ダンジョンに強者面(ビビり)が来るのは間違いだ!   作:パーカス

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 ︎︎ ︎︎と ︎︎ ︎︎、そして宣告(カウントダウン)

「なん……で……」

 

鏡に両手を着きながら、言葉が漏れた。

理解出来なかった。なんで自分の姿が鏡に写っているのか

 

「あぁ、クロさん。おはようございます」

 

眠い目を擦りながら、洗面所へベルがやってきた。

 

「昨日はありがとうございました!色々と勉強なりました……ので、あの、また特訓に付き合ってくれると……嬉しいんですが……」

 

恥ずかしそうにしながら、胸元前で指と指をつんつん突きながら願い出るベル。

さも()()()()()()を交わしながら……

 

「な、なぁ、ベル……」

「はい?」

 

俺は聞かずにはいられなかった。

 

「俺って……いつもと、違和感、感じない……か?」

 

途切れ途切れで伝えた言葉に、ベルは首を傾げる。

 

……やめてくれ

 

心臓の鼓動が耳に響く。

 

……やめて、くれ

 

()()()()()()の俺に、ベルは口を開く。

 

……否定してくれ

 

その願いは、なんの企みもない純粋無垢な瞳が俺を突き放した。

 

 

 

「ごめんなさい。()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

 

 

その言葉に、俺は今度こそ青ざめた。

 

 

 

 

 

────〜過去未来、そして宣告(カウントダウン)〜────

 

 

 

 

 

「ハァハァハァ」

 

俺はオラリオの街中を走っていた。

ベルから告げられた後、俺は怖くなりベルから逃げ出し、何処かに行く宛てもなくただ走っていた。

 

汗が流れているが分かる。

この世界に来て、初めての汗だ。

 

疲労感を感じた。

これもこの世界に来て、初めて感じたものだ。

 

嫌でも今の現状を身体が、脳が、感覚が、無理矢理伝えてくる。

 

体力が無くなり、脇道に入り壁に手を付きながら肩で呼吸する。

あの()()であれば、まずやらない行動だ。そこでようやく諦めがつき、涙ぐみながら現実を受け入れた。

 

「俺は……戻っ、たのか」

 

否定してほしかった。

別に本来に姿が嫌いという訳でもない。

ただ、この世界において、俺は……“無力な生き物”だ。

 

怪物(モンスター)が怖い。洞窟(ダンジョン)が怖い。戦うのが怖い。……人が、怖い。

 

本来の俺の性格が、隠し通りしてきた本性が、表に出始めた。

 

俺は、ビビりだ。

 

怖がりだ。臆病だ。弱虫だ。腰抜けで意気地無しで怯懦だ。

ネガティブな性格だからこそ、ハンター()という(ガワ)を被る事で抑え続けた。

これまでの率先した行動は全てハンター()の感情に乗っかっただけで過ぎない。

 

つまり、俺は何もしていない。

 

やったのは全て、ハンター()のおかげだ。

 

あれだけラケシスに…… 英雄(ハンター)達に威勢のいい事を抜かした癖にこのザマか……

 

膝を着き、悔しがる俺を覆い被さる様に人影が現れる。

 

「あの、どうしたんですか?」

 

特徴的なエルフ耳に、山吹色の髪をした少女……レフィーヤが心配そうな顔で俺を見つめていた。

 

「あ、い、いや……なんで……もない」

 

拙い言葉を紡ぎながら立ち上がり、早々にここから立ち去ろうと足を動かす。

 

「なんでもないって、足が震えてますよ?」

 

指摘された通り、足は子鹿のように震え、立つのもやっとな状態だった。

 

運動不足な肉体で走ったからか?この現状に恐怖しているからか?

……分からない。

何も考えられない。何も考えたくない。

 

俺って、こんなに弱かったんだ……

 

挫けそうな俺をレフィーヤが支えてくれる。

 

「やっぱりどこか悪いですか?それならすぐに─────」

 

心配してくれているのか?

それさえも疑ってしまう俺は、どうしようもない弱虫だ。

俺はなんとか彼女から離れ、彼女の優しさを無下にする。

 

「いや、いい……俺の事、は、気にするな」

「気にするなって……そんなフラフラな人を─────」

 

レフィーヤが再び近付いてくる。

 

「ほっといてくれッ!!」

「ッ!?」

 

声を荒らげてしまい、咄嗟にハッと気付く。

レフィーヤは伸ばした手が固まり、困惑した顔をしていた。

 

「〜ッ!くっ!」

「あっ!待っ─────」

 

彼女の静止を振り切り、ふらつく足で走りきる。

 

脇道を抜け、しばらく走り続けて噴水前で力尽きる。

 

「ハァハァ」

 

彼女の姿は見えない。どうやら振り切れたようだ。

荒い呼吸を繰り返し、心臓の鼓動が早まる。

しんどい、苦しい。

久しぶりに感じた感情を強く噛み締め、汗を手で拭う。

 

「ハァハァ、そうだ、ラケシス、なら……分かるかも、しれない」

 

息切れを起こしながら原因解明の為、再び拠点(ホーム)へと足を動かす。

 

 

───────視線を感じた。

 

 

人の視線に敏感になっているから、という感じではなく、間違いなく俺を見詰めている視線を感じた。

視線がする方へ振り返ると、()()()()()()()()()()()()()がいた。

目元は見えないが、口元は見える。

身長は俺よりも多分5cm以上高い。大柄な体格では無いが、怪しい奴がこちらを見ていた。

 

「フンッ」

 

何だコイツ

いきなり鼻で笑われた。警戒レベルを最大まで上げ、フード野郎を睨みつける。

 

「滑稽だな」

「何?」

 

失礼過ぎないか?俺多分コイツと初対面だぞ。

 

「自らの姿に恐怖し、子供の様に逃げようとする貴様を、滑稽だと言ったのだ」

「なっ!?」

 

めっちゃくちゃ口は悪いが、恐らく俺の今の現状を知っている奴だ。

 

「……どういう事だ」

 

殺気立つ俺にやれやれといった感じで、億劫そうに手を少し上げ首を振る。

 

「そう殺気立つ必要もないだろう。それに()の姿であれば話は別だが、今の貴様では俺を倒すことは出来ん」

 

そろそろキレそうになっている俺を煽る様にトドメを刺す。

俺は腰に手を伸ばす。けど何も持たず飛び出してきた為、いつもはぶら下げている剣はなかった。

ならば、と俺は装備収納(インベントリ)を唱え武器を取り出す。

 

「……ん?あれ?」

 

だが唱えても武器は疎か、装備やアイテムさえも取り出せない。

何度も唱え直すが、結果は同じ。

 

その様子を嘲笑う様にまた鼻で笑う。

 

「やはりか。貴様には()()()()()もない。所詮貴様はハンターの側を被った偽善者(ニセモノ)だ」

「何だとッ!」

 

苛立ち、今にも飛び掛りそうな俺にフード男は言い放つ。

 

「警告だ」

「警告?」

「無様な姿をさらけ出したくないのであれば、即刻ここから去れ」

 

何を言ってるんだ、コイツは。

 

「答えはすぐ分かる。故に去ることを勧めてやっているのだ」

「だから、何のはな──────」

 

「今回は助けてやる。次はない」

 

助ける?

そう思った瞬間、世界が硝子の様にヒビが入り、周りにいた民間人、冒険者達の動きが止まった。まるでそれは時間が止まったかのように。

誰も動かない中、奴は踵返し去って行こうとする。

 

「ま、待て!話はまだ──────」

 

俺が言い切る前に世界は、

 

 

──────粉々に砕けた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「ッ!!」

 

目が覚めると、俺はソファの上で寝転がっていた。身体はいつものハンターの姿だった。俺は深い溜め息を吐き、安心する。

夢か……の割には、結構リアルだったな……

 

起き上がり、顔を洗いに洗面所へ向かう。

ん?何か入り口の方騒がしいな……

 

「あぁー!クロ君!やっと起きたのかい!?」

 

騒がしいから見に来れば、ヘスティア様とベル、それにラケシスも集まって何してんだ?

 

「なんの集まりだ?」

「そりゃ君の事についてだよ!」

 

俺?

まさかの事実に驚いたが、すぐヘスティア様が心配そうな顔をしていた。

 

「昨日帰ってきたと思ったらすぐ寝たんだよ?覚えているかい?」

「その間にロキの子が謝りに来たり、ベルに小さなお仲間さんがやってきたりと凄かったよ〜」

 

そんな訳がない。だって昨日はベルと帰ってきてそれで……まさか

 

「なぁ神ヘスティア」

「ん?どうしたんだい?」

「……俺はいつ帰って、何時間寝ていた?」

 

ヘスティア様は顎に指を当て、思い出しながら答える。

 

「えーっと、昨日は朝出掛けたと思ったらお昼前に帰ってきて、それから今までずっと寝てたんだよ?」

 

言葉が出なかった。

信じたくなかった。だが、ヘスティア様が嘘をつく筈がない。

つまり─────

 

「神ヘスティア、ステイタス更新してくれないか?」

「え?別に構わないが……」

 

了承を得て俺は上を脱ぎ捨て、うつ伏せで寝転がる。

 

「ロキのとこで派手にやったみたいだからね〜ステイタスまた上がってそ〜」

「流石に三度目は驚かないさ!ボクも成長するのさ!」

 

二神によるほんわかな会話とは裏腹に、俺は最悪の事態を想定していた。

もし、あのフードの奴が言っていた事が正しいなら──────

 

「終わったよー」

 

ヘスティアが羊皮紙に書き記し、俺に渡してくれる。

 

クロ・ユート

 Lv.1

 力:B725→S952

 耐久:E400→C633

 器用:F323→C601

 敏捷:B708→S942

 魔力:G200

 

「いや、うん、まぁ、そうだね……」

「ヘスティア〜顔凄いことになってるよ〜」

「か、神様!水です!飲んで落ち着いてください!」

 

ヘスティアの顔芸にラケシスとベルが落ち着かせている横で、俺は一人で震えていた。

何故ヘスティア様とラケシスが気付かないか理解出来なかったが、今の俺にはこの現実だけで手一杯だった。

 

「……嘘だろ」

 

多分今の俺の表情は、なんとも言えない笑みを浮かべてるのだろう。

 

奴の言葉が耳を木霊する。

 

“無様な姿をさらけ出したくなければ、即刻ここから去れ“

“答えはすぐ分かる。故に去る事を勧めてやっているのだ”

 

アイツ、この事を言ってやがったのかッ!

 

俺は紙を持つ手に力が入り、シワが入り出す。

 

 

 

装備収納(インベントリ)

・使用者の想像するアイテムを取り出し可能(収納も可能)

※限度あり

※残り使用回数:5回

 

 




“教えてッ!補足先生ー!”

はーい皆!今日から始まる補足先生のお時間だよー!
今回の補足はコチラっ!

《クロ・ユートが喰われた結果》

夢の中でクロ君が喰われた結果、ハンターの姿と彼を支えていたハンター達の魂、そしてスキル【装備収納(インベントリ)】が失われたんだ!
支えであり、憧れだったハンター達を失ったからこそ、クロ君の元々の性格が強く現れ、ネガティブ思考に陥ってしまったんだ!そしてフード男の時、【装備収納(インベントリ)】が失われていたから使用出来なかったんだよ!
そしてフード男の謎の計らいによって彼は元に戻った……とはいかず、なんと【装備収納(インベントリ)】に使用回数が定められたんだ。
何故回数制限が付いたのか?……失われたものは完全には取り戻せないからだよ
つまり、彼がスキルを使い切った時、再び姿も彼らの魂もみんな失っちゃうのさ!
クロ君はこの先、使わずに逃げるか、戦って使い果たすか、迫られる場面が出てくる筈……

君たちなら、どの選択を取るのかな……?

以上ッ!補足先生でしたー!
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