昔、海で会ったあの女の子の笑顔が忘れられない。

ただそれだけが違うコナン君。蘭のことは大切ではあるが恋愛感情はないです。蘭姉ちゃんの気持ちは知りません。
おそらく短編集みたいな感じになりそうです。

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あの日の笑顔に取り憑かれたオレ

 

 

 

 

 

 オレはふと頭に霧がかかった感じになるときがある。

 そのときのオレは昔イギリスの海辺で出会った女の子のことを思い出してしまう。

 名前は朧げだがあの見てるこっちまでも微笑んでしまうような笑顔、笑ったときに出る八重歯。キャラが濃い家族。

 そして···そして──

 

「まるで魔法使いみたいだね!」

 

 と言われたこと。この言葉が頭の中から離れない。別に魔法使いに憧れていたわけではないし、オレはずっとシャーロックホームズに憧れている。

 なのに、どういうわけか、あの子にそう言われたことをふと思い出してしまう。

 

 そして、その言葉に返した言葉を考える。別れ際に言われた今まで一度しか言われたことがない賛辞の言葉に返したのはどのようなものだったのか。

 単純に感謝したのか、はたまたカッコつけて強がりな言葉で返したのか。──あるいは何かを約束したのか···

 

 まあ小さい頃の記憶なんてものは自分のいいように解釈しがちだ。だから、記憶が朧げである以上考えても無駄だと分かってる。けれど、考えてしまう。

 

 ···オレもまだまだガキだってことだな。

 

 そう結論づけ思考を止める。

 ──そして、ふと彼女のことを思い出して思考を始め、モヤがかかったような感触になる···という無限ループだ。このループは一生抜け出せないものだと思ってた。その人の笑顔を見るまでは。

 

 

 

 

 

 

 ──────

 

 ある日の殺人事件が起こった日。

 もう事件のトリックが分かり、あとはおっちゃんを眠らせて喋るだけだった。

 

「あ〜っ!キミもボクと同じこと思いついてるだろっ!ん?ん?」

 

 世良がオレの近くまで顔を近づかせてきた。しかも、()()()見る満面の笑···、いや、笑うと出るこの八重歯忘れるわけがない、あの子だ···!!

 だが、どうしてあの子がここにいる?世良はアメリカから来たと言っていたが、イギリスから来ているはずだ。そこを嘘をつく必要がなにかあるのか。それになんでオレも前に姿と現している?偶然なわけはない、そんな偶然が起こるなんて創作のなかだけにしてほしい。というか、こいつは気づいているのか?オレが工藤新一であり、今は小さくなっていて江戸川コナンになっていることを···

 思考が止まらない、流れ出る考えは止まらない、止められない──足が震える、手が震える、目が揺れる、頭が揺れる、何も、何も考えられない···

 崩れたのは土台からだった。足が言うことを聞かず、倒れ、そのまま意識を失った。──いつも思考の真ん中にいた、あの八重歯の笑顔が脳裏に強くこびりつき意識がなくなっても離れることはなかった。

 

 

 ──────

 

 

 目が覚めると、もう自分の家に帰っていた。まだ外は暗く、それほど眠ってはいなかったようだ。

 これほど短期間に帰れているということは、どうやら事件は世良の活躍で解決していたようだ。世良はオレが気を失う前にもう分かってたみたいだったけど、事件が解決してよかった。

 

 ──それはよかったが、未だにオレの頭の中にはあの笑顔が消えない。

 

「コナン君!よかった!!」

 

 ···けど、なんで世良が、あの子がここにいるんだ···?──組織との関わりがあるのか···?

 

「コナン君!!!」

 

 ──ダメだ、思考が回らない。酸素が足りてない。情報が足りてない。──酸素はなんで足りてないんだ···?って──おい!蘭!!

 

「蘭!···姉ちゃん、息できないから離れて···?」

「あ、ごめんね?大丈夫?」

「大丈夫だよ。──あの事件は世良の姉ちゃんが解決してくれたのかな?」

「うん。──ほんとに世良さんはすごいよね···!」

 

 確かに、世良の探偵としての能力は高く普通ではない。まあ、それは納得の家系だ。なにせ、なにせ──あれ、なんでオレはそう思ったんだ···?

 ──あの兄2人もどこかで出会っているのか···?

 

 また思考が止まらなくなりそうなところを蘭に引き戻され、さっとシャワーを浴びてもう一度寝についた。

 

 

 

 ──────

 

 

 翌朝、昨日の4人*1と同じ面子で登校しているときに前を歩く蘭と園子と少し距離を取った。後ろを歩いているその人に近づくために。

 

「ん?コナン君何か用かな?──もしかして体調悪くなった?」

「ううん、そういう訳じゃないよ。──ねぇ、世良の姉ちゃん?ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「それならよかった。うん、なんでも聞いてよ!」

 

 そう言いながらオレの小さい体に合わせるようにかがんで、目を合わせてきてくれた。世良の表情が見やすくなって嬉しい。

 ──もし世良がオレのことを覚えているのなら、絶対にボロが出る。···一瞬たりとも逃せるかよ。

 

「世良の姉ちゃんってもしかして···」

 

 今までずっと会えないと思っていたあの子との再会、それを決定づける言葉を紡ぐのは病み上がりである体には負担が大きかった。···また、足が手が少し震え始めた。

 ──だけど、今聞かないとずっと聞けない気がした。

 

「もしかして?」

「···僕とどこかで···」

 

 決心がつくと自分の思っていた以上にすんなりと出た。震えが収まり、自身の体ではなくて世良に集中できるようになった。

 

「···会ったことある?」

 

 そう言われた世良の顔は、あの海のときやオレが気を失う前に見たのと同じ()をしていた。

 見てるとこっちまでもが笑顔になるような明るさで、八重歯が相変わらず出ているようなそんな笑顔。

 

 ──間違うはずはない、どれだけ思考の中にいたと思ってるんだ。

 ···世良真純、久しぶりだな。逃げずに答えてくれよ?

 

「さぁ、どうだかなぁ〜」

 

 あ、逃げられた。

 ──まあ、あっちとしてはオレが完璧に思い出している保証はないし、工藤新一が小さくなってこの姿になっているのを知っているとバラすわけにはいかないだろう。

 

 ──まだ分からないのは、どうやってオレが工藤新一だと分かったかだ。おそらく、ウィンブルドンでの中継でバレたんだろうけど、普通の思考なら工藤新一=江戸川コナンとはならない。

 ······ということは、大人から子供になった人が身近にいたり、その事例を知っていたりしたか···どちらにせよ子供になる可能性があると知っていれば、オレのあのフレーズで想起できるのだろう。

 

シャーロック•ホームズの弟子だ。

 イギリスで気分が高まったときにこう言う癖は治すべきだな。

 

 まあ、ともかく、世良としてはまだ言えない何かがあるのは明白だ。──なら、それを暴く。あとは、普通に教えてくれないのムカつくしちょっとずつ嫌がらせでもするか。

 

 ──ああ、それにしてもこんなにも頭の中が晴れやかなのは何年ぶりだろうか···霧が晴れたようなそんな感じする。

 

「コナン君、何か良いことでもあった?そんなに嬉しそうな顔してるの初めて見るかも?」

「確かに、ガキンチョがそういう風に笑うの珍しいわね」

「そうなのかい?」

 

「──うん、ちょっとね」

 

 ちょっとと言いながらもオレの表情は今までにない笑顔だろう。ここがオレの再スタート地点だ。

 ──絶対に世良の秘密を解き明かしてみせる。

 

 それはそうとしても、言ってくれないのは少し悔しいし、どこかでイタズラでもしようと決心した。

 

「世良さんとどんな話してたの?」

「んー、初恋の話かな」

「えっ?!──こ、コナン君??」

「そういう話してたんだ!」

「ガキンチョが恋だなんて、早すぎだって──で、あの明るい方か大人びてる方どっちなのよ?」

 

 驚く世良、楽しそうにする蘭、詮索する園子と対応が分かれた。···まあ、世良は驚くよな。そういう話はしてなかったんだし。ちゃんと答えてくれない世良が悪い。だから、その罰を受けてもらうよ、

 

 

「その2人は友達だよ。──海で出会った笑顔が素敵な女の子だね。···ずっと忘れられてないんだ」

 

 と、世良の方を見て言った。──はっ、そんな反応に困る顔しないでくれよ。嬉しそうに笑うか戸惑うかのどっちかにして欲しいけど、それらが混じった顔をしてる。オレも反応に困る。

 だから、余計な一言を付けてしまったのかもしれない。

 

「──まあ、これは新一兄ちゃんの初恋の話なんだけどね」

 

 世良の顔はあまり変わらず、ただ驚きと困惑、嬉しさが入り混じった顔をしていた。

 しかし、興味津々そうに聞いていた蘭やその蘭を見た園子の顔が少し()()()()

 

 ···その変化を聞けるほどオレは図太くはなかった。

 

 

 

 

*1
オレ、世良、蘭、園子






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