・【九鬼英雄】と【井上準】にゲームセンターにて出会った。
・【風間翔一】【クッキー】【九鬼英雄】【井上準】とゲームセンターで遊んだ
⇒【彼ら】の好感度が上がった ▽
・現在の友達数:1人
+ 風間ファミリー(9人+1体)
期末試験が終わり、もうすぐ夏休みである。
試験の手応えとしては、まあまあできたのではないかとは思う…………平均行けばいいなぁ。
……まあ俺の試験の手応えは今は置いといて、実はまゆっちが少々落ち込んでいた。とはいっても別に試験の出来が不満とかではなく、落ち込んでいたのは試験前辺りからの事である。
話を聞くと、二年の不死川とかいう先輩と友達になれそうだったが、どうもその先輩は選民思想が強いらしく友達になる条件として風間ファミリーを抜けろと言ってきたそうだ。
まゆっちは当然のごとくそれを拒否したが、先輩はその答えを気に入らず怒りながら去ってしまったそうだ。
まゆっちとしては風間ファミリーを抜けるのはあり得ないが、その不死川先輩とも友達になりたいらしく、どうしたらいいのか、どうすればよかったのか、と悩んでいるみたいだ。
そんなまゆっちの様子を心配した俺と大和田さんは期末の最後の試験が終わる日にまゆっちを野球観戦に誘った。少しでも気分が良くなればいいと思っての行動であった。
結果だけを言えばそれは成功した。三人で七浜ドームまで行くまでの間も楽しく会話をしていたし、七浜ドームについてからもベイの応援で盛り上がったのでほとんど文句の付け所がないほどだ。
……ただ試合は負けた。何故せっかくのリードを守り切れない! 何故そこまでやって点が取れない! 何故逆に点差を広げられている!
試合が終わったら、怒る俺と大和田さんをまゆっちがなだめるという当初の予定とは全く違った構図になっていた。
その後、川神まで戻って大和田さんとまゆっちを見送った後、家に帰ると何やら姉貴とワン子が興奮していた。
「何かあった?」
「あ、十夜おかえりー!」
「ふっふっふ、聞いて驚け! 実はな……」
何やらテレビにて今度の日曜に行われる川神市の町興し目的の行事であるスタンプラリーの賞品にあの有名なスペースコラブの作者である躑躅先生のサインがあるらしい。躑躅先生はサインを書かない事で有名で、いくら金を積まれたとしても、どれだけの権力者が頼んだとしても、サインを書かないらしいが、市長が躑躅先生の親戚だとか何とかで、自身の出身地でもある川神の町興しのためならと三枚のサインを提供してくれたらしい。
「へー、スペースコラブの作者のサインねぇ……」
「あれ? 十夜は興味ないの?」
「スペースコラブは好きだけど、俺は作者に拘ってるわけじゃないしなぁ」
俺としては面白い作品を書く作者よりも面白い作品の方が重要である。というか俺がもしサインを手に入れたとしても放置して埃塗れになりそうだ。
と、ここでふとちょっとした疑問が浮かんだ。
「というかいつも一等の胸像とそのサイン、どっちが上なんだろうな」
「え? サインが優勝賞品じゃないの?」
「まあそうだろうけど、あの市長の事だしサインより上の順位に胸像を置いてもおかしくはないというか……」
……ま、流石にそれはないか。
でもそれで何でこの二人が興奮してるのかがわからない。二人とも漫画は読んでもそこまで興味があるとは思えないのだが……
「だがこのサイン色紙のおかげで参加者は増えるだろうな。それも腕自信があるヤツがだ」
「あれ? もしかして姉貴、出るつもり?」
「ああ。直接的な妨害は禁止されてるが、それでも面白くなりそうだしな」
ああ、なるほど。姉貴はサイン目的じゃなくてサイン目的の腕自慢目的なわけか。
しかし姉貴の間接的な妨害か…………致死蛍とかの気弾を地面に撃って破片を飛ばすとか……これは直接攻撃か。なら破片を当てないように道路を破壊して通れなくするとか……?
「……姉貴が出ると知った時点で諦めるヤツが続出すると思うんだが」
「アタシは俄然やる気が出るわよ~! 武道じゃないけどお姉様と戦えるんだもの!」
あ、そうか。姉貴が出ると知れたらサイン目当ての奴が減って姉貴目当ての奴が出てくるのか。つまりワン子はサイン目的の腕自慢たち目的の姉貴目的に出るわけだな。ややこしい。
まあどっちにしてもサインは姉貴のものになりそうだけど、市としてはそれでも大丈夫なのか疑問だ。
……そんな俺の心配は杞憂に終わった。どうやら市がレース中の警備などを川神院に依頼したことで川神院の門下生が借り出されることになったのだ。つまりワン子や姉貴もそっちに借り出されるので参加が出来なくなったのだ。まあ俺としてはどっちでもよかったんだが、とばっちりがこっちに来ないかだけが心配だ。
「というわけでお前も手伝え」
「……は?」
……とか思ってたらすぐに姉貴が来ました。
「手伝えって何をだよ?」
「レースの警備に決まってるだろー。わかってるくせに」
炎天下で警備の仕事……嫌だな、うん。でも一応仕事だしバイト代出るかもしれないな。
「それバイト代出んの?」
「私たちが出ないのにお前にだけ出るわけないだろー」
ボランティアかよ。炎天下でボランティアで警備とかやる気になる要素が全くないぞ。
「ならやらねーよ。部屋でゲームしてるし」
「私たちがやるのにお前だけやらないとか許すわけないだろー」
ええー……何その理不尽。
俺としては絶対に断りたい。でもこうなった姉貴を何とかするのは難しい。何か正当な理由があれば断れるだろうけど、俺の断わる理由って炎天下で無償で働きたくないってだけだからなぁ。
と、その時にちょうど俺のケータイにメールが来た。何気なく内容を見ると相手はゲン先輩からで、内容としてはスタンプラリーの日に仕事が入ったからバイトとして手伝えとの事だった。
どちらにしても働かなければならないようだが、金が出る分こっちの方が数段マシである。
「あー、姉貴、その日バイト入ったから普通に無理になった」
「……本当か? 実は大和辺りに頼んでそういうメールを送ってもらったんじゃないだろうな?」
「どんだけ信用ないの俺。ほら、証拠のメール」
訝しむ姉貴にケータイを見せる。
「……源からか。アイツはこんな嘘に付き合うタイプじゃないし、本当みたいだな」
学校の後輩よりも実の弟の方が信用低いってどういう事なの。
◆◆◆◆◆◆
そしてスタンプラリー当日、俺は日差しの強い青空の下でバイトに汗を流していた。ちなみにバイトの内容だが……
「どりゃぁぁぁぁ!!」
「おらよっ!」
「せいッ!」
スタンプラリーでトップを走る予定のまゆっちの妨害に来るであろう刺客を潰すことである。
今回のスタンプラリーでは、躑躅先生のサイン色紙を確実に手に入れるために大和はまゆっちと手を組んだ。大和が策を練り、まゆっちがそれを実行する。確かにトップを狙うには文句ない布陣である。
しかしサイン色紙がほしいのは大和だけではない。金に物を言わせてでもほしいと思う人間はいるだろう。故に作戦上では首位を走る予定であるまゆっちはまさに出る杭は打たれるという言葉通り、叩かれやすいポジションであり、上位陣を妨害するための刺客が放たれやすいポジションでもある。
それをすでに予見していた大和は、上位の参加者を妨害するために雇われた刺客がまゆっちを妨害しようとした際に、俺とガクトとゲン先輩の三人でその刺客たちを潰すように依頼したのだ。……あの時点で大和が関わっていると勘付いた姉貴は凄まじいと思う。
で、元は仕事の内容からして人手は多い方がいいだろうという事で呼び出されたのだが、刺客はほとんどガクトのパワーだけで倒してしまった。俺の仕事はゲン先輩と一緒にその取りこぼしを殴るだけの簡単なものになっていた。
「これでバイト代出るんだから楽な仕事だよなー」
「バイト代でなかったら大和の頼みとは言えわざわざこんな事しねぇだろ」
「俺はバイトなかったら姉貴に川神院のボランティア活動に強制参加させられてたから」
「ああ、なるほど。俺様納得した」
「ゲン先輩には感謝の言葉しかないです。わざわざありがとうございました」
「勘違いすんじゃねぇ。俺はただこういう荒事は人手があった方がいいと思っただけだ」
なるほど。これがキャップや大和が言ってたゲン先輩のツンデレか。よく見るわ。
「ま、ともかくレースももう終盤だ。妨害要因もあれで多分最後だろう」
つまりは実質バイト終了である。あとはレースの結果がどうなるかだが……。
「おお、まゆっちが八艘跳びしてる! これは決まったか?」
「うおっ!? 九鬼のメイドがキャストオフして泳いで追いかけてったぞ!?」
「とんでもねぇな、こりゃ。たかがサイン一つによくやるもんだ」
これでおそらく優勝争いはまゆっちと英雄先輩のメイドさんに絞られた。どっちが勝者となるのか、果たして……?
◆◆◆◆◆◆
そして結果はというと、一位が英雄先輩のメイドさんで、まゆっちは二位だった。
聞いた話によればまゆっちが優勢だったらしいのだが、ゴール直前で並ばれて最後は腕の関節を外してまでメイドさんが一位をもぎ取ったらしい。
執念の勝利という言葉がよく似合う決着であった。あるいは忠義の力?
大和やまゆっち残念だなぁと思っていたら、表彰式にて驚愕の真実が発覚した。
「あの市長、マジで自分の胸像の下にサイン置きやがった……」
別に物理的に胸像の下にサインを敷いたわけではなく、一位の景品だと思われていたサインが実は二位の景品で、一位の景品はいつも通りの市長の胸像だったのだ。開いた口が塞がらないとはまさにこの事である。
そして大和がちゃっかりそれを読み切っていた事にも驚愕である。優勝した英雄先輩――正確にいえばそのメイドさんだが――が可哀そうである。
表彰式が進み、そろそろ市長の閉会の式辞でこの催しも終わりを迎えるだろうと思っていたら、何やらまだ何かあるようだ。
「では閉会の式辞の前に、今回のイベントの出資者でもあるこの方に挨拶をお願いしましょう」
出資者の挨拶? 個人的にはどうでもいいんだが…………そう思ってた時期が俺にもありました。
「フハハハハ! 九 鬼 揚 羽 、 降 臨 である!!」
「は? 揚羽さん?」
九鬼揚羽。九鬼家の長女にして九鬼財閥の重役の一人、そして姉貴の好敵手でもあった人だ。姉貴との立会いで揚羽さんが川神院に来た時に俺も何回か会った事がある。……あの頃と比べて髪スッゴイ伸びてるなぁ。
「今回のイベント、我の弟が優勝を飾る結果となり、我も姉としても鼻が高い。……まあ目当ての物は得られなかったようだが」
まあまさかサイン色紙が胸像よりも下だとは思わないし、仕方ないとは思うけど。
「さらに今回のイベントによって川神はより世間より注目される都市となるだろう。我ら九鬼財閥としても、この川神の地がさらに発展していくのは好ましい。故に――九鬼財閥はこの地にてある催しを行うことにした!」
……催し? スタンプラリーがあったばっかりなのにまた川神で何かするのか。しかも九鬼財閥主催で。
「詳細は明日夜7時にMHKにて始める世界同時放送にて説明する。今一つ言える事は、これが世界レベルでの催しという事だ!」
我からは以上だ、と揚羽さんは挨拶(というか宣伝?)を締めくくり、市長による閉会の式辞によって川神市スタンプラリーはその幕を下ろした。
◆◆◆◆◆◆
次の日の昼休み、俺たちの話題は昨日のまゆっちの活躍についてだった。
「昨日のスタンプラリーでまゆっち二位ってすごいよねぇ」
「あの八艘跳びは見事だったよな」
「いえいえそんな。私よりも作戦を考えてくださった大和さんがすごいんですよ」
「ま、大和坊の作戦じゃオラの出番がないのが不満だったけどなー」
「こら松風、そんな物言いはいけませんよ」
褒められても謙遜するまゆっちだが、それでもやはり友達から褒められるのは嬉しいのだろう、松風とのコントに張りがある。
「その先輩の指示通りだったとしても、それができたまゆっちはやっぱりすごいよ」
「まあこの結果は友達作りにもプラス面で影響があるだろうな」
「あ、実はあの後、不死川さんともお友達になったんです!」
「何……だと……!?」
「あと河原で総理に似た方ともお友達になりました」
「すごいじゃんまゆっち! 二人も友達増えてるよ!」
「まァ、オラの神通力? そういう感じの力も働いてるんだろうなー」
「それはない」
まあ、そんな感じでいつもの如く雑談を楽しんでいたが、『笑ってええとも!』を映し出している教室のテレビの音がふと聞こえてきた。
『今日のゲストはドバイの格闘王ミスマさんです!』
ミスマ……確かに最近ブイブイ言わせてるみたいだな。格闘雑誌で読んだ覚えがある。
ちょっと興味が出たのでテレビに目を向ける。が……
「これお昼の生放送でやっちゃダメだろ……」
何かミスマが『しゃぶれ』とか『イかせたら1億やる』とか言ってるけど明らかにアウトだろ。しかもオブラートに包んでもないし、はっきり言っちゃってるし。
司会者の人も流石にダメだと思ったのかミスマに対して意見を言う。
『あ、アンタ、そんな横暴な事が許されると思ってるのか!?』
『俺は無敵、さらに財力もある。力があれば何をしてもいい』
いや、確かにそれは事実なのかもしれないが、それを公然と、しかも堂々と言うとは……コイツ最低だな、おい。
『世界は圧倒的な力に支配されているのだ!』
そうミスマが声高々と言い放った瞬間――
『フハハハハ! 全く同感だな。偽りの格闘王よ』
その声に同意する、威風堂々とした声がテレビから流れてきた。具体的に言えば、昨日も聞いた、額に×印の傷を持った女性の声……
『だ、誰だキミは?!』
『九鬼財閥の九鬼揚羽、降臨である! 今日はこのスタジオを占拠しにきた』
やっぱり揚羽さんだった。昨日に続いて今日もその姿を見る事にあるとは思ってもみなかった。しかし何のために来たんだろうか?
『クキの娘、武道をかじっているという話は聞いた事があるが……まさかこの俺に挑むつもりか?』
『格闘王を名乗るお前を公衆の面前で叩きのめしてやろうと思ってな』
明らかに相手を挑発する揚羽さんの言葉を、ミスマは鼻で笑って宣言する。
『10秒だ。10秒後、お前は地面に這い蹲る事になるだろう。豚のようにな』
……まさか揚羽さんとミスマの戦いが見れるとは思ってなかった。少なくともこんなお昼のバラエティ番組で見れるなんて全く予想すらしてなかった。
……そして10秒後……
『た、たしゅ……けて……』
ミスマは豚のように地面に這い蹲っていた。
対する揚羽さんは傷一つない。両者の間にある実力の差は明らかであった。
別にミスマが弱いわけじゃない。圧倒的なまでに揚羽さんが強いだけだ。武道家として現役から一歩退いたのにあの強さ……凄まじい。
『偽りの王者はここに倒れた。ミスマも決して弱くはないが、我から見ればまだまだよ』
そう言いながら揚羽さんはミスマに目を向ける。その視線だけでも両者の力関係をそのまま表していた。
『その未熟者が世界王者を名乗っている』
そして、ミスマに向けていた視線を上げ、今度はカメラへ目線を向けた。
『しかし武の世界はそこまで底が浅いものではないッ!!』
その言葉が、その視線が、テレビを見ている俺達を貫いた。その言葉は俺の心にある何かを揺さぶるような、そんな力が篭もっていたように思えた。
『故に我は、重要なメッセージを皆に発信する。今夜7時、MHKにて世界同時放送を始める。興味がある者はチェックするがよい! 夜を楽しみにしておけ!』
『……あっ、こ、ここでCM入ります』
ここで思い出したように司会者が口を開いて、それに合わせて音楽が流れて画面がCMに移っていった。
それを機に、揚羽さんの雰囲気に呑まれて沈黙に包まれていた教室内がざわつき始めた。揚羽さんのインパクトから意識を取り戻したのだろう。
それは俺たちにも言える事で、三人の中で沈黙を破ったのは、意外にも俺の一言だった。
「……お昼の伝統番組を番宣代わりに使うとは……九鬼パネェな」
「注目点そっちかよ!?」
「そこよりまずミスマさんが簡単にやられた所じゃないんですか!?」
「いやでも今夜発信するっていうメッセージの内容も気になるかも……」
「伊予ちゃんまで!?」
俺はそう口して、揚羽さんの言葉で感じた何かを誤魔化した。心揺さぶられた理由を理解するのを恐れていたからかもしれない。
……それにしても昨日に続いて今日も、それもお昼の番組をジャックしてまで知らせたい重要なメッセージねぇ……何だろ。
――その夜、MHKにて九鬼財閥・九鬼揚羽より発表があった。
ドバイの大会社であるミスマコーポレーションを併呑し、世界最大の企業として名乗りを上げたこと。
そして、その記念に格闘世界大会“KOS2009”を開催すること。
“KOS”の存在はたちまち世界中へと駆け巡っていったのだった。
<今回での十夜の戦果>
・【黛由紀恵】と【大和田伊予】と【野球観戦】をした。
⇒【黛由紀恵】【大和田伊予】の好感度が上がった。
・【島津岳人】【源忠勝】とバイトをした。
⇒【島津岳人】【源忠勝】の好感度が上がった。
・【九鬼揚羽】によって【KOS】の開催が発表された。 ▽
・現在の友達数:1人
+ 風間ファミリー(9人+1体)
という事で次回からKOS編に突入です。