の上機嫌な理由にようやく合点が行った。

 

 ま、作ってみたいと考えてた部活がすでに存在していると分かったらそりゃ機嫌も良くなるか。担任か誰かから恋愛相談部の話を聞いたんだろう。で、俺が作ったと知って俺を呼び出したと。教室で俺を選んだのはすぐにでもその話を聞きたかったから……だと思う。なんで話してこなかったのかは分からんけど。

 

「それでさ、お願いがあるんだけど……」

 

 不思議ちゃんな点が多い恋ヶ崎の行動にようやく納得が行き、俺は安堵していたのだろう。まあぶっちゃけると油断していた。

 

「私も『恋愛相談部』に入りたいの!」

「別に良いんじゃね……え……の。え、今なんて?」

 

 恋ヶ崎、恋愛相談部に入部決定。

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、俺は断ることができぬまま授業開始まで恋ヶ崎の荷物持ちとして彼女と共に教室と職員室を何度か往復し、ようやく終わった時には授業開始のチャイム数秒前であった。

 

 

 

「……それで? 主人公さんに詰め寄られた君は、鼻の下伸ばして追いて行って何してたワケ?」

 

 

 そして今は一限目の理科の授業中、後ろの席に座るコイツは我慢できなかったのか小声で俺に話しかけてきた。

 

 後ろをチラッと見ると、その目は黒板の前に立って何故か授業を指揮っている恋ヶ崎に向けられていた。ちなみに理科のセンコーは端の椅子でうたた寝している。何してんだよお前教師だろ働け。

 

 

「なんだよ、また嫉妬か?」

「しっ……そ、そうじゃなくて」

「恋ヶ崎が気になんなら次の休み時間に紹介くらいはしてやるから、元気だせ。ま、お前が相手にされる可能性は0に等しいが*1

「ほんとにそうじゃない……」

 

 

 そっちから話してきたから相手してやったのにため息を吐いてきやがった。俺は若干イラつきながらも、黒板前で楽しそうに授業をする恋ヶ崎を見ながら答えてやった。

 

 

「『恋愛相談部に入りたい』ってよ」

「あぁ……君が作った部活動だっけ」

「ま、恋ヶ崎を参考に作ったんだ。入りたくなるのは当然だろ」

 

 

 HR後の最初の選択肢で、俺が選ばれた時は思わず思考停止してしまい、直後には恋ヶ崎に腕を引っ張られて*2拒否る間も無くついていく事になった俺だが、そこには当然浮ついた理由なんてものはなかった。ただの入部申請でした、まる

 

 

「……それだけ?」

「何を期待してるかは知らんが、それだけだ。後は学校の設備とか説明しておしまい*3

 

 

 俺が選ばれた理由は別に浮ついた話でもなんでもなく、ただ単に俺が作った『恋愛相談部(部員は俺一人)』の入部希望を伝えられただけだ。まぁルートによっては恋ヶ崎自身が作る部活動だし、恋ヶ崎が入部したがるのは想定内ではあった。まあ想像以上に早すぎて驚いたが。てか転校して間もないのにどこで知ったんだ? 

 

 

「へぇ……で、入部希望されたキョウマはどうするの?」

「何もしねぇよ。断る理由もない(流れでOKしちゃったし)」

「……二人で活動するってコト?」

「いや、恋ヶ崎が来るんなら俺は「そこ! 八社宮くんたち! 私語をしない!」

 

 

 前を向くと、恋ヶ崎がチョークをこちらに向けて教師気取りのビシッとしたポーズを取っていた(かわいい)。ただ、表情は怒りではなくかなり楽しそうで、ノリノリで教師の真似していることが窺えた(かわいい)。

 

 

「あ、ご、ごめんなさい」

「……すまん」

「よろしい。では続けますね♪」

 

 

 恋ヶ崎が教師代行を始めた経緯はシンプルで、理科の授業が始まって早々教師の睡眠不足を見抜いて『私が代わりにやるので休んでください』と言い放ち、教師の代わりに授業し始めた。それが別にイキってるだけの痛いヤツというわけでもなく、(私語をしていたのは悪かったが)恋ヶ崎の授業はめっちゃ分かりやすかった。

 

 ちなみに恋ヶ崎はアホの子ではあるが、馬鹿ではない。というか聖カトレアは偏差値は高めだし、高校編入……それも転校でとなると試験の難易度はかなり高い。だから恋ヶ崎は普通に勉強できるし、原作には学年トップ取ることで起きるイベントもある。それでいてハキハキとした声で聞き取りやすく、随所で雑談や小ネタを挟む器用っぷり。

 

 最初は『え、マジで?』みたいな顔をしていたクラスメイトたちも、気づけば恋ヶ崎の授業にすっかり夢中になっていた。(そして教師はすっかり夢の中に旅立っていた)

 

 

人気者ルートね、まあ定番ではあるが

 

 

 ユリノワは選択肢によって出会うヒロインも代わり、教師代行から始まる通称『人気者ルート』は出会うヒロインも多くストーリー的にもボリュームが大きいので人気なルートである。

 

 その後はクラスの心を掴み、クラスメイトから恋愛相談を受けて部活動を立ち上げるのだが、それは既に俺が作成済みで本人も入部希望。

 

 

「(概ね俺が想定した通りの流れになりそうだな)」

 

 

 そう考えながら、そのあとは私語することなく恋ヶ崎の授業を真剣に聞いていた。ぶっちゃけ俺の成績はヤバい方なのでめっちゃ助かる。てか今後の授業全部恋ヶ崎やってくれん?? 

 

 そのまま恋ヶ崎は昼休みまで順調にイベントをこなしていき、なんやかんや無事に終わりそうだと思っていた矢先のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はさみセンパイ! 私も……私も『恋愛相談部』に入れさせてください!」

 

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

【チュートリアル】*4

 

 

 

「まず教室、高校は1年は3階、2年は2階、3年は1階にある。中学の方も似たようなもんだ」

「ふむふむ」

 

 教科書を運びながら、俺は恋ヶ崎に話しかける。

 

「見たらわかるが中等部は青いリボンで高等部は赤いリボンをつけている。男の場合はネクタイな。大学は制服がそもそもない」

「学年別には分かりやすい印とかはないんだ」

「ないな、差分作んのめんどかったんじゃね?」

「サブン?」

「なんでもない、んでこっから設備の説明な……階段意外と滑るから気をつけろよ」

「へーきへーき」

 

 主人公さんや、階段を踏み外さないか不安になるから下見て歩いてくれ。見ていてヒヤヒヤするんだが。

 

「はぁ……まずさっき居た2階の端にあんのが職員室。聖カトレア(ここ)って生徒主体が売りだからぶっちゃけあんまり使わねーな」

「そうなんだ」

「んで次に職員室の真下にあんのが生徒会室。困ったことがあればここに行っとけ。大抵誰かは生徒会の役員がいるから」

「授業中も?」

「授業中もいる」

「え、本当に?」

「聖カトレアは成績優秀者には授業免除されるシステムがあんだよ。生徒会の奴らは大体免除者」

 

 そういうと、恋ヶ崎は目をキラキラと輝かせた。別段授業が嫌いってわけじゃないと思うが、生徒会とか免除という響きに惹かれたんだろう。

 

「いいね、すっごい面白そう!」

「お前ならすぐなれんだろ。まぁがんばれ」

「生徒会役員に? 免除者に?」

「どっちも」

「嬉しいこと言ってくれるじゃん♪」

「……まぁな」

 

 

 そこでちょうど教室に辿り着いたので、俺は早足で恋ヶ崎の席に向かい教科書を置いた。

 そしてまた職員室に向かって歩き出すと、すぐに恋ヶ崎が追いかけて来た。

 

「はぁ……」

「うん? どうしたの? 教科書重かった?」

「お前はもっと……」

「え、何? 悪いことしちゃった?」

「……いや、なんでもない」

「えぇ、気になるんだけど」

「うるせ、説明続けんぞ。あとは保健室と、カウンセリングルームと、分野別実験室と、LL教室と、購買と、図書館と……あとはバイオテクノロジー研究室くらいは話しとくか」

「何最後のめっちゃ気になるんだけど」

 

 ……ま、俺の出番はどうせここで終わりなんだし、ちょっとだけ役得があってもいいか。

 そう思い直して、俺は恋ヶ崎の横顔をチラッと見て設備の説明を続けるのだった。

*1
主人公は女の子大好きで男に興味なし(原作知識)

*2
主人公はフィジカル9割

*3
原作では選ばれたヒロインが説明していたため代わりにやっておいた

*4
尺不足のためオマケ




男の娘の名前が出ないのは伏線でもなくて単に思いつかないだけです
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