【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 - 作:糾縄如氏
「――フシャアアアッ!!」
「うおーっ『公GUY』逃げろ! 足ノロいんだから今のうちに距離を稼ぐんだぁっ!」
夏油勲が使役する、特定疾病呪霊『公GUY』の領域展開。
自身に特攻となる効果に、特級呪霊『花御』は憤怒し、駆け出して。
──立ちはだかる乙骨憂太と、衝突した!
(『リカ』の接続限界まで残り一分。ここで倒せないと後がない……!)
「邪魔をするな! 私は星を守りたいだけだッ!」
乙骨は思考する。過去の報告書が正しければ、この呪霊は防御特化の性能だ。
攻撃による破壊が現実的でなく、『時間をかければ状況に適用する。
──元より時間などない。
手数による速攻制圧、それだけが唯一の勝利条件──故に。
「――『動くな』!」
「──!?」
乙骨の口元に呪骸が浮かび、飛ばされた言霊が、花御の挙動を封じた。
同時、リカに装着させた右腕の『外付けの術式』によって掌印を結ぶ。
──現在の乙骨の『模倣』は、術式効果だけでなく、術式解釈も引き継げる。
自身の術式にどう向き合い、何を目指し、何を為したか。
術式に蓄積された経験──呪術師としての技量すらも。
「コガネ、500点使用! ──『解』ッ!」
宿儺の神業を再現した虎杖悠仁から継承した一撃。
有無を言わさず、軌道上の一切は断たれ、花御の額にのびた根は切り落とされていた。
──ただし、両方でなく、片方のみ!
(なぜ、私は『これ』の対処法を知って……?)
(『呪言』が効かなかった!? 耳を破って! なんで──まさか過去に受けた記憶が!?)
予想外の事態。だが乙骨は押し切るしかなかった。
続け様、左手の『外付けの術式』を解放。
その『角笛』を吹き、公害領域に──一条の光が差す。
「800点使用! 出力最大──『
花御の体を光の奔流が包んでいた。
その効果は『術式の消滅』と『呪力の剥奪』だ。
体が呪力で構成される呪霊にとっては、存在を否定する攻撃そのもの。
致命的な相性不利は、瞬時に花御を蒸発させ──!
「……不思議な心地です。傷付いたハズなのに、陽の光のように心地良い」
──なかった。花御の呪力量こそ大きく削れたが、殺し切るには至っていなかった!
(効きが悪い!? そうか、半分『精霊』みたいなものだから『魔の者』じゃないのか!)
「そうだ──私は、この高揚を知っている。いかに穢されようと、尽きることなき命の輝きを……!」
「!?」
むしろ、死のインスピレーションが働いた。
花御は右肩を解放──『供花』が花開き、その中央に『光』が集まっていく。
自身の呪力で植物を具現化させ。
その生命を吸い、還元されていく呪力の輝きだ。
「
「おっ押忍!?」
「コガネ、全得点使用! ──リカっ、あれをやる!」
「あぃい」
両者ともに最終手段に出る。
乙骨の示された指先に、呪力が収束していく。
式神『リカ』完全顕現時にのみ可能となる指向性高出力呪力放射と。
──花御による、
「──領域展開!」
領域展開
─
──
───
一面に広がるは、華々しき植物世界。
しかし『公GUY』の領域によって、その大半は健常な形で発育していない。
だが問題ない。植物が発生し続ける空間というだけで十分だ。
これで──『
「……わぁ~。お花畑だぁ」
「リカ!?」
乙骨に、次なる問題が発生した。
この花畑の戦意喪失効果が、
「リカ! そのまま撃ち続けて!」
「はっ! わかっ……わぁ~♪」
これに関しては、
最大火力の七割、それが今の乙骨に揃えられる限界値。
(十分だ、現に
花御が──乙骨の指向性高出力呪力放射を、耐え続けている事だった。
「──どうなってるんだ! なんなんだ、この堅さは!」
元の身体強度に加え、領域からのバックアップ。
その結果の防御力が、乙骨のありったけの呪力を注がれながらも、存在を保たせ続けていた。
(いくらなんでもおかしい、この攻撃で『額の根』を両方失っているのに、なぜ耐え続けられる!? 撃ち続けられるんだ!?)
乙骨は驚愕した。このままでは削りきれない、という信じがたい感触が現実だったのだ。
──だから、その少年は走り出していた。
「痛ッてぇえええええちょっと失礼ぃっ!」
「……?」
「──、
乙骨はまたも眼を剥いた。
呪力の射線上に、夏油勲が踏み入り──花御の背中をビンタして、通過したのだ。
無論、地獄のシャワーを浴びた少年の体は一瞬にして焼け爛れ、重傷を負う。
しかし気にも留めず、勲はこう叫んだ。
「乙骨さんっ、狙うべきはツノじゃない! こいつの核となる部位は、『供花』の方なんだ!!」
「「な!?」」
ビームを撃ち合う両者が、共に驚愕する。
この場で最も弱い人間の口から、この拮抗を崩す情報が発されたのだ。
(核!? そうか魂を含む部位が! 額の根は、弱点であっても致命傷にはならないんだ!!)
(先ほどの接触、拒絶こそできたが『取り込み』されかけた。この少年は、呪霊を操る術師、触れただけで呪霊の性質をおおよそ理解できる──ならば!)
「──ぐはぁっ!?」
即座に、花御は呪力を飛ばした。
具現化された『穿つ根』の大質量が、夏油勲を軽々と轢き飛ばす。そして、
「……あの術師は死んだようですね」
受け身も取れずに倒れ伏した。
その体から、コントロールされていない低級呪霊が湧き出していた。
──『公GUY』もまた解放されたものの、領域の押し合いに負ければ即座に死ぬ状況。必死に領域維持に努める。
しかし花御とのスペック差は明白──押し合いに負けるのは時間の問題だった。
花御が必中効果を得た場合、『花畑』の戦意喪失効果は必中となる。
加えて、乙骨の接続限界は、もはや20秒も残っていない。
「……
「ぐ──ッ!?」
乙骨の指向性呪力放射が、照準を変える。
額の根でなく、供花への一点収束射撃へと。
「絶対に死なせない、僕は約束したんだ! だから、今すぐにそこをどけ──ッ!」
怒髪冠を衝く叫びには、殺意と自責が混ざり合っていた。
それらが昇華された攻撃は、確実に『供花』を削っていく。
しかし、花御の本領は、高い耐久性を活かした事態への適用である。
「いいえまだです。その呪力さえも糧に、命は! 星は輝き続ける……!」
空中散布されたのは『呪いの種子』。
死に触れた事で、花御が引き出すに至った技のひとつだった。
それが乙骨の呪力を吸って成長し、
その命を花御が吸い上げ、供花に還元する。
これによって、
「この愉悦、この殺意! 嗚呼、私はこれを知るために産まれて──!」
産まれて初めての領域展開をキメた花御は、完全にゾーンに入っていた。無意識で植物の命を摘み取ることを避ける、というブレーキが今は一切機能していない。
ためらうことなく手にした力を最大限、振おうとして。
「──呪霊操術・極ノ番──『うずまき』ぃっ!」
「なぁ──っ!?」
花御は、転倒していた。
突然足元に穴が開き、地面を見失ったかのように。
──夏油勲の『うずまき』で抽出された、『大鯰』の術式効果によって!
(なぜ! 確実に殺したハズ! 現に、使役していた呪霊は暴走して──いない!?)
「知らねえだろうから教えてやるよ、これは死滅回游だ! 一点ゲットできてねぇ時点で、てめぇはオレを殺せてなかったんだよォ!」
夏油勲は死んでいなかった。あたかも死んだように見せかけるため、あえて呪霊を放ったのだ。
もちろん放った呪霊に襲われる危険性はあったが──そのリスクを覚悟のうえの演出で、偽装に成功したのだ!
「今だぁっ! ブチ抜け、乙骨さんっ!!」
「しま──っ!」
花御が転倒したことで、
妨害から解放された乙骨の呪力が──『供花』を撃ち貫いた。
「がぁあああ──ッ!?」
「やった! そのまま削り切れ──ッ!」
『大鯰』は複数入手しやすい呪霊だ。
勲は片っ端から『うずまき』に投入し、花御を転倒させ続ける。
花御は確実に削られていた。
綻びた『
今度こそ祓える。このままなら削り切れる。
──時間さえあれば、その目算は叶っただろう。
(な──まずい! 先に限界がきたのは
──リカとの接続時間が終了した。
同時、乙骨は倒れ伏していた。三度の領域展開の呪力消費に、出力全開の大技の連続。もはや指ひとつ動かせないのは明らかだった。
──夏油勲は花御を見た。
額の角は全損、供花を貫かれ右腕を失っている。
虫の息だが、それでも未だに生きていた。
判断は瞬時に行われた。
夏油勲は迷わず──その体に組み付き、両手を向けた!
「コガネ、全得点消費! ──『降伏の儀』に従え、クソ雑草ぉおおお!!」
「く──離せ! 離しなさ、い──ッ!」
領域が壊された以上、術式は焼き切れている。
花御にできる抵抗は、身体の呪力強化だけ。
『取り込み』される前に夏油勲を引き剥がす事だけだった。
──だが夏油勲は、使役した呪霊をロープ代わりに、花御に自身を縛り付けていた!
「離さねえ、ぜってえ離さねえッ! 大自然の呪霊なら、大人しく
「ぁ──ああああ!!」
もはや花御に、抵抗できるだけの呪力は残っていなかった。
屈強な肉体は歪み、渦を巻いて、少年の手に丸め込まれていく。
彼はいくら殴られても、異様な傷の治りの速さを発揮して、その動作を続け、
──ようやく。その手に、球体は収まった。
「──と、……獲った! やったッ、獲ったどぉおおお! いっただきまーす! ……ンンまあぁ~い!! グレイトネイチャーな味がするぜぇえ!」
勝利の美酒は格別であった。
勲は花御だったものをペロリと丸呑みし、特級の味に歓喜し、
そして、倒れ伏した。
「……って、あれ……なんかオレも、もう動けな……」
呪力も体力も使い果たしたのは、勲も同じだった。
かろうじて放った呪霊を引っ込められたが、それが限界。
「乙骨さんにも、振る舞わないと……呪力切れで、死んじま、う……」
乙骨憂太、夏油勲。
ともに、
【補足① 受愚戴転の再定義について】
こういう呪霊になれ!
今日からお前は○○の呪霊だ!
と再定義したら、勝手にその構造になるよう成長します。
そのため、設計図を用意したり、具体的な構造イメージを持って発動しなくても機能します。
花御を再構成した乙骨が、供花が真の弱点であると気付けなかったのは仕方ない事です。
【補足② 術式解釈の模倣について】
かなり容量の重いデータのため、
リカに多めに食わせないと成立しません。
なので虎杖は多めにいただかれてます。
【番外編 乙骨の世界斬習得秘話】
五条「悠二〜また食われてきてくれる?」
虎杖「えっ。もう俺擬似神経渡してて」
五条「もっと必要なの。美味しくいただかれてきて」
虎杖「えっ」
伏黒「あんた教育者としてそれでいいんですか。人としても……ああ今更か」
五条「今更ってなんだよ恵」
〈その後、術式解釈の引継ぎが完了し、模倣に成功〉
五条「かーっ流石だわ憂太! 憂太は器用だね誰かと違って! かーっ!」
伏黒「流石です乙骨先輩」
虎杖「お、俺の経験なんだけど!? いちおう俺のお陰なんだけど!?」
憂太「そっそうだよ虎杖くんのおかげだよありがとう!」
【没シーン 呪霊玉を食わされる乙骨】
勲「えっ食べてくれないのかあんたは!あんた死んでもいいのかよ!」
乙骨「い、いや。僕は平気だから。自力で呪力を捻出できて……」
勲「ちくしょう…!」
乙骨「……。いや、そうだね。いただくよ」
リカ「ゆうだ!!」
乙骨「平気だよリカちゃん。リカちゃんにだって、その。たくさん食べさせたわけだし。僕だって……ゔっ」
リカ「ゆうだ――っ!!」