ダンジョンに強者面(ビビり)が来るのは間違いだ!   作:パーカス

19 / 19
 ︎︎ ︎︎と ︎︎ ︎︎、そして宣告(カウントダウン)

「なん……で……」

 

鏡に両手を着きながら、言葉が漏れた。

理解出来なかった。なんで自分の姿が鏡に写っているのか

 

「あぁ、クロさん。おはようございます」

 

眠い目を擦りながら、洗面所へベルがやってきた。

 

「昨日はありがとうございました!色々と勉強なりました……ので、あの、また特訓に付き合ってくれると……嬉しいんですが……」

 

恥ずかしそうにしながら、胸元前で指と指をつんつん突きながら願い出るベル。

さも()()()()()()を交わしながら……

 

「な、なぁ、ベル……」

「はい?」

 

俺は聞かずにはいられなかった。

 

「俺って……いつもと、違和感、感じない……か?」

 

途切れ途切れで伝えた言葉に、ベルは首を傾げる。

 

……やめてくれ

 

心臓の鼓動が耳に響く。

 

……やめて、くれ

 

()()()()()()の俺に、ベルは口を開く。

 

……否定してくれ

 

その願いは、なんの企みもない純粋無垢な瞳が俺を突き放した。

 

 

 

「ごめんなさい。()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

 

 

その言葉に、俺は今度こそ青ざめた。

 

 

 

 

 

────〜過去未来、そして宣告(カウントダウン)〜────

 

 

 

 

 

「ハァハァハァ」

 

俺はオラリオの街中を走っていた。

ベルから告げられた後、俺は怖くなりベルから逃げ出し、何処かに行く宛てもなくただ走っていた。

 

汗が流れているが分かる。

この世界に来て、初めての汗だ。

 

疲労感を感じた。

これもこの世界に来て、初めて感じたものだ。

 

嫌でも今の現状を身体が、脳が、感覚が、無理矢理伝えてくる。

 

体力が無くなり、脇道に入り壁に手を付きながら肩で呼吸する。

あの()()であれば、まずやらない行動だ。そこでようやく諦めがつき、涙ぐみながら現実を受け入れた。

 

「俺は……戻っ、たのか」

 

否定してほしかった。

別に本来に姿が嫌いという訳でもない。

ただ、この世界において、俺は……“無力な生き物”だ。

 

怪物(モンスター)が怖い。洞窟(ダンジョン)が怖い。戦うのが怖い。……人が、怖い。

 

本来の俺の性格が、隠し通りしてきた本性が、表に出始めた。

 

俺は、ビビりだ。

 

怖がりだ。臆病だ。弱虫だ。腰抜けで意気地無しで怯懦だ。

ネガティブな性格だからこそ、ハンター()という(ガワ)を被る事で抑え続けた。

これまでの率先した行動は全てハンター()の感情に乗っかっただけで過ぎない。

 

つまり、俺は何もしていない。

 

やったのは全て、ハンター()のおかげだ。

 

あれだけラケシスに…… 英雄(ハンター)達に威勢のいい事を抜かした癖にこのザマか……

 

膝を着き、悔しがる俺を覆い被さる様に人影が現れる。

 

「あの、どうしたんですか?」

 

特徴的なエルフ耳に、山吹色の髪をした少女……レフィーヤが心配そうな顔で俺を見つめていた。

 

「あ、い、いや……なんで……もない」

 

拙い言葉を紡ぎながら立ち上がり、早々にここから立ち去ろうと足を動かす。

 

「なんでもないって、足が震えてますよ?」

 

指摘された通り、足は子鹿のように震え、立つのもやっとな状態だった。

 

運動不足な肉体で走ったからか?この現状に恐怖しているからか?

……分からない。

何も考えられない。何も考えたくない。

 

俺って、こんなに弱かったんだ……

 

挫けそうな俺をレフィーヤが支えてくれる。

 

「やっぱりどこか悪いですか?それならすぐに─────」

 

心配してくれているのか?

それさえも疑ってしまう俺は、どうしようもない弱虫だ。

俺はなんとか彼女から離れ、彼女の優しさを無下にする。

 

「いや、いい……俺の事、は、気にするな」

「気にするなって……そんなフラフラな人を─────」

 

レフィーヤが再び近付いてくる。

 

「ほっといてくれッ!!」

「ッ!?」

 

声を荒らげてしまい、咄嗟にハッと気付く。

レフィーヤは伸ばした手が固まり、困惑した顔をしていた。

 

「〜ッ!くっ!」

「あっ!待っ─────」

 

彼女の静止を振り切り、ふらつく足で走りきる。

 

脇道を抜け、しばらく走り続けて噴水前で力尽きる。

 

「ハァハァ」

 

彼女の姿は見えない。どうやら振り切れたようだ。

荒い呼吸を繰り返し、心臓の鼓動が早まる。

しんどい、苦しい。

久しぶりに感じた感情を強く噛み締め、汗を手で拭う。

 

「ハァハァ、そうだ、ラケシス、なら……分かるかも、しれない」

 

息切れを起こしながら原因解明の為、再び拠点(ホーム)へと足を動かす。

 

 

───────視線を感じた。

 

 

人の視線に敏感になっているから、という感じではなく、間違いなく俺を見詰めている視線を感じた。

視線がする方へ振り返ると、()()()()()()()()()()()()()がいた。

目元は見えないが、口元は見える。

身長は俺よりも多分5cm以上高い。大柄な体格では無いが、怪しい奴がこちらを見ていた。

 

「フンッ」

 

何だコイツ

いきなり鼻で笑われた。警戒レベルを最大まで上げ、フード野郎を睨みつける。

 

「滑稽だな」

「何?」

 

失礼過ぎないか?俺多分コイツと初対面だぞ。

 

「自らの姿に恐怖し、子供の様に逃げようとする貴様を、滑稽だと言ったのだ」

「なっ!?」

 

めっちゃくちゃ口は悪いが、恐らく俺の今の現状を知っている奴だ。

 

「……どういう事だ」

 

殺気立つ俺にやれやれといった感じで、億劫そうに手を少し上げ首を振る。

 

「そう殺気立つ必要もないだろう。それに()の姿であれば話は別だが、今の貴様では俺を倒すことは出来ん」

 

そろそろキレそうになっている俺を煽る様にトドメを刺す。

俺は腰に手を伸ばす。けど何も持たず飛び出してきた為、いつもはぶら下げている剣はなかった。

ならば、と俺は装備収納(インベントリ)を唱え武器を取り出す。

 

「……ん?あれ?」

 

だが唱えても武器は疎か、装備やアイテムさえも取り出せない。

何度も唱え直すが、結果は同じ。

 

その様子を嘲笑う様にまた鼻で笑う。

 

「やはりか。貴様には()()()()()もない。所詮貴様はハンターの側を被った偽善者(ニセモノ)だ」

「何だとッ!」

 

苛立ち、今にも飛び掛りそうな俺にフード男は言い放つ。

 

「警告だ」

「警告?」

「無様な姿をさらけ出したくないのであれば、即刻ここから去れ」

 

何を言ってるんだ、コイツは。

 

「答えはすぐ分かる。故に去ることを勧めてやっているのだ」

「だから、何のはな──────」

 

「今回は助けてやる。次はない」

 

助ける?

そう思った瞬間、世界が硝子の様にヒビが入り、周りにいた民間人、冒険者達の動きが止まった。まるでそれは時間が止まったかのように。

誰も動かない中、奴は踵返し去って行こうとする。

 

「ま、待て!話はまだ──────」

 

俺が言い切る前に世界は、

 

 

──────粉々に砕けた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「ッ!!」

 

目が覚めると、俺はソファの上で寝転がっていた。身体はいつものハンターの姿だった。俺は深い溜め息を吐き、安心する。

夢か……の割には、結構リアルだったな……

 

起き上がり、顔を洗いに洗面所へ向かう。

ん?何か入り口の方騒がしいな……

 

「あぁー!クロ君!やっと起きたのかい!?」

 

騒がしいから見に来れば、ヘスティア様とベル、それにラケシスも集まって何してんだ?

 

「なんの集まりだ?」

「そりゃ君の事についてだよ!」

 

俺?

まさかの事実に驚いたが、すぐヘスティア様が心配そうな顔をしていた。

 

「昨日帰ってきたと思ったらすぐ寝たんだよ?覚えているかい?」

「その間にロキの子が謝りに来たり、ベルに小さなお仲間さんがやってきたりと凄かったよ〜」

 

そんな訳がない。だって昨日はベルと帰ってきてそれで……まさか

 

「なぁ神ヘスティア」

「ん?どうしたんだい?」

「……俺はいつ帰って、何時間寝ていた?」

 

ヘスティア様は顎に指を当て、思い出しながら答える。

 

「えーっと、昨日は朝出掛けたと思ったらお昼前に帰ってきて、それから今までずっと寝てたんだよ?」

 

言葉が出なかった。

信じたくなかった。だが、ヘスティア様が嘘をつく筈がない。

つまり─────

 

「神ヘスティア、ステイタス更新してくれないか?」

「え?別に構わないが……」

 

了承を得て俺は上を脱ぎ捨て、うつ伏せで寝転がる。

 

「ロキのとこで派手にやったみたいだからね〜ステイタスまた上がってそ〜」

「流石に三度目は驚かないさ!ボクも成長するのさ!」

 

二神によるほんわかな会話とは裏腹に、俺は最悪の事態を想定していた。

もし、あのフードの奴が言っていた事が正しいなら──────

 

「終わったよー」

 

ヘスティアが羊皮紙に書き記し、俺に渡してくれる。

 

クロ・ユート

 Lv.1

 力:B725→S952

 耐久:E400→C633

 器用:F323→C601

 敏捷:B708→S942

 魔力:G200

 

「いや、うん、まぁ、そうだね……」

「ヘスティア〜顔凄いことになってるよ〜」

「か、神様!水です!飲んで落ち着いてください!」

 

ヘスティアの顔芸にラケシスとベルが落ち着かせている横で、俺は一人で震えていた。

何故ヘスティア様とラケシスが気付かないか理解出来なかったが、今の俺にはこの現実だけで手一杯だった。

 

「……嘘だろ」

 

多分今の俺の表情は、なんとも言えない笑みを浮かべてるのだろう。

 

奴の言葉が耳を木霊する。

 

“無様な姿をさらけ出したくなければ、即刻ここから去れ“

“答えはすぐ分かる。故に去る事を勧めてやっているのだ”

 

アイツ、この事を言ってやがったのかッ!

 

俺は紙を持つ手に力が入り、シワが入り出す。

 

 

 

装備収納(インベントリ)

・使用者の想像するアイテムを取り出し可能(収納も可能)

※限度あり

※残り使用回数:5回

 

 




“教えてッ!補足先生ー!”

はーい皆!今日から始まる補足先生のお時間だよー!
今回の補足はコチラっ!

《クロ・ユートが喰われた結果》

夢の中でクロ君が喰われた結果、ハンターの姿と彼を支えていたハンター達の魂、そしてスキル【装備収納(インベントリ)】が失われたんだ!
支えであり、憧れだったハンター達を失ったからこそ、クロ君の元々の性格が強く現れ、ネガティブ思考に陥ってしまったんだ!そしてフード男の時、【装備収納(インベントリ)】が失われていたから使用出来なかったんだよ!
そしてフード男の謎の計らいによって彼は元に戻った……とはいかず、なんと【装備収納(インベントリ)】に使用回数が定められたんだ。
何故回数制限が付いたのか?……失われたものは完全には取り戻せないからだよ
つまり、彼がスキルを使い切った時、再び姿も彼らの魂もみんな失っちゃうのさ!
クロ君はこの先、使わずに逃げるか、戦って使い果たすか、迫られる場面が出てくる筈……

君たちなら、どの選択を取るのかな……?

以上ッ!補足先生でしたー!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ダンジョンでブラフマーストラを放つのは間違っているだろうか(作者:その辺のおっさん)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

ガネーシャ・ソーマ「「何か間違っているのか?」」ヘスティア「いや、間違ってるからぁ!?」▼ダンまちって北欧、ギリシャは見かけるけどインド神話ないよねって思って書いた駄文▼初投稿なので温かい目で見てくれると嬉しいです▼ここをこうしたほうがいいとか教えていただければ幸いです▼ま、まさかあらすじを書き直すとは…▼


総合評価:7554/評価:6.88/連載:69話/更新日時:2026年04月13日(月) 00:00 小説情報

【朗報】ワイ氏ヘスティア・ファミリアに入団する件(作者:玉兎)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

掲示板方式は初なので初投稿。▼※注意事項▼・クロスオーバーは技やセリフに含まれます。▼・アンチ・ヘイトは念のためです。▼・ヘスティアFの大幅強化に伴い原作キャラも強化します。 ▼・もし問題等ありましたら即座に今作は削除します。▼以下、参照の上で楽しで頂ければ幸いです。▼現状開示できる情報。▼異世界掲示板はある転生者によって救済措置として生み出されました。


総合評価:1096/評価:8.45/連載:1話/更新日時:2026年02月19日(木) 03:56 小説情報

現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~(作者:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中)(オリジナル現代/冒険・バトル)

少年『久遠カナタ』は転移した異世界から現代日本に帰還した。だが、現代では一日しか時間が経っておらず、色々と不思議な事が起こっていた。▼ダンジョンが出現していたこと。▼ダンジョン配信が流行していたこと。▼そして何より、異世界から従魔達が付いてきたこと。▼現代の魔物に比べ、最強の従魔達は明らかに過剰な戦力だ。従魔が暴走する度、主のカナタは勝手に崇められ、大きな注…


総合評価:211/評価:-.--/連載:57話/更新日時:2026年04月08日(水) 07:06 小説情報

前世は剣帝(作者:イタク)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

これは全てを失った剣帝がとある世界に迷いこんだ話


総合評価:6373/評価:8.03/連載:65話/更新日時:2026年05月07日(木) 00:01 小説情報

メティー&ベルのアトリエ ーオラリオの錬金術士ー(作者:斎藤 晃)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

彼女は親子の形を知らぬまま死ぬはずだった。▼彼は母親を知らずして成長するはずだった。▼運命のいたずらにより、不治の病を克服した彼女は、子供たちとともにオラリオでお菓子屋を開いている。▼これは、そんな彼女と子供たちの物語である。▼色々と設定は適当なので過度な期待はしないでください。▼ある程度アトリエシリーズの知識が必要です。▼この作品はコメディーです。▼図鑑は…


総合評価:659/評価:8.56/連載:22話/更新日時:2026年05月25日(月) 08:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>