霊使い創作小説    作:砂漠のデスラクーダ

15 / 16
【幻界迷宮編 ― 鏡像の檻と心の迷宮】共鳴の終着 ― 心の檻、崩壊

──光が差したその先に待っていたのは、最も暗い影だった。

 

四人の霊使いたちは、既に《憑依装着》の姿で幻界の核に立っていた。

衣装こそ変わらぬが、彼女たちの背には各属性の使い魔が淡く寄り添い、魔力の揺らぎをまとっている。

 

核の中心には、四人の内面が融合した“心の檻”が浮かんでいた。

それは黒く濁った瘴気に包まれ、悲鳴と嗚咽を繰り返す四つの顔──恐怖、怒り、後悔、哀しみの集合体。

 

「……来るよ」

ウィンが風の流れで察知したその瞬間、心の檻が咆哮を上げた。

 

檻の無数の腕が四方に伸び、歪んだ空間を突き破るように襲いかかる。

四人は憑依装着の力を駆使し、これを迎撃する。

 

アウスが地を喚び、足場を固定。

ヒータの火炎が腕を焼き払い、

エリアの水流がその隙を突き、

ウィンの風が味方の動きを加速させる。

 

完璧な連携。

だが、敵もまた進化していた。

 

「お前たちの恐怖は消えてなどいない……!」

心の檻が呻くように声を放つ。

そのたびに幻界が軋み、空間が歪む。

 

「恐怖は……あるよ」

アウスが囁く。

「でも、私はもう、それを抱えて進むって決めた」

 

「わたしも!」

ウィンが叫ぶ。

「怖いのは嫌だけど、それでも……エリアがいて、ヒータがいて、アウスがいてくれるもん!」

 

「共に歩む覚悟は、もう揺るがないわ」

エリアは短く言い、杖を構える。

 

「さあ、みんな──行こうか!」

ヒータが先陣を切るように炎をまとい突進。

 

四つの光が交差する。

 

火、水、風、地──異なる属性。

けれど互いに信頼し合い、力を合わせれば、それは一つの輝きとなる。

 

「――四霊連携魔法陣、展開!」

 

四人の霊使いたちが中央へ向けて魔力を収束させる。

使い魔たちも背後で力を貸し、それぞれのエネルギーが一点に集まる。

 

『連環・霊装陣 -コネクテッド・エンチャント-!』

 

魔法陣から放たれた四属性の波動が心の檻を貫く。

苦悶の叫びを上げながらも、檻は裂け、崩れ、断末魔のように霧散していく。

 

──心の檻、崩壊。

 

次の瞬間、幻界全体が揺らぎ、崩壊を始める。

空間の縫い目が綻び、色彩が剥がれ、世界が崩れていく中、各契約精霊が淡く浮かび上がる。

 

デーモン・イーターはアウスに無言の頷きを、

ジゴバイトはエリアの背を一押しし、

稲荷火はヒータの髪を優しくなびかせ、

ランリュウはウィンと共に宙を駆ける。

 

その全てが、無言の「絆」であった。

 

──そして四人は、幻界の崩壊と共に、現実世界へと帰還した。

 

 

──その後。

 

任務報告の場で、霊使いたちは一様に静かだった。

語るべきことは多かったが、それ以上に胸に刻んだものがあった。

 

それは、恐れと向き合ったこと。

仲間の強さと弱さを受け入れたこと。

そして、自分自身と、ようやく真正面から対話できたということ。

 

「ねえ、次はもっと楽しい任務だといいな!」

ウィンの明るい声が響く。

「たとえば、お花見任務とか!」

 

「それ、いいかも」

ヒータが笑い、エリアは微笑を浮かべ、アウスは小さく息をついた。

 

──新たな絆、新たな力。

それは、幻界という深淵を越えた先にあった。

 

物語は終わらない。

けれど今はただ、

 

──静かに、春の風が吹いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。