──光が差したその先に待っていたのは、最も暗い影だった。
四人の霊使いたちは、既に《憑依装着》の姿で幻界の核に立っていた。
衣装こそ変わらぬが、彼女たちの背には各属性の使い魔が淡く寄り添い、魔力の揺らぎをまとっている。
核の中心には、四人の内面が融合した“心の檻”が浮かんでいた。
それは黒く濁った瘴気に包まれ、悲鳴と嗚咽を繰り返す四つの顔──恐怖、怒り、後悔、哀しみの集合体。
「……来るよ」
ウィンが風の流れで察知したその瞬間、心の檻が咆哮を上げた。
檻の無数の腕が四方に伸び、歪んだ空間を突き破るように襲いかかる。
四人は憑依装着の力を駆使し、これを迎撃する。
アウスが地を喚び、足場を固定。
ヒータの火炎が腕を焼き払い、
エリアの水流がその隙を突き、
ウィンの風が味方の動きを加速させる。
完璧な連携。
だが、敵もまた進化していた。
「お前たちの恐怖は消えてなどいない……!」
心の檻が呻くように声を放つ。
そのたびに幻界が軋み、空間が歪む。
「恐怖は……あるよ」
アウスが囁く。
「でも、私はもう、それを抱えて進むって決めた」
「わたしも!」
ウィンが叫ぶ。
「怖いのは嫌だけど、それでも……エリアがいて、ヒータがいて、アウスがいてくれるもん!」
「共に歩む覚悟は、もう揺るがないわ」
エリアは短く言い、杖を構える。
「さあ、みんな──行こうか!」
ヒータが先陣を切るように炎をまとい突進。
四つの光が交差する。
火、水、風、地──異なる属性。
けれど互いに信頼し合い、力を合わせれば、それは一つの輝きとなる。
「――四霊連携魔法陣、展開!」
四人の霊使いたちが中央へ向けて魔力を収束させる。
使い魔たちも背後で力を貸し、それぞれのエネルギーが一点に集まる。
『連環・霊装陣 -コネクテッド・エンチャント-!』
魔法陣から放たれた四属性の波動が心の檻を貫く。
苦悶の叫びを上げながらも、檻は裂け、崩れ、断末魔のように霧散していく。
──心の檻、崩壊。
次の瞬間、幻界全体が揺らぎ、崩壊を始める。
空間の縫い目が綻び、色彩が剥がれ、世界が崩れていく中、各契約精霊が淡く浮かび上がる。
デーモン・イーターはアウスに無言の頷きを、
ジゴバイトはエリアの背を一押しし、
稲荷火はヒータの髪を優しくなびかせ、
ランリュウはウィンと共に宙を駆ける。
その全てが、無言の「絆」であった。
──そして四人は、幻界の崩壊と共に、現実世界へと帰還した。
■
──その後。
任務報告の場で、霊使いたちは一様に静かだった。
語るべきことは多かったが、それ以上に胸に刻んだものがあった。
それは、恐れと向き合ったこと。
仲間の強さと弱さを受け入れたこと。
そして、自分自身と、ようやく真正面から対話できたということ。
「ねえ、次はもっと楽しい任務だといいな!」
ウィンの明るい声が響く。
「たとえば、お花見任務とか!」
「それ、いいかも」
ヒータが笑い、エリアは微笑を浮かべ、アウスは小さく息をついた。
──新たな絆、新たな力。
それは、幻界という深淵を越えた先にあった。
物語は終わらない。
けれど今はただ、
──静かに、春の風が吹いた。