コルサントの春   作:Eitoku Inobe

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「革命家が迎えるに相応しい朝だ」
ー国軍保安司令官 ウィルハフ・ターキン提督ー



反乱の日

-銀河共和国領 コア・ワールド コルスカ宙域 コルサント星系 惑星コルサント ギャラクティック・シティ セントラル地区 アーソ家のアパート-

ゲイレン・ウォルトン・アーソ*1は共和国先進科学技術研究局に属する天体パワー・プロジェクトの主任研究員である。

 

共和国未来プログラム卒、エネルギー分野に関する権威で今は主任研究員ということで実務分野の長を務めていた。

 

この日は丁度プロジェクト・リーダーのオーソン・カラン・クレニック*2少将と自宅で夕食を共にしていた。

 

元々アーソとクレニックは共和国未来プログラムで知己を得た友人であり、職場では上司と部下という関係だがプライベートでは友人のままだ。

 

時刻はちょうどコルサント時間で9時を回ったところだ。

 

アーソは妻のライラ*3と共に娘のジン*4を寝かしつけ、ライラは先に風呂に入っていた為、アーソとクレニックの2人は大人だけの晩酌の時間に入った。

 

クレニックが手土産として持ってきたコレリアン・ブランデーを片手に、雑談を楽しんでいた。

 

「こうやって飲んでいると、未来プログラムにいた頃を思い出すなぁゲイレン。よく2人で飲み歩いてた」

 

「君は本当に夜遊びが好きだったからなぁ…いや、今もと言った方が正しいかな?」

 

クレニックは苦笑を浮かべ、ブランデーを口に含んだ。

 

農耕惑星グレインジの貧民家庭に生まれたアーソに都会的な夜遊びを教え込んだのはクレニックであった。

 

時々彼のサディスティックな面や技術に対する異常な過信には苦言を呈すこともあるが、それでも友人であることは変わりない。

 

「今は忙しくて全然だよ」

 

「それは本当かな?」

 

「意地悪しないでくれよ、ほら飲め。どうせ君は明日は休みだろ?」

 

ブランデーをアーソのグラスに注いだ。

 

途中でボトルに入った天然水を入れてブランデーを割った。

 

クレニックは若干酔っているのかいつもよりも楽しそうであった。

 

「ああ、戒厳令下じゃなかったらもう少し休みを取ってグリー・アンセルムにでも行くんだがな」

 

「仕方ないさ、私は……また会議だ」

 

「ある意味パーティーだろ?」

 

アーソの上段にクレニックはまたしても苦笑を浮かべた。

 

アーソの方もどうやら酔いが回ってきているようだ。

 

彼らの友情はある世界ではここまで長く続かない。

 

一方が一方を支配し、それに裏で刃向かう愛憎入り混じった関係となる。

 

「また予算審議についてだ、閣下が亡くなってうちの予算が凍結される可能性が出てきた。それに、だ」

 

クレニックは周囲を確認し、真面目な声音で語った。

 

「軍がまた少しずつジェダイを加え始めた。このまま連中が復権したらまたクリスタルの神秘性がどうとか言って我々の研究は遅れてしまう」

 

基本的に自身が下に見た人間には媚びないし顧みないクレニックだがジェダイに対して言葉を選んだのは理由があった。

 

ゲイレンの妻、ライラがジェダイとフォースを信奉している為だ。

 

クレニックはジェダイも嫌いだしフォースも信じていない、なんならライラの事はそこまで好きではない。

 

可能ならば非科学的な主張を度々行うライラをゲイレンから遠ざけたいと思ってもいる

 

それでも言葉を選んだのは友人であるゲイレンの顔を立てるためだ。

 

「君たちの食い扶持を守るのがプロジェクト・リーダーの責任だ。頑張って来るよ」

 

クレニックはつまみを口に入れグラスに入れた氷の音を鳴らした。

 

黄金に輝くブランデーの奥にコルサントから見える夜景が映り込んだ。

 

だがそこには三角形の形状をした明らかな異物が入っていた。

 

「何か……外が明るくないか?」

 

アーソは違和感に気付いた。

 

まるで上から強力なライトで照らされたように窓ガラスが明るく光っていた。

 

「合同首都演習は終わったはずだが……」

 

「取り敢えず見に行こうか」

 

アーソはグラスを置いてベランダから外の様子を見に行った。

 

ベランダに出た瞬間、その異様な光景はすぐに目に入った。

 

アーソの頭上には巨大なスター・デストロイヤーの船体がコルサントの大気圏内を航行していた。

 

「スター・デストロイヤー……なんでこんなところに……」

 

少なくとも六隻のスター・デストロイヤーが十二隻のアークワイテンズ級軽クルーザーを引き連れて何処かへ向けて進んでいた。

 

本来コルサントの大気圏内は定められたエリアでしかスター・デストロイヤーは航行してはいけない。

 

こういった行動が許されるのは有事の際に特別な許可が出た時だけだ。

 

「あれは……ヴェネター級が五隻……インぺレーター級が一隻……所属は……」

 

後から来たクレニックはマイクロバイノキュラーで艦艇の状態を確認した。

 

「第9艦隊……!?バカな……防衛艦隊ならともかく、主力のナンバー付きがなんでこんなところに……まさか……」

 

クレニックは僅かな繋がりだが統一会と関係があった。

 

それ故に技術軍官僚でありながら共和国軍全体の内情にも詳しかった。

 

だからすぐに分かったのだ、どういった状況で第9艦隊が首都の大気圏内に突入したのか。

 

一方政治とは距離を置いていたアーソは何も理解していなかった。

 

「一体……コルサントで何が起こってるんだ……」

 

共和国最高の頭脳はこの日、コルサントにいた全ての国民の言葉を代弁した。

 

 

 

 

-首都惑星コルサント 連邦管区 合同参謀本部総長公邸-

時間は数時間ほど前に遡る。

 

この日の話を語るにはまず同じ時間で3つの話をしなければならない。

 

1つは合同参謀総長公邸での話、1つはウスクル地区のヴォス・ゲサル・ホテルでの話、最後の1つは最高議長のオフィスでの話だ。

 

合同参謀総長の公邸には必ず警備の部隊が護衛に付き、公邸前の門伊設置された検問所では如何なる人物であろうと身分証を提示するようにしている。

 

これは最高議長の公邸や国防部長官、司法部や外交部、財政部の長官達が持つ公邸も同様だ。

 

合同参謀総長公邸の警備担当は共和国軍海兵隊か地上軍の憲兵隊であり、今日は海兵隊員のTKトルーパーが検問所で通行するスピーダーの身分を確認していた。

 

「止まってください」

 

1台のスピーダーが海兵トルーパーに止められ、E-11ブラスター・ライフルを持ったトルーパーが近づいてくる。

 

この時期のコルサントは若干冷える為TKトルーパーは防寒用の装備を身につけていた。

 

「どちら様ですか?」

 

トルーパーはスピーダーの窓を開けた将校に対して名前を尋ねた。

 

将校は身を少し乗り出してコードシリンダーを提出する。

 

「保安司令部人事所長のギデオン大佐だ」

 

「確認します」

 

簡易端末にコードシリンダーを差し込み、情報を確認した。

 

「問題ありません、どうぞお通り下さい」

 

トルーパーはコードシリンダーを返し、先に進むように言った。

 

端末と連携した門の扉が自動で開く。

 

ギデオンを乗せたスピーダーはそのまま公邸の方へと向かった。

 

彼が隠し持っていたブラスター・ピストルの存在に検問所の海兵トルーパーは最後まで気づかなかった。

 

その僅か1分後、今度はK79-S80共和国軍兵員輸送機の隊列がやってきた。

 

「どちら様ですか?」

 

「交代の警備兵だ。RTTが5台、LAAT/le3機が来る。ランディング・パッドも空けておいてくれ」

 

「えっちょっと多くないですか?」

 

「いいから早くしろ」

 

運転席に座る憲兵総監部作戦室長のワイア*5大佐は今にも胸ぐらを掴みそうな勢いでトルーパーに迫った。

 

トルーパーは怪訝な表情で上官に確認しに向かった。

 

「なんだ?早く通してやれよ、後が支えたらどうするんだ」

 

トルーパーの上官である兵長はヘルメットのバイザーを上げ、直接部下を怒鳴りつけた。

 

しかしトルーパーは臆することなく報告した。

 

「それが数が多いんですよ、RTTが5台もいてLEET/leが3機もくるんですよ?」

 

輸送機の数を聞いて流石の兵長も怪訝な表情を浮かべた。

 

「……一応検査するか」

 

兵長は他の海兵トルーパーを率いてRTTの検査に向かった。

 

大声で輸送機の一団に向かって「臨時検査を行います!」と叫びながら。

 

「一応中身を確認してよろしいですか?」

 

兵長は尋ねるもワイア大佐は「程々にしろよ」とぶっきらぼうに吐き捨てた。

 

その後ろでRTTの車体を軽く叩きながら海兵トルーパーは内部の兵士に報告した。

 

「車両の中を確認します!全員一旦降りてっ!」

 

そう言い終える前に後方のRTTから降り立ったTKショック・トルーパーにDC-15Aブラスター・カービンの銃床で殴られて最後まで言えなかった。

 

他の海兵トルーパーも取り囲まれショック・トルーパーに制圧された。

 

「一体何をっ!?」

 

アーマーを捕まれ兵長は顔面にDC-17ハンド・ブラスターを顔に押し込まれた。

 

「こいつめ、静かにしないか」

 

兵長もすぐにショック・トルーパーに取り押さえられ、気絶するまで殴られた。

 

その間に別の分隊が検問所を制圧し門を強制解除しランディング・パッドに着陸許可を出した。

 

上空に待機していたLAAT/leパトロール・ガンシップが公邸のランディング・パッドに着陸した。

 

LAAT/leのハッチが開き中から30人単位でショック・トルーパーが飛び出してきた。

 

DC-15Aを構え、周囲を警戒する。

 

1個分隊は前進しランディング・パッドの警備をしていた海兵トルーパー達を制圧した。

 

その間に先行したギデオン大佐達は公邸内に入り、合同参謀総長たるコバーンが来るのを待った。

 

リビングで待つことが許されたのは公邸に入った保安司令部の将校のうちギデオンを含む2名だった。

 

残り2名は副官室で待機し、運転手はDC-15Aブラスター・ライフルを構えて公邸の裏で有事に備えていた。

 

ギデオンは今までにない神妙な面持ちでコバーンを待った。

 

今ここでしくじれば自分の命どころか統一会全員の命が終わる。

 

その責任はギデオンに重くのしかかっていた。

 

「おお、来てたか。この後用事があるんで手短に済ませよう」

 

私服姿のコバーンがリビングに入り、ソファーに座ると彼は手短に済ませるように迫った。

 

「君は人事所長だっけ?」

 

コバーンはギデオンに尋ねた。

 

ギデオンは軽く頷くとコバーンの要望通り早速本題に入った。

 

「ランシット部長の公判で、閣下の新しい陳述が必要になりました」

 

「まだ何かいるのか……で何すればいいんだ?」

 

コバーンの問いにギデオンは慎重に答えた。

 

妙なことを言ってコバーンに疑われては事を荒立たせることになる。

 

慎重にスピーダーへ誘導し、コバーンを拘束する必要があった。

 

「簡単な質問にお答えださい」

 

「それだけか?ではここでやろう」

 

なるべく早く済ませたいコバーンは公邸で速やかにやろうと言った。

 

しかしそれではギデオンは困る訳だ。

 

「いえ、出来れば録音が可能な施設への移動をお願いしたい」

 

その一言は悪手であった。

 

コバーンはギデオンが何をしようとしているか分かってしまったのだ。

 

何せコ同じ手口でランシットを拘束されたのだから。

 

「……私とて情報部の友人はいる、何がしたいかくらいは分かってるんだぞ」

 

「…ランシット及び彼の部下が新たな供述を」

 

「どんな供述だ」

 

「コバーン提督と共謀し戒厳を進める手筈があった。その為の金銭のやり取りもあったと」

 

コバーンは驚愕しつつも「ありえない」と一蹴した。

 

「私は無関係と結論が出たはずだ」

 

コバーンはあくまでランシットに食事に呼ばれそれに同席したまで、それが合同捜査本部が提出した今までの捜査報告であった。

 

それが突然覆ったわけだ。

 

ギデオンは「上層部の命令で再調査を」と取り繕おうとしたがそれも悪手だったと言わざるを得ない。

 

相手はその辺の少将や中将などではなく、合同参謀総長なのだから。

 

「上層部の命令…?いいか、私はお前達の上官の上官、合同参謀総長だぞ!一体誰がそんな事命じた!」

 

コバーンの怒鳴り声が隣の部屋まで響いた。

 

待機していた副官は驚いて席を立ち、副官室の2人は隠し持っていたブラスター・ピストルに手を当てた。

 

「最高議長の指示ならともかく……まさかアミダ最高議長が再調査を命じたのか?」

 

コバーンは1つ出た可能性をあり得ないとは思いつつも口に出した。

 

ギデオンは表情一つ変えず「はい、議長の命令です」と同意した。

 

だがそれも時間的にタイミングが悪かった。

 

「あり得ない……”()()()()()()()()()()”」

 

コバーンの不信感は最大限まで達した。

 

「副官!!コンテ少佐!」

 

コバーンは副官を呼び出した。

 

隣の部屋のドアが開き、コンテと共にギデオンが連れてきた2人の将校が姿を現した。

 

「どうしました提督」

 

「今すぐ最高議長に緊急の要件があるとホロ通信を繋げ、急ぐんだ」

 

「おい、通信を止めろ」

 

コバーンが命令を出している後ろでギデオンは2人の将校に命令を出した。

 

無論それを聞き逃さぬコバーンではない。

 

「おい、お前ら何の真似だ!」

 

「早く、通信をさせるな!」

 

「この野郎!」

 

ギデオンに押され2人はDC-17ハンド・ブラスターを手に取り、隣室の将校達に向けて発砲した。

 

スタン・モードで放たれた円状のブラスター弾は命中した全員を気絶させた。

 

当然その銃声はリビングの方にも響く。

 

「おい!何をしてるんだ!!」

 

「抑えろ!」

 

「はい!」

 

もう1人に両腕を掴まれ、ギデオンにDC-17を首元に突きつけられたコバーンは動けなくなった。

 

だがそこに救いが現れる。

 

「閣下!」

 

副官のコンテだ。

 

彼はホルダーから取り出したDC-17を向けて2人を威嚇した。

 

「銃を下せ!」

 

コンテは2人に要求するがギデオンは一向にブラスターを下す気はなかった。

 

コンテのハンド・ブラスターはスタン・モードである。

 

その為最悪コバーンを巻き込んで発砲しても命に別状はなかった。

 

しかし合同参謀総長を撃つなど許されるのか、その一瞬の迷いが救出の手立てを失わせた。

 

隣の部屋から合流した2名の将校が同じようにハンド・ブラスターを向けて牽制した。

 

しかもその片割れは今にでも引き金を引きそうな勢いだった。

 

ギデオンは「発砲はするな!」と命じたが手遅れであった。

 

彼とコンテは早撃ち勝負となり、辛うじてコンテが勝った。

 

ギデオン側の将校が1名撃たれ、気絶する。

 

もう応戦するしかなくなったギデオン達は二方向からの銃撃でコンテを牽制した。

 

それでも合同参謀総長の副官は負けじと応戦してくる。

 

コバーンは「海兵隊!!海兵隊!!」と叫んでいたが銃声が大きく聞こえることはなかった。

 

彼らの撃ち合いは暫く続いた。

 

しかし数の上ではギデオンらが圧倒的に優位であり、もう1人が牽制している内にギデオンはコバーンを連れて外へ出ようとした。

 

そこへコンテが牽制にくる。

 

「コバーン提督を返せ!」

 

彼は緊急時用のDC-15Aブラスター・ライフルを持ってキル・モードで一斉に発砲した。

 

これはあくまで牽制射撃であり彼らに当てるつもりはなかった。

 

それでも効果は絶大だ、ギデオン達は前に進むことが難しくなり公邸内に立ち止まった。

 

「おい!早く援護しろ!」

 

ギデオンは大声で叫んで外にいる仲間に援護するよう命じた。

 

その声が聞こえたのか外の統一会将校は公邸内に向けて一斉にブラスター弾を放った。

 

それも全弾キル・モードだ。

 

あくまで正確な牽制射撃であったコンテとは違い、彼はやたらにブラスター弾を叩き込んだ為ギデオン達にも弾が命中する所だった。

 

それでもおかげでコンテは腕と足にブラスター弾を喰らい、戦闘不能になった。

 

「撃つのを止めろ!!発砲中止だ!!止めろって言ってるんだよ!!」

 

ようやく発泡が止み、ギデオン達はこうていの外へ出ることが出来た。

 

無論この銃声は外にいる全員に聞こえていた。

 

既に公邸の海兵隊は全員制圧されており、外にいるのは全てワイア大佐率いる統一会側のショック・トルーパーだ。

 

「大佐、どうなさいますか…!?」

 

ショック・トルーパー中隊の大尉は判断を仰いだ。

 

ワイアは少し悩みながら命令を出した。

 

「1個小隊を逃走経路に部隊を配置して死守、残りは緊急出動する海兵隊に備えて待機だ」

 

「了解!」

 

この時のワイアの命令は最悪なことに最適解だったと言える。

 

ギデオン達が公邸から脱出し、待機していたスピーダーに乗り込む頃、銃声を聞いて緊急出動した海兵隊1個小隊がやってきた。

 

既にワイアのショック・トルーパー隊は臨戦態勢を整えており、いつでも応戦出来た。

 

「何事ですか!?」

 

輸送機から降りた海兵隊の少佐がワイア大佐に状況説明を求めた。

 

ワイアは「特殊作戦の演習中だ、下がれ」と告げたが少佐の疑念が晴れることはなかった。

 

しかもワイアの後ろで海兵隊の名を叫びながらどこかへ連れ去られようとしている人物がいる。

 

何故か袋を被せられていたが怪しい人物には違いなかった。

 

「おい!止まれ!そこを動くな!」

 

少佐はDC-17を構えた。

 

すると袋を被されていた人物は隙を見つけて袋を外して叫んだ。

 

「海兵隊!!助けてくれ!!拉致される!!」

 

「提督!?」

 

刹那、少佐はギデオンが放った1発の弾丸に倒れた。

 

一瞬だけ辺りが静寂に包まれ、殆ど全員の思考が停止した。

 

しかしギデオンに呼応したワイアが周囲にスタン・モードのブラスター弾をばら撒いたことで辺りは一瞬にして戦場と化した。

 

ショック・トルーパーと海兵トルーパーが乱戦状況となり、もうコバーンの誘拐を止める所ではなくなっていた。

 

「早く行け!」

 

「了解だ…!」

 

ワイアに促されコバーンとギデオンらを乗せたスピーダーは脱出路の裏口を使って公邸から離脱した。

 

これで少なくとも合同参謀総長の拘束には成功した訳だ。

 

しかし統一会側が先に発砲し、戦闘状態に陥ったことは大きな誤算だった。

 

特に第30首都警備師団司令部に籠る統一会の重鎮達からすればあまりにも予想外の出来事である。

 

「何!?発泡して公邸内では乱戦状況!?どっちが先に撃ったんだ!」

 

ギデオンからの報告を受けたテナントは驚愕し、声を荒げた。

 

その報告を受けたジャージャロッド提督らは一気に青ざめ不安そうな表情に変わった。

 

「合同参謀総長は確保したのか…!?」

 

「それでコバーン提督はどうなった!確保出来たのか?ああ、そうか……急いで戻ってこい」

 

通信機を切ってコバーンは全員に報告した。

 

「公邸では乱戦状況……数的にはワイア大佐の拘束班支援隊が優勢ですがどうなるか分かりません。ひとまずコバーン提督の身柄は確保したと」

 

「なんてことだ……戦闘状態なんて……」

 

「これじゃあここにもすぐ敵が!」

 

「落ち着いてください、他の者が混乱します。おいラックス大佐!後それとタッグ准将!コマンダーフォックス!」

 

混乱するランパート中将らを宥めながらテナントはラックスとタッグ、それにフォックスを呼び出した。

 

「大佐は今すぐ元老院オフィスビルのエヴァックス中佐かターキン本人にこの事を伝えろ。タッグ准将とフォックスは部隊を配置して司令部の守りを固めろ。急げ!」

 

3人は「了解!」と敬礼しそれぞれの持ち場に移動した。

 

ここにはいないターキンの代わりに指示を出し終えるとテナントは困ったような表情でホロテーブルの地図を見つめた。

 

少なくとも合同参謀総長の拉致という目的は成功した。

 

しかし計画は彼らが思い描いたようにはもう進まないと決定づけられた。

 

 

 

 

 

-首都惑星コルサント ウスクル地区 ウスクル歓楽地区 ヴォス・ゲサル通り ヴォス・ゲサル・ホテル-

ウスクル地区はギャラクティック・シティに属する歓楽街を含んだ地区であり、ヴォス・ゲサル・ホテルは特にコルサント外の観光客から人気の高いホテルであった。

 

ホテルの中には一流のレストランも併設されており、ターキンはヴォス・ゲサル・ホテルのレストランを懇親会の会場とした。

 

今日のスカイレーンいつもよりも若干混んでいる。

 

それでもライカンは懇親会の時間内にヴォス・ゲサル通りに到着し、店の前でスピーダーを停めた。

 

「司令官、私はスピーダーをホテルの駐機場に停めてきますので先に降りて下さい」

 

「ああ、しかし主役の姿が見えないんじゃな」

 

ライカンはスピーダーの窓からキョロキョロ外を見た。

 

ホテルの近くにターキンの姿はなかった。

 

しかし代わりにトワイレックの女性を連れたジョードーがやってきた。

 

「ジョードー准将、どうしてここに?」

 

ジョードーは敬礼し、ライカンに訳を説明した。

 

「ターキン提督はコバーン提督に呼び出され少し遅れるとのことで、代わりに私が司令官をおもてなしします」

 

ライカンはこの時点で理解した、ターキンは今日ここには来ないことを。

 

スピーダーのドアを閉め、運転手のタントールに命令した。

 

「帰ろう、司令部に戻るぞ」

 

「よろしいのですか?」

 

タントールは聞き返した。

 

外ではジョードーが何度も「司令官!お待ちください!」と引き留め湯としていたがライカンの気持ちは変わらなかった。

 

「提督は多分来ない、司令部に戻ろう」

 

「はい」

 

タントールはアクセルを踏んでゆっくりスピーダーを前に出した。

 

すると反対方向から2台のスピーダーが出てきた為ブレーキを踏んでスピーダーを止めた。

 

ライカンはあの2台のスピーダーに見覚えがあった。

 

「おおライカンないか!」

 

スピーダーから出てきた人物、ピット・オノラン中将は手を振ってきた。

 

「オノラン中将!それにウィラード中将!」

 

ライカンが尊敬する2人の中将が姿を表した。

 

「折角来たんだ、まあ楽しもうじゃないか」

 

オノランの提案によってライカンは仕方なく懇親会に参加することとなった。

 

ライカンは暫くの間、3人と雑談を交わしてターキン不在でも楽しんでいた。

 

何せライカンとウィラードは同郷だし、オノランとも仲が良かった。

 

タントール大佐もオノランの副官であるクローン・メジャーウィルコ*6やウィラードの副官らと別席で酒を酌み交わしていた。

 

されどいくら待ってもターキンは来ない。

 

そのことに痺れを切らしたライカンはついにターキンのことをジョードーに尋ねた。

 

「それでジョードー准将、いつになったターキン提督はいらっしゃるんだ?」

 

ジョードーは目を泳がせながら答えた。

 

「ああ……申し訳ありませんがまだ分かりません。合同参謀総長公邸に確認してみます。それより彼女らの芸でもご覧になった方が…」

 

「なら私が公邸に聞くからいい」

 

そう言ってライカンが席を立とうとするとジョードーは必死に止めた。

 

「いえいえ!司令官のお手を煩わせる訳にはいきません!私がやります!」

 

「君は黙ってなさい。オノラン中将、少し離れます」

 

「ライカン君座りたまえよ、君の部下が折角気を遣ってくれてるんだから。ゆっくり休もうじゃないか」

 

オノランに宥められてライカンは席に戻らされた。

 

裏ではウィラードが「ジョードー准将、早く確認の連絡を」とジョードーに要請していた。

 

オノランは一兵卒の部下であっても自身の配下に来たら熱心に面倒を見るような人物として知られている。

 

それ故多くの者から慕われておりジョードーの意を汲み取ろうとしているのもそういった人柄の影響だ。

 

されど今回の場合それは逆効果である。

 

何せジョードーは統一会のメンバーであり、彼の忠誠はターキンにある。

 

ジョードーが頑なにライカンに電話させないで置こうとするのは上官を気遣ってではなく、ターキンが来ないことを引き延ばす為であった。

 

ウィラードもライカンがここまでターキンの登場を気にしている理由を完全に把握した訳ではない。

 

お互いに統一会に対抗せねばならないという意識は持ちつつもどこにどれだけ統一会のメンバーが潜んでいるかまでは把握出来ずにいた。

 

自身の配下までは見えても他人の部下の詳細までは分からなかった。

 

それ故にジョードーが統一会のメンバーであることはオノラン同様ウィラードも知らないでいた。

 

ライカンは渋々席に戻り、食事とトワイレックのダンサー達の踊りを見るしか出来なかった。

 

それから30分後くらいのことだろうか、公邸に連絡しスカイレーンの混雑でターキンが遅れると報告に来たジョードーが用を足すと言ってから戻らなくなったのは。

 

不審に思ったライカンは確認しに行った。

 

「すいませんがジョードー准将は見ましたか?」

 

途中すれ違った人間のウェイトレスに尋ねた。

 

「ああ、准将さんならトイレから出たらあちらの通路の方へ行かれましたよ?」

 

「ありがとう」

 

ライカンは指差された方向へ向かった。

 

するとそこには通路の端の方で進行そうな声音で誰かと連絡するジョードーの姿があった。

 

「では合同参謀総長の連行は…」

 

「ジョードー准将、そこで何してるんだ」

 

「はい!」

 

ジョードーは声の勢いと同時に通信を切り、コムリンクをポケットにしまった。

 

ライカンは疑いの目を向けながら「こっちにこい」と命じる。

 

ジョードーはゆっくりとライカンの方へ向かうが急に歩く速度を上げ、走って逃げてしまった。

 

「おい!ジョードー何処へ行く!」

 

「司令官!」

 

同じ通路からタントールが走ってやってきた。

 

「何があった」

 

「合同参謀総長公邸で緊急事態です!発砲音を感知し海兵隊の緊急警備隊が突入しましたが現地の守備隊共々反撃に遭い撤退、現在副司令の命令で第56首都警備師団が緊急出動しました!」

 

首都警備司令部の動きが早かったのは今日この日に限って各師団の一部を戦闘態勢のまま待機させていたからだ。

 

保安司令部のラックス大佐に懇親会に呼ばれた時からコスの進言もあって嫌な予感はしていた。

 

おかげで非常時の備えが役に立ってしまった。

 

「急いで司令部に向かう、それとコマンダーソーンに命じてジョードー准将の行方を探させろ。奴は何か知っている」

 

「了解…!」

 

ライカンはタントールと共に駐機場のスピーダーに向かって走り出した。

 

彼らにとってこの反乱の日は今この瞬間に始まった。

 

 

 

 

-首都惑星コルサント 連邦管区 元老院オフィス・ビル 最高議長の執務室-

コバーンが拉致され、ライカン達がヴォス・ゲサル・ホテルに呼び出されている頃、ターキンは元老院オフィス・ビルに向かっていた。

 

ジョードーはターキンがスカイレーンの混雑に巻き込まれていると話したが実際は違う。

 

合同参謀本部センターを抜け出したターキンはそのまま元老院オフィス・ビルに向かった。

 

検問所の憲兵中佐に保安司令官の身分を言い渡して通過し、オフィス・ビル前にスピーダーを停めた。

 

出迎えに来た最高議長警護室、新室長ヴェド・ケネード*7に軽く挨拶し執務室の方へと案内された。

 

ケネードはセネイト・ガードとして度々最高議長の身を守り、信任を得ていた。

 

その為統一会との距離も近く、警護室にはターキン家の人間もいる為ケネードとターキンの仲も良かった。

 

「アミダ議長、ターキン司令官をお連れしました」

 

ケネードはターキンを執務室に案内するとアミダとターキン、そして同席していたオーガナに軽く頭を下げて室内を後にした。

 

ターキンはデスクの最高議長席に座るアミダとその隣にいるオーガナの表情を確認した。

 

アミダは明らかに不安そうな表情で、強めの口調と多少の恫喝でいけば意見を押し通せそうだった。

 

アミダは明らかにターキンを恐れていた。

 

問題はオーガナの方だ、彼には恐れと言った感情は一切なくターキンをひたすらに警戒していた。

 

彼がいる以上はターキンがどれだけ意見を押し通そうとしても反論してくるだろう。

 

これはシビアな戦いになりそうだとターキンは覚悟を決めた。

 

「ターキン提督、一体何用ですか?」

 

アミダは恐る恐るターキンに尋ねた。

 

ターキンは持ち込んだタブレットアミダのデスクにおいてある裁可書を提示した。

 

最高議長は中身をオーガナに見せながら内容を確認する。

 

「こちらの裁可を議長にはお願いしたい。一刻を争う重大な事案です」

 

ターキンが持ってきた書類の中身は合同参謀総長コバーンの逮捕を認める裁可書であった。

 

説明内容は実際に合同捜査本部が調べた内容が元になっているが、そこには統一会に都合のいい憶測や虚偽も含まれていた。

 

それでもパッと見ただけでは説得力の強い内容である。

 

「提督をこのまま野放しにしておくのは危険です」

 

「ターキン提督、1つよろしいですか?」

 

早速名乗りを上げたのはオーガナであった。

 

「何か?」とターキンが尋ねるとオーガナは自身が抱いた疑問点をぶつけた。

 

「以前の捜査報告書ではコバーン提督は無関係と結論付けられていたはずですが」

 

「ランシット部長及び暗殺に直接関与したメンバーに再調査を加えたところ記述の通りの疑惑が浮上しました。公判に間に合わせる為にも素早い逮捕と対質尋問が必要です」

 

「しかしコバーン提督はあなたの上官、しかも国務会議で選ばれた戒厳司令官です。そう簡単に逮捕する訳にはいきません」

 

「ですから、議長の裁可を必要としているのです」

 

執務室では裁可を決めるアミダではなくターキンとオーガナの論戦となった。

 

互いに隠し持っている感情を抑え、冷静に制度論的に鬩ぎ合った。

 

「であればまず国防長官のサインが必要では?先に国防長官のサインを頂いてこちらに来るのがベストでしょう」

 

「事は一刻を争います、今ここで裁可を頂きたい」

 

2人の舌戦が繰り広げられる度にアミダは苦しい表情になっていった。

 

ここで裁可書にサインすれば少なくともターキンから睨まれる事は無くなるし圧力も大分減るだろう。

 

だがここで裁可を許せば統一会は増長しアミダが方針とした自由化の夢は破壊されてしまう。

 

共和国の制度を守る為にもここはサインをしない方がベストであった。

 

されどここでターキンの要望を一蹴すればどうなるか。

 

軍部のあちこちに潜伏する統一会を束ね、軍以外にも顔が効くターキンを敵に回せば政治的生命が危うい。

 

パルパティーンに最も近い場所で支え続けてきたアミダだからこそターキンの恐ろしさは十二分に理解していた。

 

パルパティーンが恒星ならターキンもまた恒星の一種だ。

 

星々を束ね指導する才能に溢れ、為政者として十分な名声を既に持っている。

 

尤もターキンという恒星は自身が認めた別の恒星に追随する事は出来た。

 

されど今やパルパティーンというターキンが認めた恒星はその光を消した。

 

今や共和国唯一の恒星としてターキンが名乗りを上げているのだ。

 

下手に手を出せばその身は焦がれ、地に落ちてしまう。

 

故にアミダはターキンをずっと恐れていた。

 

幸いだったのは彼の隣にオーガナがいたことだ。

 

彼もまた自由を求める惑星を束ね、指導する才覚に溢れた恒星の一つと言っていいだろう。

 

オーガナならターキンに太刀打ち出来る。

 

そしてそれならアミダの心もギリギリの所で踏ん張ることが出来た。

 

「提督、何をそんなに急いでいるのかは分かりませんがどんな状況であろうと規則は守らなければなりません」

 

「先程も言った通り緊急事態です。内乱罪の共犯者を今日1日野放しにしておくだけでも議長と副議長の身の安全に関わる」

 

2人の論戦はかれこれ数十分続いた。

 

その間に執務室の外ではセネイト・ガードが緊急時の脱出経路の防御を固め、有事の対策を実行し始めていた。

 

というのも事の発端は合同参謀本部センターからの通信であった。

 

ケネードがセンターからの通信に出ると合同参謀次長のジャン・ドドンナ将軍が焦ったような声音である事を尋ねてきたのだ。

 

()()()()()()()()”と。

 

ケネードは何も隠さずアミダの無事を伝えるとドドンナから合同参謀総長公邸で起きた事態を説明された。

 

ケネードは今もドドンナと状況を伝え合っていた。

 

「タガート隊をハンガーベイへ、ロチュア隊を駐機場に展開しました。少なくとも最高議長だけは逃せます」

 

『ではビル内の警備は一任します。繰り返し伺いますが閣下は無事なんですね?』

 

「はい、オーガナ副議長共々無事です。そのことに関してはお構いなく」

 

『ではもしもの時はお願いします』

 

そう言ってドドンナからの通信は途切れた。

 

この時はまだドドンナもケネードも統一会が起こした事件だとは思っていなかった。

 

もしかしたら分離主義の工作員がまたコルサントで破壊活動をしているのかも知れない、そう思っていた。

 

一方で事態を完全に知っていた人物もいる。

 

それはエヴァックスとターキンだ。

 

ターキンは最高議長に面談中で何か対処する事は出来なかったがエヴァックスは違う。

 

彼は第30首都警備師団司令部からの連絡を受け続けていた。

 

『コバーン提督は確保したが首都警備司令部がもう動いた。このままじゃあスカイレーンを封鎖されるのも時間の問題だ、撤退の準備を行え』

 

「ですがまだ裁可が……」

 

『いいから準備だけしろ!間に合わなくなるぞ!』

 

通信機越しでテナントはほぼ怒鳴るようにエヴァックスに命令した。

 

「了解……」

 

エヴァックスは嫌々ながらも指示に応じ、連れてきた運転手にスピーダーの用意を命令した。

 

何故テナントがここまで焦っているかは分からないが少なくとも合同参謀総長を確保出来た事はまず安心出来た。

 

尤もそれもすぐ別の不安が彼らを包み込むことになるのだが。

 

 

 

 

-首都惑星コルサント 首都警備司令部 作戦室-

ライカンとタントールは緊急時の軍用スカイレーンを通って首都警備司令部まで直行した。

 

司令部では既に厳戒態勢が敷かれており、作戦室には非統一会の幕僚達が詰め寄っていた。

 

軌道上のコルサント本国防衛艦隊の面々もホログラムで集まっており、皆緊迫感に溢れた表情であった。

 

「司令官!」

 

ライカンが到着すると幕僚達は一斉に敬礼し司令官を迎え入れた。

 

彼は私服から軍服に着替えており緊急時に備えてブラスター・ピストルと予備のパワーセルを保持していた。

 

ライカンも敬礼を返し早速「状況報告を」と幕僚達に尋ねる。

 

「地上軍では第30、第112師団からの応答が途絶。またその他の部隊も連隊、大隊規模で応答がありません」

 

「コルサント・ガードは司令官のフォックスの姿が見当たりません。それとコマンダーサイア*8とコマンダーカーギー*9の109、110師団からも応答が途絶しました」

 

幕僚のヒューム*10大佐とコルサント・ガード副司令官兼第108憲兵師団長のコマンダーソーンは申し訳なさそうな声音でライカンに報告した。

 

既にコマンダーソーンはアーマーを着込んでいつでも戦闘出来る態勢にあった。

 

「宇宙軍の方はどうだ」

 

ライカンはサリマ少将に尋ねた。

 

『第33機動部隊は応答なし、その他の機動部隊司令官との連絡はつきましたがやはり各艦単位では応答がありません』

 

大体ライカン達が事前に予測をつけていた面々だ。

 

既に保安司令部ではこの騒動が分離主義者の破壊工作ではなく統一会のクーデターであると認識していた。

 

「ソーン」

 

「はい」

 

「ショック・トルーパー部隊を動員してフォックス、タッグ、ジョードー、モッティの行方を探せ。それと君の師団とコマンダーストーン*11の師団をまず合同参謀本部、宇宙軍本部、空軍本部に展開して防御に当たれ。フォックスがいない以上今から君がコルサント・ガード司令官だ」

 

「了解!」

 

命令を受諾すると早速ソーンは司令部を出て指揮を取りに行った。

 

今度は反対にタントールが司令部に急いで入ってきた。

 

彼の鬼気迫る表情にタントールから何かいう前にライカンが「何があった」と尋ねた。

 

「合同参謀総長公邸の生存者を発見しました!離脱時に海兵隊が回収しどうしても司令官に報告がしたいと…!」

 

状況は一変した。

 

タントールの背後には2人の将校に肩を持たれボロボロの状態で運ばれてきた1人のクローン将校がいた。

 

ライカンは彼を見たことがある、以前合同参謀総長の公邸で会ったコバーン提督の副官だ。

 

「コンテ少佐!」

 

手と足にブラスター弾の傷があり、息が絶え絶えになったコンテはライカンを見るなり早速報告を始めようとした。

 

「早く医務班を!応急処置が終わったら群病院に連れて行け!」

 

「そんなことより……司令官にお伝えしたいことが……」

 

ライカンの袖を掴みコンテは力を振り絞って声を出した。

 

「何があった」

 

「保安司令部です……連中が難癖をつけて参謀総長を誘拐しました……早くコバーン提督を助けなければっ……!」

 

ライカンは彼の手を握り締めて約束した。

 

「コバーン提督は必ず我々で救出するから君は安心しなさい。意識を保て、死ぬんじゃないぞ」

 

「了解…!」

 

力強くコンテに約束させるとようやく呼び出した医務班が到着した。

 

ライカンは班長の軍医大尉に向けて傷の状態を説明し急いで首都警備司令部近くの軍病院へ輸送するよう命じた。

 

それと同時にライカンはタントールに再びスピーダーの用意を頼み、軍帽を被り指揮棒を持って司令部を出ようとした。

 

「司令官、一体何処へ!」

 

幕僚達はライカンに尋ねたが彼はただ一言だけ「公邸の様子を見てくる、コス顧問はここの指揮を」とだけ告げてスピーダーに向かった。

 

再び軍用スカイレーンを使って合同参謀総長公邸へ駆けつけた。

 

その間スピーダーに備わっている通信機を使って合同参謀本部センターへ移動中のウィラードに通信を繋いだ。

 

「ライカンです、そちらはもうセンターに着きましたか?」

 

『いえ、まだスピーダーの中です。何か状況は分かりましたか?既にドドンナ将軍らはセンターに着いているようですが』

 

「コバーン提督が誘拐されました、犯人は保安司令部の連中です。恐らく統一会も一枚噛んでいるでしょう」

 

『なんですって!?』

 

思わずウィラードは大声を上げた。

 

統一会の増長はウィラードも知っていたがまさか実力行使に出るとは思っても見なかった。

 

何せそれが真っ当な軍人の考え方だからだ。

 

しかし彼らは真っ当ではなかった。

 

「公邸を脱出した生存者の確かな証言です。連中は合同参謀総長を誘拐し何かを企んでいる、直ちに保安司令部将校らの逮捕を」

 

『っ分かりました!私はターキン提督らの居場所を捜索します』

 

「お願いします、私は公邸の様子を確認しますのでウィラード中将は必ず奴らを捕まえて何故総長を襲ったのかを聞き出してください」

 

『任せてください、ではそちらもお気をつけて』

 

そういうとウィラードは通信を切り、互いに目的地へとスピーダーを走らせた。

 

ライカンが公邸近くに降り立つと外では早速銃声が鳴り響いていた。

 

首都警備副司令官の命によって展開した第56首都警備師団隷下の1個連隊が合同参謀総長の公邸を取り囲んでいる。

 

正面の門では何者かがバリケードを展開しブラスターの牽制射撃と共に連隊の行手を阻んでいた。

 

公邸からの銃撃を守る為にAT-TEやRTTが車体の側面装甲を用いて友軍を守っていた。

 

「危ないですので姿勢を低くして下さい」

 

案内役の中尉に促されながらライカンは最前線で指揮を取る連隊長の下へとやって来た。

 

「司令官!」

 

連隊長と彼の副官や周りの将兵はライカンに敬礼した。

 

敬礼を素早く返すとすぐに状況を尋ねた。

 

「公邸に包囲網を展開しましたが突入は難しい状況です。ガンシップの偵察報告ではスマート・ロケットや対空火器も持ち込んでいるようで下手に突入すれば味方の損害がバカになりません」

 

「どこの部隊は分かるか」

 

「海兵隊の報告では恐らく第33憲兵隊だろうと」

 

ライカンはマイクロバイノキュラーで遠距離から公邸内部の様子を確認した。

 

確かにブラスター砲やスマート・ロケットなど重装備で武装し、突破は難しそうだ。

 

「コバーン提督はまだ中にいるのか?」

 

ライカンの問いに連隊長は首を横に振った。

 

「乱戦の最中逃げられたようです。なので今、公邸の中には敵対勢力しかいないかと」

 

「ではこちらも重装備部隊を集めて表門、裏門、緊急脱出路、そして上空からの四方向から公邸に突入しろ。事と次第によってはブラスターもキル・モードで発砲して構わん」

 

ライカンの命令に連隊長は「本当によろしいのですか…?」と聞き返した。

 

あそこにいるのは曲がりなりにも味方の兵だ。

 

そう簡単に裏切り者と決めつけられはしなかった。

 

「最早連中は反乱軍だ、残念だがやるしかない」

 

「了解…!準備に取り掛かります」

 

ライカンはこの時既に彼らを徹底的に鎮圧するつもりでいた。

 

この世界では彼が反乱を鎮圧する側なのだ。

 

 

 

 

 

-首都惑星コルサント 連邦管区 元老院オフィス・ビル-

ヴィン・コーリス*12憲兵中佐は元老院オフィス・ビルの防衛を任された第448憲兵連隊の連隊長である。

 

彼は専ら連隊本部かオフィス・ビルの正門に設置された検問所で直接人々の出入りを監視し、元老院議員と最高議長の安全を守っていた。

 

コーリスは1年ほど前に連隊長に就任したばかりであり、統一会とは一切関係のない普通の職業軍人だ。

 

そんなコーリスの下に合同参謀本部センターから通信が入った。

 

最初は部下の大尉が出ようとしたが「俺が出るからいい」と直接受け取った。

 

「はいこちらオフィス・ビル正門検問所、連隊長のコーリス中佐です」

 

『憲兵総監のウィラード中将だ、そっちは何ともないな?』

 

「はい異常ありません、忠誠!」

 

憲兵総監たるウィラードはコーリスら憲兵隊にとって最上位の直属上官でありピシッとした声音で答えた。

 

コーリスが答えている間にウィラードは軍服に着替え通信に出続けている。

 

そしてコーリスはあることを思い出しウィラードに報告した。

 

「保安司令官殿が最高議長の面会にいらしただけであとは何もありません」

 

ウィラードにとってはとても重要な報告であった。

 

彼は部下に持たせていたコムリンクを直接手に取るとコーリスに聞き返した。

 

『保安司令官がそっちにいるのか?』

 

「ああはい、最高議長と面会してもう1時間は経ってると思います。ですがそれが何か?」

 

状況を何も知らないコーリスはウィラードに尋ねた。

 

そこでウィラードは相手の忠誠の行き先を確かめる為にある質問を行った。

 

『私の質問に正直に答えろ』

 

「はい……」

 

コーリスは困惑した声音で了承する。

 

『君は……統一会か?』

 

「いいえ、違います。そもそも統一会ってなんですか?」

 

軍内の政治情勢にそれほど詳しくないコーリスはウィラードに聞き返した。

 

彼の何も分かっていないような声色と喋り方でウィラードはコーリスが非統一会員であることを確信した。

 

そこで憲兵総監として彼にある命令を下す。

 

『分かった、では私の命令をよく聞け。ウィルハフ・ターキン保安司令官を逮捕しろ』

 

「はい?」

 

『奴は合同参謀総長を誘拐して反乱を企てている。まだ奴は気づいていないだろうからビルから出てきたら慎重に近づいて逮捕するんだ。抵抗したら発砲しても構わん、確実に逮捕しろ』

 

ウィラードの圧に押され、コーリスは「了解しました!」とだけ返した。

 

本来ならこれでウィラードの命令が遂行されてターキンは呆気なく逮捕され、事態は終わり、人々は真冬の夜に見た奇妙な夢だと困惑と共に忘れるはずだった。

 

問題はターキンが率いる保安司令部は軍の防諜に特化した情報機関であるということだ。

 

コルサント中で共和国軍が行なっている通信内容は全て第30首都警備師団司令部の一室で盗聴出来るようになっている。

 

現にウィラードとコーリスの会話も保安司令部はしっかり録音し、聴いていた。

 

ラックスは通信の途中でテナントを呼び出し、共にウィラードの命令内容を確認した。

 

このままではターキンは確実に逮捕される、そうなれば指導者を失いこのクーデターは確実に負ける。

 

テナントは急いで隣室の作戦室に駆け込み、オフィス・ビルに通信を繋いだ。

 

「はいこちら警護室ケネードです」

 

『ケネード室長か、ニルス・テナントだ』

 

「おお、テナント提督ですか。お久しぶりです」

 

ケネードは昔馴染みの声を聞き、声色を高くした。

 

しかしテナントの方はそう喜んでいる暇はなかった。

 

『時間がない、そっちにターキンがいるだろ。彼についていたエヴァックス中佐に今すぐ変わってくれ』

 

「分かりました、エヴァックス中佐!テナント提督から通信が入ってる」

 

エヴァックスを呼び出しコムリンクを彼に渡した。

 

「代わりました」

 

『今すぐターキンを連れてオフィス・ビルから脱出しろ。ビルの警備隊はターキンを逮捕する気だ』

 

「しかし司令官は面会中で……」

 

『どうにかして今すぐ抜け出せ!!分かったか!?』

 

「はい…」

 

テナントの怒鳴り声と共に通信は切れた。

 

コムリンクからテナントの声が漏れ出ていたようでケネードは困惑しながらエヴァックスを見ていた。

 

「エヴァックス中佐、ちょっと来なさい」

 

エヴァックスは仕方なさそうに彼の側に行った。

 

「どういうことか説明してくれ。私は”()()()()()()()”」

 

一方ターキンとオーガナの問答はまだ続いていた。

 

アミダはかなり疲労しもう裁可を認めてもいいのではないかというところまで追い詰められていた。

 

もし最高議長の席に座るのがパルパティーンであったのなら、アミダはオーガナと同じことをするであろう。

 

しかしパルパティーンはもういない、最高議長の席に座るのはアミダである。

 

彼は共和国の恒星になるには少し力が足りなかった。

 

「ターキン提督、何度でも言いますがまずは国防長官のサインを手に入れてからここへ来てください。それが原則です」

 

「原則が重要なのは百も承知、ですがこの国の危機を鑑みれば原則を破ってでも最高議長の政治的判断が必要なのですよ。アミダ議長」

 

ターキンはアミダの方に目をやった。

 

彼の鋭い獣を宿したかのような眼光はアミダにとって強すぎる光だった。

 

それでも負けじとアミダはオーガナに同調した。

 

「提督、私は政治をそのような風に行うつもりはありません。オーガナ副議長の言う通り、国防長官の裁可を手にしてからここへ来てください」

 

無論ターキンはこれに対する反論も出来た。

 

しかし執務室に入ってきたケネードによって議論は中断された。

 

「失礼します!現在緊急でターキン提督を呼ぶ者がおります」

 

「どなただ?」

 

ターキンは威圧感と苛立ちを含めた声音で聞き返した。

 

「第9艦隊司令のテナント提督です」

 

その名を聞いたターキンは何かを悟り、大人しくケネードと共に執務室を後にした。

 

アミダとオーガナはこの時点では統一会の野望を何とか防いだ。

 

執務室を後にしたターキンはエヴァックスから状況を説明されケネードの案内で緊急脱出口から元老院オフィス・ビルを出ることにした。

 

ここなら門も小さく警備の兵も平時は少ないそうだ。

 

だが今日はコーリスの命令で人員が倍増され少なくとも2個分隊ほどの人員がいた。

 

「止まれ!」

 

分隊長のポールドロンを身につけたTKショック・トルーパーに止められ、ターキンのスピーダーは一時停止した。

 

「私を逮捕するつもりだな」

 

「どうしますか…」

 

エヴァックスが尋ねるとターキンは座席の足元に隠されたコンソールを幾度かタップしロックを解除した。

 

それから今度は逆にターキンがエヴァックスに尋ねた。

 

「このスピーダーは対イオン兵器コーティングが施されているな」

 

「多少は…」

 

「ならいい、私が合図したら一気に出せ」

 

ターキンの命令は簡潔だった。

 

「エンジンを切って運転手は外に出てください」

 

分隊長が指示し、スピーダーの運転手は渋々スピーダーのエンジンを切って外に出た。

 

本来ならエヴァックスとターキンも外に出るべきなのだろうがこの時の検問所の憲兵隊は混乱状態にあった為、これ以上の指示はなかった。

 

「保安司令官を乗せていると思わしき停止させました。エンジンは切り、運転手は外に出しました。このまま保安司令官も逮捕しますか?」

 

現場指揮を任せられた大尉はコーリス中佐に判断を仰いだ。

 

コーリスから与えられた命令は否であった。

 

『いや、そのまま待機させろ』

 

「逮捕しないんですか?」

 

大尉は思わず聞き返した。

 

『上からの指示だ。ドドンナ将軍から連絡が来て逮捕はせず待機だけさせろと言われた。正直何がどうなってるか私には分からん、とにかくそっちに1個分隊の増援を送ったから確実に保安司令官達をその場に待機させるんだ』

 

「…了解」

 

大尉は曖昧な命令を出す上層部に嫌気が差しながらコムリンクを切った。

 

この時、合同参謀本部センターでは合同参謀次長ドドンナと憲兵総監ウィラードで意見が割れていた。

 

ウィラードは最初に命令した通りに逮捕すべきと主張したのだがドドンナは正確な情報が入ってくるまであくまで待機させるべきだと主張した。

 

結果的に階級が一つ上のドドンナの意見が通り、コーリスの下に待機させる命令が届いた。

 

このドドンナの判断は悪手であったと言わざるを得ないがそれなりの理由があった。

 

まず1つは合同捜査本部長の逮捕は戒厳司令官の許可が必要であり、戒厳司令官がいない以上逮捕したとしても後々の正当性が保てないと言うこと。

 

もう1つは今ここでターキンを逮捕すれば統一会を刺激し更なるエスカレーションを招く危険性である。

 

どちらも聞くに堪えない保守的主張といえばそれまでだが、巨大な内戦になる恐れを考えたら仕方ないとも言える。

 

今の彼らは巨悪に立ち向かう抵抗勢力のような自由さは持ち得なかった。

 

だがこれがターキンにとっては好機であった。

 

彼はエヴァックスの肩を何度か叩き、エンジンをかける用に命じた。

 

エヴァックスがエンジンをかけたのとほぼ同時にターキンは何かのスイッチを押し、ドアを少し開けてスピーダーの車体裏に投げ込んだ。

 

「おい!今何をっ!」

 

刹那、スピーダーから眩い雷電が飛び散りその場にいたショック・トルーパー9名と運転手が全員気絶した。

 

ターキンはスタン・グレネードを使ったのだ。

 

「今だ、出せ」

 

丁度エンジンが掛かり、エヴァックスは助手席から運転席に移って思いっきりペダルを踏んだ。

 

スピーダーは最大時速で急発進し、その衝撃で検問所前の門を無理やりぶち抜いた。

 

「逃すな!撃て!」

 

たまたまスピーダーから離れていて無事だった大尉と3名のショック・トルーパーはそれぞれブラスター・ライフルをキル・モードで発砲した。

 

スピーダーに命中はしたが足を止めるまでは行かず、彼らはターキンを取り逃してしまった。

 

「中佐!保安司令官を取り逃しました!至急追撃の為の増援を!」

 

エヴァックスは今まで出したことない速度までペダルを踏み込み、オフィス・ビルの憲兵隊が管轄するエリアを飛び抜けた。

 

そのまま軍用スカイレーンに移動しターキンに「ご無事ですか!?」と尋ねた。

 

「私か?平気だとも。このままタッグ准将の司令部まで行こう。それとムーア長官に暗号通信を、兎は閣下の檻の中と」

 

 

 

 

-首都惑星コルサント 合同参謀総長公邸前 首都警備連隊包囲網-

「ターキンを取り逃した!?どうして!」

 

『すみません中将……』

 

申し訳なさそうに謝るウィラードから無理やりドドンナに通信相手が変わった。

 

『ライカン中将、今聞いた情報では君の部下の司令部にターキンら統一会が集まっていたとか』

 

「どこの部隊です?」

 

ライカンは急いで聞き返した。

 

『第30首都警備師団、君の隷下のはずだ。ターキンを取り逃したのは私の責任だがこのことは忘れないでもらいたいな』

 

ライカンはドドンナの叱責よりも統一会の情報の秘匿性に驚いていた。

 

第30首都警備師団、第112憲兵師団、その他統一会の疑いがある将校が指揮する部隊には定期的に連絡を取って様子を確認していた。

 

師団長のタッグとは今朝も演習のことで話したはずだ。

 

その時にはそんな素振りなど一度も見せていなかった。

 

彼ら統一会の団結力を侮っていた。

 

『まもなく”()()()()()()1()”を発令する、君も司令部に戻って各隊に指示を。司令部の包囲には君の力が必要だ』

 

「分かりました、直ちに機械化兵団を出撃させます。そちらにも護衛のショック・トルーパー部隊を送りましょうか?」

 

『頼む。では司令官、フォースと共に在らんことを』

 

「フォースと共に在らんことを」

 

通信を切り、ライカンは連隊長に命令を出した。

 

「連隊長、今から10分後に突入を開始しろ。表門、裏門、緊急脱出口の三方向から同時に仕掛けろ。ガンシップはあくまで支援に使え、門をAT-TEの砲で吹っ飛ばして前進、トルーパーは全員スタン・モードで発砲せよ」

 

「了解…!」

 

ライカンはそのまま自身のスピーダーに向かった。

 

スピーダーではタントールが残って首都警備司令部の情報を拾い集めていた。

 

彼がを報告の指示をしている最中にコムリンクを無理やり奪って司令部の全部隊に命じた。

 

「こちら首都警備司令官、カシオ・タッグ、ジョードー、CC-1010”フォックス”、コナン・モッティを逮捕しろ。抵抗したらキル・モードで射殺して構わん。ああ、そうだ、射殺だ!撃ち殺してしまえ!」

 

ライカンは苛烈とも言うべき命令を首都警備司令部全部隊に命じた。

 

こうでもしなければもう統一会は止められない、ライカンはそう確信したのだ。

 

その間に合同参謀本部の地下バンカーB2では全部隊に対し、合同参謀次長から緊急の指示があった。

 

内容は共和国の非常事態警報の一種、”ロズ=ウルフ”の発令である。

 

ドドンナはセンターのB2バンカーで”ロズ=ウルフ1”の発令を宣言した。

 

「戒厳司令官の拉致犯は第30首都警備師団に集結した一部軍将兵の独断であり、未だ司令部の命令に応答せずにいる。我々はこの事態を保安司令部主導の軍事反乱と見做し、戦時に応じると判断。指揮本部を合同参謀本部に設置し、本日20時20分より”ロズ=ウルフ1”を発令する」

 

この宣言は共和国軍と統一会の立場を明確にした。

 

このことを理解する為にはまず”ロズ=ウルフ”について説明しなければならない。

 

ロズ=ウルフは惑星ロザルに住むオオカミの固有種であり、警報の名前はそこから取られている。

 

システムの中身としては分離主義者の武装集団がコルサント内に侵入し破壊活動を開始、もしくは侵入を察知した段階で発令される緊急警報であり国内の非常事態専用の警報であった。

 

基本的には3が平時であり、2が武装勢力の侵入が予想される状態、そして現状の1が最高非常事警戒態勢、軍及び警察部隊が指定地域へ最優先で出動する。

 

つまり”ロズ=ウルフ1”の発令によって統一会は分離主義者と同じ敵対勢力と見做され、この瞬間から反乱軍となった訳だ。

 

このことは統一会の諸将に大きな衝撃を与えた。

 

本来の歴史では鎮圧側となるはずだった彼らがここでは”()()()”となったのだ。

 

 

 

 

 

-首都惑星コルサント 第30首都警備師団司令部 作戦室-

作戦室はお通夜状態、と言うより不満を撒き散らす声でいっぱいだった。

 

何せ彼らは反乱軍になったのだ、このまま逮捕されればまず死刑は免れない。

 

クローン戦争で戦功を挙げ、将官にまで上り詰めたのにこれではという絶望が彼らの心を占めていた。

 

外ではタッグが部隊を指揮しウォーカーや歩兵を動員して防御陣地の構築を急がせている。

 

尤もドドンナ指揮下の鎮圧軍が本気で攻めてきたらあっという間に防御線は破られてしまうかもしれないが。

 

それでもタッグはクローン戦争で上官として家柄ではなく能力で取り立ててくれた恩人のターキンの為に死ぬ気で戦うつもりだった。

 

作戦室にはもう1人、ターキンと運命を共にする覚悟のある将校がいた。

 

テナントである。

 

彼は不満や絶望論を撒き散らす将軍や提督達を宥めて回った。

 

「合同参謀総長を解放しろと!?」

 

「最初から無理な作戦だったんだ!!」

 

ランパートとプラージが口論し、他の将軍や提督達もソファーに座るかその辺を歩いて天を仰いでいた。

 

「だから言ったんだ、こうなると」

 

「全くだ……」

 

ジャージャロッドは席に座り心を落ち着かせる為にタバコに火をつけようとした。

 

そこへテナントが声をかける。

 

「こういう時ほど皆冷静に」

 

ジャージャロッドが凄い力でライターをテーブルに叩き付けて怒鳴った。

 

彼は元から感情を露わにする方の人間であることは皆知っていたがこれほどのことはなかった。

 

「ターキン提督は裁可を得たのか!?」

 

そこへタイミングを見計らったかのようにターキンが入ってくる。

 

彼は表情を変えずに事実を全て話した。

 

まるで感情などそこに存在していないようなほどにターキンは冷静であった。

 

「裁可はまだ受けていません、しかしご心配なく。既にムーア長官に話をつけました。あの方は今、こちらに向かっています」

 

ターキンは移動中のスピーダーで国防長官公邸から緊急避難したムーアに暗号通信を送った。

 

彼女からの返答は”()()()()()()()()()”、統一会に協力することを約束した。

 

これで国防部長官の裁可は得たも同然だ。

 

それでも諸将の興奮と混乱は抑えられなかった。

 

「ターキン、公邸の状況は聞いたか?なんでこんな事態にしたんだ!」

 

ジャージャロッドの怒りに満ちた問いにターキンは飄々とした態度で答えた。

 

「こんな事態?コバーン提督の連行には成功したと聞きましたが」

 

「ターキン!」

 

「なんだねスクリード君」

 

今度はスクリードが声を荒げた。

 

「”ロズ=ウルフ”が発令された、我々はみんな反逆罪だ!このままでは全滅だぞ!」

 

これに対しターキンは呆れたようなため息を出した。

 

そして全員の前に出てあることを告げた。

 

革命家として、アウター・リムで生き残ってきた者の知恵と度胸の言葉だ。

 

「君はこの程度も覚悟していなかったのかね?」

 

ターキンは全員に宣言した。

 

「失敗すれば反逆、成功すれば革命なのだよ!」

 

【挿絵表示】

 

ここでターキンは珍しく感情をむき出しにした。

 

その気迫に押され諸将は黙りこくった。

 

「まだ作戦開始から2時間も経っていない、戦わずして負けを認めるような輩があのクローン戦争を生き残ったとは私は思えんがね」

 

皆あの戦争を生き残りあそこで戦功を挙げたという自負がある。

 

それ故にターキンにこう煽られてはもう反論する術がなかった。

 

統一会の革命はまだまだ続くことになる。

 

 

 

 

 

-首都惑星コルサント ギャラクティック・シティ 連邦管区 RCIA本部 長官執務室-

ターキンに暗号通信を返した後、ムーアは念の為に共和国中央情報部、通称RCIAに向かった。

 

一応の確認として独立星系連合の動向を知っておく為だ。

 

もし今の段階で連合が戦争準備を整えて侵攻する可能性があったら統一会の宴会に一席付き合うどころではない。

 

ランシット亡きRCIAはウルフ・ユラーレン臨時部長の指導の下で国外の情報収集に専念していた。

 

尤もRCIAは今や合同捜査本部長となったターキンの直轄であり、かつてのような権力は失われていたが。

 

ムーアがRCIA本部に向かうとカシウス・ティーとムジャ・フルーツ入りのドーナツでもてなされた。

 

「ムーア長官、あなたは大丈夫でしたか?」

 

「襲撃の件ですか、私は無事ですよ」

 

「そうですか、ご無事で何よりです」

 

ユラーレンは安堵し、自身もカシウス・ティーを飲んだ。

 

彼は情報部長でありながら未だに共和国軍の軍服を着ていた。

 

元々ユラーレンはパルパティーンの生まれである惑星ナブーを含む第17宙域軍司令官を務めていた。

 

しかし現職のランシットが暗殺事件で逮捕されたことにより、臨時の部長に任命されヴォゲル7からコルサントに急いで戻った。

 

そこからは元老院情報部時代の能力をフル活用し、RCIAを指導した。

 

政治的野心も薄く、職務に忠実なユラーレンはどう転んでもこのままRCIAの正式な部長になるだろうと言われていた。

 

「それで国防長官、RCIAには何用ですか?」

 

ユラーレンは尋ねた。

 

彼はクローン戦争初期とは違ってすっかり白髪になり、随分年寄りに見えるようになった。

 

戦争のストレスか将又つるんでいたジェダイ将軍に対するストレスか、それでも箔が付いたとユラーレンは自慢げであった。

 

「率直に伺いますが今夜独立星系連合が戦争を仕掛けてくる可能性はありますか?」

 

ムーアの問いにユラーレンはキッパリと「いえ、ありません」と伝えた。

 

「1時間前の前線宙域軍の報告ではどこかに連合軍の戦力が結集しているとか前線に不穏な動きがあるとかそういった報告は受けておりません」

 

戦争というのは今日思いついたからいきなり実行出来るものではない。

 

特に国家間における大戦争であればある程だ。

 

まず詳細な作戦計画を立案し、必要な兵力を動員し兵站を確保した上でようやく戦争に臨むことが出来る。

 

現在の連合軍はどこかに兵力が結集したという報告もなければ国民がドロイド軍製造に動員されたという報告もないし、国内が戦時体制に移行したという報告もなかった。

 

つまり連合は戦争出来る状態にないのだ。

 

「分析班の報告ですが少なくとも後数年は連合の政争が続く為我々に対する軍事行動は少ないだろうと述べています」

 

「そうですか、では私も安心して軍内に対処出来ます」

 

ムーアはカシウス・ティーを飲み干すとすぐに立ち上がり、ユラーレンの執務室を出ようとした。

 

ユラーレンは「”ロズ=ウルフ”の件ですか」と彼女に尋ねた。

 

「ええ、安心してください、軍の問題は私が責任を持って片付けますから」

 

「…我々RCIAは国外諜報に専念しますので、任せました」

 

ユラーレンは立場を明確にし、鎮圧軍にも反乱軍にも与しないことを告げた。

 

つまりユラーレンは中立を選んだのだ。

 

一方のムーアは軽く頭を下げ、執務室を後にした。

 

結局ムーアは片付けると言っただけで鎮圧軍を擁するとは一言も言わなかった、その事がユラーレンにとっては気がかりであった。

 

ムーアの姿が見えなくなるまで彼女を見送るとユラーレンは執務室の窓からコルサントの夜景を見つめた。

 

「中立……これで良かったのでしょうか、スカイウォーカー将軍」

 

今は隣にいない鬱陶しくも頼もしいジェダイを思い浮かべながらユラーレンは現実から目を背けた。

 

 

 

 

 

-首都惑星コルサント 第30首都警備師団司令部 作戦室-

その通信は未だムーアが訪れず、好転の機運も見えない状況で掛かってきたものであった。

 

通信に一番最初に出たのはこの司令部の主人でもあるタッグであった。

 

タッグは外での陣頭指揮を終え作戦室に戻っていた。

 

コムリンクを手に取り「タッグ准将ですだ」と相手に自身の名前を告げた。

 

通信先の相手が今一番掛かってきて欲しくない人物とも知らずに。

 

『タッグ、貴様そこで何をしてるんだ。司令部に駆けつけろと命じただろう』

 

タッグの顔が一気に青ざめた。

 

困ったような表情でコムリンクの両手で持ち、顔の近くから離した。

 

それから震え声で先輩達に助けを求める。

 

「どなたか……変わってください……」

 

「誰からだ?」

 

「首都警備司令官のライカン中将です……」

 

テナントの問いに答えるとその場の全員がまずいといった表情に変わった。

 

鎮圧軍の中で最も実働部隊の指揮権を持ち、最も強硬派で、最も脅しも宥和も効かない特効持ちの相手だ。

 

誰もがあの通信には出たくなかった。

 

皆、顔を背け明後日の方向を向いていた。

 

その間にもライカンの声はコムリンクから響いてくる。

 

『答えろ』

 

「先輩…!」

 

誰かにコムリンクを渡そうとするがみんな背を向ける。

 

するとコムリンクから怒鳴り声が響いた。

 

『答えろタッグ!!』

 

その圧に押されたまたま近くにいたジャージャロッドはタッグからコムリンクを受け取ってしまった。

 

仕方ないのでジャージャロッドがライカンを宥める為に代わりに通信に出ることとなった。

 

「ライカン君、ジャージャロッドだ」

 

『提督?そこで何しているんですか、第30首都警備師団は私の管轄です』

 

「わかっているとも、とにかくここに来てターキン提督の話でも聞け。そうすればことの真意が…」

 

『ターキンもそこにいるんですか』

 

ジャージャロッドは明らかに与えてはいけない情報をライカンに与えてしまった。

 

その失態に気付いたのはライカンの声を聞いてから僅か数秒後であった。

 

『ターキン提督もそこにいるんですか?変わってください、話があります』

 

ジャージャロッドはライカンの方にコムリンクを差し出した。

 

「ライカンが変われと言っている」

 

しかしターキンは顔を背け知らないといった表情で頑なに通信に出ようとはしなかった。

 

『ターキン、あえて敬語は省略するが聞いているよな?今すぐ合同参謀総長を本部にお連れしろ。第30首都警備師団を原隊へ復帰させろ』

 

ターキンが喋っている裏で諸将達は必死に次に誰が通信に出るかを決めていた。

 

決めると言っても殆ど押し付け合いに近い。

 

そして偶々受け取ったのがスクリードであった。

 

『カシオ・タッグ、ジョードー、コナン・モッティ、フォックス、私の部下は皆首都警備司令部に戻れ、これは命令だ』

 

「ライカン中将、一旦落ち着くんだ」

 

『貴様は誰だ!』

 

ライカンとは面識の薄いスクリードはいきなり怒鳴られた。

 

それから気まずそうにスクリードは自身の名を名乗った。

 

「提督のスクリードだよ、兵站局長の。我々は皆君と同じく国を心配して……」

 

『脳みそが腐り切っているな、国を心配して反乱を起こしただと?どういう冗談だそれは』

 

ライカンはぶっきらぼうにスクリードの発言を”()()”として取り扱った。

 

スクリードはライカンを「礼儀知らずめ」と罵ったがライカンにはあまり効いていなかった。

 

そこでライカンは彼ら統一会に宣戦布告を行った。

 

お前達を1人も許さない、そこが貴様らにとっての死場所だと言わんばかりの思いを込めて。

 

お前ら全員そこを動くなよ、ウォーカーでお前らの首を吹っ飛ばしてやる!

 

【挿絵表示】

 

ライカンはコムリンクを機材に叩き付け、通信を切った。

 

作戦室には緊迫した僅かな緊張が残り、そのまま暫くは静まり返った。

 

だからかだろうか、ターキンの笑い声が格段と低くして笑い声を放ったのは。

 

「フフッ、フフフフフッ、オルデラン生まれにしては随分と口汚い奴だな」

 

「おいターキン、何がおかしいんだ…!向こうの主力部隊は1時間でここに着く!そうなったらここは司令部ではなくて共同墓地になるぞ!」

 

ジャージャロッドの発言に対し、ターキンは「酷な言い方だ、少し考えさせてください」と一蹴した。

 

すると今度はウルリックの方を呼んだ。

 

「ウルリック・タッグ、君が率いる第2空挺旅団を率いてギャラクティック・シティに突入しろ」

 

諸将から驚愕の声が上がった。

 

何せ第2空挺特戦旅団はは旅団とはいえ共和国地上軍随一の最精鋭部隊である。

 

それを首都に突入させるということはもう戦争を望んでいるも同義であった。

 

「提督、特戦司まで投入したらもう後戻り出来ませんよ…!」

 

「戦えばいいではないか」

 

「参謀総長の拉致とは次元が違うんだぞ!」

 

「何を今更、コバーン提督を拉致した時点で我々の戦争はもう始まっているのだよ!」

 

ターキンは諸将に向けて言葉を紡いだ。

 

どれも彼らを煽って戦意を高めようとする言葉だった。

 

「ライカンがウォーカーで攻めてくる、一度部下に持ったから分かるが奴は本気だ、冗談なんて言わない。であればコルサントを占拠するのとここで死ぬの、どちらがいいかは明白だろう!」

 

ターキンはロモックとスクリードの発言に反論し、諸将に訴えかけた。

 

それから少し考え、ターキンはテナントに話を振った。

 

あえて彼の肩書きで名前を呼んで。

 

「第9艦隊司令」

 

その一言だけでターキンが何を欲しているのかがよく分かった。

 

流石のテナントも一度目は拒絶する。

 

「いくらなんでも艦隊を惑星内に降ろすなんて……しかも首都だぞ!戦って負ければ国民にも悪い影響が出る」

 

「別に砲撃を頼んでいる訳じゃない。惑星内に近づけて上陸部隊を展開するだけで十分だ」

 

「しかしもしこの気に乗じて分離主義者が攻めてきたら……」

 

「連中が侵略する気配はないとユラーレン部長から聞いた。安心したまえ」

 

テナントにももう一度出動を促す。

 

「第9艦隊司令官、ニルス・テナント提督」

 

ターキンの真剣な瞳から逃げるようにテナントは顔をそっぽへ向けた。

 

そこでターキンは何かを悟ったかのようなフリをし、作戦室から出ようとした。

 

「であれば私1人で戦い、勝利してみせますよ。ここでただ死を待つよりはいい。ついてこいフォックス」

 

「了解!」

 

「おい待て…!」

 

ターキンはコマンダーフォックスと共に作戦室から出た。

 

残された諸将に選択肢はもうなかった。

 

 

 

―首都惑星コルサント 首都警備司令部 作戦室―

統一会の面々に宣戦布告したライカンは早速司令部に詰め寄った幕僚や司令官達と反乱軍の鎮圧会議を行った。

 

作戦室にはタントールにコス、ホログラムで艦隊司令官にインぺレーター級の艦長達が詰め寄っていた。

 

統一会は今や反乱軍となり鎮圧の大義は首都警備司令部側にある。

 

問題は大義があるからといって首都警備司令部は決して優勢ではないということだ。

 

既にコルサント・ガードは1個兵団のうち半数を占める2個師団が統一会側であり、首都警備師団も2個は反乱軍側であった。

 

コルサント本国防衛艦隊も1個機動部隊が反乱軍であり、スター・デストロイヤー三十六隻のうち、十二隻と連絡が取れない。

 

首都航空兵団も幾つかの航空基地から応答がなく、反乱軍側に移ったのだろうと推測された。

 

この時点で首都警備司令部は予想された通り戦力の100%を投入出来ずにいた。

 

更に言えば非常時に備えて地宙空軍本部と合同参謀本部センター、そして国防部のビルにも防衛戦力を割かなければならない。

 

あちらにも憲兵総監直轄の憲兵部隊がいるがそれでは心もとない。

 

既にコマンダーソーンとコマンダーストーンに警備隊を展開するように命じているがそれでも不安は残る。

 

反乱軍に勝利するにはこれ以上離反者が出る前に短期戦で司令部を強襲する他なかった。

 

「幸いにも3個首都警備師団と2個クローン師団、首都機械化兵団は司令官の味方です。艦隊も離反した十二隻を除けばすべて動かせます」

 

タントールは状況簡潔に報告した。

 

彼の言う通りそれでも動かせる部隊は反乱軍よりは多い。

 

少なくとも命令を聞く部隊を全て合わせれば1個軍ほどの戦力にはなった。

 

「サリマ司令、防衛艦隊の海兵部隊は動かせるか」

 

『今すぐにでも地上に展開出来ます』

 

防衛艦隊にも有事に派遣される際に備えて1個海兵団が常駐している。

 

「では警備部隊を残して残りの戦力を全て地上へ送ってください。展開を終了したら艦隊は最悪に備えて防衛地点オーレクで待機を」

 

『了解』

 

ライカンは作戦室の壁に取り付けられた作戦用の地図を用いて作戦を練った。

 

「第46首都警備師団と首都機械化兵団を中心に反乱軍司令部への打撃部隊を形成……そして残りを予備戦力と防衛部隊とすれば」

 

「しかし司令官、統一会の増援が来たらどうしますか。コルサントに駐屯する特戦司のうち第2、第4、第6旅団は旅団長が統一会員です」

 

ヒューム大佐は不安点を進言した。

 

特殊作戦司令部こと特戦司は共和国の中でも最最精鋭の集まりだ。

 

ジャンプ・トルーパーを中心に、ARCトルーパー、クローン・コマンド―、TKコマンド―など並みの兵士では到底勝ち目のない部隊が集まっている。

 

特戦司の空挺旅団は機動力と打撃力に優れ、指揮本部の合同参謀本部センターには15分足らずで到着してしまう。

 

「もう1ついえばコルサントに駐留してる統一会側のナンバー付艦隊が不安だ。デポに留まっている第1艦隊、軌道上の船橋にいる第9艦隊。軌道爆撃をするなんて馬鹿な真似がしないだろうが艦内の野戦軍をぶつけてくる可能性がある」

 

コスは指で2つの地点を差し、もう一つの不安点を挙げた。

 

共和国軍のナンバー付艦隊は艦隊という名の巨大な統合任務部隊であり、1個軍、1個艦隊、1個航空団を備えた独立部隊である。

 

2個軍に侵入され、3個空挺旅団に強襲されれば首都警備司令部は反乱軍の司令部を強襲どころの話ではない。

 

「であればこちらも他所から増援を要請しよう。アルサカンで演習中の第5艦隊をコルサントに呼び出す、キリアン提督なら絶対に反乱は許さないはずだ」

 

ショーン・キリアン*13は苛烈なれど軍規を重んじる老将であり、反乱と聞けば鎮圧軍についてくれることはまず間違いなかった。

 

「第5艦隊のの陸上戦力を地上に投入して第1艦隊を阻止、第9艦隊はバロッキ*14少将の第204機動兵団、シェール*15准将の第506歩兵師団、我が第37首都警備師団で食い止める。タントール大佐、特戦司の第8空挺旅団は統一会ではなかったな?」

 

「はい、旅団長のメイディン大佐は我々の味方です」

 

タントールの話を聞いてライカンは動員戦力にクリックス・メイディン*16大佐の第8空挺特戦旅団を加えた。

 

第8空挺旅団は首都機械化兵団、第46首都警備師団と同じ第30首都警備師団司令部の強襲部隊に加えられた。

 

「よし、コルサント・ガードのクローン師団は全て官庁街と軍本部地域の防衛に回し第56首都警備師団は予備兵力として待機、ナンバー付は今言った隊で抑え込み、その間に正面から46警備師団と首都機械化兵団をぶつけ裏から第8空挺旅団を投入し、司令部を制圧する」

 

ライカンは指揮棒を用いて投入戦力の行先と鎮圧作戦を説明した。

 

幕僚達は各隊への動員要請の準備を始めた。

 

「マスターコスは第8空挺と共に司令部への強襲をお願いします」

 

「任せてください」

 

「サリマ司令官、念の為に地上支援としてインぺレーター級を一隻借りたい。あなたの麾下で統一会の息が掛かっていない艦はありますか」

 

『司令官、でしたら我が”アルティメイタム”にお任せください』

 

ライカンの要望に1人の艦長が名乗りを上げた。

 

アルティメイタム”の艦長、イェール・カールセン大佐だ。

 

ライカンは「”アルティメイタム”に統一会はいないな?」と改めて聞き直した。

 

『はい、将校から一兵卒まで皆司令官に忠誠を尽くすはずです』

 

ライカンはカールセンの曇りなき目を見て彼に全てを託した。

 

「では”アルティメイタム”を軌道上の防衛地点ウェスクに配置し、指示があるまで待機しろ。統一会に捕まるなよ」

 

『もちろんです、忠誠!』

 

カールセンはライカンに敬礼してホログラムを切った。

 

1分1秒を争うこの状況下で司令官の命令を実行するのは早ければ早いほど良い。

 

ライカンは作戦室の幕僚達と司令官達にもう一度問い直した。

 

「この中に統一会はいるか」

 

ライカンの問いにタントールが真っ先に答えた。

 

「いません、皆司令官と共に戦う覚悟です」

 

であれば勝てる、ライカンはそう確信した。

 

 

 

 

ー首都惑星コルサント 第30首都警備師団司令部 ”反乱軍本部”ー

ターキンは作戦室を後にしてヘルメットを被り、ブラスター・ピストルの予備弾薬をポーチに入れ始めていた。

 

彼はあくまでパフォーマンスとしてやったつもりだがそのパフォーマンスも本気でやり過ぎている為迎えに来たテナントはほんとに戦うつもりなんだと勘違いした。

 

「皆、平和ボケしたな。この程度で怖気ずくとは」

 

ターキンはあえてテナントのいる前で愚痴を吐いた。

 

テナントはあえて何も言わなかった。

 

彼がいう皆の中には自分も入っているからだ。

 

少なくともターキンが直接そのことを言うまでテナントは黙っていた。

 

「君も同じだよ、臆病になった」

 

「…っみんなお前を信じてここまでついて来た、なのになんて言い草だ!」

 

テナントは盟友に怒りをぶつけた。

 

するとターキンはテナントの両肩を掴み、真剣な目で見つめた。

 

それも初めて見る何かを懇願するような表情だ。

 

「だから、分かってくれよ友よ。こんな時だからこそ私を助けてくれ。君はあの時の共和国とは違うはずだ」

 

今まで何者にも縋らず頼らずに生き抜いてきた男が初めて見せた頼み事だった。

 

それまでのターキンを知っているからこそテナントはこの姿を見て揺れ動く心情を鷲掴みにされた。

 

テナントは思い出した、これまでのターキンとの思い出を。

 

テナントは忘れなかった、ターキンから与えられた恩を。

 

彼について行けば何かしらの恩恵があったということを。

 

であれば恩返しも込めて一夜くらいは彼に全てを賭けてもいいかもしれない。

 

テナントの覚悟は完全に決まった。

 

今ここにターキンの分身が誕生した。

 

「戻ろうターキン、私は怖くない。やり遂げよう」

 

ターキンは微笑を浮かべ小さく頷いた。

 

彼の覚悟は保安司令官にも伝わったようだ。

 

作戦室に戻ると開口一番口を開けたのはターキンではなくテナントであった。

 

「私は決断しました、第9艦隊を投入します」

 

作戦室の諸将に動揺が広がった。

 

テナントの表情を見るとターキンを追いかけて行った時とはまるで別人のような顔立ちであった。

 

「今ここで降りるのはハイパースペースに入ったスターシップから飛び降りるも同然。であれば私は定めた目的地まで行くことを選ぶ」

 

テナントの覚悟は諸将にも伝わってようで諦めかけてきた諸将の気持ちが変わりつつあった。

 

そこでターキンはある一手を打った。

 

誰も彼もを運命に絡めとる為の一手だ。

 

ターキンは作戦室のドアを開けて宣言した。

 

「今からでも自宅へ帰りたい方はどうぞお好きに、ドアが閉まったら皆私と運命を共にしていただく」

 

皆の足が竦んだ。

 

ここで帰れば助かるかもしれない、だがここから逃げ出したところで反乱勢力の汚名は消えない。

 

であればここに残ってターキンを信じた方がいいのではないか。

 

皆それぞれ考え、その上で信じるほうを選んだ。

 

真っ先にその意思を示したのは最年長のジャージャロッドであった。

 

彼はターキンの代わりに作戦室のドアを閉めた。

 

これで全員の覚悟が定まった。

 

「ターキン提督、我々は何をすればいい」

 

ジャージャロッドはターキンに判断を仰いだ。

 

彼は適切な判断を次々と下した。

 

「まずジャージャロッド提督は第1艦隊の陸上部隊を全て出撃させてください。目的地は国防部の官庁街、無論ブラスターはスタン・モードで」

 

「了解した」

 

ジャージャロッドはコムリンクを持って自身の艦隊へ指示を出した。

 

続いて今度はモッティの名を呼んだ。

 

「モッティ准将、君は今すぐ艦隊に戻ってテナント提督の第9艦隊と共に軌道上の本国防衛艦隊を制圧しろ。連中に砲撃支援をさせるな」

 

「はい!」

 

「現在防衛艦隊は地点オーレクに移動中です、移動情報は我々が伝えます」

 

「頼んだぞ!」

 

ラックスの報告を受けてモッティは早速艦隊へ向かった。

 

「第9艦隊はスター・デストロイヤー五隻のみ惑星内に突入させろ。残りの艦隊と地上戦力は防衛艦隊の制圧に使うんだ」

 

「ああ、任せろ」

 

「ウルリック、スミール、モック」

 

ターキンは3人の特戦旅団長を呼びつけた。

 

3人は奇麗に並び、ターキンに敬礼した。

 

「ウルリックは第2旅団を投入し首都警備司令部を強襲しろ、スミールの第4空挺は特戦司の本部を、モックは地上軍本部を制圧しろ」

 

「分かりました…」

 

ウルリックは了承し3人は旅団の出動を要請した。

 

作戦室には丁度ショック・トルーパーの出撃準備を整えたフォックスが戻ってきた。

 

「提督、第109、110師団の出撃準備が完了しました」

 

フォックスは敬礼しターキンに報告する。

 

「では両師団を率いてまずコルサント・ガード本部を制圧しろ。それからその他の部隊と共に合同参謀本部センターに迎え。相手が同じクローンだからといって手加減するな、全ては閣下の共和国を守るためだ」

 

「もちろんです、直ちに出撃します」

 

フォックスは再び作戦室を出て部隊の指揮に向かった。

 

ターキンは最後にタッグに命令を与えた。

 

「第30首都警備師団はここを死守しろ。兵団が来ようと軍が来ようと誰も入れるな」

 

「了解…!」

 

「これ以降の指揮はテナント提督に一任する。その他の中将以上の者は私と共にもう一度最高議長の説得に向かいましょう」

 

ターキンを先頭に統一会の諸将が作戦室から出る。

 

皆ターキンの目指す勝利の為、最高議長の下へと向かった。

 

悪逆たる反乱軍は鎮圧軍より先に攻勢に打って出たのだ。

 

時刻は夜の9時を回り、ギャラクティック・シティは夜を迎えた。

 

この日、この夜に多くの市民が惑星内を航行するスター・デストロイヤーの姿を目撃することとなる。

 

反乱の日はまだ始まったばかりだ。

 

 

 

つづく

*1
英:Galen Walton Erso 登場作品:ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリーなど

*2
英:Orson Callan Krennic 登場作品:ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリーなど

*3
英:Lyra Erso 登場作品:ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリーなど

*4
英:Jyn Erso 登場作品:ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリーなど

*5
英:Weir 登場作品:Xウィング:ローグ・リーダー 2など

*6
英:Wilco 登場作品:バッド・バッチシリーズ

*7
英:Ved Kennede 登場作品:クリムゾン・エンパイア2など

*8
英:CC-4477"Thire" 登場作品:クローン・ウォーズシリーズ

*9
英:Kagi 登場作品:スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐

*10
英:Hume 登場作品:The Last of the Jedi: Underworldなど

*11
登場作品:CC-5869"Stone" 登場作品:クローン・ウォーズシリーズ

*12
英:Vin Kollis 登場作品:Rules of Engagement: The Rebel SpecForce Handbook

*13
英:Shoan Kilian 登場作品:クローン・ウォーズシリーズなど

*14
英:Barokki 登場作品:スター・ウォーズ:シスの暗黒卿 消えた遺産

*15
英:Jylia Shale 登場作品:アフターマスシリーズ

*16
英:Crix Madine 登場作品:スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還など

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