【この話を読む前】に、
【都市伝説解体センターのゲーム本編をクリアした方がいい】のかも?
うん、きっとそう!!
メインはあざジャス。おまけも少しあります。ネタバレを多々含みますので、ゲーム本編をクリアしていない方は今すぐブラウザバックしてSteamかSwitchで購入してください。今ならセール中! お得です!!
はじめは、あまり好意的ではないと思っていた。でも、一緒に事件の調査をして、その人柄に触れて。ジャスミンさんは、私が落ち込んだ時に的確にフォローを入れてくれたり、ピンチの時に助けてくれたり。一見面倒くさがりに見えるけれど、本当はとても面倒見が良くて、とても優しい人だということが分かった。
そんなジャスミンさんのことを、私はいつの間にか大好きになっていた。
「おはよう、あざみー。あと、久しぶり」
「あれ、どうしてジャスミンさんがここに⋯⋯? って、どうしたんですか、その怪我!?」
私の趣味は、二度寝とお昼寝だ。今日も、ご飯を食べた後眠くなって、いつの間にかお昼寝をしてしまっていた。どこでも寝れちゃうのは、最早私の特技とも呼べるかもしれない。あんまり他人に自慢できるものではないけれど。
そして、目が覚めたら、目の前にジャスミンさんが居た。都市伝説解体センターが色々あって場所を移すことになって、借金をまだ返せていない私も、センター長に引っ張られる形で無理やり連れてこられて。それ以来、ジャスミンさんとは会えていなかった。だから、久しぶりにこうして近くでジャスミンさんの顔を見れたことで嬉しくなったのだが、同時に、ジャスミンさんが顔や腕から血を流しているのに気づいて、ぎょっと目を見開いた。
「ちょっと、色々と無茶しちゃったのよ。まあ、骨がちょっと折れたくらいだから、だいじょうぶ」
「それ、全然大丈夫じゃないですよ! は、早く救急車を呼ばないと⋯⋯!! だ、ダメだ。ここ、圏外みたい。ど、どうしよう⋯⋯」
慌ててスマホを取り出して救急車を呼ぼうとしたが、無情にもスマホの画面は圏外を表示していた。そもそも、何故スマホは圏外なのか。確か自分は、センターの中にいたはずだ。それなのに、昼寝から目が覚めたらジャスミンさんが怪我した状態で目の前にいるし、やたらと薄暗いし声も響く。
いったん、落ち着いて考えてみよう。両手を頬にあて、思考を整理してみることにする。まずは、ここがどこかを特定する必要がある。場所が分かれば、ジャスミンさんの治療に必要なものも見つかるかもしれない。うん、きっとそうだ。
周りを見渡して、何かここがどこか分かるものがないかを調べてみる。照明は、壁にかけられた松明1本のみ。そして、その隣に貼られたポスターに描かれているのは、絶妙に可愛くないシカのマスコットキャラクター。あれ、トナカイだったっけ。まあ、細かいことはいい。あのポスターが貼られているということは、ここはやはり、都市伝説解体センターの中なのだろうか? 確証は持てないけれど、たぶんそうだと思う。いつの間にか、内装を大幅にリニューアルしていたのかもしれない。
そう考えるのは、私もセンターの中の構造にはあまり詳しくないからだ。だって、普段ここで生活しているのはセンター長さんくらいで、私もここには仕事の時しか来ない。センター長さんがここに居ればもしかしたら救急キットとかが置いてある場所が分かるかもしれないのに。思うようにいかない現状に頭を悩ませていると、ふいにスマホが震え、着信を知らせた。噂をすれば何とやら。センター長さんからだ。
「もしもし、センター長さんですか!? 大変です、ジャスミンさんが怪我をしていて⋯⋯!」
『ええ、千里眼で状況は全部見ていました。あざみさんが転んで怪我をした時のことを考慮して、奥の部屋に救急キットは常備していますから、それを使うといいでしょう』
「さ、流石ですね⋯⋯。ありがたく使わせていただきます!」
『あと、簡易的なキッチンもありますから、消化のいい食事を作ってあげてはどうでしょうか。おかゆくらいなら作れる材料はあったはずです。あざみさんが食べさせてあげたら、きっとジャスミンも喜びますよ』
「分かりました!!」
センター長さんとの通話を終え、スマホをポケットにしまう。その間、ジャスミンさんは私のことをじっと眺めていた。
「⋯⋯今の電話、センター長から?」
「はい、そうです。千里眼で私たちの様子を見ていたみたいで、救急キットのある場所を教えてもらいました! ついでに元気が出るような料理も作りますから、ちょっと待っててくださいね!!」
私は、ふんっと気合を入れて両手を胸の前で構え、それからセンター長さんに教えてもらった場所へと駆け足で向かっていった。相変わらず暗くて足元がややおぼつかないが、スマホのライトも使いながら、無事目的の場所へと着くことが出来た。壁は岩盤で出来ていて何とも原始的だが、いちおう生活できる環境は整っているみたいだ。
「ジャスミンさん、救急キット持ってきました!」
「あざみー、こういう怪我の治療した経験、あるの?」
「あっ⋯⋯。す、擦り傷くらいならありますけれど、あんまり詳しくないかもです」
「じゃ、それ貸して。これくらいの怪我なら自分で処置できるからさ。⋯⋯その代わり、美味しいご飯つくってよ」
「は、はい!」
救急キットを渡すだけで満足に治療できないことに落ち込みそうになったが、ジャスミンさんの言葉で我に返る。そうだ、落ち込んでいても仕方ない。ジャスミンさんのために、自分ができることをやるしかないんだ。
キッチンに行くと、センター長さんがいった通り、簡単な材料が置いてあった。特に、レトルトのおかゆ。これは嬉しい。温めるだけで調理できるから、時間がかからないのがありがたかった。
具材を少し切って入れて、味付けを整えて器に盛れば、完成だ。出来上がったおかゆをジャスミンさんの元に持っていくと、ジャスミンさんは怪我をした場所に器用に包帯を巻いている最中だった。
「お、いい匂い。じゃ、それ置いてくれたら後で食べるから⋯⋯」
「だ、ダメです!!」
私は、反射的にジャスミンさんの声を遮っていた。ジャスミンさんがびっくりして目を丸くしているが、私も驚いている。どうして、ダメなんて言ってしまったんだろう。そうだ、ジャスミンさんが治療するのを待っていたら、おかゆが冷めてしまう。それが嫌だった? ううん、違う。そうじゃなくて、もっと単純なこと。私が、ジャスミンさんに自分の手で作った料理を、食べさせたかったからだ。
「ジャスミンさん、口、開けてください!」
「いやいや、あざみー、いくら何でもそれは恥ずかしいって」
「ジャスミンさんは今治療中で、腕が動かしにくいじゃないですか! だから、こうして食べる方が食べやすいと思います!」
「いや、そういう問題じゃなくって⋯⋯」
「じゃあ、何が問題ですか!? 熱いのが嫌なら、ふーふーして冷まします!!」
「そういう問題でもないから。ちょっと落ち着いてよあざみー。あたし、自分で食べられるから」
「駄目です! あんまりしつこいと、口移しで食べさせますよ!?」
「ちょっ!? 何言ってんのあざみー!?」
「それが嫌なら、おとなしく口を開けてください!」
半ば強引に押し切った。ジャスミンさんは、顔を赤くしながらも、こちらに向けて顔を近づけ、口を開いてみせた。意外と口、小さいな。そんなことを思いながら、私はおかゆの乗ったスプーンを、ジャスミンさんへと差し出す。
「はい、ジャスミンさん。あーん」
「⋯⋯」
「あーん」
「あ、あーん」
一度スプーンを引っ込めると、ジャスミンさんは照れながらもあーんと言ってくれたので、満足して口の中にスプーンを優しく入れる。ごくりと、ジャスミンさんの喉が動いておかゆを呑み込んだのを確認してから、私は次のスプーンを差し出した。
「はい、あーん」
「ね、ねえあざみー。これ、完食するまで続けるの?」
「はい!」
「元気いい返事だなぁちくしょう。分かったよ。おとなしくあざみーに餌付けされることにするわ」
ジャスミンさんは抵抗をやめ、おとなしくあーんと口を開けて私が差し出すスプーンを受け入れてくれた。その様子を見て、ちょっとゾクゾクしてしまったのは内緒だ。なんだかいけないことをしている気分になって、そしてこれをセンター長さんが千里眼で覗いているかと思うと少しだけ腹が立ったので、ジャスミンさんを地面に押し倒して、その上から覆いかぶさるような姿勢を取って、センター長さんから見えないようにした。
「あ、あざみー!? 急に押し倒したりして、どうしたのさ」
「なんでもないです。はい、あーん」
「え、それだけ? な、なに考えてるか分からん。⋯⋯まあいっか。あーん」
その後、私は器に入れたおかゆがなくなるまで、あーんして食べさせる作業を繰り返した。途中で、地面に直で寝転ぶのは痛そうだと思い当たったので膝枕に変えたりはしたが、何とか最後まで食べさせることが出来た。
「おかゆ、美味しかったわ。ありがとね、あざみー」
「えへへ。ジャスミンさんが喜んでくれて、よかったです。あれ、安心したら、何だか眠気が⋯⋯」
「色々やってくれたからね。疲れたんじゃない? あたしの怪我もだいぶ良くなったし、眠るんだったら今度はこっちが膝を貸すよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて⋯⋯」
怪我人に対し申し訳ないとは思いつつも、睡魔という名の欲望には逆らえず、私は差し出される膝の上に頭を乗せた。
「おやすみ、あざみー」
「おやすみなさい、ジャスミンさん」
そして、頭の上に置かれたジャスミンさんの手のぬくもりを感じながら、私は今日二度目のお昼寝をするのであった。
◇◆◇◆◇◆
止木休美のことは、私も大好きだ。しかし、同時に恨んでもいる。もし、もう少し早く、私たち兄妹が、彼女に出会うことが出来ていたとしたら。あざみに言ってくれたように、「そんなの気にする必要はない」と励ましてくれていたら。兄は、自殺することは無かったかもしれない。
ずいぶんと勝手な言い草であることは理解している。だが、どうしてもそんなことを考えてしまうのは、私自身が、もう少し早く出会いたかったと感じているからなのだろう。
ゆっくりと、目を開く。頭の下に感じる温もりは、止木休美のものだ。だが、こちらを見下ろす表情は、先ほどまであざみに向けていたものとは違い、どこか険しい。
「⋯⋯お前は、今誰だ?」
「あなたが想像している人物で、おそらく間違いないよ、止木休美。あ、ジャスミンって呼んだ方がいいかい?」
私がそう言うと、止木休美は嫌そうに顔を顰め、私の頭を膝の上から下ろした。随分とまあ、あざみの時とは違う対応である。こうも態度を変えられると、流石に少し寂しい。
「いや、そのままでいい。お前にそう呼ばれると、なんか背筋がぞわぞわする」
「そうか。残念だね」
「それにしても、いったい何のつもりだ? あたしのスマホに位置情報送ったかと思ったら、入るなりいきなり爆発なんて。あたしを殺したかった?」
「まさか」
殺すつもりだったなど、心外だ。確かに、入り口に爆弾は仕掛けた。でも、ちゃんと致命傷にはならない程度のダメージになるよう計算していたし、怪我の治療もできるように救急キットもあらかじめ用意しておいた。
私が止木休美のスマホをハッキングしたうえで位置情報を送ったのは、単純な話。彼女に会いたかったからだ。止木休美は今、警察を辞め、独自に私の行方を追っている。一度は場所を特定されたが、その後また場所を変え、しばらくの間見つかっていなかった。だから、自分から場所を教えてあげたのだ。
「私はただ、あなたに会いたかっただけだよ」
「嘘をつけ! いったい何が目的なんだ! お前はまたここで、新しい都市伝説を産み出すつもりか!?」
正直に自分の気持ちを伝えるも、信じてはくれない。それどころか、隠し持っていた拳銃を私の顔に突き付けてくる。しかし、拳銃を持つ手は酷く震えている。あれでは、当たらないだろう。
「私を殺す? 私は構わない。ただ、私は私であると同時に、福来あざみだ。あなたは、あざみを殺せるのか?」
「黙れ!!」
止木休美は私を撃たない。それが分かっているからこそ、こんな挑発めいたことも言える。私は、一歩止木休美に近づき、その両頬にそっと手を添えた。
「心配しなくとも、私の信者が直にここに救助に来ます。私もあなたも、ここから無事出られる。それまで、折角だから2人でお話ししましょう」
「あたしは、お前と話すことは、ない」
「それは残念。では、新しく仕入れた都市伝説の話でもしましょうか。折角なら、廻屋の人格に変わるのもいいですね」
「⋯⋯」
止木休美は、もう何も言い返してくることはなく、ただただこちらを睨みつけてくるだけだった。その表情の裏でいったいどんなことを考えているのか。ある程度想像はつくが、本当のところは分からない。そう簡単に他人の気持ちが理解できていれば、兄は死ななかった。
ここから出たら、センターの場所を変えよう。止木休美はきっと、私を止めるために、そして、大好きなあざみに会うために、また私を探してくれるだろう。
願わくば、最期の時まで、ずっと、私を追いかけてほしい。止木休美の人生を私という存在で縛り続けること。それが、私の止木休美へのささやかな"報復"であると同時に、私の歪んだ