霊使い創作小説    作:砂漠のデスラクーダ

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【未界域探索編 ― 絆の共鳴と魔獣の咆哮】《導入》②

――霧深き未界域、魔力の乱流が渦巻く禁忌の地。

■後半:アウス&ヒータ視点 ― 苔むした谷のツチノコ

 

「ヒータ、足元注意……!」

「へっへー、心配性だなアウス。大丈夫だって――うわっ!」

 

湿った苔の上に足を滑らせたヒータを、アウスがとっさに抱き留める。ふたりの身体が重なり、一瞬、時が止まったように視線が交錯した。

 

「ほら、だから言ったのに……」

「ご、ごめん。でも助かった、ありがと」

 

気まずそうに笑うヒータ。アウスも少しだけ頬を赤らめながらも、言葉は控えめにする。

 

そんなふたりの前に現れたのは、異形の存在だった。

 

「……アレ、見て。あれが未界域の……ツチノコ?」

 

丸々とした胴体、光沢ある鱗、そしてやたらと人懐こそうな目。

 

「うわあ、カワイイじゃん! おいで~!」

 

ヒータがしゃがみ込むと、ツチノコはぷるぷると震えながらも、興味津々と近寄ってくる。

 

「……UMAとは思えない。魔力も、凶暴性も感じない」

「きっと、怖がってるだけなんだよ。私たち、敵じゃないってわかってくれたんだ」

 

ツチノコは、ふたりの周りをころころと転がりながら愛嬌を振りまく。ヒータが懐に抱えようとすると、アウスが小さく笑った。

 

「ふふ……意外と、動物好きなんだね」

「んー? 生き物は好きだよ。だって、あったかいでしょ」

その言葉に、アウスは一瞬、言葉を失う。ツチノコを抱くヒータの腕が、どこか自分にも向けられているような錯覚を覚えた。

 

ツチノコと触れ合うふたりの周囲の空気が、突然凍りついた。苔むした谷の奥から、重々しい足音が地を揺らす。

 

「……ッ、これは……魔力が……!」

 

現れたのは、常識を超えた巨体。灰色の体毛に包まれ、赤く光る双眸を持つビッグフットが、咆哮と共に現れる。

 

「うそっ……でっか!」

 

「ヒータ、下がって! この魔力、あれはツチノコとは違う……本物の脅威だ!」

 

■ウィン&エリア視点 ― 咆哮の森の決戦(全文)

未界域・咆哮の森。

魔力の流れが混濁し、霧のように漂う瘴気が枝葉の間を這っていた。

 

「来るよ、エリアっ!」

ウィンが叫ぶと同時に、頭上の枝から黒影が飛びかかる。銀白の毛皮に包まれた巨大な魔獣、未界域のワーウルフ。獣じみた鋭い爪が、唸りを上げてウィンの肩を狙った。

 

「《風刃乱舞》!」

ウィンの周囲に立ち上る風が、螺旋の刃となってワーウルフの懐を切り裂いた。だが、魔獣は呻きもせず跳ね退くと、すぐさまもう一体が森の闇から姿を現す。

 

「囲まれてる…! 二体同時なんて聞いてないよ…!」

 

「下がって、ウィン」

エリアが静かに前へ出る。その手には青白い水の魔力が渦巻いていた。

 

「《氷槍の儀式》」

エリアの声とともに、足元の草木が一瞬で凍りつき、そこから数本の氷槍が放たれる。鋭利な氷が一体目のワーウルフの足を貫き、動きを止めた。

 

「やった!」

ウィンが喜びかけたその時、もう一体が吠えながらエリアへと突進する。

 

「エリアっ!!」

ウィンが無我夢中で風の壁を展開しようとした刹那、エリアが小さく呟いた。

 

「…私が、守る」

その瞬間、エリアの足元から湧き上がる水流が渦を巻き、巨大な盾のように彼女とウィンを包んだ。爪が水壁に叩きつけられ、砕けるような音が響く。

一瞬の沈黙の後、エリアが震える手で呪文を紡いだ。

 

「《水縛・円環》」

ワーウルフの足元から無数の水の輪が現れ、絡みつくように縛りつける。動きを封じられた隙を逃さず、ウィンが跳ねるように走り出した。

 

「今だよっ! 《風刃連斬》!」

 

風の刃が雨のように降り注ぎ、ワーウルフの身体を切り裂く。やがて、その巨体が森の地に沈んでいった。

 

 第二幕:対立と試練(仲間との絆と共鳴の深化)

■咆哮の森・再会の兆し(続き)

ワーウルフとの死闘の末、傷つきながらもなんとか生き延びたウィンとエリア。

折れた枝が散らばる暗い森の中、ふたりの魔力はゆっくりと沈静化しつつあった。

 

「エリア……だ、大丈夫?」

肩を押さえながら、ウィンが苦しげに息を整える。彼女の風の精霊たちは、まだ警戒を解かぬまま周囲に浮遊している。

 

対するエリアは、目立った傷はないものの、内側に削られた魔力消耗の方が深刻だった。

「……応急で結界は張った。でも、長くは保たない」

 

「そっか……ありがと」

 

短い言葉のやりとりの中でも、互いに寄りかかる空気があった。

戦闘中、エリアが自分を庇って前に出た。普段ならそんな行動は取らないはずなのに。

 

「……あのとき、なんで、私を……」

 

ウィンがぽつりと問う。エリアは少し目を伏せ、言葉を探すように森を見つめた。

 

「……そうしないと、風が泣いてたから」

 

「風が……?」

 

「あなたの精霊が、すごく騒いでた。あなたを守れって、叫んでた」

そう言って微笑んだエリアの頬には、泥と血の跡が混じっていた。

 

その言葉を受けて、ウィンは小さく笑った。

「……ありがと。ちゃんと伝わってるよ、エリアの気持ちも、魔力も」

 

ふたりの手が自然と近づく。

先ほどの戦闘で、無意識に重ねられた手と手が、今は意識のもとで静かに握られた。

 

そのとき――

 

風が揺れ、樹々がざわめいた。

 

「……誰か、来る」

 

ウィンが身構えると同時に、懐かしい気配が漂ってくる。

木立の向こうに、ふたつの人影が見えた。

 

「ウィン!エリアーっ!」

 

駆けてくる赤毛の少女と、落ち着いた足取りの緑髪の少女。

 

「ヒータ!アウス……!」

 

四人はついに、未界域での再会を果たす――。

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