【第二部開始】もしも新宿決戦で五条悟が北を向いて両面宿儺に勝っていたら? - 呪術廻戦『受愚戴転』 -   作:糾縄如氏

105 / 105
第2部 56話『朶頤光海』・下

 

「――フシャアアアッ!!」

 

「うおーっ『公GUY』逃げろ! 足ノロいんだから今のうちに距離を稼ぐんだぁっ!」

 

 

 

 夏油勲が使役する、特定疾病呪霊『公GUY』の領域展開。

 自身に特攻となる効果に、特級呪霊『花御』は憤怒し、駆け出して。

 

 ──立ちはだかる乙骨憂太と、衝突した!

 

 

 

(『リカ』の接続限界まで残り一分。ここで倒せないと後がない……!)

 

「邪魔をするな! 私は星を守りたいだけだッ!」

 

 

 

 乙骨は思考する。過去の報告書が正しければ、この呪霊は防御特化の性能だ。

 攻撃による破壊が現実的でなく、『時間をかければ状況に適用する。

 

 ──元より時間などない。

 手数による速攻制圧、それだけが唯一の勝利条件──故に。

 

 

 

「――『動くな』!」

 

「──!?」

 

 

 

 乙骨の口元に呪骸が浮かび、飛ばされた言霊が、花御の挙動を封じた。

 同時、リカに装着させた右腕の『外付けの術式』によって掌印を結ぶ。

 

 ──現在の乙骨の『模倣』は、術式効果だけでなく、術式解釈も引き継げる。

 自身の術式にどう向き合い、何を目指し、何を為したか。

 術式に蓄積された経験──呪術師としての技量すらも。

 

 

 

「コガネ、500点使用! ──『解』ッ!」

 

 

 

 ()()()()()()()が飛ばされた。

 宿儺の神業を再現した虎杖悠仁から継承した一撃。

 有無を言わさず、軌道上の一切は断たれ、花御の額にのびた根は切り落とされていた。

 

 ──ただし、両方でなく、片方のみ!

 

 

 

(なぜ、私は『これ』の対処法を知って……?)

 

(『呪言』が効かなかった!? 耳を破って! なんで──まさか過去に受けた記憶が!?)

 

 

 

 予想外の事態。だが乙骨は押し切るしかなかった。

 続け様、左手の『外付けの術式』を解放。

 

 その『角笛』を吹き、公害領域に──一条の光が差す。

 

 

 

「800点使用! 出力最大──邪去侮(ヤコブ)の梯子』ッ!!」

 

 

 

 花御の体を光の奔流が包んでいた。

 その効果は『術式の消滅』と『呪力の剥奪』だ。

 

 体が呪力で構成される呪霊にとっては、存在を否定する攻撃そのもの。

 致命的な相性不利は、瞬時に花御を蒸発させ──!

 

 

 

「……不思議な心地です。傷付いたハズなのに、陽の光のように心地良い」

 

 

 

 ──なかった。花御の呪力量こそ大きく削れたが、殺し切るには至っていなかった!

 

 

 

(効きが悪い!? そうか、半分『精霊』みたいなものだから『魔の者』じゃないのか!)

 

「そうだ──私は、この高揚を知っている。いかに穢されようと、尽きることなき命の輝きを……!」

 

「!?」

 

 

 

 むしろ、死のインスピレーションが働いた。

 花御は右肩を解放──『供花』が花開き、その中央に『光』が集まっていく。

 

 自身の呪力で植物を具現化させ。

 その生命を吸い、還元されていく呪力の輝きだ。

 

 

 

(カオル)くんッ! 目を閉じて! 呪力探知での戦闘を!」

 

「おっ押忍!?」

 

「コガネ、全得点使用! ──リカっ、あれをやる!」

 

「あぃい」

 

 

 

 両者ともに最終手段に出る。

 乙骨の示された指先に、呪力が収束していく。

 式神『リカ』完全顕現時にのみ可能となる指向性高出力呪力放射と。

 

 ──花御による、疑似太陽光線(ソーラービーム)の打ち合いだ。

 

 

 

「──領域展開!」

 

 

 

   領域展開 朶頤光海(だいこうかい)

 

 

 

 

──

───

 

 

 

 一面に広がるは、華々しき植物世界。

 しかし『公GUY』の領域によって、その大半は健常な形で発育していない。

 

 だが問題ない。植物が発生し続ける空間というだけで十分だ。

 これで──『邪去侮(ヤコブ)の梯子』によって削られた呪力量をカバーできる!

 

 

 

「……わぁ~。お花畑だぁ」

 

「リカ!?」

 

 

 

 乙骨に、次なる問題が発生した。

 この花畑の戦意喪失効果が、()()()()()()()()()()リカでは回避できないのだ。

 

 

 

「リカ! そのまま撃ち続けて!」

 

「はっ! わかっ……わぁ~♪」

 

 

 

 これに関しては、式神(リカ)に絶えず命令し続けることで最小化できた。

 最大火力の七割、それが今の乙骨に揃えられる限界値。

 

 

 

(十分だ、現に疑似太陽光線(ソーラービーム)を押し返している──けど、最大の問題は──!)

 

 

 

 花御が──乙骨の指向性高出力呪力放射を、耐え続けている事だった。

 

 

 

「──どうなってるんだ! なんなんだ、この堅さは!」

 

 

 

 元の身体強度に加え、領域からのバックアップ。

 その結果の防御力が、乙骨のありったけの呪力を注がれながらも、存在を保たせ続けていた。

 

 

 

(いくらなんでもおかしい、この攻撃で『額の根』を両方失っているのに、なぜ耐え続けられる!? 撃ち続けられるんだ!?)

 

 

 

 乙骨は驚愕した。このままでは削りきれない、という信じがたい感触が現実だったのだ。

 

 

 

 

 ──だから、その少年は走り出していた。

 

 

 

「痛ッてぇえええええちょっと失礼ぃっ!」

 

「……?」

 

「──、(カオル)くん!?」

 

 

 

 乙骨はまたも眼を剥いた。

 呪力の射線上に、夏油勲が踏み入り──花御の背中をビンタして、通過したのだ。

 

 無論、地獄のシャワーを浴びた少年の体は一瞬にして焼け爛れ、重傷を負う。

 

 しかし気にも留めず、勲はこう叫んだ。

 

 

 

「乙骨さんっ、狙うべきはツノじゃない! こいつの核となる部位は、『供花』の方なんだ!!」

 

「「な!?」」

 

 

 

 ビームを撃ち合う両者が、共に驚愕する。

 この場で最も弱い人間の口から、この拮抗を崩す情報が発されたのだ。

 

 

 

(核!? そうか魂を含む部位が! 額の根は、弱点であっても致命傷にはならないんだ!!)

 

(先ほどの接触、拒絶こそできたが『取り込み』されかけた。この少年は、呪霊を操る術師、触れただけで呪霊の性質をおおよそ理解できる──ならば!)

 

「──ぐはぁっ!?」

 

 

 

 即座に、花御は呪力を飛ばした。

 具現化された『穿つ根』の大質量が、夏油勲を軽々と轢き飛ばす。そして、

 

 

 

「……あの術師は死んだようですね」

 

 

 

 受け身も取れずに倒れ伏した。

 その体から、コントロールされていない低級呪霊が湧き出していた。

 

 ──『公GUY』もまた解放されたものの、領域の押し合いに負ければ即座に死ぬ状況。必死に領域維持に努める。

 しかし花御とのスペック差は明白──押し合いに負けるのは時間の問題だった。

 

 

 

 花御が必中効果を得た場合、『花畑』の戦意喪失効果は必中となる。

 加えて、乙骨の接続限界は、もはや20秒も残っていない。

 

 

 

「……(カオル)、くん……よくも──よくも、(カオル)くんをッ!!」

 

「ぐ──ッ!?」

 

 

 

 乙骨の指向性呪力放射が、照準を変える。

 額の根でなく、供花への一点収束射撃へと。

 

 

 

「絶対に死なせない、僕は約束したんだ! だから、今すぐにそこをどけ──ッ!」

 

 

 

 怒髪冠を衝く叫びには、殺意と自責が混ざり合っていた。

 それらが昇華された攻撃は、確実に『供花』を削っていく。

 

 しかし、花御の本領は、高い耐久性を活かした事態への適用である。

 

 

 

「いいえまだです。その呪力さえも糧に、命は! 星は輝き続ける……!」

 

 

 

 空中散布されたのは『呪いの種子』。

 死に触れた事で、花御が引き出すに至った技のひとつだった。

 

 それが乙骨の呪力を吸って成長し、

 その命を花御が吸い上げ、供花に還元する。

 

 これによって、疑似太陽光線(ソーラービーム)の火力は──尻上がりながらも確実に、乙骨の指向性高出力呪力放射を上回ろうとしていた。

 

 

 

「この愉悦、この殺意! 嗚呼、私はこれを知るために産まれて──!」

 

 

 

 産まれて初めての領域展開をキメた花御は、完全にゾーンに入っていた。無意識で植物の命を摘み取ることを避ける、というブレーキが今は一切機能していない。

 

 ためらうことなく手にした力を最大限、振おうとして。

 

 

 

「──呪霊操術・極ノ番──『うずまき』ぃっ!」

 

「なぁ──っ!?」

 

 

 

 花御は、転倒していた。

 突然足元に穴が開き、地面を見失ったかのように。

 

 ──夏油勲の『うずまき』で抽出された、『大鯰』の術式効果によって!

 

 

 

(なぜ! 確実に殺したハズ! 現に、使役していた呪霊は暴走して──いない!?)

 

「知らねえだろうから教えてやるよ、これは死滅回游だ! 一点ゲットできてねぇ時点で、てめぇはオレを殺せてなかったんだよォ!」

 

 

 

 夏油勲は死んでいなかった。あたかも死んだように見せかけるため、あえて呪霊を放ったのだ。

 

 もちろん放った呪霊に襲われる危険性はあったが──そのリスクを覚悟のうえの演出で、偽装に成功したのだ!

 

 

 

「今だぁっ! ブチ抜け、乙骨さんっ!!」

 

「しま──っ!」

 

 

 

 花御が転倒したことで、疑似太陽光線(ソーラービーム)の射角は大きく逸れ。

 妨害から解放された乙骨の呪力が──『供花』を撃ち貫いた。

 

 

 

「がぁあああ──ッ!?」

 

「やった! そのまま削り切れ──ッ!」

 

 

 

 『大鯰』は複数入手しやすい呪霊だ。

 勲は片っ端から『うずまき』に投入し、花御を転倒させ続ける。

 

 花御は確実に削られていた。

 綻びた『朶頤光海(だいこうかい)』が、公GUYの『汚濁䑓蓏(おだくだいだら)』との押し合いに負け、破綻した事からも明らかだった。

 

 今度こそ祓える。このままなら削り切れる。

 

 

 

 ──時間さえあれば、その目算は叶っただろう。

 

 

 

(な──まずい! 先に限界がきたのは乙骨さん(コッチ)か!!)

 

 

 

 ──リカとの接続時間が終了した。

 同時、乙骨は倒れ伏していた。三度の領域展開の呪力消費に、出力全開の大技の連続。もはや指ひとつ動かせないのは明らかだった。

 

 ──夏油勲は花御を見た。

 額の角は全損、供花を貫かれ右腕を失っている。

 虫の息だが、それでも未だに生きていた。

 

 

 

 判断は瞬時に行われた。

 夏油勲は迷わず──その体に組み付き、両手を向けた!

 

 

 

「コガネ、全得点消費! ──『降伏の儀』に従え、クソ雑草ぉおおお!!」

 

「く──離せ! 離しなさ、い──ッ!」

 

 

 

 領域が壊された以上、術式は焼き切れている。

 花御にできる抵抗は、身体の呪力強化だけ。

 『取り込み』される前に夏油勲を引き剥がす事だけだった。

 

 ──だが夏油勲は、使役した呪霊をロープ代わりに、花御に自身を縛り付けていた!

 

 

 

「離さねえ、ぜってえ離さねえッ! 大自然の呪霊なら、大人しく弱肉強食(はいぼく)を受け入れやがれェエエッ!!」

 

「ぁ──ああああ!!」

 

 

 

 もはや花御に、抵抗できるだけの呪力は残っていなかった。

 屈強な肉体は歪み、渦を巻いて、少年の手に丸め込まれていく。

 彼はいくら殴られても、異様な傷の治りの速さを発揮して、その動作を続け、

 

 ──ようやく。その手に、球体は収まった。

 

 

 

「──と、……獲った! やったッ、獲ったどぉおおお! いっただきまーす! ……ンンまあぁ~い!! グレイトネイチャーな味がするぜぇえ!」

 

 

 

 勝利の美酒は格別であった。

 勲は花御だったものをペロリと丸呑みし、特級の味に歓喜し、

 

 そして、倒れ伏した。

 

 

 

 

「……って、あれ……なんかオレも、もう動けな……」

 

 

 

 呪力も体力も使い果たしたのは、勲も同じだった。

 かろうじて放った呪霊を引っ込められたが、それが限界。

 

 

 

「乙骨さんにも、振る舞わないと……呪力切れで、死んじま、う……」

 

 

 

死滅回游・泳者(プレイヤー)

夏油(かおる) 所持得点 0 消費得点 348

乙骨憂太 所持得点 0 消費得点 29342

 

 

 

 乙骨憂太、夏油勲。

 ともに、戦闘不能(リタイア)──。





【補足① 受愚戴転の再定義について】

こういう呪霊になれ!
今日からお前は○○の呪霊だ!

と再定義したら、勝手にその構造になるよう成長します。
そのため、設計図を用意したり、具体的な構造イメージを持って発動しなくても機能します。

花御を再構成した乙骨が、供花が真の弱点であると気付けなかったのは仕方ない事です。



【補足② 術式解釈の模倣について】

かなり容量の重いデータのため、
リカに多めに食わせないと成立しません。

なので虎杖は多めにいただかれてます。



【番外編 乙骨の世界斬習得秘話】

五条「悠二〜また食われてきてくれる?」
虎杖「えっ。もう俺擬似神経渡してて」
五条「もっと必要なの。美味しくいただかれてきて」
虎杖「えっ」

伏黒「あんた教育者としてそれでいいんですか。人としても……ああ今更か」

五条「今更ってなんだよ恵」

〈その後、術式解釈の引継ぎが完了し、模倣に成功〉

五条「かーっ流石だわ憂太! 憂太は器用だね誰かと違って! かーっ!」

伏黒「流石です乙骨先輩」

虎杖「お、俺の経験なんだけど!? いちおう俺のお陰なんだけど!?」

憂太「そっそうだよ虎杖くんのおかげだよありがとう!」



【没シーン 呪霊玉を食わされる乙骨】

勲「えっ食べてくれないのかあんたは!あんた死んでもいいのかよ!」

乙骨「い、いや。僕は平気だから。自力で呪力を捻出できて……」

勲「ちくしょう…!」

乙骨「……。いや、そうだね。いただくよ」

リカ「ゆうだ!!」

乙骨「平気だよリカちゃん。リカちゃんにだって、その。たくさん食べさせたわけだし。僕だって……ゔっ」

リカ「ゆうだ――っ!!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

現代最強の術師・両面宿儺と史上最強の術師・五条悟による呪術廻戦(作者:ソル   )(原作:呪術廻戦)

タイトル通り▼現代生まれの高専教師両面宿儺と、虎杖の体に受肉した平安時代の五条家当主、五条悟による立場逆転if


総合評価:4790/評価:8.71/連載:48話/更新日時:2026年08月18日(火) 21:03 小説情報

呪術廻戦のあの世は鬼灯の冷徹のあの世だったようです(作者:久保サカナ)(原作:呪術廻戦)

米花町の公務員がまさかの虎杖悠仁に転生!?▼窓口担当でも怨恨で殺されない位の持ち前の善性で宿儺の指を全て飲んで秘匿死刑を受け入れた虎杖であったが「捨てる神あれば拾う鬼神あり」がこの世界の理であった。▼鬼灯様「その生き様や良し!!獄卒に採用です」▼腐れメロンパンこと羂索を地獄に堕とすべく「現世派遣獄卒」になった虎杖悠仁の愉快!痛快!地獄×呪術コメディライフが今…


総合評価:10099/評価:8.19/完結:65話/更新日時:2026年08月09日(日) 13:33 小説情報

ZZZ × 555(作者:びぎなぁ)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

ゼンゼロ世界にファイズをぶち込みたかった。▼それだけである。


総合評価:2281/評価:8.77/連載:351話/更新日時:2026年09月11日(金) 12:00 小説情報

黒崎一護なオリ主と五条悟(作者:ラムセス_)(原作:呪術廻戦)

呪術廻戦の世界に野生の黒崎一護の皮をかぶった転生オリ主を放り込んでみる試み。


総合評価:30271/評価:8.66/完結:35話/更新日時:2024年10月20日(日) 13:27 小説情報

104年後からの今(作者:requesting anonymity)(原作:ハリー・ポッター)

 ホグワーツの5年生になったハリーの前に、2人の新任教師が現れる。1人は例のドローレス・アンブリッジ。そしてもう1人は、なんと「ダンブルドアの先輩」だという。▼ 原作5つめ「不死鳥の騎士団」から始まる、「ホグワーツ・レガシー」の主人公が「闇の魔術に対する防衛術」の教師をやったりする、つまり「ハリー達の時代にホグレガ主人公が居たら何が変わるのか」そして「何が変…


総合評価:19805/評価:8.93/連載:89話/更新日時:2026年09月08日(火) 04:49 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>