コルサントの春   作:Eitoku Inobe

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「人は歴史に寛容になれる、されど主はさにあらず」
-ある詩の一節より抜粋-


Deus Non Vult/主は望まぬ戦い

ー銀河共和国領 ミッド・リム コメル宙域 ナブー星系 惑星ナブー 首都シード 元老院議員公邸ー

今から18年前のナブーに比べて随分と平和になった。

 

通商連合の脅威がなくなっただけでなく、全体的な周辺地域の治安も改善しようやく平和な楽園となった。

 

ナブーの民は穏やかな平和を享受し、この平和を作ったナブー生まれのパルパティーンを誇りに思っていた。

 

その為彼の死はナブー全体を暗黒へと突き落とした。

 

人々は喪に付し、偉大な最高議長の死を悼んだ。

 

パルパティーンの死から数カ月が経ってようやく人々は立ち直ろうとしていた。

 

それは公邸に住まう1人の英雄も同じであった。

 

アナキン・スカイウォーカー、当世最強のジェダイとも呼ばれ今はナブーに駐屯する第501軍団の名誉司令官である。

 

アナキンはかつて仲間のジェダイからは”()()()()()”と目されていた。

 

しかし彼はある意味では裏切者のジェダイであり、今となっては名前のみの英雄となっていた。

 

だがアナキンはそれでよかった。

 

名前のみの英雄となり、実務から離れたことでこの世で最も愛おしい者達に愛情を注ぐことが出来るようになったのだから。

 

「ルーク、レイア、寝る時間だぞ」

 

まだ玩具で遊んでいる自分の子ども達を呼び出してアナキンは2人を抱き抱えた。

 

ルーク・スカイウォーカーとレイア・スカイウォーカー、公式の記録ではアミダラということになっている2人の幼子はアナキンとパドメの娘であった。

 

2人が生まれたのは5年前、ジェダイの反乱がようやく沈静化し少しは余裕が出来た頃だ。

 

2人はパルパティーンの計らいでコルサントのグランド・リパブリック医療施設で秘密裏に出産された。

 

出産の立ち合いにはアナキンとマスターであるオビ=ワンと弟子のアソーカがいた。

 

ルークとレイアは健康体で生まれ、母体のパドメも無事であった。

 

自ら同胞の息の根を止めたアナキンにとって2人の誕生は唯一の光である。

 

やがてジェダイ・オーダーは解体され、パルパティーンの命を救ったアナキンは名誉司令官として今までの地位と階級を維持され、本人の要望でナブーに移った。

 

最愛の人の故郷で2人を育てる、半ば現実から目を背ける形にはなったがそれが今のアナキンの幸せだった。

 

「お父さん、寝る前にお話して」

 

「おねがーい」

 

「全く仕方ないな、なにがいい?ファーファラの冒険譚?それとも……」

 

「スカイウォーカー将軍…!失礼します、緊急の要件で至急作戦室にお越しいただきたく……」

 

連絡官として駐屯していたクローン・コマンダーボウ*1は寝室にいたアナキンに敬礼し、心苦しそうに要請した。

 

議員の公邸と第501軍団の司令部は隣にある。

 

その為移動は楽なのだが家族との貴重な時間を奪ってしまうことにボウは罪悪感を感じていた。

 

「…分かった3PO、R2、僕の代わりに2人が寝るまで面倒見てくれ」

 

「分かりました、ルーク様、レイア様、今夜は私がお話しをして差し上げます」

 

C-3POはアナキンの代わりに記録メモリーに入っている童話を話し始めた。

 

その間にアナキンはルークとレイアの頬に軽くキスをしてから「父さんはお仕事だから行ってくるよ」とだけ告げて公邸を後にした。

 

司令部の作戦室には501軍団の著名な指揮官と遠方からのホロ通信で第7空挺兵団のCC-2224”コーディ”*2とアナキンのマスター、オビ=ワン・ケノービがいた。

 

「何があった?」

 

アナキンは第501軍団のコマンダー、CT-7567”レックス”*3に尋ねた。

 

レックスは副司令官のCC-1119”アポ―”*4と顔を見合わせ、アナキンに報告した。

 

「コルサントで”ロズ=ウルフ1”が発令されました。どうやら反乱が起きたようで」

 

「反乱?誰が起こした」

 

『それが……分からないんです、”ロズ=ウルフ1”が発令されてからコルサントに通信が繋がらなくて』

 

コーディは困ったような表情で状況を報告した。

 

彼らは501軍団から分離して派遣された第332師団と交代してマンダロアの戦後復興の支援と治安維持の為に駐屯部隊として働いていた。

 

「ナブーも同様です、合同参謀本部にも首都警備司令部にも繋がらない」

 

アポ―は更に「もちろん地上軍本部とも」と付け加えた。

 

オビ=ワンは自身の髭を撫でながらアナキンに尋ねた。

 

『なあアナキン、これはどういうことだと思う?』

 

「議長を殺した集団が政権掌握の為に反乱を起こした……と考えるのが妥当ですが」

 

『にしてはタイミングが遅すぎる、しかもトップであろうランシット部長は逮捕されたばかりだ』

 

アナキンもその意見に賛同した。

 

もしクーデターをやるとするなら最高議長を暗殺した日に実働部隊を動かして支配を既成事実化するべきだ。

 

かつて仲間のジェダイ達がやったのと同じように。

 

「あまり言いたくはありませんがジェダイがまた反乱を起こしたというのは」

 

ボウの意見はそう疑ったがアナキンが「それはありえない」と即座に否定した。

 

「もう僕達を除いてジェダイは指揮権もなければ結託を行う力もない、かと言って他に誰がとも言えないが……」

 

地方から見たコルサントの状況は複雑怪奇、理解しがたかった。

 

何より一番大きいのは情報が入ってこないことだ。

 

『もう少し情報が欲しいんだが……』

 

唸りながらオビ=ワンは情報不足を嘆いた。

 

そこで1人のクローンが声を上げた。

 

「一つよろしいですか?自分は向こうにいるエコーと連絡手段を持っています。通信を繋いで状況を尋ねてみましょうか?」

 

CT-27-5555"ファイヴス"*5の進言は彼らにとって正に青天の霹靂であった。

 

彼は501軍団所属のARCトルーパーで階級はキャプテン、ARCトルーパー部隊の副隊長を勤めている。

 

ちなみに隊長は彼の隣にいるCT-5597"ジェシー"*6であった。

 

「そういえばアポーとバッド・バッチは今コルサントにいたな」

 

CT-1409"エコー"*7はファイヴスの親友でありかつては同じARCトルーパーであった。

 

ローラ・サユーの任務で敵に捕らわれたエコーは負傷した身体を改造され、サイボーグとして分離主義者に情報を吸い取られていた。

 

それを奪還したのがレックス、ジェシー、ファイヴス、アナキンと特殊分隊バッド・バッチの面々だ。

 

エコーはその後軍に復帰しバッド・バッチの一員となった。

 

親友との別れは悲しかったが友人の新たな門出は心から祝福した。

 

「個人チャンネルなので軍の監査には引っ掛かりません」

 

「よし、ファイヴスはエコーに連絡を取って情報を聞き出せ」

 

「サー」

 

『これで少しは情報が手に入るな、その後は我々がどう動くかだが』

 

オビ=ワンの発言にアナキンは「問題はナブーとマンダロアじゃ今から行っても間に合わないことですが」と付け加えた。

 

実際それは事実であり彼らに出来ることはそこまで多くはなかった。

 

ナブーはミッド・リムに位置し、コア・ワールドのコルサントまではハイパースペースを使ってもかなりの時間が掛かる。

 

それまでにコルサントでは勝敗が決まっているだろう。

 

着くころにはむしろ却って邪魔であろう。

 

「念の為軍団を待機させておきますか?」

 

レックスは名誉司令官のアナキンに尋ねた。

 

アナキンは小さく頷くと「アソーカも急いで来るよう伝えてくれ」と付け加えた。

 

『我々第7空挺兵団も出撃準備だけはして置きましょう』

 

『そうだな、この機に乗じて分離主義者が停戦を破るかもしれないし』

 

彼らに出来ることはもうそれくらいしかなかった。

 

数少ないジェダイの英雄達はこの日、自分達も共和国という見かけだけ自由な国の鳥かごにいることを思い知らされた。

 

 

 

 

-首都惑星コルサント 合同参謀本部センター B2地下バンカー-

ロズ=ウルフ1”が発令されてからの地下バンカーは比較的穏やかなものだった。

 

何せこれで統一会は反乱軍と断定され正義はこちら側にある。

 

それだけで相手の心を挫くに十分なインパクトだったと鎮圧軍側の将軍や提督達は考えた。

 

尤もそれは並大抵のクーデター勢力の話である。

 

統一会、特にターキンは並大抵の人間ではないということを多くの者が失念していた。

 

勿論そうではない者もいる。

 

特にウィラードはそのうちの1人であり、早急な武力鎮圧を全員に訴えていた。

 

「幸いにもコルサントに駐屯する部隊の司令官は皆我々の側についています」

 

タイラス・メオリ*8准将は全員に配られたカシウス・ティーを飲みながら安堵したように語っていた。

 

統一会の面々は多くが要職についていても部隊の指揮権を持つ立場にはいない。

 

ターキンがそのいい例だろう。

 

彼は保安司令官で軍の情報を一手に握っているが実際のところの部隊指揮権は司令部の警備隊だけと皆無に近かった。

 

「連中は圧倒的不利なはずなのに、一体何を考えているんだろうな。まあとにかく鎮圧は急がねばならん」

 

ドドンナは茶の入ったカップを置くとホロテーブルの方へ向かった。

 

テーブルにはコルサントの地図が映し出されており、各部隊も正確に記載されていた。

 

現在は第30首都警備師団のみが敵を示す赤いマークに変えられている。

 

「その事ですが次長、ここは一度相手に話し合いの時間を設けてみてはどうでしょう。そうすれば相手は疲弊し戦わずに鎮圧出来ます」

 

地上軍少将、ケンダル・オッゼル*9はドドンナにそう提案した。

 

彼はライカンがいなくなった後の教育室長であり、その前はカリダ・アカデミーの校長を務めていた。

 

部隊司令官としての能力はイマイチだが教育者としては少なからずの才がある。

 

今回はその悪い所が出てしまった。

 

「教育室長、それはどういう事ですか?反乱の鎮圧はまず初動が重要なのに相手に時間を与えるような提案をするんですか」

 

ウィラードは正面切ってオッゼルに反対した。

 

まだ相手が”ロズ=ウルフ1”で動揺しているうちに素早く強襲し反乱を鎮圧する。

 

それこそが必勝の策であり、この動乱を最もダメージを少なく終わらせる唯一の方策だ。

 

しかしオッゼルはそのことに気づかず困ったような顔でウィラードに反論した。

 

「憲兵総監、困りますな。みんなの前でこう怒鳴られては私の立場というものがなくなる」

 

「立場?」

 

「そうです、非常時であらんでいるのは分かりますが落ち着いてください」

 

この非常事態に自分の立場を気にするのかとウィラードは更に起こりそうになったが場の空気を乱さぬ為にグッと堪えた。

 

その事を汲み取ってかドドンナは両者の顔を立てつつどちらかといえばオッゼル寄りの意見を打ち出した。

 

「ウィラード中将の発言は尤もだ、だが早期鎮圧と言ってもまだ周囲の部隊の動員が済んでいない。軌道上の防衛艦隊もまだ海兵隊を降ろしてる最中だろう?」

 

「それは……その通りですが」

 

「可能な限り部隊の動員と出動が終わるまでの時間を稼ぐだけだ。誰か特戦司令部に連絡を取ってくれ、コルサント内の空挺旅団を全て投入して司令部にぶつける」

 

ドドンナはホロテーブルにコルサントに駐留している4個空挺旅団を表示し、反乱軍司令部にぶつけた。

 

いくら首都警備司令部の中でも最大戦力を誇る師団とはいえ4個空挺旅団の同時攻撃には敵わないだろう。

 

それに空挺が来る頃には警備司令部の首都機械化兵団も投入出来るはずだ。

 

地上の重戦力部隊と空中機動部隊の併用で確実に鎮圧出来る作戦をドドンナは打ち出した。

 

尤もそれは空挺旅団が動員出来ればの話だが。

 

「参謀次長!!」

 

物凄い勢いでドアからバンカーの作戦室に入ってきた1人の参謀将校がいた。

 

アルフレン・チェノ*10宇宙軍少佐、宇宙軍本部からの出向要員だ。

 

彼は指揮本部の連絡将校を任され、外部との連絡を担っていた。

 

その過程で彼はとんでもない情報を聞かされた。

 

「どうした少佐、何があった」

 

ドドンナは息を切らして走ってきた少佐に尋ねた。

 

「応答がなくなっていた第2空挺旅団がこの軍官庁街に向けて進軍中!!連中は反乱軍側です!!」

 

バンカー中の諸将に動揺が走った。

 

彼らはまさか特戦司が裏切るだなんて想像にしていなかったのだ。

 

この非常事態を予測出来たのは前々からよからぬ噂を聞いていたウィラードだけだった。

 

「そんな!第2空挺旅団なら15分もせずにここに辿り着くぞ!」

 

共和国郷土予備軍参謀長のママート*11提督は真っ先に声を上げて喚き散らした。

 

気弱な老将にはあまりに衝撃的な情報過ぎた。

 

「参謀次長!ここはセンターを放棄してライカン中将の首都警備司令部へ避難しましょう!」

 

「センターを放棄しろというのですか!?」

 

「ええそうです!ここで指揮班が全員拘束されるよりはマシでしょう!」

 

ウィラードに対しオッゼルはそう反論したが結局の所は自分の命惜しさだ。

 

ここで合同参謀本部センターを明け渡すのは反乱軍に屈しますと同等の意味を持つ。

 

無論そのことが分からないドドンナではなかった。

 

彼は鋼の意志でセンターへの残留を決する。

 

「センターから撤退はしない。警備兵に非常時の地対空火器を配布せよ、敵の侵攻方向に兵を配置し迎え撃つ。まずはコマンダーソーンが送ってきたショック・トルーパー1個連隊が来るまで耐え凌ぐんだ」

 

「しかし1個連隊で空挺旅団は阻めませんよ!?」

 

「ライカン中将に増援を要請すれば更に守備兵力が回されるはずです。実際連絡が取れたショック・トルーパー部隊は官庁街の防衛につき始めていますし放棄しなければいけるはずです」

 

ママート提督にウィラードはそう反論し防衛線の構築と持久戦を支持した。

 

少なくとも反乱軍に妥協してはならないし指揮本部を放棄してはならないという点ではウィラードとドドンナは合致していた。

 

「全員今のうちに武装せよ、白兵戦になれば将軍だろうと提督だろうとただの1兵士だ!」

 

ドドンナのリーダーシップのお陰で指揮本部の諸将は取り乱さずに済んでいる。

 

ただそれでも危機的状況下に置かれていることは変わりなかった。

 

空挺旅団による強襲作戦が使えない以上は別の手を取るしかないと眼前の防衛策を指示しながらドドンナは考えた。

 

するとまるで彼らの努力を嘲笑うかのように悪いニュースが入ってくる。

 

「参謀次長!」

 

「今度はなんだ!!」

 

報告に来たキーナー*12宇宙軍大佐は敬礼し速やかに状況を報告した。

 

「第9艦隊の一部が地上に降下、惑星内を航行中!目標はこの軍官庁街!」

 

「なんだと!?」

 

「更にはデポの第1艦隊からも地上戦力が投入され、軍本部を目指して進軍中とのこと!」

 

皆言葉を失った。

 

まさか2個艦隊の地上戦力を投入するとは夢にも思わなかったのだ。

 

ウィラードはこの時、反乱軍が降ろしたであろう地上戦力の部隊を考えた。

 

まず第9艦隊、一部ということで総数は不明だがまず師団以上軍以下の戦力であることは間違いないだろう。

 

一番は規模ではなく艦隊が官庁街の頭上に待機して部隊を直接展開してくる可能性があるということだ。

 

だが第9艦隊の侵入角度からいって到着にはまだ相当の時間が掛かる。

 

もう一方の第1艦隊もデポから官庁街は距離が離れている為到着は早くても2、3時間後だろう。

 

その為直近の脅威は第2空挺旅団には変わりなかった。

 

「参謀次長、敵は大勢ですが艦隊からの部隊は到着に時間が掛かります。今は落ち着いて第2空挺旅団の対策を考えましょう」

 

「…第9艦隊の駐留地点……」

 

「はい?」

 

ドドンナは1人で何かをブツブツ言っていた。

 

だが彼の独り言は極めて重要なことだった。

 

「第9艦隊は軌道上の桟橋からなんの報告もなかった……ということはつまり連中は統一会なのか…?」

 

コルサントの軌道上に位置する宇宙ステーション、通称艦隊桟橋は無人ではなく必ず大佐以上の責任者を配置するようにしている。

 

そして出港する事があるならば緊急時であろうと宇宙軍本部か合同参謀本部に連絡が来るはずだ。

 

で宇宙軍本部経由の情報ならば少なくとも第9艦隊が惑星に入る前にはここに情報が入ってきているはず。

 

そうではないということはつまり桟橋のコントロール室からこの合同参謀本部の間にいる誰かが情報を握り潰していたということ。

 

「統一会とは一体……何人いるんだ?」

 

ドドンナもウィラードも含めてこの指揮本部に統一会の正確な人数を知っている人物は1人もいなかった。

 

この情報不足は後々致命傷になることを彼らはまだ知らない。

 

 

 

-首都惑星コルサント 第30首都警備師団司令部 作戦室-

時間は少し前に遡る。

 

最高議長の説得に向かった将官達を見送った後、テナントは自身の率いる第9艦隊に出撃命令を伝えた。

 

「上陸部隊の目標は軍官庁街だ、シュメルケ少将の分艦隊を官庁街の上空に配置して直接部隊を下せ」

 

テナントの無茶苦茶な命令に副司令官のアラダ・ターハヤ*13中将は困惑した。

 

彼はもう一度テナントに命令を聞き直した。

 

『1個分艦隊を地上に送るんですか?何のために?』

 

「中将…二度言わせるな、今夜戦争が起こるとすればこのコルサントだ。私の言ってる意味は分かるな?」

 

『正直な話をすると全く分かりません…!官庁街を制圧しろということですか…?』

 

タ―ハヤ中将の理解力のなさ、といっても理解しろというのは無理な話ではあるとにかくがテナントは話の進まなさに声を荒げた。

 

「何度言わせればいいんだ!私を信じて命令を実行せよ!絶対に悪いようにはしない!」

 

『りょっ了解しました……直ちに部隊を展開し艦隊を動かします』

 

そういって副司令官との通信は終了した。

 

通信を終えたテナントはコムリンクをウルリックに渡した。

 

次はお前の番だと意味合いを込めて力強く握りしめさせた。

 

「提督……本当にやるんですか…?」

 

ウルリックは震えた声音でテナントに聞き返した。

 

既に覚悟が決まったテナントはウルリックを睨みつけ、「怖いのか」と低い声で脅した。

 

ウルリックは特戦司の将校であり名門タッグ家の人物だ。

 

2つのプライドがウルリックの決断とさせた。

 

「こちら旅団長、旅団全将兵を武装させて出動しろ。そうだ、全員を武装させて出動するんだ!!」

 

ウルリックは叫んだ。

 

それから僅かな静寂が訪れ、ウルリックは目標地点を命じた。

 

「場所は……軍官庁街、合同参謀本部センター…!」

 

ウルリックはコムリンクを切った。

 

彼はもうすっかり疲れ切っているようですぐにタバコを吸い始めた。

 

そこへ出撃準備を先に整えたスミールとモックがやってきた。

 

「第4空挺旅団、出撃準備完了しました」

 

「同じく第6空挺旅団、出撃準備完了しました。提督のご命令でいつでも出撃出来ます」

 

2人はジャンパーに特戦司のベレー帽、更にはベルトにブラスター・ピストルのホルスターをつけ、予備弾薬も備えていた。

 

テナントは2人に敬礼を返しターキンの代わりに命令を出した。

 

「スミール大佐は特戦司令部を制圧、モック大佐は可能な限り秘密裏に軍官庁街に突入して各本部を制圧せよ」

 

「ハッ!」

 

「タッグ大佐はここに残って私を補佐しろ。君達特戦司の活躍が我々の生き死にに掛かっている、心してかかれ」

 

「死して我が忠誠を!」

 

2人は旅団を直接指揮する為に司令部を後にした。

 

3個空挺旅団の出動は鎮圧軍側に大きな影響を及ぼした。

 

分離主義者の喉元を掻き切るはずの短剣は今夜はある男の野心の為に振り下ろされた。

 

 

 

ー首都惑星コルサント ギャラクティック・シティ郊外 第1宙域軍特殊作戦司令部ー

宴会場から緊急で司令部に戻ったオノランは直ちに特戦司専用の迷彩に着替え、執務室に向かった。

 

その間にウィルコから幾つか報告を受けていた。

 

「コルサントに駐留している第2、第4、第6空挺旅団から応答なし、第8は現在訓練を終えて駐屯地に帰投中です」

 

「もう一度3人の旅団長に声を連絡を取れ」

 

「了解…!」

 

ウィルコは再び司令官の執務室の隣に配置された参謀の待機室に向かった。

 

オノランが執務室に入ると待機していた作戦参謀の1人が敬礼しコムリンクを差し出してきた。

 

「どうした」

 

「首都警備司令官より通信です」

 

怪訝な顔でコムリンクを受け取るとオノランは早速ライカンに通信を繋いだ。

 

ロズ=ウルフ1“の発令に連絡の取れない部下達、オノランにはもう何が何だかよく分からなかった。

 

「はいこちら特戦司令官」

 

『オノラン中将…!現在そちらで連絡の取れていない部隊はありますか?』

 

何故一部の旅団から応答がない事を知っているのかと思いつつオノランは包み隠さず内情を話した。

 

「3個空挺旅団から応答がない、やはり反乱絡みと見るべきか?」

 

『間違いありません、その3人の旅団長から通信が入ってきても絶対に内容を信じないでください…!』

 

ライカンは鬼気迫る声音でオノランに要請した。

 

ふとオノランは執務室の壁に飾ってある部下達の写真を見た。

 

オノランは共和国軍で数多くの部下を持った。

 

その中にはウルリック、スミール、モックの3人の写真もあった。

 

オノランは彼らにまるで実父のように接し、親身になって面倒を見てきた。

 

3人は素直に尊敬出来る将校だ。

 

ウルリックはタッグ家という名門にも関わらず特殊部隊という最も過酷な部隊に自ら志願した。

 

スミールはあのナブー侵攻で戦った実力の持ち主だ、故郷を守る為に戦ったという経歴は尊敬以外に言い表せる言葉はない。

 

そしてモック、クローン戦争の英雄を自分の部下として職務を共に出来るのはこちらとしても光栄であった。

 

3人とも素晴らしい将校であり、その3人もオノランを尊敬はしていた。

 

忠誠の行き先がオノランだったかは定かではないが。

 

「…分かった、そうしましよう」

 

オノランは後ろめたさを感じながらライカンの意見を取り入れた。

 

『お願いします、それと是非反乱軍鎮圧の為に非統一会の第8空挺旅団を出動させてください…!』

 

「待ってくれ、第8空挺は訓練を終えたばかりで疲弊している。いくらなんでも…」

 

『急いで呼び戻してください、今反乱軍を叩かねば…!』

 

オノランは諦めたように「分かった」とライカンの要望を全て受け入れた。

 

彼のいうことは正しい、”ロズ=ウルフ1”が発令された時点で反乱軍は鎮圧対象だ。

 

部隊が疲弊しているからという理由で戦闘を拒否する事は出来ない。

 

「ウィルコ、まだ第2、第4、第6と連絡は付かないのか?」

 

「司令官!!大変です!!」

 

ウィルコがドアを突き破るように入ってきてオノランに報告した。

 

「第2空挺旅団が出動しました!!」

 

ウィルコが報告をした時点で既に第2空挺旅団は駐屯地を抜け出し、ギャラクティック・シティの軍官庁街に向けてガンシップを走らせていた。

 

空挺旅団は他の師団と同様にLEET/iことリパブリック・ガンシップで移動し、後続の部隊には貨物用のLAAT/cとニュー級攻撃輸送シャトルやセンチネル級着陸船が続いた。

 

コルサントの人々は高層ビルのベランダや屋上から出動する第2空挺旅団の姿を目撃した。

 

皆何処へ何しに行くのかすらも分からぬまま空挺旅団を見送る。

 

まさか彼らが個人の私利私欲の為に動員されているとは夢に思わなかった。

 

司令官のウルリックは第30首都警備師団司令部にいる為旅団の指揮は参謀長のレッド・ウェッセル*14中佐が取っていた。

 

そんなウェッセルの下にある1つの通信が入ってくる。

 

『参謀長、特戦司令官副官のウィルコです。直ちに部隊を帰投させるようにと司令官から命令が出ています』

 

ウィルコの要請に対しウェッセルは苛立ちを覚えた。

 

明らかに旅団長が出した命令と矛盾している。

 

「旅団長は出撃、司令官は帰投、正しい命令は一体どっちなんだ…!?」

 

「通信を切りますか?」

 

指揮機として選んだセンチネル級のブリッジで第2空挺旅団隷下の第708空挺大隊を指揮するアルファ級ARCトルーパーのメジャーメイズ*15はウェッセルにそう進言した。

 

ウェッセルは「放っておけ」と通信を放置し、進撃路をそのままギャラクティック・シティの軍官庁街に設定した。

 

第2空挺旅団はコルサントの空中を飛行し合同参謀本部センターを目標に進撃し続ける。

 

この旅団を止めるのはもう不可能に思われた。

 

しかし首都警備司令部の者達はまだ諦めていなかった。

 

 

 

 

 

 

-首都惑星コルサント ギャラクティック・シティ 首都警備司令部 作戦室-

第2空挺旅団が進撃を続けている最中、ライカンは惑星アルサカンに駐留している第5艦隊司令官に連絡を入れた。

 

アルサカンはコルサントに近くハイパースペースを使えば1時間も立たずにコルサントに到着する。

 

戦力は第1、第2艦隊と同等で地上部隊を展開すれば鎮圧軍側の大きな戦力となる。

 

しかも司令官のショーン・キリアン提督は鎮圧側に同調的な人物であった。

 

『あの野郎ども…!最高議長もまだそちらにいるというのになんという蛮行だ!軍人としての本分は忘れたのか!?それで国防長官はなんと?』

 

ライカンの報告を受けてキリアンは旗艦”エンデュアランスⅡ”のブリッジで怒りを露わにした。

 

キリアンが乗っているインペレーター級の艦名は、クローン戦争中に撃沈した彼の乗艦ヴェネター級”エンデュアランス”から艦名を拝借したものだ。

 

指揮官は艦と運命を共にすべきという古い軍人哲学を重んじるキリアンは今度こそこの”エンデュアランスⅡ”と添い遂げる覚悟でいた。

 

「それが姿が見えないんです、国防部にも公邸にもいないのでどうしようもありません。しかし連中は合同参謀総長を拉致しました、これは明確な軍事反乱です」

 

『ああ全くだ!非常識でとんでもない野郎どもだ!』

 

「それで鎮圧の為に提督の第5艦隊の力を借りたいのです。今すぐ全艦隊を率いてコルサントに来れますか?」

 

ライカンの頼み事にキリアンは快く了承した。

 

『もちろんだ、だが地上兵力の一部をアルサカンに置いてきているので回収してから向かう。その前に先遣隊としてヴェネター級三隻をそちらに送る』

 

「ありがとうございます提督、助かります」

 

『すぐに向かうから待ってろよ…!』

 

そういってキリアンは通信を切った。

 

やはり予想通りキリアンは鎮圧軍側の人間だった。

 

彼の艦隊を動員出来たことは喜ばしいが眼前にはもう脅威が迫っていた。

 

「しかし問題はキリアン提督の第5艦隊が到着する前に第9艦隊の分艦隊と第2空挺旅団が先にギャラクティック・シティに到着することです」

 

タントールは眼前を直接言葉にした。

 

「サリマ司令官が回した防衛艦隊の分遣隊はいつ到着する?」

 

「快速部隊を全速力で回していますがそれでも早くて後1時間半後かと……」

 

宇宙軍からの出向要員であるカン・ポジョ*16中佐はライカンにそう報告した。

 

無論その間に第9艦隊はギャラクティック・シティに侵入し、部隊を展開出来るようになっている。

 

そうなればいくらクローン・ショック・トルーパーが強かろうと防衛は無理だ。

 

「それに大気圏内で撃ち合いになれば民間人に死傷者が出る、それは避けたい」

 

コスはコルサントに住む人々の身を案じながらそう進言した。

 

物理的な兵力不足な上、未だ戦闘地域が定まっていない為に市民の避難誘導が出来ずにいた。

 

そんな中で全長約1キロの船体が地上に墜落したら死傷者の数は計り知れないことになる。

 

「ではせめて空挺旅団だけでも侵入を幅もう。第2空挺旅団の侵入区域のみにインターセプター隊を配置して侵入を阻止する。コマンダーダヴィジャーンの隊に出撃命令を」

 

「はい!」

 

これで軍用スカイレーンと空域の封鎖は完了した。

 

リパブリック・ガンシップは強力な機体だがアルファ3ニバンス級Vウィング・スターファイターやARC-170スターファイターには勝てない。

 

優秀なパイロットであればまず戦闘は避けるだろう。

 

問題はこれだけやってもまだ使える道があるということだ。

 

「後は民間のスカイレーンですが…」

 

タントールは忌々しそうに呟いた。

 

最悪民間のスカイレーンを使えば第2空挺旅団は時間は掛かるだろうが確実に軍官庁街まで到着出来る。

 

他の民間車両がいる空間に向けて発報は基本的に禁止されているからだ。

 

誤射でもして民間機を撃墜してしまうことがあればクーデター以前の問題となる。

 

「現状の交通量では封鎖は厳しいです。交通整理の為の時間と人員は今の我々には…」

 

「いやタントール大佐、むしろ”()()()()()()”というのはどうだ」

 

コスはペンを用いて案を説明した。

 

「市民の力を借りるんだ。スカイレーンの両線を今のまま塞いで交通を完全に遮断する、こうすることで車両区間分の幅が取れて空挺部隊の展開地点はかなり後方まで下がる」

 

スカイレーンは緊急時用にスカイレーンに車両が残っていても自動操縦をストップ出来る仕組みになっている。

 

これを用いて現在スカイレーンにいる車両を全て停止させ、道を塞ぐのがコスの案であった。

 

「後方に部隊を展開し陸路で進軍したとしても必ず守備隊の陣地と衝突して進撃出来なくなる。諦めて遠回りすればその分時間が稼げるし空域から強行突破を図れば撃墜は容易だ。市民に苦労をかけることにはなるが…」

 

「でも速やかに進路を塞ぐにはこれしかない。規制ステーションに掛け合って緊急時の封鎖指令を指定したスカイレーンに展開しろ」

 

「了解!」

 

これで当面の時間は稼げる。

 

ライカンはふとコスに向かって「やはりあなたがいてくれて良かった」と告げた。

 

「この戦いは先に連邦管区に進軍した者が勝利を収める。総員、全力で敵の侵入を阻止せよ」

 

 

 

 

コスが提案した案は結果からいうと最も効果があった。

 

全空域と軍用スカイレーンが封鎖されたことにより第2空挺旅団は民間スカイレーンを選ばざるを得なくなり、結果渋滞に突入した。

 

しかも自動操縦から手動操縦に切り替えスカイレーンを離れようとするスピーダーが続出した為、更にレーンは混雑し抜け出るどころの話ではなくなった。

 

勿論それを聞いた司令部の諸将は大激怒モノだ。

 

『ダメです旅団長、民間スピーダーがいっぱいで通れません!』

 

ウェッセルはエレクトロバイノキュラーでスカイレーンの先頭まで確認し上官に報告した。

 

当然だが上官達からは怒りの言葉が飛んできた。

 

「そのまま突き進むんだ!上を飛び越えることくらい出来るだろう!」

 

「いや引き返せ!こっちで他のルートを出すから今すぐ引き返すんだ!」

 

テナントとウルリックはそれぞれ違う命令を出したが直属上官はウルリックな為彼の案が通った。

 

テナントはストレスを和らげる為にタバコを拝借し「戦時だってのに交通ルール守りやがって!」と悪態をついた。

 

今は戦時でもないし交通ルールは常に守るべきなのだが彼らの心情によれば仕方ないとも言える。

 

第2空挺旅団は頼みの綱だ、1分1秒でも早く来て欲しかった。

 

「現在全てのスカイレーンがここと同じ状態です」

 

「なら陸上の通路はどうだ」

 

「しかしそれでは敵の防衛部隊と衝突して突破どころの話ではなくなります…!」

 

ありとあらゆる通路は首都警備司令部が事前に封鎖済みであった。

 

残るは彼らの意気がかかっていない通路だ。

 

テナントはある1つの通り道を思い出した。

 

「アンダーワールド・ポータルの緊急用トンネル!ここは少し離れてて首都警備司令部の管轄じゃない!」

 

コルサントはミルフィーユのように層が重なって出来たエキュメノポリス惑星である。

 

その為下の階層への移動手段としてアンダーワールド・ポータルが存在し、一部には緊急時の脱出用としてトンネルが開通されていた。

 

「ここならガンシップもシャトルも通れる、貨物機だってそうだ。今すぐ旅団をこっちに移動させろ!」

 

「はい!」

 

テナントは相手を出し抜けたと喜んでいたがこの事は当然ライカン達も把握している。

 

既に手は打っていた。

 

『バロッキ少将、緊急用トンネルがあるアンダーワールド・ポータルはあなたの管轄ですよね?反乱軍がこれを用いて侵入すると危険です、今すぐ封鎖をお願いします』

 

ライカンはポータルの管理を担当する第204機動兵団長のバロッキ少将に連絡を取っていた。

 

バロッキは快く『そういう事でしたらお任せください』と封鎖を引き受けた。

 

『こちらから兵力を出してポータル自体を封鎖します』

 

『兵団は防衛にも部隊を振り分けている関係で兵力が厳しいでしょう。必要であればこちらの予備戦力を送ります』

 

『いえ、貴重な戦力ですので温存してください。こちらの工兵隊と対空部隊を振り分けます、我々にお任せを司令官』

 

『助かります少将』

 

こうして封鎖は成功し第2空挺旅団は連邦管区から締め出されるかに思われた。

 

防諜室で2人の会話を耳にしているラックスさえいなければ。

 

彼はすぐにヘッドフォンを外すとその場にいた保安司令部の部下に命じた。

 

「今の聞いたか?ん?ポータルが封鎖されれば空挺が入って来れなくなって我々は逮捕、人生は終わりだ」

 

その場にいた部下の中尉を指で突きながら高圧的に命じる。

 

「私が今から第204機動兵団の兵団長にツテを使って通信する。誰か向こうにツテがある奴はいるか?」

 

ラックスが尋ねると1人の大尉が手を挙げた。

 

なんでも兵団の参謀に同じ惑星の軍アカデミーの先輩がいるらしい。

 

ラックスは第204機動兵団司令部と通信を繋いだ。

 

その頃兵団長のバロッキ少将は戦闘準備を整え副官から報告を受けていた。

 

「外ポータルと内ポータルの両方を封鎖します」

 

「オーケーそれでいい、完璧だ。主力部隊は直ちに防衛線構築にかかれ」

 

「了解!」

 

装備の最終チェックを行う為に執務室へ戻るとコムリンクが鳴り響いていた。

 

あまり時間がない為バロッキは手に取ると同時にぶっきらぼうに「兵団長だが」と応えた。

 

『私は保安司令部の秘書室長を務めている者です。つまり保安司令官の副官、とでも思っておいてください』

 

ラックスはバロッキを明らかに舐めた態度で彼に話した。

 

情報という面ではラックスはバロッキに対し大きなアドバンテージがある。

 

調べようと思えば今この場でバロッキの家族構成、出身、出たアカデミー全てを言うことが出来るのだ。

 

『ライカン司令官との通信を聞き連絡しました』

 

「貴様は何を言っているんだ!?」

 

ふとバロッキは作戦室に控えている幕僚達に目をやった。

 

情報が流れるとすればもうあそこからしかない。

 

「どうやって聞いたんだ!?」

 

『軍の通信網は全て我々が握っています』

 

「その言葉に責任は取れるのか!?名前と階級を名乗れ!」

 

バロッキは怒り、ラックスに向けて叫んだ。

 

しかしラックスは最後まで飄々としてバロッキを諭す。

 

『形勢が傾きました、ポータルを封鎖してもいずれ上空から第9艦隊が突破します』

 

「待て待て!大気圏に艦隊を突入させるつもりか!?正気なのか!?」

 

『国を案じる将官達も志を共にすることを願っています。通信を傍受しながら兵団長殿の懸命な判断を期待していますよ』

 

ラックスは最後だけ冷たい声音でバロッキを牽制し通信を終了した。

 

この日ほどバロッキが敗北感を感じた事はない。

 

結局彼はこの事件で1兵たりとも自身の部隊を動かす事はなかった。

 

 

 

 

-首都惑星コルサント ギャラクティック・シティ 連邦管区 元老院オフィス・ビル-

ターキンを取り逃したコーリスら第448憲兵連隊は一種の混乱状態に陥っていた。

 

緊急事態である事は間違いないので次の命令を合同参謀本部センターに尋ね用としたら通信妨害を受けて通信が繋がらずにいた。

 

しかもオフィス・ビルのセネイト・ガード達は急にビル内への入室を拒むようになり、彼らは取り敢えずの防衛態勢を構築するしかなかった。

 

正面門を大型ブラスト・ドアで封鎖し、念の為に歩兵小隊を展開し敵を待ち構えた。

 

尤もその敵がなんなのかはコーリス自身もわからなかったが。

 

「各検問所に兵員を展開しました、防衛態勢は完璧です」

 

副官の報告を受け、コーリスは「センターとはまだ連絡が取れないのか?」と尋ねた。

 

副官は申し訳なさそうに頷き「保安司令官を逃し、”ロズ=ウルフ1”が発令されたまでは繋がっていたのですが…」と答えた。

 

コーリスは内心不安でいっぱいだった。

 

何せなんの情報も入って来ない上にセネイト・ガードからも情報が与えられず外に捨て置かれたせいで彼らは孤立していた。

 

それでも元老院オフィス・ビルを命に替えても守ると言う使命を胸に警備に当たっていた彼らを嘲笑うかのように侵入者が現れた。

 

突如ブラスト・ドアがなんの前触れもなく開錠し、ゆっくりと開いていく。

 

徐々に広がる隙間からは何十発ものスタン・モードの弾丸が飛び出し、警備に当たっていたショック・トルーパー達を気絶させた。

 

「なんだァ!?」

 

「応戦しろ!武器は念の為スタン・モードだ!」

 

コーリスは命令を出したがこの時点で彼らはもう不利な状況に陥っていた。

 

ブラスター砲の砲手は冷却管理の兵士と共に気絶し、凄まじい弾幕により接近出来ずにいた。

 

重火器を失ったコーリスらの相手は共和国軍のRTTと十分な火器を期待したショック・トルーパーであった。

 

相手のショック・トルーパーは全員ヘルメットに白と黒いテープを巻き、識別をしっかりさせていた。

 

相手の勢いと火力に押され、コーリスはブラスター・ピストルを取り出す暇もなく制圧された。

 

「全員を拘束しろ!武装解除させるんだ!」

 

ワイアは部下に命令して全員からDC-15Aブラスター・カービンとDC-17を取り上げた。

 

当然腰に付けているN-2バラディウム=コア・サーマル・デトネーターもだ。

 

検問所の兵員を蹴散らしたことで道が開けた。

 

RTTに先導されて星をつけた軍用スピーダーがオフィス・ビルへと入っていく。

 

二度目の最高議長説得の時間だ。

 

オフィス・ビルを警護していた第448憲兵連隊はワイアが連れてきた第33憲兵連隊とジョードー准将麾下の第112憲兵師団の兵員に奇襲を受け、まず検問所の部隊が一掃された。

 

それからワイアはコーリスに対し最高議長らの命を脅かすつもりは一切ないこと、”ロズ=ウルフ1”の発令と保安司令官逮捕は誤報であること、部下をこれ以上傷つけるつもりは一切ないことを説明した。

 

その上で憲兵連隊に抵抗を止め、警備の任をワイアが率いる憲兵混成団に代わるよう命ずることをコーリスに要請する。

 

勿論コーリスもただでは折れなかった為ワイアは少しばかり銃口を押し付けて強めに要請した。

 

結果的に要請は通り、第448憲兵連隊は武装解除し警備の任を交代した。

 

これにより元老院オフィス・ビルは静かに反乱軍側に陥落したのだ。

 

その頃統一会の重鎮達は警護室長ケネードに案内され最高議長の執務室まで案内された。

 

この時アミダとオーガナは警護室の面々によって事実上の軟禁状態に陥っていた。

 

外でも銃撃音と合同参謀総長の拘束は2人も後で聞いた。

 

それ以降の情報は突然一切入って来なくなったが安全の為と称してケネードは執務室で待機するよう2人に願い出た。

 

まだケネードが裏切ったとは思っていない2人はその申し出を受け入れ、執務室で待機していた。

 

暫くソファーに座って情勢を考え合っているうちに執務室に来客が訪れた。

 

ターキンが今度は大勢の将軍や提督を連れてやってきたのだ。

 

ソファーの後ろに6人の将官が整列し、アミダの横にはターキンが立っていた。

 

「総員気をつけ!最高議長閣下に対し、敬礼!」

 

忠誠(충성)!」

 

ターキンを含め7人の将官が一斉に敬礼をする姿は威圧感たっぷりであり、アミダの心に大きな圧迫感を齎した。

 

「直れ」

 

「ターキン提督、今夜は随分とご多忙ですな」

 

オーガナは皮肉を込めてターキンに言い放った。

 

彼は裏に込められた悪意など一切気にせず「恐れ入ります副議長、最高議長」と返した。

 

「一体戒厳司令官に何をして銃撃戦が起きたのですか?」

 

「拘束の際に騒ぎにはなりましたがこのように軍全体が合同参謀総長の逮捕を支持していることをお伝えに参りました」

 

彼らは統一会だが以外にも役職は様々であった。

 

ターキンは保安司令官であるしジャージャロッドは艦隊司令官、モロックとロモディは宙域軍司令官でスクリードとランパートはそれぞれ兵站局長と広報室長である。

 

それだけ軍の幅広い層に統一会が紛れ込んでいるということだがパッと見ただけでは確かに軍が逮捕を支持しているように見えた。

 

それでもオーガナは臆せずターキンに立ち向かった。

 

「それで国防長官の同意は得ましたか?戒厳司令官の不当な拘束など論外です」

 

「ムーア長官とは連絡が付き、急ぎ向かっているとの事です」

 

「ですのでまずは最高議長の早急な決定が必要なのです。これ以上決断が遅れれば内戦が起きかねない逼迫した状況です」

 

ターキンの発言に付け足してジャージャロッドはそうアミダに迫った。

 

ある意味この発言は脅しだ。

 

誰が勝とうと負けようと内戦になれば軍部の監督責任と首都の動乱の責任によってアミダもオーガナも終わりである。

 

「内戦……!?」

 

アミダは怯え言葉を失った。

 

オーガナは内戦という言葉を気にしながらも気丈に振る舞った。

 

彼らに少しでも弱いところを見せてはいけない、一気に押し込まれて裁可を下す羽目になる。

 

「ですがこんな状態にしたのはあなた方ではないですか、ならば余計に裁可を与える訳には…」

 

「合同参謀本部の将校達は皆誤解してるだけです。誤解を解いて内戦を回避する為にも最高議長のお力添えが必要です」

 

やはりターキンも口が上手い。

 

彼を言い負かすのは中々に難しいことだ。

 

しかし制度論と統帥権の側面においては正しいのはオーガナである。

 

「その為には国防長官の同意が不可欠だと何度言ったら」

 

「既に口頭で国防長官は同意されています。これではダメなのですか?」

 

「書面での裁可でなければ認められません。特に合同参謀総長の拘束ともなれば尚のこと、このような軍の統帥権保有者を脅すようなやり口はで裁可を渡す訳にはいきません」

 

ジャージャロッドに対してもオーガナは負けなかった。

 

しかし最後の言葉が癪に触ったのかジャージャロッドは「誰が脅しているんですか!」と反論した。

 

「…物分かりの悪い人だ…」

 

ジャージャロッドは小声でオーガナに対して悪態をついた。

 

その言葉はアミダとターキンには聞こえていた。

 

ターキンはあえてジャージャロッドの発言を注意した。

 

「ジャージャロッド提督、今の発言は失礼では?我々はアンダーワールドのゴロツキではない」

 

ターキンはオーガナやアミダに向けて謝罪した。

 

「副議長、最高議長、今の非礼な態度をお許しください」

 

ここが話の切りどころと感じたのかアミダは立ち上がりデスクの方へ向かった。

 

「私の意向は全てオーガナ副議長が伝えてくれました、話はこれで終わりです」

 

そういって執務室の椅子に座り直そうとした瞬間、ターキンは裁可の書類が入ったタブレットを静かにデスクへ置いた。

 

コンという僅かなデスクとタブレットがぶつかり合う音だったがその音には奇妙なほど大きな威圧感があった。

 

何者かを絡みとり、逃さんとする強烈な意志があった。

 

6人の将官達が振り返り、アミダに視線を寄せた。

 

「最高議長からの裁可を頂くまでここで我々は待ちます」

 

ターキンらは引き下がらなかった。

 

この戦いは長い戦いになる、執務室にいた誰もがそう予見していた。

 

 

 

 

-コルサント軌道上 防衛地点オーレク コルサント本国防衛艦隊-

サリマ率いるコルサント本国防衛艦隊は応答した全ての戦力を率いて防衛陣形のまま待機していた。

 

軌道上にはインペレーター級、ヴェネター級合わせて二十隻のスター・デストロイヤーが待機している。

 

本来は二十四隻が動かせるはずだったがインペレーター級”アルティメイタム”を予備として後方に残し、第9艦隊の侵入阻止の為ヴェネター級三隻を分遣隊として回した為残り二十隻となった。

 

これでもナンバー付の艦隊と四隻程度の差しかなく、アークワイテンズ級やヴィクトリー級のような中、小型艦も含めれば戦力差はさらに大きくなる。

 

サリマは防空艦艇及び機動突撃部隊としてアークワイテンズ級四十八隻、ヴィクトリー級三十隻を艦隊に連れていた。

 

勿論本国防衛艦隊にはこれ以外にもCR90コルベットやゴザンティ級クルーザー、カンセラー級クルーザーなどの小型艦艇が配備されている。

 

そういった艦艇は警備艦や哨戒艦としてコルサントの各所に展開し本来なら第9艦隊の出撃もこれらの艦艇から報告が来るはずだった。

 

「ノヴィッツ*17少佐、哨戒艦艇から何か報告はあったか?」

 

「応答がなくなった艦艇以外からの報告は基本的に通常と同じです。恐らく事前に侵入経路を決めて周辺の艦艇に粉をかけていたのでしょう」

 

ノヴィッツ少佐は共和国宇宙軍アカデミーを卒業した後、共和国研究輸送船の船長を務めていた。

 

輸送船の任務はロイス・ヘムロック*18博士のアルカニアン生物研究所まで物資を輸送する事であり退屈そのものであった。

 

大尉に定期昇進する頃、アカデミーの同期が将官級の軍人と合わせてくれた事もあってか僅か1年で少佐に昇進出来た。

 

現在はサリマの副官を務めつつアナクセス宇宙軍大学の通信教育で指揮幕僚課程を学んでいた。

 

「汚い野郎どもめ…!分遣隊の出撃から……まだ30分か……」

 

「到着にはまだ早いかと」

 

サリマは自身の予測能力の低さに苛立ちを覚えた。

 

彼はまさか第9艦隊が直接艦隊を惑星に降下させるとは夢にも思わなかった。

 

惑星の中で艦隊を動かせばそれこそ大事件だ。

 

そこまでする度胸もなければ理性がそれを止めてくれるだろうと思っていた。

 

あまりに軽率かつ甘い判断だったと言わざるを得ない。

 

「とにかく我々は非常時に備えて守備だ、分離主義者どもがもしやってくれば…!」

 

「司令官!モッティ准将の”スティール・タロン”から通信です」

 

「”スティール・タロン”及び応答のなかった各艦艇の識別を感知」

 

首都艦隊旗艦”サクリファイス”の通信士とセンサー観測員がそれぞれ報告した。

 

サリマはノヴィッツと顔を見合わせ「繋いでくれ」と伝えた。

 

通信が繋がり、ブリッジのモニターにモッティと”スティール・タロン”のブリッジが映し出された。

 

「モッティ、貴様今までどこにいた!」

 

『司令官閣下、申し訳ありませんがあなた方はここで我々に制圧されてもらいます』

 

「なんだと?」

 

「司令官!後方、5時の方角から友軍艦隊接近!識別番号は第9艦隊です!」

 

再びセンサー観測員が叫んだ。

 

第9艦隊が惑星に突入させたのはあくまで1つの分艦隊、残りの主力は何処かにいるはずだと睨んでいた。

 

まさかここに向かわせてくるとは。

 

「貴様ら正気か!?我々がここで共倒れになればコルサントの軌道上は無防備になるんだぞ!」

 

サリマは正論を述べた。

 

しかしモッティは悪い笑みを浮かべながら『分離主義者どもはここまで来れませんよ』と呟いた。

 

『では司令官、また会いましょう』

 

その一言と共に通信が切れ、二方向から戦艦イオン砲の青い砲弾が飛んでくる。

 

戦艦イオン砲はスター・デストロイヤーの偏向シールドを潜り抜けて船体の電子機器をショートさせた。

 

モッティ麾下の反乱艦隊は側面から、第9艦隊の主力は後方からイオン砲を撃ち出しコルサント本国防衛艦隊は次々と行動不能に陥った。

 

「”ガーララ”、”ディフェンス・オブ・センタックス”、”ヘスペリディウム”信号途絶!」

 

「本艦もこのままイオン砲撃を受け続ければ長くは持ちません!」

 

サクリファイス”の艦長はサリマにそう報告した。

 

「可能な限り応戦しろ!この際ターボレーザーを撃っても構わん!」

 

二方向から挟まれた上に数の上では圧倒的優位な反乱軍艦隊によって防衛艦隊は劣勢に立たされた。

 

艦隊が防衛地点の正面に戦力を集中させていたというのもあるだろう。

 

防衛艦隊も反撃を始めたが味方を撃つという行為に躊躇いが生じ、反乱軍ほどの苛烈な砲火は飛び出さなかった。

 

特に側面から攻撃してきた艦隊は元々は同じ本国防衛艦隊所属艦だ。

 

艦長同士で親しい者もいれば乗組員同士で交流関係もある。

 

良心を捨てた反乱軍とは違い、防衛地点オーレクもコルサント本国防衛艦隊も身内と戦う為のものではなかった。

 

「本艦の機能の45%が低下…!このままでは…!」

 

「第9艦隊より航空隊及び陸上部隊の出撃を確認!」

 

「艦隊に上陸するつもりです!」

 

ノヴィッツはそう予想したがもう止める手立てはなかった。

 

先行発進したBTL-B Yウィング・スターファイター/ボマーと先行配備型のTIE/saボマーがイオン爆弾とイオン魚雷を発射し、更に艦の機能を奪っていく。

 

対空砲撃も出来なくなったところにゴザンティ級やセンチネル級、宇宙用に閉鎖されたリパブリック・ガンシップが各艦に突入した。

 

旗艦”サクリファイス”にも最精鋭の海兵隊を中心に上陸部隊が侵入した。

 

武装した宇宙軍トルーパーや技術師達が応戦するも練度では海兵隊トルーパーに勝てるはずもない。

 

あっという間にメインのハンガーベイを占拠され、次々と後続のTKトルーパーが艦内に突入した。

 

「反乱軍の上陸部隊が艦内に侵入!既にハンガーベイは陥落しました!」

 

「非常用封鎖システムをまずハンガーベイ周辺に適応。そのうちに乗組員は全て武装させて応戦、1兵でも敵を阻め!」

 

「了解!」

 

サリマは死守命令を出し、自身もブラスター・ピストルを手にした。

 

「ブリッジの隔壁は閉鎖しろ!全員ブラスターを装備して非常時に備えろ。己の持ち場を墓穴だと思え!」

 

サリマは全員に最後まで戦うよう指示を出した。

 

船乗りの絆というべきかこの命令に反対する者は誰もいなかった。

 

「通信士官、全艦に徹底抗戦を呼びかけろ。第9艦隊の陸上戦力は我々で吸い上げる」

 

「はい!」

 

サクリファイス”から全艦に死守命令が下された。

 

乗組員達はそれぞれブラスターを装備して応戦するも各所で防御地点が突破されて次々と艦内への侵入を許している。

 

だが裏を返せばここで第9艦隊の陸上戦力の殆どを抑え込めばライカンが地上で考えていたよりも戦況は優位に働く。

 

本来第9艦隊の1個軍を相手にする予定だった戦力が約1個師団相手で済むのだ。

 

余剰戦力を速やかに司令部に回せば反乱は鎮圧出来る。

 

サリマは死ぬ覚悟を持って誰にも聞こえない声でふと呟いた。

 

「ライカン中将……後は任せましたよ…!」

 

コルサントの軌道上で1人の司令官が仲間を信じて抗戦を開始した。

 

 

 

 

-首都惑星コルサント 第204機動兵団管轄区域 アンダーワールド・ポータル-

コルサント防衛艦隊が襲撃を受けてる頃、ライカンはコスやタントール、護衛の兵士を引き連れてアンダーワールド・ポータルの視察に向かった。

 

本来ならポータルはとっくの昔に封鎖され、第2空挺旅団は連邦管区から締め出されているはずだった。

 

ライカンがいざポータルに来てみると封鎖はおろか兵員すら展開されていなかった。

 

「一体どうなってるんだ……」

 

ライカンは困惑しながら唖然とポータルの小穴を見つめた。

 

今でも下層から民間のスピーダーや輸送船が浮き上がっている。

 

「警備隊長、何故ポータルの封鎖をしていないんだ?兵団長から封鎖の命令があったはず」

 

タントールの質問に警備隊長の大尉は平然とした顔で「その兵団長殿に命令を受けてこうしています」と答えた。

 

「兵団長から待機命令が言い渡されました。ですので今待機を」

 

「その命令は本当か?」

 

ライカンに対し大尉は敬礼し「はい」と頷いた。

 

ライカンはコスと顔を見合わせ、一度バロッキに聞き直してみることにした。

 

ポータルの警備所でコムリンクを借りて第204機動兵団司令部に連絡を取った。

 

「バロッキ少将、何故封鎖を中止したんですか?」

 

ライカンの問いにバロッキは言葉を選びながら答えた。

 

この時点でライカンはまだ通信が傍受されていることを知らない。

 

『先ほど検問所から報告を受けました……第9艦隊がコルサント内に入ってくると。これは尋常ではない事態です……その上で第2空挺と交戦にでもなったら…!』

 

「だからそうならない為にここで第2空挺を食い止めて第9艦隊を押さえ込まなければ指揮本部が崩壊します!」

 

ライカンは反論したがついにバロッキが我慢出来なくなって白状した。

 

『通信を傍受されているというのにどうすればいいんですか!?部隊の配置も!作戦計画も全て知られてしまいます!我々は司令官の力にはなれません……』

 

そう言ってバロッキは通信を切った。

 

想像以上の事態にライカンとタントールは唖然としたままポータルを眺めるしか出来なかった。

 

するとスピーダーから連絡将校を務めていた首都警備司令部の中尉が「司令官閣下!!」と言って走ってきた。

 

「何があった」

 

「コルサント本国防衛艦隊が第9艦隊と離反艦隊の攻撃を受けて現在各艦で戦闘が発生!司令官のサリマ少将は徹底抗戦を命じました!」

 

「なんだと!?」

 

ライカンは唖然としコルサントの夜空を見つめた。

 

あの空の上で頼れる宇宙の仲間達が戦っている。

 

恐らくはもう助からないと覚悟をしながら。

 

「まさか本国艦隊すら襲うなんて……思いもしませんでした。連中は分離主義者に侵略されても構わないと思っているんでしょうか」

 

タントールは怒りを表に出しながら反乱軍に対し毒づいた。

 

「皆分離主義者よりターキンが怖いのだろう」

 

「正直な話、保安司令部が盗聴していたのは恐ろしいです。連中にこちらの作戦全てが聴かれていたなんて……」

 

タントールの発言を受けてライカンは嫌がらせに近いかもしれないが1つの案を思いついた。

 

 

 

 

ライカンは首都警備司令部の全部隊に対してある命令を出した。

 

当然それは第30首都警備師団の司令部で傍聴しているラックスらにも伝わった。

 

『全部隊に次ぐ、本日コルサント時間19時に合同参謀総長を拉致した反乱軍勢力…』

 

「音量を上げて隣の部屋にも流せ」

 

ラックスの命令で傍受された通信は大音量で作戦室に流れる。

 

しかもその内容は徹底して冷酷であった。

 

『首謀者のウィルハフ・ターキン、ニルス・テナント、テリナルド・スクリード、ジャージャロッド、ウルリック・タッグ、コマンダーサイア、コマンダーカーギー』

 

ライカンは現在反乱軍側についた部隊の司令官と第30首都警備師団司令部に通信を行った際に出た将校の名前を読み上げた。

 

作戦室にいたテナントとウルリックは顔を上げ己の不安が最大限まで高まっていることを否が応でも感じた。

 

『既に射殺命令を下したカシオ・タッグ、コナン・アントニオ・モッティ、ジョードー、コマンダーフォックス、そして保安司令部のモラドミン・バスト、ガリアス・ラックス、ギデオン、エヴァックス』

 

この時点で初めて保安司令部の面々の名前が口に出された。

 

ラックスはとうの昔に覚悟を決めており、そのことについて何か思うことはなかったが。

 

『以上の反乱首謀者及び同調した勢力は、見つけ次第射殺せよ。繰り返す…』

 

「ああああああああ!!」

 

ウルリックは思いっきりコムリンクをホロテーブルに叩きつけた。

 

これでいよいよ逃げられなくなった。

 

もう戦って勝つ以外に生き残る方法はなくなったのだ。

 

一方隣で指揮棒を持って作戦を統括していたテナントは至って冷静である。

 

彼もラックスと同じで既に覚悟が決まっていた。

 

「ウルリック、第2空挺旅団の位置情報を報告しろ」

 

「提督…!私は出来る限りのことをやりました…!」

 

急に泣き言を言い出しそうになったウルリックをテナントは厳しく叱責した。

 

「こいつめ、宇宙軍とはいえ先輩かつ上官だぞ?さっさと質問に答えろ!第2空挺はポータルを越えたか聞いてるんだ!」

 

テナントに威圧されウルリックは仕方なさそうにウェッセルに尋ねた。

 

ウェッセルからの報告は既に全部隊がポータル内に突入したということであった。

 

それを聞いてウルリックは安心したように同じことをテナントに報告した。

 

「旅団の後続部隊もポータルに入りました、まもなくトンネルを抜けると」

 

「よし、バスト准将、念の為保安司令部のSARFトルーパーに確認させろ」

 

「こちら参謀長、SS(Special Scout)-1、第2空挺旅団の様子を報告しろ」

 

バストはコムリンクを用いて保安司令部隷下のスペシャル・アドバンス・レコン・フォース・トルーパー、通称SARFトルーパーに連絡を取った。

 

SARFトルーパーはARF課程及びSARF課程をクリアしたスカウト・トルーパーが任命される特殊部隊の一種であり、プローブ・ドロイドを用いた長距離かつ広範囲の偵察活動など様々な特殊偵察任務に従事する偵察のエキスパートである。

 

保安司令部は元々ショック・トルーパー部隊所属のARFトルーパーが数多くSARFに選出されており、バストが連絡を取った2名も元はTKショック・トルーパーからSARFになった人物だ。

 

基本的にSARFトルーパーは1個分隊ないし2名1組で行動する。

 

今回の部隊はSARFトルーパーの最小単位である2名偵察班であった。

 

命令を受け取ったトルーパーはドロイド操縦士がタブレットを用いてプローブ・ドロイドを操作する。

 

本来は分離主義者の工作ドロイドに対抗するはずの装備が反乱軍によって悪用されていた。

 

操作中のドロイド1体がポータルの端末にコンピューター・プローブを差し込み、ポータルのコンピューターにアクセスした。

 

『監視映像をそちらに転送します。第2空挺旅団は全部隊がポータルに突入。先頭部隊はもう間も無く緊急時のトンネルを通過します』

 

「了解、引き続き監視を続けろ。第2空挺は間も無くトンネルを抜けます」

 

バストの報告を受けてテナントは力強くガッツポーズを浮かべた。

 

作戦室の方へ戻ってきたラックスも笑みを浮かべている。

 

「よし!これならすぐ連邦管区に着くよな?」

 

「それに関しては間違いありません。もうセンターは目と鼻の先も同然です」

 

テナントは確定したも同然の勝利に湧き上がった。

 

しかし敵はまだ諦めてはいない。

 

同じ頃、ライカンは部下と共にスピーダーでアンダーワールドに降りて封鎖泉の構築を開始した。

 

スピーダーには簡易的な変更シールド発生装置が搭載されており、強度を上げれば即座にガンシップの侵入を阻める。

 

ライカンはスピーダーから降りると部下達に命令した。

 

「タントール大佐!マスターコス!急いでシールドを!1箇所だけでも塞ぐぞ!」

 

重たい偏向シールド発生装置をライカンはたった1人で運んだ。

 

「了解!全員直ちにシールドを設置せよ!」

 

タントールは部下に命じ、その間にコスはフォースを用いて2つの発生装置を取り付けた。

 

このままシールドを何枚か構築出来ればと考えていた矢先、彼らは来た。

 

眼前には第2空挺旅団の輸送機が見えた。

 

この時第2空挺旅団は合同参謀本部センターのドドンナから引き返すよう要求を受けていた。

 

『こちら参謀次長ジャン・ドドンナ将軍だ。第2空挺旅団、直ちに引き返せ!もし1人でも死者を出したら軍法会議で最高刑に処す。今すぐ引き返すんだ!』

 

ドドンナの説得も虚しくウェッセルは静かに通信を切り、部隊を前進させた。

 

合同参謀本部センターでは絶望的な空気が流れ、誰もが意気消沈していたがそんな事は気にする必要ない。

 

もう間も無くトンネルを抜けるという頃まで近づいた時、奥から1人の男が歩いてくる。

 

センチネル級のライトに照らされ男の姿がよく見えた。

 

ライカンだ。

 

彼は「止まってくれ」と願いながら第2空挺旅団の前に出た。

 

トンネルはセンチネル級ですら悠々と通過出来るが高さの都合上、どう頑張ってもライカンは轢き殺されてしまう。

 

ウェッセルはセンチネル級のコックピットで「あの野郎何してるんだ…!」と静かに怒りの声をあげた。

 

タントール、コスが見守る中ライカンは第2空挺旅団の前に文字通り立ちはだかった。

 

センチネル級はライカンの何倍も大きいが彼は一切怯まず、その場に立った。

 

ウェッセルも頼むからどこかへ行ってくれと願いっていたがライカンは1歩も動かない。

 

ここでウェッセルの方が根負けした。

 

「あいつ、全然逃げる気がありません…!」

 

「っ全隊緊急停止!」

 

旅団の各機を停止させ、僅か1メートルもないところでセンチネル級はライカンの前に停止した。

 

後一歩でライカンは確実に死んでいた。

 

急停止の衝撃から立ち直り、コックピットから外を見るとウェッセル達の距離からもライカンの姿がはっきりと見えた。

 

「三つ星……相手は中将です…!」

 

メイズは驚いて声を引き攣らせた。

 

ウェッセルは「この際轢いてしまえ!」と遅すぎる判断を下したが一度停止した以上そう簡単にその命令を実行出来る者はいなかった。

 

「目の前で中将を殺せば確実に軍法会議です!」

 

「そんなことは分かってる!」

 

「状況確認をしましょう…!きっと何かわかるはずです…!」

 

そう言ってメイズはウェッセルが切った通信を元に戻した。

 

幾つかの雑音の末、彼らにとって最も聴き慣れた声が聞こえてくる。

 

『私は特戦司令官、ピット・オノランだ。第2空挺旅団、今すぐ帰投しなさい』

 

「司令官です…!」

 

「司令官本人だ……」

 

ウィルコが悪いという訳ではない、彼は確かに最初オノランの意向を伝えた。

 

されど本人代理と本人が直接伝えるのとではやはり温度感が違う。

 

オノランが直接放った声明にはとても強力な効果があった。

 

『今引き返せば誰の責任も問わない。だが今お前達が連邦管区に入ればそれはもう戦争だ、この意味が分かるか!?』

 

「……っ……!」

 

『今すぐ戻ってきなさい、我々は同じ特戦司だ。何があろうと君達の名誉は私が守る』

 

そう言ってオノランは通信を切った。

 

ウェッセルはメイズと顔を見合わせ、撤退の決断を下した。

 

きっと旅団長も何が間違った命令を掴まされた、正しいのは特戦司令官なのだろうと判断して。

 

狭い通路を大きな輸送機が身を翻して後退していく。

 

第2空挺旅団は一度目の撤退を決意した。

 

無論その様子はSARFトルーパーがしっかり記録している。

 

『第2空挺旅団が引き返していきます!』と丁度その場にいたラックスに報告した。

 

「なんで第2が引き返してるんだ…!第204兵団に妨害されたのか?」

 

『いえ!トンネルに大規模な部隊は確認出来ません!旅団の前には1名だけ立っています!』

 

ラックスはそのあり得ない報告を聞いて何度も聞き直した。

 

「1人?もう一度聞くが本当に1人なのか?」

 

「何が起こってるんだ」

 

「もっとちゃんと詳しく話せ!何が起きてるんだ!」

 

「大佐!私に貸せ!」

 

テナントはラックスから無理やりコムリンクを奪うとテナントはSARFトルーパーに聞き直した。

 

「もう一度状況を報告しろ!」

 

『橋の途中で1人の将校と見られる人物が侵入を防いでいます、映像を拡大します。橋の人物は中将……っ首都警備司令官です!』

 

作戦室の全員が顔を見合わせ表情を強張らせた。

 

ライカンならそれくらいの無茶をする、既に彼らの共通認識となっていた。

 

もう一度ラックスがSARFトルーパーに聞き直した。

 

「で、交戦状態にはなっているのか?」

 

『いえ!シールドも展開されていないはずですが旅団は各地で後退を開始しています!』

 

「では理由はなんだ?なんで引き返しているんだ!」

 

「クソッ!ウェッセル中佐もイカれやがったのか!?」

 

ウルリックはウェッセルに向けてどうしようもない怒りを吐き出した。

 

いくら眼前にいるのが首都警備司令官だとはいえ引き返す理由にはならない。

 

『後もう1人、司令官の後ろにジェダイらしき人が』

 

「ジェダイ?……顧問で新しく入ってきたアレか……ジェダイにマインドコントロールでもされてるっていうのか?」

 

「あり得ない、我々は特戦司だ。フォースなんぞ効かないよう訓練を施されてる!」

 

地上軍最強の歩兵集団特戦司、基本的にはマインド・トリックは効かないような訓練を受けている。

 

何せいざジェダイが再び反乱を起こしたら真正面から対決するのは特戦司という暗黙のルールがあった。

 

彼らは分離主義者の工作員制圧や後方浸透による特殊作戦だけでなく、対ジェダイ戦も視野に入れていた。

 

「とにかく、第2空挺旅団は引き返したんだな?」

 

『それは間違いありません!』

 

「では引き続き偵察を続けろ。急いでターキンに報告せねば…!」

 

冷静さを取り戻したテナントはすぐに元老院オフィス・ビルのターキンへ連絡をとり始めた。

 

その頃ライカンは眼前で引き返す第2空挺旅団の姿を見て一先ずの安堵を覚えた。

 

背後からコスとタントールが走ってきた。

 

「司令官!ご無事ですか!?」

 

「ああ、なんとかな」

 

「後一歩で無理やりフォースで引き寄せてるとこでした」

 

「ではタイミングが良かった」

 

ライカンは軽く2人の肩を叩くと自身のスピーダーに戻ろうとした。

 

「まだ第9艦隊が残ってる。急いで対策を考えよう」

 

一難去ってまだ一難が残っている。

 

まだこの長い夜は続くのだ。

 

 

 

 

-首都惑星コルサント ギャラクティック・シティ 連邦管区 元老院オフィス・ビル-

二度目の説得はまたしても失敗した。

 

オーガナが最後まで抵抗し続けた結果アミダも最後まで折れることはなかった。

 

統一会の将官達は悪口を言いながら元老院オフィス・ビルを後にした。

 

「腐れオルデラニアンめ、邪魔ばっかりしやがって」

 

「議長もなんだあれは、介護老人か」

 

「司令官!」

 

スピーダーの奥からエヴァックス中佐が走ってきた。

 

彼は敬礼する暇も惜しんでターキンに報告しました。

 

「第2空挺旅団が引き返しました!!ライカン司令官に説得されたようです!!」

 

「この非常事態に情けない連中だ」

 

ターキンは第2空挺旅団を罵倒しながらもなんとか彼らを引き戻させる方法を考えた。

 

旅団を連れてくるには直接旅団長に任せる他ない。

 

「ウルリックはまだ司令部にいるな?」

 

「はい、司令部で指揮を取っています」

 

「では急いで向かうぞ」

 

ターキンは誰よりも早くスピーダーに乗り込んだ。

 

ターキンらのスピーダーは護衛として反乱軍側のVウィング隊に護衛され安全に第30首都警備師団司令部まで辿り着いた。

 

正に疾風の如き速さで司令部に帰還した。

 

一行の帰還を聞きつけたテナントはウルリックを連れて出迎えに来た。

 

司令部の正面玄関でターキンらを待っていると一番先頭のスピーダーからターキンが出てきた。

 

しかも結果を報告することもなくいきなり隣にいたウルリックに駆け寄り、突然彼を褒め称えた。

 

「ウルリック・タッグ、コア・ワールド貴族の中で一番誇り高き勇敢な男よ」

 

「アハハハ……えっと、急にどうしました…?」

 

ウルリックは最初、自身がターキンに叱責されると思っていた。

 

何せ指揮下の第2空挺旅団が駐屯地に戻ってしまったのだ。

 

責任問題でターキンから詰められると思い表情は暗いままだった。

 

それがターキンは如何にも機嫌が良さそうな雰囲気で話しかけてきた。

 

その姿が不気味で仕方なかった。

 

「ウルリック、君が行け。君が行って第2空挺旅団を連れ戻してこい」

 

「えっ?ハハ、ご冗談を…」

 

「笑ったな?」

 

ターキンの無理に近い命令を聞きウルリックは苦笑を浮かべるとターキンは突然豹変した。

 

いつもの冷酷な表情に戻り静かに詰め寄った。

 

「私の発言が冗談に聞こえたか?」

 

「いえっ…!そんな…!」

 

たった一言でウルリックは今まで感じたことのないような恐怖に襲われ、全身が震え上がった。

 

彼の背後には巨大なランコアが宿っているようだった。

 

ターキンは無言でエヴァックスからDC-17を奪い、ブラスターをキル・モードに変更した。

 

その行動を見て周りの諸将は止めに入ったが「撃つつもりはない」と叫んだ。

 

「ウルリック、私の前に来い、そうだ。この銃を持て、早く持ちたまえ」

 

ウルリックがDC-17を手にするとターキンは彼の手を持って自身の胸にブラスターを押し当てた。

 

「行きたくないならこの私の心臓を撃て。撃てないならば直ちに行け、第2空挺旅団長!」

 

ウルリックの手は震え続けている。

 

この時彼にはもうブラスターを撃つ撃たないの選択はなかった。

 

いかにこの恐怖から逃れるかという一点にあった。

 

そして恐怖から逃れる方法は1つしかない。

 

ウルリックは自身のスピーダーに全速力で駆け出した。

 

一方作戦室に戻ったテナント達は急いで次の策略を実行し始めた。

 

まず隣室に行きラックスら保安司令部の将校達に命令する。

 

「今から血縁、出身惑星、学閥、所属部隊、防衛軍、ジュディシアル、全てのツテを利用してコルサントと周辺惑星全ての部隊に連絡をつけろ。全部隊の進撃を阻止するんだ。出ないと我々は勝てないぞ」

 

「直ちに実行します」

 

統一会とは組織である、組織の強みとは様々あるが人間が繋いだネットワークを駆使出来るというのは今回かなりのアドバンテージであった。

 

司令部にあるありとあらゆるコムリンクを使って共和国軍の各部隊将校に連絡を入れた。

 

ジャージャロッドら重鎮達は勿論のこと佐官、尉官、更には下士官まで動員された。

 

とにかく人間が今まで様々な分野で関わってきた人脈を用いて説得と共力要請を取り付ける。

 

一部には説得に応じず鎮圧軍に加わると断言した気概のある将校もいたが大多数は統一会側の説得を受け入れた。

 

各地で出撃する予定だったはずの部隊が出動を停止した。

 

第204機動兵団、第506歩兵師団は全部隊が出動を停止し、首都警備司令部も攻勢の要である首都機械化兵団と第46首都警備師団も凡そ7割以上が出動を拒否した。

 

防衛線を構築していた第37首都警備師団も凡そ3割からの応答が途絶、出撃を整えた第1艦隊の地上戦力を抑えるのは不可能だった。

 

出動準備を整えて後少しで出動出来るはずだった第8空挺旅団も出撃を停止せざるを得なくなった。

 

首都航空兵団も中隊単位で無断で帰投する隊が続出した。

 

こうした人脈によるサボタージュ攻撃で一番被害が少なかったのはクローン・トルーパー部隊だったと言える。

 

人脈といっても彼らの繋がりは同じ兄弟たるクローンくらいで上官の命令に忠実な彼らはコルサント中の部隊で最も離反者が少なかった。

 

それでもフォックスよりも人望が高いコマンダーサイアの呼びかけで2、3個大隊が反乱軍側についた。

 

この中で特に大きいサボタージュが第5艦隊であった。

 

『…それでコバーンのやつは無事なんだな?』

 

「ああ、勿論だ。国防長官と最高議長の意向が通信障害で上手く伝わってないだけだ。とにかく出撃すれば余計な混乱が生まれる」

 

ジャージャロッドはキリアンにそう説明し「分かってくれたか?」と念押しした。

 

軍内で特に年長者であるキリアンにここまで説明出来るのはジャージャロッドくらいしかいなかった。

 

『…分かった、だが先遣隊はそのままだからな?』

 

「…好きにしろ」

 

そういって通信は切れた。

 

一先ず説得は成功した。

 

鎮圧軍は動かせるはずの殆どの部隊を喪失したのだ。

 

 

 

 

 

-首都惑星コルサント 第2空挺旅団 駐屯地-

スピーダーで第2空挺旅団に向かう際、ウルリックはこれ以上にないほど錯乱していた。

 

ずっとスピーダー運転手の少尉に向かって「もっとスピード上げろ!とにかく早く行くんだよ!」と無茶な要求ばかり突きつけていた。

 

「早く空挺旅団と合流して連邦管区に連れ戻さないと!!俺がターキン提督にそう指示された!!あのお方にだぞ!!」

 

少尉の努力もあってか出動した第2空挺旅団の輸送部隊が駐屯地に辿り着いた瞬間に、ウルリックは到着出来た。

 

お陰で部隊はまだ武装したままでLAAT/cからウォーカーは下ろしていない。

 

トルーパーの装備もそのままでこのまま戻ればすぐに戦闘出来る状態だった。

 

「旅団長!今までどこにいらしたのですか?」

 

ウェッセルはセンチネル級から降りてウルリックに敬礼した。

 

ウルリックは敬礼を返すなりウェッセルの質問には答えず、彼を叱責した。

 

「何してるんだ貴様ら!」

 

「えっ?」

 

ウェッセルはメイズと顔を見合わせて困惑した。

 

「戻れ、急いで連邦管区に進軍しろ!」

 

「あの旅団長、我々は特戦司令官に戻るよう指示されまして…」

 

メイズは困惑気味に理由を説明した。

 

それに合わせるようにウェッセルはウルリックに尋ねた。

 

「むしろ旅団長は何故我々に統合本部センターへ向かうよう指示をされたのですか…?正直な話あまり意味が…」

 

「笑ったな?」

 

「えっ?」

 

ウェッセルは困惑した表情のままだったがウルリックは断言した。

 

提督から学んだ術を今ここで使うべきだと判断したのだ。

 

ウルリックはもう一度「今俺を笑ったろ?」と聞き直した。

 

ウェッセルとメイズは顔を見合わせる。

 

「いえ、笑うなどとんでも…」

 

「今俺を笑ったよなぁッ!?」

 

「うわっ何するんですか!?」

 

ウルリックは突如DC-17をホルスターから取り出し、グリップ部分をウェッセルに押し付けた。

 

ウェッセルは困惑したようにセンチネル級の船体まで引き下がった。

 

そこへウルリックが「こいつを持て!」と迫る。

 

仕方なしにウェッセルはDC-17を言われた通りに持つと、銃口をウルリックへ向けるよう指示された。

 

「旅団長!落ち着いてください!」

 

「メイズ、お前は黙ってろ!おい参謀長、いやみんなもよく聞け!出動したくない奴は俺を撃て!俺を殺して出動を拒否しろ!嫌なら急いで連邦管区に戻れ!敵はセンターの地下バンカーにあるんだぞ!」

 

「何言ってるんですか!?」

 

地上に降りていた兵士たちに動揺が走った。

 

ウェッセルの手はウルリックが最初にブラスターを持たされた時と同じように震えていた。

 

「どうするんだ参謀長!ウェッセル中佐!!」

 

ウルリックの気迫に押され、ウェッセルが引き金を引くことはなかった。

 

その場にいた全ての将兵がそうだ。

 

多くの者はこの日の出来事を正確に知っていた訳ではない。

 

知っていたら正義を重んじる誰かが必ずウルリックを売っている。

 

無知な強者達を連れて、再びガンシップは空へ飛び立った。

 

 

 

「ウルリックがやってくれたぞ!」

 

保安司令官は手洗い場で眠気覚ましに顔を洗い、乱れた髪を直しているところにテナントが嬉々揚々と報告に来た。

 

ターキンは顔をタオルで拭くとテナントが浮かべているのと同じような笑みを浮かべた。

 

「第2空挺旅団が出動した!我々の勝ちだ!」

 

そういって2人は力強く握手を交わした。

 

テナントは「うちの艦隊もすぐ到着するしなんとかなりそうだな」と呟いた。

 

ターキンは小さく頷きながらある質問をテナントに投げ掛けた。

 

「テナントよ、人間という生き物は命令するのが好きだと思うか?」

 

「どうしたんだ急に?」

 

テナントはニコニコしながら聞き返した。

 

「私がまだ幼い頃、父から”()()()”ということを教えられた。導く者がいてそれに仕える者がいる」

 

ターキンはテナントに昔話をしつつ、自身もあの頃を思い出した。

 

初めてキャリオン・プラトーに行った日のこと、ジョヴァ*19達と共にプラトーで生活することが慣れた日のこと、そしてプラトーから帰って父の言ったことが理解できた日のことを。

 

「人間は皆、本質的には強い者に導かれたいと思ってる。召使でも一兵卒でも、将又将校でもそうだ。皆その”()()()”にいる」

 

「ああ、そうかもな。早く行こう、みんなが待ってる」

 

「あそこにいる将官達でさえそうだ。先輩だろうと同期だろうと仕える”()()()”の人間だ。だが我々は違う」

 

ターキンはテナントの肩を軽く叩いた。

 

テナントの方は若干作り笑いじみた笑みを浮かべているがターキンは気にしなかった。

 

本質的には彼だって仕える側の”()()()”にいる人間だからだ。

 

「我々が導く側の”()()()”にいる人間だ。であれば導く者として恩恵を与えねばならない。あそこの者達が我々におこぼれを望むなら、そのおこぼれを口いっぱいに詰め込んでやろうじゃないか」

 

この私が、ターキンはそういって手洗い場を後にした。

 

計り知れぬターキンの心のうちに驚くテナントを置いていきながら。

 

 

 

 

 

反乱軍に光差せば、鎮圧軍には暗い影が迫り来る。

 

各地で鎮圧軍部隊の出動が停止したことはライカンにとって衝撃だった。

 

第506歩兵師団のジリア・シェール准将からは直接『申し訳ない』という謝罪の通信が入り、それから司令部の幕僚達によって状況報告が入ってきた。

 

隷下の師団、兵団、航空兵団、全てに離反及び出動拒否を宣言して音信不通になった部隊が続出し、動かせる戦力は当初予定されていたものよりも圧倒的に少なかった。

 

首都警備師団を強襲する為の攻勢部隊は全ての戦力を足しても1個師団程度であり、本来想定していた戦力には遠く及ばなかった。

 

それでもないよりマシだとライカンは考え兵団長を攻勢部隊指揮官に任命し、部隊を師団司令部近くまで展開した。

 

無論これでは真正面からの攻勢で司令部を制圧することは不可能である。

 

その為この攻勢部隊を揺動とし、背後から奇襲する部隊を呼び寄せる必要があった。

 

現在ライカンは司令部に帰投しつつ出動を撤回したキリアンにもう一度出動するよう願い出ていた。

 

『ライカン中将、申し訳ないが我々は出動出来ない。いくらなんでもコルサントの軌道上で撃ち合いをするのは無理だ』

 

「キリアン提督…!私は何もコルサントの大気圏で艦隊戦をお願いしている訳ではありません…!せめて地上部隊だけでも送っていただければそれでいいのです!」

 

『ライカン中将、私は先程報告を受けたのだが第2空挺旅団が再び連邦管区に向かったらしいな』

 

「えっ!?」

 

キリアンの報告にライカンは驚いた。

 

引き返したはずの第2空挺旅団が何故今更になって戻ってくるのか。

 

ターキンらと違って通信傍受の出来ない彼らには理解しようがない異常事態であった。

 

『我々が出撃したとしても到着する頃には官庁街が占拠されてるはずだ。それにコルサントに到着したとしても離反した第9艦隊と防衛艦隊と対決することになる。勿論勝つの私だが幾万人の同胞の将兵をここで犠牲にする訳にはいかない』

 

「ですが!」

 

『もう一度司令部に連絡を取ってターキン達を説得してみようと思う。奴らの話じゃコバーンは無事らしいし上手く納得させようとは思うが期待はしないでくれ、それでは』

 

「キリアン提督!」

 

ライカンの叫びも虚しくキリアンからの通信は切れた。

 

これで第1艦隊と第9艦隊の地上戦力を防ぐ手札はなくなってしまった。

 

軍官庁街はショック・トルーパー2個師団と既存の警備隊が防衛しているとはいえ、重戦力と軌道爆撃の支援が可能な反乱軍相手には勝てないだろう。

 

となれば残るは反乱軍司令部を制圧して首謀者達の首を刎ねる他なくなった。

 

一旦スピーダーが停止し、ライカンは外に出た。

 

タントールとコスも彼の側に待機し、ライカンの命令を待った。

 

「司令部を制圧するには……正面から揺動として攻勢部隊を突入させ、その間に後方から機動力のある部隊で襲撃するしかない」

 

「しかしもう我々にはそんな戦力どこにも……予備戦力の第56師団も第1艦隊阻止の為に回してしまいましたし……」

 

残されているのは首都警備司令部直轄の警備隊と一部の重戦力だけであった。

 

勿論これだけでは裏から強襲するにしても戦力が少なすぎる。

 

少なくとも連隊以上の兵力は必要であった。

 

「メイディン大佐の第8空挺旅団ですかな」

 

コスの読みは大当たりでライカンは小さく頷いた。

 

「第2空挺よりも早く着いて尚且つ機動力があるのはこの部隊だけだ」

 

「しかし既に第8空挺は出動停止を…!」

 

「私が直接連絡を取って出動するよう要請を出す。今すぐコムリンクを!」

 

ライカンかタントールからコムリンクを受け取ると早速メイディンに通信を繋げた。

 

その頃、第8空挺旅団長のクリックス・メイディンは駐屯地の窓から外で待機する将兵を見て己の不正義に嫌気が差した。

 

本来なら多少の損害は覚悟してでも出撃するべきだった。

 

しかし数多くの同僚からの連絡でメイディンは一旦は出撃を停止させた。

 

今行っても兵を無駄に死なせるだけだ、君はまだ若いんだからここで経歴を終えたくはないだろう、中立さえ貫けばそれで十分など。

 

オノランから最も真面目な旅団長と称される程の人物だ、自身の出世や経歴の汚点というのは一切考えたことがない。

 

出撃を停止した一番の理由は部下の将兵に出る犠牲と友軍の兵士と戦うという居た堪れなさにあった。

 

「旅団長、連絡が来ています」

 

「また保安司令部か?」

 

報告に来た大尉に対しライカンはそう聞き返した。

 

しかし大尉は「いえ、首都警備司令部のライカン司令官です」と訂正した。

 

メイディンは作戦室に戻った。

 

ライカンとは何かシンパシーを感じたのかも知れない。

 

彼には答えてもいいという気持ちがメイディンの中にあった。

 

『クリックス・メイディンです』

 

暫く待った後にメイディンは通信に出た。

 

「カーリスト・ライカンだ。旅団長、あなたの気持ちはよく分かるが」

 

『中将、要件のみお願いします』

 

この非常時に無駄な話はいらないとメイディンは早速話を進めた。

 

ライカンも特に不満に思うことなく彼に要望を出した。

 

「今すぐ第8空挺旅団を第30首都警備師団司令部の裏へ。合図と同時に司令部を強襲して反乱首謀者達を射殺してください」

 

ライカンの要望は簡潔かつ苛烈であった。

 

つまり彼はメイディンら第8空挺旅団に再び出撃せよと言っているのだ。

 

勿論この提案に最初に出撃を停止させたメイディンは反論を告げた。

 

『第2空挺も再び出撃したと聞きました。下手したら精鋭の空挺同士の戦闘になります。そうなればコルサントはもう内戦状態に陥る!』

 

「落ち着いて旅団長、第8空挺にはあくまで司令部の強襲をやってもらいたいだけでセンターに来る空挺旅団との戦闘に回すつもりはない」

 

『しかし…何故我々がいつも先頭に立たせられるんですか…!相手は同じ共和国軍です…!同胞を撃つ職務を我々に押し付けているようにしか見えない…!』

 

もしこれが分離主義者のバトル・ドロイド相手だったら仮に全滅するとしてもメイディンは戦場へ向かうだろう。

 

しかし相手は同じ共和国軍なのだ。

 

特にTKトルーパーは徴兵された人間が大半で元は共和国の一般国民だ。

 

反乱軍とはいえ彼ら彼女らに銃口を向けるのは気が引けた。

 

「今夜最も早く司令部を急襲出来るのは第8空挺旅団だけなんだ…!だから旅団長には直ちに出動をっ」

 

『…説得は無用です、第8空挺旅団は出動させられません。他の部隊だって似たようなものでしょう。我々にはもう勝ち目はない』

 

メイディンは諦めさせるようにそう言ったがライカンは説得と要請を続けた。

 

「正面の戦力を我々首都警備司令部で押さえ込んでその間に第8空挺旅団が奇襲を行えば全軍の損害は極めて小さなもので済む。メイディン大佐、勝ち目のない戦いなんじゃない、我々が力を合わせれば必ず勝てる戦いだ」

 

メイディンは天井を見上げため息をついた。

 

彼はこの時人生でこれ以上ないほど苦渋の選択に迫られた。

 

旅団を出すか出さないか、たった二択だが共和国の運命を揺るがしかねない二択だ。

 

ライカンの言ってることは尤もだった。

 

確かに首都警備司令部の残存戦力で攻撃すれば反乱軍の師団は戦力を拘束され、空挺旅団の奇襲で確実に制圧出来る。

 

最悪反乱軍が両方面に均等に戦力を分けたとしても半個師団、どちらの方面からでも突破は可能でそこに勝機はあった。

 

だがそれと同時に博打でもあった。

 

もし反乱軍がもう1個師団でも軍官庁街の制圧ではなく防御に回せばこの作戦は成り立たない。

 

そうなれば部下に多数の負傷者が出るだけでなく最悪反逆罪が適応されてしまう。

 

今合同参謀本部センターで指揮本部を構築している奴らもはっきり言って頼りにはならない。

 

負ける可能性だって十分にあるのだ。

 

「メイディン大佐」

 

ライカンはメイディンの名を呼んだ。

 

彼は返事をしなかった、今ここではいもいいえも言えないからだ。

 

「メイディン大佐…!1つだけいいか」

 

メイディンの息はストレスで荒くなっていた。

 

それでも彼は『どうぞ』とライカンに発言を許した。

 

ライカンも表情は暗いままだ。

 

「私だって仲間同士戦うことはずっと避けたかったが…奴らにコルサントは、共和国は差し出せない」

 

ここで反乱軍の暴挙を許せば共和国は悪しき時代に突入してしまう。

 

それはメイディンだって分かっていた。

 

ライカンは更に続ける。

 

「あなたはたった14歳でクローン戦争で戦ったと聞いた。あの戦争には私もいたから分かる。そして戦争が終わってこの年になってもまだ軍服を着て、軍人をやっている理由もだ」

 

ライカンは言葉に詰まりながら熱意を持って語った。

 

「戦うべき時に死力を尽くして戦い、国家と国民を守る軍人だからでは?」

 

ライカンは最後に「私は原則を守って戦う」と覚悟を見せた。

 

その言葉に胸打たれたのかメイディンの心はスッと晴れやかなものになった。

 

この動乱で忘れていた軍人の本分のようなものが戻ってきたのだ。

 

『…第8空挺旅団は出動し、1時間以内に強襲態勢を整えます。もし会うとするならば、反乱軍の司令部で会いましょう』

 

そう言ってメイディンは出動を決定した。

 

彼にとっては一世一代の決断であった。

 

「感謝するメイディン大佐…!司令部で会おう」

 

そう言って2人の通信は切れた。

 

ライカンは安心したようにタントールとコスと顔を見合わせた。

 

まだ共に戦える仲間がいる、その安心感は計り知れないものであった。

 

 

 

 

 

-首都惑星コルサント 第30首都警備師団司令部 作戦室-

第8空挺旅団の出動は当然通信傍受やSARFトルーパーの偵察といった様々な諜報活動から統一会の面々にも伝わってきた。

 

LAAT/cにAT-TEを抱え、大量のリパブリック・ガンシップと輸送船の空挺が司令部に向かってくる。

 

しかもそれに呼応して首都警備司令部の残存戦力が臨時戦闘団を構築し、出撃を開始した。

 

一番の問題は両部隊とも第9艦隊、第1艦隊の野戦軍、第2空挺旅団よりも確実に早く到着するという点だ。

 

こちらが指揮本部を攻略する前に連中は司令部制圧に取り掛かってしまう。

 

諸将はまたもや絶望するターンに陥った。

 

「クソッ!なんてことだ!」

 

「正面の師団はともかく空挺まで来たらここは持ち堪えられないぞ!」

 

「ここが死場所か!」

 

「誰か第8空挺に知人がいる方はいますか?あそこの旅団にはもうツテがなくて、どなたかいませんか?」

 

諸将が絶望している間にラックスは旅団の進撃を停止しようとツテを探して回っていた。

 

「ターキン提督…!一体どうするつもりだ…!」

 

モロックはターキンに尋ねた。

 

ターキンは密かに苛立ちを覚えていた。

 

ここまで来てなんと覚悟のない将校ばかりか。

 

彼は二重の意味を込めて吐き捨てた。

 

「なんて姿だ全く、ここまで度胸がない者達がよくもまあ将官にまでなれたものだな。亡き閣下は再びクーデターを起こされないよう、ジェダイよりバカな軍人どもを将官に押し上げたと今なら理解出来る」

 

その言葉は火に油を注ぐようなものだった。

 

「ターキン!貴様なんて言い方だ!ふざけるのも大概にしろ!」

 

真っ先に起こったのはスクリードだった。

 

しかしターキンは平然とした顔で「落ち着きたまえスクリード君」と彼を宥めた。

 

「私が言ったのは合同参謀本部に籠る連中のことだよ。閣下に選ばれら我々(統一会)がそんなはずないだろう?バカにはハッタリが効く、それだけだ」

 

ターキンはラックスに命じてこの時初めて合同参謀本部センターに連絡をつけさせた。

 

反乱が開始してから4時間後のことだ。

 

B2地下バンカーで通信に出たのは参謀次長のドドンナであった。

 

彼は怒りを抑えながらターキンに尋ねた。

 

『ターキン提督、あなたも人が悪い。なぜ今更になって連絡をよこしてきた…!』

 

「ドドンナ将軍、申し訳ない。通信障害の影響でそちらに長らく連絡を取れなかった。説教はまた後日にでもよろしく頼む」

 

ターキンは飄々とした声音でドドンナに言葉を返した。

 

それが余計に彼らの怒りの感情を煽ることも承知の上だ。

 

司令部の通路で指揮本部と話すターキンを全員が緊迫した表情で見守っていた。

 

『そうではない、何故君達はこんな反乱を起こしたんだ!』

 

「反乱?コバーン提督には事件について今一度聞きたいことがあったから尋ねただけのこと、身柄は当然無事だ。それを反乱扱いとは、早とちりが過ぎるというものだ」

 

『面白いことを言うな提督、戒厳司令官を最高議長と国防長官の裁可なく連行したのは明確な軍事反乱だろう!』

 

ドドンナの声は見守っている諸将にも聞こえた。

 

皆不安は彼らの会話が続く度に増していった。

 

「お二方の裁可は次期に手に入る、そんなものの為に反乱を起こす理由になるか?共和国軍は皆同志だろう」

 

ドドンナはため息をついて『それで要件は?と尋ねた。

 

するとターキンはそこから暫く喋らなくなった。

 

突然声が聞こえなくなった為ドドンナは何度も『ターキン提督?』と聞き返したが一度も返答はなかった。

 

会話のない時間が何十秒かと続く。

 

ターキンはひたすら相手を焦らせ、相手の冷静な判断力を奪った。

 

そこへ機は熟したと彼らに最も欲しい言葉を与えた。

 

「第2空挺及び第9艦隊の分艦隊戦力、第1艦隊の野戦軍全てを帰投させよう。コルサントでの戦闘を回避する為にな」

 

地下バンカーの多くの将校達に安堵感が広がった。

 

唯一警戒していたのはウィラードとドドンナくらいでそれ意義はもうこの時点で動乱は終わったと思い込んでいた。

 

「ただし条件がある、そちらの第8空挺旅団も帰投させてくれ」

 

『お互いに部隊を退けということか』

 

「ああ、一種の紳士協定だ」

 

ターキンの提案に真っ先に反対したのがウィラードであった。

 

すぐにドドンナに駆け寄り「次長、絶対に受け入れないでください」と進言した。

 

「連中の紳士協定なんて嘘です」

 

「それは分かっている…!だがこのまま撃ち合いが始まれば市民生活にも影響が出る。ここは条件をつけて提案を飲むしかない」

 

「しかし!」

 

「ターキン提督、1つ条件がある」

 

『なんだね?』

 

ドドンナはある1つの条件を述べた。

 

それは彼らにも効果があり、向こうにも効果があるものだった。

 

「首都警備司令部の戦力はそのままの地点で待機、これが条件だ。これを飲むなら我々は第8を帰投させる」

 

『いいだろう、ライカン中将麾下の首都警備司令部は現地点で待機。受け入れようじゃないか』

 

ターキンはコムリンク越しにニヤリと笑った。

 

彼の条件は反乱軍にとっても効果的だった。

 

何せ第30首都警備師団、そしてコルサント・ガードは首都警備司令部の部隊だ。

 

離反者とはいえこの要件は適応される。

 

であれば”()()()()”としては十分であった。

 

 

 

 

 

-首都惑星コルサント コルサント・ガード本部-

コルサント・ガードの司令部付近には既に反乱軍側に与した第109、第110クローン憲兵師団の先鋒部隊が近づいてきた。

 

RTTやAT-TE、スワンプ・スピーダーが本部前方の防御陣地を切り崩して味方の進路を開いた。

 

周りには気絶した兄弟達が横たわっている。

 

相手は同じクローン・トルーパーだが誰1人として躊躇うことはなく敵と見做された者に攻撃を加えた。

 

無論彼らとて人間である、既に数多くのクローン・トルーパーが人間らしい感情を獲得していた。

 

故にさっきまで仲間だった兄弟をブラスターで撃つというのは決して気分の良いものではなかった。

 

誰もが使命の為、与えられた命令の為に戦いを繰り広げていた。

 

「前衛のE中隊を突破しました。もう間も無く本部への道が開けます」

 

前線から報告に来たショック・トルーパーは少し離れた前線指揮所に集まっているコマンダー達に報告した。

 

本部を守るのはソーンが呼び寄せたショック・トルーパー1個大隊と僅かな警備隊だけであり、2個師団相手に敵うはずもなかった。

 

既にこの時点で本部が陥落することは決定していた。

 

「ではカーギーと110師団は先行して軍官庁街の方へ迎え、第2空挺と第9艦隊と合流するんだ」

 

「了解!」

 

コマンダーカーギーは数人の部下を引き連れて指揮所を後にした。

 

フォックスとサイアも外の状況を確認する為に指揮所を出た。

 

RTTやスワンプ・スピーダーに乗り込んだショック・トルーパー達が次々と前線へ急行する。

 

前線で鳴り響く銃声の音はここにいてもも聞こえていた。

 

「マーシャル・コマンダー!」

 

前線の方から走ってきたコルサント・ガード所属のARFトルーパー、キャプテンハウンド*20が彼らに前線の状態を報告した。

 

いつも連れ回しているマシフのグリザーは今夜はお休みだ。

 

「敵軍は思いの外抵抗しており、想定以上の損害が出ています」

 

サイアは周りを見渡した。

 

確かに周りには気絶した友軍のショック・トルーパーを運ぶ姿がさっきよりも多く見受けられた。

 

「装甲戦力はどうした」

 

「歩兵携帯用のイオン魚雷やビークル・タレットで思いの外機能停止する車両が多くあります」

 

ハウンドの報告を聞いてフォックスは命令を出した。

 

「スタン・グレネードの使用を許可する。擲弾戦術で防御陣地を崩して前進しろ」

 

「了解!」

 

「ジェック、リース!」

 

その間にサイアは2人の部下を呼んだ。

 

クローン・キャプテンのジェックとリース、共に中隊長を務めている。

 

2人はまだサイアがルテナントだった頃の直属の部下であり、ルゴサの任務ではあのマスターヨーダと一緒にドロイド軍を蹴散らした。

 

ジェックとリースは共にクローン・オフィサーに昇格し今はキャプテンまで上り詰めた。

 

「突撃中隊の準備は出来たか」

 

「ハッ!両中隊とも全員武装し、突入準備は完了です」

 

「ご命令があればいつでも本部内に突入出来ます」

 

2人は敬礼し自身の中隊の状況を説明した。

 

サイアは分かったと頷き「命令が出るまで待機しろ」と2人に命令した。

 

すると2人は顔を見合わせ黙りこくった。

 

「どうした、何かあるのか?」

 

サイアは2人に尋ねた。

 

暫く2人は黙っていたがジェックの方が口を開いた。

 

「コマンダー、本当に本部に突入するんですか…?今なら話し合って無血開城という手段も…!」

 

「嫌なら直接指揮権を俺達に譲れ、コマンダーソーンがそう簡単に降伏しない事くらい分かるだろう」

 

フォックスにそう脅されジェックは「はい」と黙るしかなかった。

 

その様子を見てサイアはジェックを慰めた。

 

「別に俺たちは兄弟を殺しに行く訳じゃない。割り切れ、そうする以外にやり方はない」

 

「了解…!」

 

兄弟の分裂は広がっていた。

 

その頃本部の庁舎ではソーンら本部要員が各部隊に最後の指示を出していた。

 

「官庁街の守備はコマンダーストーンに一任しろ。それ以外の余剰戦力は全てライカン中将の下へ」

 

「コマンダー!E中隊及びC中隊の第1防衛線が突破されました!」

 

前線から戦況報告に来たショック・トルーパーがそう報告する。

 

本部から徐々に銃声は近くなっており、窓から外を見ると戦場がすぐそこまで迫っていることがすぐに分かった。

 

反乱軍に寝返った同胞達がウォーカーやスピーダーで本部に近づいてきている。

 

もう逃げられないのは本部にいるすべてのクローンが承知していた。

 

「シュターブ、こっちで指揮出来る残りの戦力は後どれくらい残ってる」

 

部下のショック・トルーパー、シュターブは「テルデの第608大隊、最後の予備戦力です」と報告した。

 

1個大隊はクローン・トルーパーだと567名で構成されている。

 

こちらに送っても今更何の足しにもならないが別の誰かなら上手く使えるかもしれない。

 

例えば首都警備司令官とか。

 

「テルデに命じて奴の大隊を首都警備司令部に急行させろ。ライカン中将直轄の部隊として行動させるんだ」

 

「了解…!」

 

「ではコマンダーも退避を、ここは我々で食い止めますから」

 

シュターブはそう進言し、本部からの退避を進めた。

 

しかしソーンは一向にその気がなかった。

 

徐に近くの武器庫からZ-6回転式ブラスター砲を取り出し、動作チェックを行った。

 

「バカ言え、コルサント・ガード司令官が本部を離れる訳ないだろう。むしろお前達が離脱しろ、幕僚要員だが腕は立つし中将の役に立てるだろう」

 

逆にソーンが退避を進めたが彼らは少し考えた上でここに残ることを決意した。

 

ソーンと同じようにブラスターを点検し、スタン・グレネードやイオン魚雷のチェックを始めた。

 

「幕僚は常に司令官と共にあります。ご命令をコマンダー」

 

ソーンはヘルメットの奥で小さく微笑んだ。

 

やはり我々は兄弟なのだと。

 

クローン戦争を生き延びたクローン・トルーパーによる最後の足掻きが始まった。

 

ソーンらが戦闘準備を終えて配置に着いた頃、既に守備大隊は第2防衛線が突破されて本部の敷地内まで後退していた。

 

大体の人員は567名から210名足らずまで減っており、凡そ半数が気絶して拘束された。

 

「くそッ!裏切り者どもめ!」

 

「後退しろ!中で連中を迎え撃つぞ!」

 

ショック・トルーパー達が後退した後に、門を突き破って黒と白のテープを巻いた反乱軍のショック・トルーパー達が前進した。

 

前面に配置されたブラスター砲陣地によって数人が撃たれて気絶したが、数の上で優位な為そのまま突き進んだ。

 

「支援の機甲部隊を突入させろ!歩兵はその後だ!」

 

前線の小隊長が指示し、AT-TEとRX-200ファルシオン級ホバー・タンクが前進した。

 

しかし本部の建物内から数発のイオン魚雷が発射され、機構部隊に命中する。

 

イオン魚雷を喰らった車両は車体にスパークが走り動かなくなった。

 

「ウォーカーが動きません!」

 

「早くどかせ!後続を入れろ!」

 

「回収車両を呼んでいますが当分来ませんよ!」

 

正門に入ろうとした瞬間でウォーカーと戦車が動かなくなった為後続の装甲部隊を突入させることも難しくなった。

 

立ち止まっている所をブラスター砲と歩兵の一斉射撃で滅多撃ちにされ戦闘不能のショック・トルーパーを更に増やした。

 

このままでは余計に損害を増やす為後は前に進むか退くかの二択になった。

 

「これはどういう状況だ!」

 

ブラスター弾を掻い潜りながら中隊長のリースがやってきた。

 

部下のショック・トルーパーからは「門付近でウォーカーが立ち止まって後続を展開出来ません」と報告を受けた。

 

「落ち着け、ファゴットとコンクルスの分隊は壁面から侵入しろ。残りは俺に続いて正面から突破だ」

 

「しかしそれでは損害が!」

 

「ここに止まっていても動けない奴が増えるだけだ、行くぞ!」

 

リースはブラスター弾が飛び交う戦場に一番先頭で突入した。

 

仕方なしに部下のショック・トルーパー達も後に続く。

 

1個中隊の一斉突撃で門付近での膠着状態は一先ず打破された。

 

数十人がスタン・モードのブラスターの餌食になったが大多数は突入に成功し、ブラスター砲陣地を制圧してさらに奥へ進んだ。

 

同じ頃、工兵隊がコルサント・ガード本部の塀を破壊しジェックの中隊も突入した。

 

中庭に展開していたショック・トルーパー部隊を全て蹴散らし2個中隊はそのまま正面入り口まで進軍した。

 

その間にも建物の中から銃撃され、数人が気絶したが損害としては微々たるものだった。

 

「いいぞ!本部まで後少しだ!このまま行けっ!」

 

後退する鎮圧軍のトルーパー達を銃撃し正面入り口まで追い詰めると、突如入り口が開いて中から数人のショック・トルーパーが出てきた。

 

中央に立っているのはコマンダーソーンだった。

 

一瞬だけ部隊の進撃が止まる。

 

そこへソーンは「礼儀知らずのバカ兄弟どもめ!」とブラスター砲の一斉射を浴びせかけた。

 

当然ブラスター砲もスタン・モードだが連射速度はキル・モードと全く変わらない為直撃を受けたショック・トルーパーはそのまま地面に倒れ込んだ。

 

「全員伏せろ!」

 

リースの命令でショック・トルーパー達は伏せて応戦を開始した。

 

奇襲攻撃と防御側の優位性でリース達の進撃は止まったままとなった。

 

「ジェックが開けた穴からAT-RTを入れろ!」

 

「キャプテン!増援です!」

 

近くにいたショック・トルーパーが肩を叩き、リースに味方部隊の救援を知らせた。

 

そこにはショック・トルーパー部隊を率いるフォックスとサイアの姿があった。

 

「ソーンを取り押さえろ!」

 

フォックスはそう命令を出しホルスターから2丁のDC-17ハンド・ブラスターを取り出して走り出した。

 

ソーンは増援部隊にも銃撃を加え前進を阻止しようとした。

 

しかし敵の方が圧倒的に数が多く、そう上手くはいかなかった。

 

「コマンダー!ここは後退しましょう!多勢に無勢です!」

 

ソーンが周りを見てみると連れてきたショック・トルーパー達も何人かが撃たれて気絶していた。

 

「守備隊は全員本部に入って応戦しろ、敵を中で迎え撃つぞ」

 

命令を受けてショック・トルーパー達が牽制射撃を繰り出しながら本部内へと撤退した。

 

ソーンが最後まで部下の後退を援護し自らも建物の中へ入る。

 

「そのまま内部に突入しろ!急げ!」

 

命令を受けて反乱軍のショック・トルーパー達も本部の中へと突入する。

 

勝手知ったるコルサント・ガード本部なれどソーンらは短時間で防御陣地を構築し、迫り来る反乱軍を迎え討った。

 

各地で反乱軍のショック・トルーパー部隊は苦戦し多くの戦闘不能者を出した。

 

通路を抜けた瞬間にブラスター砲が火を吹き気絶した者や、スタン・グレネードの罠など防備は完璧であった。

 

されどソーン達が追い詰められていることは変わりない。

 

圧倒的物量と突撃中隊の巧みな施設制圧戦で徐々に追い詰められていった。

 

『こちら第6警備分隊!もうこれ以上敵を抑えられません!』

 

「後退しろ、作戦室前の最終防衛ラインまで後退するんだ」

 

『サーイエッサー!うわっ!』

 

それ以降分隊長からの連絡はなかった。

 

ソーンも眼前のショック・トルーパーにブラスター弾を浴びせて3名を戦闘不能に追い込んだがすぐに他の造園が来てソーンらを追い込んでいった。

 

「コマンダー!ここは自分らに任せて最終防衛ラインまで後退を!」

 

警備隊長のルテナントオニクスは自ら殿を買って出た。

 

もう他に選択肢はない為ソーンは「任せたぞ」と言ってその場を離れた。

 

オニクスと部下のショック・トルーパーは必死に敵を押さえ込んだ。

 

3分ほど抵抗したところでスタン・グレネードを投擲され、痺れた所を銃撃を喰らって完全に制圧してしまった。

 

だが彼の抵抗は無駄ではなかった。

 

通路を押さえ込んでいる間にソーンや生き残った全てのショック・トルーパーは最終防衛線まで後退出来た。

 

ソーンが最終防衛ラインまで後退するとそこには生き残りのショック・トルーパーが30名ほどいた。

 

ソーンと引き連れてきた部下を合わせればこれで丁度36名、1個小隊であった。

 

「シュターブ、モスキート、ヴルカン!」

 

ソーンは身近なクローン・オフィサー3人を呼んだ。

 

3人は辛うじて生き残ったようで既に息を切らしていた。

 

「残存兵員はこれで全てか」

 

「まだ一部では抵抗してる兵がいますがここに辿り着けたのはこれで全部です」

 

トルーパー達は弾薬を補充し水を飲んで休憩している。

 

体力が万全な者はバリケードや土嚢で敵を待ち構えていた。

 

「コマンダー、全部隊の配置完了しました」

 

クローン・サージェントのマラヒートが敬礼し状況を報告した。

 

「了解した、軍曹、最後まで付き合ってもらうぞ」

 

「もちろんです、自分らはその他に生まれてきましたから」

 

ソーンはその間にブラスター砲を冷却しパワーセルをフルチャージした。

 

そしてこの場にいる全てのショック・トルーパーに宣言した。

 

「全員、よく聞いてくれ。間も無くここに敵が来る。俺たちと同じ場所から来た兄弟だが奴らはもう敵だ。そして正直言ってもう勝ち目はない」

 

トルーパー達は自嘲気味に苦笑した。

 

戦況は全てソーンの言う通りだった。

 

ここまで追い詰められた以上もう逃げることも勝つ事も出来ない。

 

後は何秒持つかであった。

 

「だからこそ俺たちはここを最後まで守り通す。俺たちはクローン、俺たちはコルサント・ガード、戦う為に生まれこのコルサントを守る為に赤いアーマーを着てる」

 

何人かが力強く頷いた。

 

そうでなくてはと。

 

「全員、今から来る奴ら見せつけてやれ。本当のクローン・トルーパーとはなんなのかをな」

 

ソーンはブラスター砲を構え、周りのトルーパー達も戦闘準備についた。

 

もうすぐ敵が来る。

 

「抵抗し、義務を果たすぞ」

 

溶接され、バリケードで塞がれていたドアが吹き飛んだ。

 

その瞬間に銃撃戦が始まり、青い輪のような弾丸が飛び交う。

 

待ち伏せを受けていた反乱軍のショック・トルーパーは初戦で数人が気絶したが気にせずそのまま突撃した。

 

どんどん敵が中に入ってくる。

 

その度にまた1人、また1人と作戦室に入ってきた。

 

気絶したトルーパーがあちこちに転がり、それでもなお銃撃戦は続いていく。

 

わずか数分の間に室内には燦々たる光景が広がっていた。

 

反乱軍のトルーパーがスタン・グレネードを投擲した。

 

それを見たマラヒートがもう間に合わないとグレネードの上に覆い被さった。

 

犠牲はマラヒートだけで済んだが彼は暫く目を覚まさなかった。

 

「まるでブリキ野郎の真似事みたいだ!」

 

ソーンは圧倒的な物量で押し迫る敵軍のショック・トルーパーを見てそう吐き捨てた。

 

更に銃撃戦は続いた。

 

この数分間の間にモスキートとヴルカンが倒れ、残りはシュターブとソーンだけだった。

 

「最後にお供出来て光栄です!」

 

「別に死ぬわけじゃない、いつかまた戦えるさ!」

 

シュターブは持っていたDC-15Aが弾丸で弾き飛ばされ代わりにDC-17を使っていた。

 

1発ずつ確実にブラスター弾を命中させて、1人でも多くの侵入を防いだ。

 

するとあるショック・トルーパーがソーンに狙いを定めた。

 

それに先に気づいたシュターブは「コマンダー!」と言って身を挺して代わりに弾丸を受け止めた。

 

近くの机に背中を打ち、辛うじてその痛みで目を覚まし反撃の弾丸を撃ち込む。

 

「シュターブ!」

 

別のトルーパーによってブラスター弾を数発喰らい、シュターブは気絶した。

 

残りはもうソーンだけとなった。

 

ソーンはブラスター砲を放ちながら更に後退し、司令官の執務室の方まで退き下がった。

 

その間に数人は気絶させ更に敵の損害を生み出した。

 

だがついに限界の時が訪れた。

 

流れ弾が左肩に命中し、左腕が痺れた。

 

それでもソーンは痺れを抑えてブラスター砲を握り続けた。

 

今度は右足に流れ弾が命中し、ついに立てなくなった。

 

殆ど固定砲台と化したソーンだったが抵抗の意思がなくなることはなかった。

 

ブラスター砲の残弾が付き、まだ動く右手を使ってDC-17をホルスターから引き抜いて応戦した。

 

その頃には誰かが「発砲を中止しろ!」と叫んで室内の銃声が鳴り止んだ。

 

ソーンにはなんとなく誰かの声が分かった。

 

あれはサイアの声だ。

 

奥の方を見てみるとサイアとフォックスがこちらに寄ってきていた。

 

サイアは倒れたトルーパーを敵味方関係なく診て状態を確認した。

 

「フォックス……!」

 

「もう終わりだ、誰かコマンダーソーンを運んでやれ」

 

ソーンはフォックスに銃口を突きつけアーマーを掴んで彼を引き寄せた。

 

「冷たい奴だとは思っていたが……まさか裏切るとはな…!共和国の為に戦うのが俺たちの使命じゃないのか…!?」

 

「ああ、俺たちは”()()()()()()”の為に戦う兵士だ。だから閣下の意志を継ぐターキン提督についていく」

 

フォックスはソーンに「少し眠っていろ」と耳打ちしてDC-17の引き金を引いた。

 

いつもキル・モードでブラスターを携帯しているフォックスには珍しく、スタン・モードでの発砲であった。

 

弾丸を胸部に受けたソーンはそのまま気絶し、倒れ込んだ。

 

サイアはソーンの下に駆け寄って彼の腕を肩に掛け、持ち上げた。

 

「ソーン……これも自分らクローンが生き残る為です。自分らが共和国から消えない為に自分が手を汚すしかない」

 

サイアはソーンを衛生兵に預けた。

 

その間にフォックスは自身の執務室に向かい、第30首都警備師団司令部へ連絡を取った。

 

コルサント・ガード本部を堕としたのでこれから軍官庁街に向かうと。

 

春風が吹くコルサントの一夜、夜明けはまだ当分先だった。

 

 

 

 

つづく

*1
英:Bow 登場作品:スター・ウォーズ:パージ

*2
CC-2224"Cody" 登場作品:スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐など

*3
CT-7567"Rex" 登場作品:クローン・ウォーズシリーズなど

*4
英:CC-1119"Appo" 登場作品:スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐など

*5
CT-27-5555"Fives" 登場作品:クローン・ウォーズシリーズなど

*6
CT-5597"Jesse" 登場作品:クローン・ウォーズシリーズなど

*7
CT-1409"Echo" 登場作品:クローン・ウォーズシリーズなど

*8
英:Tyrus Meori 登場作品:スター・ウォーズ:モン・カラの反乱など

*9
英:Kendal Ozzel 登場作品:スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲など

*10
英:Alfren Cheno 登場作品:スローン(小説作品)

*11
英: Mummert 登場作品:No Good Deed...

*12
英: Keener 登場作品:スター・ウォーズ:ナー・シャッダの決斗

*13
英:Arada Turhaya 登場作品: "Passages"- Star Wars Adventure Journal 7

*14
英:Redd Wessel 登場作品:クリムゾン・エンパイアシリーズなど

*15
英:Alpha-26"Maze" 登場作品:Republic Commando: Hard Contact など

*16
英:Kan Pojo 登場作品:Death Star (小説作品)

*17
英: Novitz 登場作品:バッド・バッチシリーズ

*18
英:Royce Hemlock 登場作品:バッド・バッチシリーズ

*19
英:Jova Tarkin 登場作品:ターキン(小説作品)

*20
英:Hound 登場作品:クローン・ウォーズシリーズ

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