貞操観念が真逆の世界で、風俗の受付(兼キャスト)   作:パッチワーカー

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 久しぶりにR17.9かもです。
 クリスマスにあげるべきだったかもしれません。


おとされるかもしれないおしごと

 

 日曜日。この日は、取り立てて話すことがないくらい22時30分を超えるまでは平凡だった。

 

 

 

 22時30分。受付の引き継ぎの仕事を終わらせ、自分の身なりを整える。爪の手入れやうがい、手洗いなど先にできることはしておく。

 身なりを整え終わって数分後、受付の仕事を変わってもらった人に呼ばれた。

 

 いつもキャストが立つ位置で立ち、分かり切った人が来るのも待つ。近くに足音がするからもうすぐだろうと心の準備をする。

 

「待たせましたか?」

「いえ、さっき色々終わったところなので。ちょうどいい時間ですよ」

 

「では、お嬢様ごゆっくり」

 

 受付がそう言い残して離れて行き、廊下で2人きりになった。

 

「部屋はあそこかな」

「うん。あの開いてるところだし、手繋いで行く?」

「そうだね。れい君手広げて」

「はいはい」

「んー···こういうのはやっぱり慣れてるよね」

「まあそうだね。慣れたいって思ったことはないけどね。···今日は眼鏡かけてないんだね」

「今日は本気だからさ」

 

 雑談しながら部屋まで行き、部屋に入るとすぐに扉を閉め、今日最後のお客さんを見る。

 

「──じゃあ、改めて詩乃さん60分よろしく」

「うん。60分で君のことを捕まえるね」

「···そう言ってくれるのは良いけど」

「うがいと歯磨きだよね?やっておくし、れい君は上の服だけ脱いでてくれる?」

「···手際いいね」

 

 前回が無駄にはなっておらず、ちゃんと流れを理解してくれてるのは嬉しい。

 

「···先に脱ぐの恥ずかしいんだけどなぁ···」

 

 シャワーのところで、手洗いやうがい、歯磨きといったことをしに行った。怖いくらいに効率が良くてちょっと笑いそうになった。

 ···あと普通に先に脱いで待っておくのは恥ずかしい。別に自分の身体に自信がないわけではないけど、自信がめっちゃある訳でもない。

 

 うだうだ考えてる間に上裸になってベッドに座った。そんな僕を詩乃さんは歯磨きしながらジッと見ていた。

 

「···あー、僕は先にそういうの終わらせてるから気にしないでね」

 

 多分そういう意味で見ていたわけではないんだろうけど、一応言っておく。

 それを聞いてか、歯磨きもほどほどにし終え、うがいした。

 

「私も来る前にこういうことは終わらせてるから安心してね、一応体裁上でしてるだけだから」

 

 ──準備万端すぎて怖いって。

 それなら70分以上にしてゆっくりしてくれる方が僕としたら楽なんだけど、それは嫌らしい。

 

「そうなんだ、──あー、今日は何からしたいとかあるの?」

「···そうだね、今日のれい君とは普通にイチャイチャしたいけど──」

 

 それだけ言って詩乃さんは服を着たまま隣に座ってき、口を僕の耳に寄せた。

 

「──みお(れい)君のことダメになるくらい責めたいな···」

 

 ん···っ···ちゅっ、ちゅう···♡れりゅ、れうれう······

「···ッ···!ぁ···」

 

 そう言って、耳を舐めてきた。キスされるよりも前に耳を舐められるのは初めてだし、そもそもそんなに耳を舐められる機会はない。

 

 このままだとペースを握られそうだと感じ、手で詩乃さんを離そうとしたがぎゅっと握られた。

 

君のこと離さないし逃がさないから

 一層握る力を強くされ、押し倒された。

 

 押し倒され、今まで無意識に避けてきた詩乃さんの目が僕を捉えた。···なんでこんなにざわつくんだろ。

 

 一通り舐め終わったのか、今度は僕の上着を脱がして乳首を爪でカリカリしてきた。それに僕は吐息を漏らし、少し身体をよじってしまう。

 ···この仕事を始める前はただただくすぐったいだけだった乳首も今はちょっと性感帯になってる。──嫌な成長だ。

 そう思ったのは僕だけじゃなかったらしい。

 

「──みお君は胸弱いの?···それともれい君になってから弱いの?」

「···はじめはくすぐったいだけだったけど、いじられる内に感じるようになったかも」

「そっかー、──やっぱりそういうの私嫌だな」

「え、あ、ぅぅ···」

 

 そう言って、両方をぎゅーっとつままれた。

 

「こら、私から逃げない。目逸らすのやめて。──れい君はキャストでしょ?()の言うことちゃんと聞いて」

「──う、うん」

「そうそういい子いい子。乳首カリカリされるのとぎゅってつままれるのだったらどっちがいいの?」

「どっちがいいって···」

「どっちが気持ちいいの?」

「カリカリされるほうだけど···」

「そこまで気持ちよくはないみたいだね。···何されるのが好き?」

 

 何をされる···いつも責める方が多いからそう言われると悩む。けど、まあこれは好き。

 

「──キスされるのが1番好き」

「そうなんだ、れい君やっぱり甘えん坊?」

「甘えたい派だね。···言うの恥ずかしいけど」

「そっか。言ってること一々めちゃくちゃ可愛いけど、もっと照れて言って欲しいな」

「それは無理じゃない?さすがに何回か聞かれてるし慣れてるよ」

「そうみたいだね」

 

 詩乃さんは少し残念そうな表情をした。顔が近くにあるからよく分かる。その顔が()で、詩乃さんの顔に手を伸ばすとその手も絡め取られ、恋人繋ぎで押さえつけられた。

 

「まぁいっか。──じゃあいっぱいキスしよっか。シャワー浴びる前にいっぱいしよ」

 

 ずいっと顔が近くなった。···息が触れるほど近くで、ただ見つめ合う時間が続く。熱い目が僕を捕まえて、口をあげたくなる。

 

 捕まえられているのは身体だけじゃない。

 そう思った瞬間、逃げ道はもうどこにもなかった。けど、さすがに少し逃げたくなった。

 

「──シャワー浴びてからでもよくない?」

「ダメ。キスしてから入ろ?」

「おっけー。──僕からしてもいい?」

「ふふっ···私に押さえつけられてるのにどうやってするの?」

「確かに···じゃあ待ってるね」

 

 いつも僕からしてることが多いから、いつも通りのことを言った。

 けど今日は違うらしい。目を瞑って来るのを待った。

 

 ······待って待って待って、来なかった。けど、息遣いを感じるし、ずっと僕の近くに顔がある。

 視界を閉じている分、距離のなさがやけに生々しく感じられて、喉が鳴った。

 

「あの···詩乃さん?」

「ちゃんと舌、出して」

 

 予想外の一言に、思わず目を開けそうになる。

 

「え?──初めは普通のキスしない?」

「私も普通のがいいと思ってるよ。でも、れい君とは···深めのがしたい」

 

 言い切る声は低くて、柔らかいのに逃げ場がなかった。

 

「そっか···じゃあ···ん、ぇ······」

「──だらしない顔も可愛いよ

 

 囁きと同時に、距離が消えた。

 触れた感触は、想像していたよりも熱を持っていて、ゆっくりと絡め取られる。頭の奥がじわりと痺れて、思考が追いつかない。息の仕方すら怪しくなって、ただ身を委ねるしかなかった。

 

 顔が熱い。胸の奥が落ち着かなくて、意味もなく指先に力が入る。

 

「──どこ、触ってほしいの?」

「······え?」

 

 問いかけは優しいのに、逃がさない調子だった。

 

「身体、正直だよ。分かりやすい」

「···脱いで、いい···?」

「自分で脱ぐのはダメ」

「······詩乃さん、脱がして」

「仕方ないね。でも──もう少し、我慢」

 

 軽く笑って、また距離を詰めてくる。

 唇が触れるたび、熱が積もっていく感じがして、落ち着かないまま時間だけが過ぎていった。

 

 長い間そうしてから、ふっと解放される。

 両頬を包まれて見上げると、さっきよりも真剣な目をしていて、少し潤んでいるのが分かった。

 

「一緒に買い物してた女の子と······こういうこと、してないよね?」

「······うん。前も言ったけど、そんな関係じゃない。手も繋いだことないし」

「そっか、手も繋いだことないんだ」

 

 安堵と、別の感情が混ざったような表情。

 

「なんだか、優越感っていうのかな。君のこと、他の人より知れてる気がしてさ、嬉しい」

「······嬉しいなら、よかった」

「両方の名前、知ってるのも私だけだよね」

「お客さんで知ってるのは、詩乃さん()()だよ」

「──ほんと、ガード緩い。心配になる」

 

 そう言って、視線がさらに深くなる。

 鋭いのに、甘い。逃げたいのに目を逸らせない、捕まえる側の目。

 

「···れい君、私の目好きでしょ。ずっと見てる」

「好きだけど···とろんとしてるのは、詩乃さんだよ」

 

 言った瞬間、くすっと笑われた。

 その笑みが近くて、また距離が曖昧になる。

 

「お互い様だね」

 

 指先が、僕の頬をなぞる。さっきまで押さえつけられていたはずなのに、触れ方は驚くほどゆっくりで、逃げ場を与えるみたいだった。けれど、その分余計に意識してしまう。

 

「······ね、れい君」

 

 名前を呼ばれるだけで、胸の奥がきゅっと縮む。

 

「こういうとき、ちゃんと嫌だったら言うんだよ?」

 

 不意に真面目な声になって、視線がまっすぐ向けられる。捕食者みたいだと思った目は、今は確認するような色をしていた。

 

「···うん。大丈夫」

「そっか」

 

 その一言で空気が戻る。詩乃さんは満足そうに頷いて、再び距離を詰めてきた。

 

 今度のキスはさっきよりも浅くて、唇が触れるか触れないかくらい。焦らすみたいで、こっちからくっつけに行ってしまう。

 

「ほら、我慢できてる?」

「···できてないかも」

「正直でよろしい」

 

 くすっと笑って、額を軽くぶつけてくる。その仕草がやけに親密で、胸が落ち着かない。ほんとに人みたいだ。

 

 詩乃さんの手が、僕の顔から肩、腕へ、ゆっくり滑り落ちる。触れているだけなのに、そこを意識してしまって、息が少し乱れた。

 

「シャワー、まだ行かない?」

「···今行ったら、絶対落ち着けないでしょ」

 

 そう言われて、否定できなかった。

 

「れい君、分かりやすいよ。身体も顔も」

「それ、褒めてる?」

「半分はね」

 

 もう半分は、と言いかけて、詩乃さんは言葉を飲み込んだ。その代わり、また唇が近づく。

 

「じゃあさ」

 

 囁く声が、すぐそばで揺れる。

 

「もう少しだけ、このままいよ?」

 

 返事をする前に、額が触れて、鼻先がかすかに当たる。キスでも、拒否でもない距離。心臓の音だけがやたらとうるさい。

 

「······うん」

 

 その短い返事に満足したみたいに、詩乃さんは目を細めて、また距離がゼロになった。

 

 時間が、溶けるみたいにゆっくり流れていく。

 60分しかないはずなのに、もう、最初の数分で捕まってしまった気がしていた。

 

 

 

 






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