霊使い創作小説    作:砂漠のデスラクーダ

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【未界域探索編:咆哮の巨獣を討て ― 四霊の共鳴】③

霧のような瘴気が再び立ち込める未界域の深奥。

 

4人の霊使いたちは、ツチノコとジャッカロープたちを伴って、巨大な影の元へと向かっていた。

 

前回の戦いで一度は逃げ延びた地。

しかしそこに再び、あの咆哮が轟いた。

 

「――ッ来るよ!」

 

木々をなぎ倒し、崖を割り、足音ひとつで大地が揺れる。

未界域の王者、《未界域のビッグフット》が再び姿を現した。

 

巨体から立ち上る瘴気、全身を覆う氷のような毛並み。

そして、赤黒く光るその双眸。

 

その存在感だけで、空気が重くなる。

 

「……強すぎる……っ」

 

ヒータが握る拳が汗ばむ。

 

「でも……今回は違う」

 

アウスが前へ出る。

 

「私たちの魔力は、もう“輪”になっている」

 

風が舞い、ウィンの髪が踊る。

水の波紋が広がり、エリアが静かに構える。

 

《大霊術-「一輪」》――その発動のため、全ては整っていた。

 

 

ビッグフットが咆哮と共に突進を仕掛ける。

 

「来るよ、左右に分かれて!」

 

アウスの指示で、四人と精霊たちは分散。

ヒータとエリアが囮となって引きつけ、アウスとウィンが魔力の核となる位置に布陣。

 

ツチノコたちは木陰からサポート、ジャッカロープの角が《一輪》の魔法陣を微かに浮かび上がらせていた。

 

「魔力流入……始める!」

 

ウィンが風の渦を放ち、アウスが地を震わせる。

 

ヒータの炎、エリアの水――交差する魔力が中心へ集まっていく。

 

「……まだ、だ……」

 

アウスが汗を流しながら魔力を集中させる。

 

ビッグフットは苛立ち、巨腕で地面を叩きつける。土砂と岩が舞い、熱風が魔法陣を揺らす。

 

「くっ……もう少し……!」

 

ヒータが火焔弾を連射して牽制。

エリアが水のバリアを張って防御を補助。

 

しかし――その瞬間。

 

ビッグフットが唸り声と共に、口から深紅の魔瘴を放った。

 

それは四人の魔法陣に直撃しかけ――

 

「ダメだ……このままじゃ!」

 

魔力の乱流が走り、《一輪》の円環が崩壊しかける。

 

そのとき――

 

「キュルゥッ!」

 

一匹のツチノコが、爆煙の中から飛び出してきた。

 

その小さな身体で、ビッグフットの巨腕に飛びかかり、渾身の体当たりを見舞った。

 

「ツチノコ……!? 無茶だよ……!」

 

ヒータが叫ぶが、ツチノコは怯まなかった。

 

一瞬、ビッグフットの動きが止まる。

 

その隙を見逃さず、ジャッカロープたちが角を天に掲げ、光の波動を放つ。

 

《一輪》が再び光を取り戻す。

 

「いまだ……アウス!」

 

「全魔力、収束……!」

「四相交わりて、輪となり――」

「一なる核に、世界を抱け――」

「風、火、土、水……四霊、今ここに誓いを」

「精霊たちよ、我らが声に応えよ……」

「《大霊術――『一輪』》」!!

 

火・風・水・地。

 

四つの力が一つの輪に溶け合う。

 

空が裂け、地が震え、次元そのものを貫くような魔力の柱が、完成された魔法陣から放たれる。

 

《大霊術-「一輪」》――発動。

 

「これが……私たち四人の力!」

 

咆哮を上げるビッグフットの巨体に、魔力の光輪が直撃する。

 

閃光の中で、その姿がゆっくりと崩れ落ちる。

 

眩い閃光が未界域の空を裂いた。

 

《大霊術-「一輪」》――その咲いた魔法の花が、全てを呑みこむほどの魔力の奔流を放ち、ビッグフットの咆哮すらかき消してゆく。

怒りも、怨嗟も、狂気さえも。そのすべてを――ただ、静かに包み込んでいた。

 

やがて、その光がゆっくりと収束していくと、戦場には深い沈黙が落ちていた。

霧のような魔力の残滓が漂い、空気がまだ震えている。

 

「……終わった……?」

 

ヒータの声は、ささやきのようにかすれていた。

 

「……ああ」アウスが頷く。その目に、涙が浮かんでいた。

 

風がそっと吹き抜ける。かつて黒く染まり荒れ狂っていた未界域の空は、うっすらと青みを帯びていた。

地面の割れ目には、かすかに緑の芽が顔を出している。

 

「……見て」

 

ウィンが草の影を指差す。そこには、あの時、ビッグフットの攻撃に巻き込まれたツチノコが、

ボロボロになった身体を引きずりながら、のろのろと這い出てきていた。

 

「……! ツチノコ!」

 

四人が駆け寄ると、ツチノコは力なくも「キュ……」と短く鳴き、笑うような顔で彼女たちを見上げた。

あのとき、あの一瞬――ツチノコが作ってくれた隙がなければ、《一輪》は不完全に終わっていた。

命を賭して、あの輪の中心に“繋がり”を刻んでくれた。

 

アウスがその小さな体をそっと抱きしめる。

 

「ありがとう……本当に……」

 

ツチノコは、答えるように目を細めた。

その小さな命の温もりは、かすかに震えていたけれど、確かに――生きていた。

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