敵と同じように仮面ライダーへの変身が完了した刀真が手をかざすと、黒い霧が一つに集まり専用の武器“武刃”が形成された。それを手に取ると刀真は腰を少し落とし、居合の構えを取る。
「斬られる覚悟が決まった奴からかかってきな」
「っ!?行きなさいカッシーン!」
刀真から発せられる覇気にアゲハは一瞬怯み、恐れを抱くもそれを振り払うようにカッシーンに指示を出す。指示を受けたカッシーンは一斉に刀真達に襲い掛かる。カッシーンが動くと同時に刀真も動き出す。
間合いに入ると刀を抜刀し、一振りで3体、刃を返して振るい更に3体、2体、1体、3体と流れるような動きでカッシーン達を切り捨てていく刀真。
「コイツでラスト!」
100体はいたであろうカッシーンは約2分で全て刀真に切り捨てられた。
「100体はいたカッシーンをこんなに早く倒すだなんて」
刀真の想定外の戦闘力にアゲハは装甲内で冷や汗を流す。
「次はお前だ」
「舐めないで欲しいわね」
アゲハは変身したときと同じように1枚のカードを取り出し
『APPAREBUSHIDO』
『ドレイン』
スラッシュし装填すると、一振りの刀“ブラッディーAB”を錬成し刀真に斬りかかる。袈裟斬り、左薙ぎ、右斬り上げ、唐竹、逆風と怒涛の勢いで斬撃を繰り出すも、刀真は最小限の動きで躱し、刀や鞘で受け流して防いでいく。
「動きが素人のそれだな。ライダーの力に頼りきっている証拠だ」
「防戦一歩の坊やが言っても説得力がないわよ」
「そうか・・・なら攻めさせてもらう」
アゲハの唐竹を逆風を使って弾き飛ばした刀真は袈裟斬り、逆袈裟斬り、突きの3連撃を繰り出しダメージを与えた。
「この」
『SKEBOWS』
『ドレイン』
アゲハはスキャンしたカードの力で移動速度を強化し、目にも留まらない速さで刀真の周りを動き回る。
「“剃”」
高速で動くアゲハに対し、刀真も高速移動で対抗する。
「・・・見えない」
戦いを見守っている千癒達は2人の動きに目が追い付けず武器同士がぶつかり合い音だけが聞こえている状態だ。
一見、互角に見える(千癒達には見えない)攻防だが、徐々にアゲハが押され始めた。変身後のスペックの差も当然だが、何より変身者の身体能力の差が違いすぎるのだ。
「朧・疾風雷覇」
「うぁ!?」
すれ違い様に繰り出された右薙ぎをくらい、高機動が解除され地面を転がるアゲハ。
「なら」
高機動戦と近接戦闘では自分にぶがないことを知ったアゲハは持っていた刀を捨てると新たに3枚のカードを取り出す。
『BULLTEBAANG』
『ANTROOPER』
『ANTROOPER』
『ANTROOPER』
『ANTROOPER』
『WARPTERA』
『ドレイン』
スキャンしベルトに挿入する。持っていた刀が消え、新たに2丁の拳銃が生成され、更にアゲハが5人に増えた。
5人のアゲハが刀真に向け銃を向けると、空間が歪み、渦が生まれた。アゲハはその渦に向かって弾丸を撃つ。撃たれた弾丸は吸い込まれるように渦の中へと来た。すると、刀真の周囲の空間が歪み、そこから放たれた銃弾が飛び出てき、直撃、刀真にダメージを与えた。
「っ!?」
「ふふ、何処から来るかも分からない銃撃のお味はいかがかしら?」
「刀を作ったり、銃を作ったり分身したり、弾丸をワープさせたりまるで魔法だな」
「残念、これは錬金術よ」
「何処の世界に分身したり、ワープさせ足りすることができる錬金術があるんだよ!?」
「ここよ」
刀真のツッコミにアゲハは自身を指さしながら言う。
「どんどん行くわよ」
ダメージを与えたことで気分を良くしたアゲハは銃を乱射する。
「(超直感と見聞色の先読みで弾が来る場所は何とか分かって避けることができるがこのままじゃジリ貧だ。弾切れもなさそうだしな)」
直感と先読みで何処から銃弾が現れるのかが分かり避け続ける刀真。最初は弾を撃ち尽くしたところで距離を詰めと考えていたが、一向に弾切れする予兆が見えないでいた。
「(強引に近づくしかないな。なら)武装色“硬化”」
ワープし何処からともなく飛んでくる銃弾の中を進む覚悟を決めた刀真は全身に武装色を纏う。硬化により身に纏っているアーマーも硬化し、黒へと染まる。覇気を全身に纏った状態で刀真はあらゆる場所から襲い来る銃弾をくらいつつも何事もないかのように歩を進める。
「こ、この」
走るのではなくあえてゆっくりと歩いて近づくのには理由がある。攻撃が効いていない状態でゆっくりと近づくことで相手に恐怖と困惑を与え思考を鈍らせる。
「・・・・・」
刀真は無言で左手をベルトにある小太刀を鞘に収める。すると、電子音が鳴り、刀身が黄緑に輝き、黒いオーラが漂う。そして、収めた小太刀を引き抜き、必殺技を発動させる。
『BUJIN SWORD STRIKE』
「(あれはまずいわね)」
生物の本能かあれを受けたらまずいと理解したアゲハは刀真を近づかせさせないよう今までよりも銃を乱射する。だが、覇気を全身に纏った刀真には全く効かず、焦りが見え始める。刀真は1歩前に進むごとに速度を上げていき、刀が届く間合いへと入った。
「っ!?」
5人のアゲハは後ろに下がり攻撃に転用していたワープの渦を背後に展開、その渦の中に入りバラバラに逃げる。
「残念。お前の動きは分かってるんだよ。朧・雷霆連鎖 5連」
超直感と見分色の力でアゲハが逃げることは分かっていた刀真は慌てることなくエネルギーを纏わせた刀を鞘に納め、居合の構えを取ると、電光石火のごとく移動したアゲハの元へと踏み込み、刀を一閃。ほぼ同時に5人のアゲハにダメージを与えた。必殺の一撃を受けたことで能力で増えたアゲハが消え、本人のみが残った。
「終わりだ」
ダメージを受け立つのもやっとなアゲハを見ることなく刀真はベルトの小太刀を鞘に納めると引き抜くともう一度鞘に納め、再度引き抜いた。
『BUJIN SWORD Victory』
そして、振り向きざまにエネルギーを纏った右上段右回し蹴りを叩きこむ。エネルギーはアゲハの中へと浸透し爆発。アゲハは変身を解除してしまった。
「うぅうううう」
衝撃でベルトが外れ、地面を転がるアゲハ。
「っく。この屈辱はいつか倍にして変えさせてもらうわ」
聞き覚えのある捨て台詞を吐きながらアゲハは展開したオーロラカーテンを使ってこの場からいなくなった。
「退いたか」
アゲハがいなくなったのを確認するとベルトに付けた左右のバックルを外し、変身解除するとアゲハ捨てていったカードと半壊したベルトを拾う。
「(カードを使って戦う、龍騎やブレイドと似たライダーだったな。でも、あの見た目からしてダークライダーって所か)それにしても随分と変わったカードだな」
拾ったカードの1枚を眺めていると、
『ホッ・・・パー』
「ん?」
聞き覚えのない鳴き声らしき声が聞こえてき、刀真は自身の周りを見回すも誰もおらず、不思議に思っていると、
『ホッ・・・パー、ホッ・・・パー』
さっきと同じ鳴き声が聞こえてきた。再度、周囲を見回すも鳴き声の主は見つからない。
「・・まさかな」
自分の近くにあるのはたった今、アゲハから回収した多数のカード。直感に従いその中の1枚を引き抜くと、バッタの絵が描かれていた。
「・・・俺に話しかけたのはお前か?」
返事など返って来るはずもないのだが、恐る恐る、カードに話しかけると
『ホッ・・パー』
動くはずのない絵が動き、声がカードから発せられた。
「・・・まじかよ」
あまりのことに刀真は天を仰いだ。
「錬金術で造られた人工生命体“ケミー”か。錬金術ってそんなこともできるんだね~~」
ユエを守っていた蠍、アゲハとの連戦(刀真のみ)をおえた一行はダイオラマ球内で休憩を取っていた。
『ホッ・・パー』
『スッチ・・ムー』
「全てカードに意思がある。とんでもないですね」
「だが、ここにあるカードは全てコピー、複製らしい」
「何で分かるの刀真君?」
「このホッパー1が教えてくれた。自分たちは複製だってな」
見聞色でホッパー1の感情を読み取った刀真が全員に教える。
「ふ~~~ん。でも、たとえ複製でもこの子たちは自分の意思を持ち、生きてる。偽物なんかじゃないよ」
ライザは本物も複製も関係ない、ホッパー1達が持つ感情は本物なのだと語る。
「なら、このケミー達はライザ、お前に預ける」
「私!?」
刀真が管理するものだとばかり思っていたライザは自身を指さし、驚く。
「ケミー達はライザを心を開いているっていうのもあるが、ライザに新しい可能性を示してくれるかもしれない」
「・・・分かった。そういうことだから、皆、よろしくね」
『・・・っ!!』
ライザの言葉にケミーたちは声を上げて答えるのだった。
「つまり、ユエは300歳以上?」
「・・・マナー違反」
ケミーをどうするかの話し合いを終えた刀真達は自身のことを話しあっていた。その過程でユエの見た目と実年齢がかなりかけ離れていることに千癒が驚き、非難を込めた目で千癒を見る。
「(どの世界でも女性の年齢話はタブーなんだね)でも、僕が王都の図書館んで読んだ本には吸血鬼族は300年前の大規模な戦争で滅んだって書かれてたけど、吸血鬼って皆、長生きなの?」
「・・・普通の吸血鬼族も血を吸うことで長く生きることはできるけど、長くて200年が最長。私は魔力操作と自動再生の固有魔法に目覚めてから成長しなくなった」
それからユエは自身のことについて話始めた。12歳の時に先祖返りで力に目覚め、わずか数年で当時の最強の一角に選ばれ、17の時に吸血鬼族の王位に就いたこと。欲に目がくらんだ叔父が、自身のことを化け物だと周囲に浸透させ、大義名分のもと自分を殺そうとするも“自動再生”で殺し切ることができず、やむなくあの場所に封印したということ。
「・・・抵抗はしなかったんですか?」
「・・・裏切られたショックで混乱してた。気が付いたらあそこにいた」
「・・・ユエはここがどこだか分かる?」
「・・・・分からない。でも、ここは反逆者の1人が作った大迷宮だって言われてる」
「反逆者?」
聞きなれないうえ、不穏な響きにハジメは蠍の解体作業を一時中断して視線を移す。
「反逆者・・・神代に神に挑んだ神の眷属のこと。・・・・世界を滅ぼそうとしたと伝わってる」
ユエ曰く、神代に神に反逆し世界を滅ぼそうと画策した7人の眷属が存在した。しかし、その目論見は失敗し、7人は世界の果てへと逃走した。その果てが現在7大迷宮と呼ばれており、この“オルクス大迷宮”もその一つで、奈落の底の最深部に反逆者の住んでいた場所があると言われているとかなんとか。
「ここがそんな場所だったなんて」
「びっくり」
「「「・・・・・」」」
ユエの話を聞いてハジメと千癒は純粋に驚き、本当の真実を知っている刀真、ロクサーヌ、ライザの3人は何とも言えない表情でユエの話を聞いていた。
「・・・そこになら地上への道があるかも」
「確かに裏切ったと言えそんなすごい人達が作った迷宮なら往来できる場所ぐらい作ってそうだもんね」
ユエの話を聞いて地上への帰還への可能性が見えてきたことにハジメはほほを緩ませるのだった。