霊使い創作小説    作:砂漠のデスラクーダ

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【未界域探索編:咆哮の巨獣を討て ― 四霊の共鳴】①

未界域、咆哮の森。

 

霧を裂くようにして再会を果たした四人。木々の奥から迫る異音に、誰もが言葉を飲み込んだ。

 

――ドォン……ドォン……

 

重く、地を揺るがす足音。それは紛れもなく、巨大な存在の接近を告げていた。

 

「……来るよ」

ウィンが呟く。風が震え、樹々がざわつく。

 

咆哮の森を統べる存在――未界域のビッグフット。

 

森の奥から姿を現したそれは、圧倒的な威容だった。全身を覆う黒鉄色の毛並み。紅蓮のように燃える眼光。背丈は樹木よりも高く、腕の一振りだけで数本の巨木をなぎ倒す力を持つ。

 

「……ヤバいって、アレ……」

ヒータが引きつった声でつぶやく。だが、その表情に怯えはない。逆に、魔力が沸騰していくような熱を帯びていた。

 

「やるしかないわね」

アウスが静かに頷く。ウィンとエリアも構えを取った。

 

四人は、力を合わせてこの怪物に挑む。

 

だが――

初撃はウィンの風刃とエリアの水鎖による連携。ヒータが陽動し、アウスが地を隆起させて足場を制限する。

 

一見すれば、連携は巧みだった。

 

だが。

 

「効いてない……っ!?」

 

ビッグフットの分厚い体毛と筋肉は、精霊術の直撃をもろともせず、あらゆる攻撃を弾き返した。さらにその咆哮は魔力すら乱し、術式の詠唱を阻害する波動を含んでいた。

 

「ヒータ、下がって!」

アウスが叫ぶが、遅い。

 

ビッグフットの巨腕がヒータを薙ぎ払う。

 

「ぐっ……ああああッ!!」

 

彼女の身体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。その衝撃に、誰もが声を失った。

 

「ヒータッ!!」

 

アウスが駆け寄る。だがビッグフットは追撃を緩めず、次なる標的をウィンへと定めた。

 

「くっ……エリア!」

「援護する。風を合わせて!」

 

風と水の術が交差し、一瞬だけ怪物の動きを鈍らせる。その隙にヒータを救出。

 

「……無理だよ、このままじゃ……!」

 

ウィンが呟く。誰もが同じ思いだった。

 

連携も、魔力の共鳴も、未熟なままでは到底敵わない――

逃げ場はない。霧が視界を奪い、空間が歪む未界域では転移術も使えない。

 

「……こんなところで……終わりたく、ない……っ」

 

アウスが震える声で叫ぶ。その横で、ヒータが懸命に立ち上がる。

 

「まだ……まだやれるっ……アウスと……あたしは……」

 

「無理しないで」

 

アウスが手を取った。その手は震えていた。だが、そこに魔力の共鳴の光が微かに灯る。

 

ビッグフットが咆哮する。

 

樹々がなぎ倒され、空間が歪む。衝撃波でエリアが吹き飛ばされる。

 

「エリアァァッ!!」

 

ウィンが駆け寄ろうとするも、踏み出すことができない。

 

恐怖――

 

それが全身を貫いていた。

その時だった。

 

「……キューンッ!!」

 

咆哮に割り込むように、軽やかな鳴き声。

 

現れたのは――ジャッカロープ。

 

その背には、ツチノコ。

 

さらにその後ろから、未界域で遭遇したUMAたち――光を帯びた幻獣たちが現れた。

 

「お前たち……!」

アウスが呟く。

 

ツチノコが魔力の波を発する。それは明確な援護の意思だった。

 

「援護してくれるの……? ありがと……ッ!」

ウィンが涙声で叫び、風を巻き起こす。

 

ツチノコとジャッカロープが正面に立ち、ビッグフットの咆哮に抗うように鳴き声を上げる。その姿に、再び四人は立ち上がった。

 

「今は退く。準備が必要だ」

エリアが判断を下す。

 

ビッグフットが腕を振り上げる。しかしその攻撃を、ツチノコが小さな身体で受け止めた。

 

「やめてッ!!」

 

ヒータが火柱を立て、視界を遮る。その隙に四人は森の奥へと走り出す。

無我夢中で走り抜け、魔力の歪みが少ない領域へと退避する。森の奥、静寂の水辺。

 

「……ツチノコ、大丈夫かな」

ヒータが呟く。

 

「きっと無事だよ。また……助けに行く」

ウィンの声は震えていたが、確かだった。

 

「今は……力を整えないと」

エリアが冷静に言う。だがその指先は微かに震えていた。

 

アウスはそっとヒータの手を握る。ヒータも応えるように握り返す。

 

 

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