静寂が支配する《幻界の核》。四人の霊使いたちは、互いの姿を確かめ合いながら、歪んだ空間の中心に佇む“それ”を見つめていた。
四人の前に立ちはだかるのは、彼女たちの恐怖、悲しみ、怒り、そして後悔――それらすべてが融合して生まれた、巨大な“心の檻”の化身だった。
四人はすでに、憑依装着の姿となっていた。契約精霊とのつながりが明確な形となって現れた状態。だが、その力を手にしたばかりの彼女たちは、まだ完全には使いこなせてはいなかった。
「……来るよ!」
ヒータが叫ぶと同時に、“心の檻”の化身が咆哮を上げ、四人へと襲いかかってきた。
アウスが魔力障壁を張り、ウィンが風の奔流で牽制し、エリアが水の刃で足止めを図り、ヒータが火の閃光で反撃する――それぞれが連携しながらも、攻撃の精度や魔力の出力は不安定だった。
融合した力の奔流に、彼女たちの魔力が押し負けていく。
「やっぱり……中途半端じゃ、この力……」
エリアが眉を寄せる。
「そんなことないよ!」
すぐさまウィンが声を上げた。
「私たちは、ここまで来た! ちゃんと向き合った! だから、この力は……きっと、応えてくれる!」
“心の檻”の化身が再び攻撃を仕掛けてくる。その刃が彼女たちの心を試すかのように襲いかかる中、四人の思考が交錯する。
――なぜ私はここにいるのか。
――なぜ戦うのか。
――誰かのために、何を信じるのか。
アウスは震える指を見つめ、ぎゅっと拳を握った。
「私は、逃げない。知識や理論に閉じこもるんじゃない……今は、仲間とともに、前に進む」
その瞬間、彼女の魔力が脈動し、デーモン・イーターの力が呼応するように流れを変える。大地の鎧が安定し、力がアウスの体に馴染んでいく。
「私の力、受け取って!」
アウスの重厚な魔弾が、“檻”の外殻を穿つ。
一方、ヒータは己の炎が暴走気味であることに焦っていた。
「もっと……もっと強くなれって、思ってた。でも、違う……私、ちゃんと向き合ってなかった。信じてなかった」
彼女の周囲の空気が澄み、炎が制御を取り戻す。稲荷火が静かにうねりながら、ヒータの背を押すように熱を灯す。
「私が信じれば、この炎は誰かを守るために燃えてくれる」
エリアは自分の呪文の反応が遅れることにいらだちを覚えていた。
(私には感情が足りない? 言葉が足りない? でも……)
ウィンの背中が目に入った。何度も自分を励まし、手を伸ばしてくれた存在。
「……私も、声を……届けたい」
水の魔力が優しくも鋭く形を成し、ジゴバイトの気配がエリアと同調する。静かな魔力が氷の矢となり、敵を貫いた。
最後にウィン。
彼女は、誰よりも自由で、誰よりも孤独だった。だが今は違う。
「私は、一人じゃない……みんなと、ここにいる!」
風が歌うように舞い、ランリュウがそれに応える。緑の旋風が、檻の外殻を切り裂く。
四人の魔力が、呼吸を合わせたかのように同調する。
「「行こう――!」」
真に力を受け入れた彼女たちは、それぞれの属性を輝かせながら、次の決戦へと進む