コルサントの春   作:Eitoku Inobe

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「ヌーナの首を折っても朝は必ず来る」
-シャンドリラ選出元老院議員 モン・モスマ-


勝利

ー首都惑星コルサント 合同参謀本部センター B2地下バンカーー

反乱軍鎮圧指揮本部はターキンの要望を受け入れた。

 

首都警備司令部の戦力は現地点で停止し、第8空挺旅団は基地に帰投させる。

 

その代わりに反乱軍の第1、第5艦隊も惑星から撤退し、第2空挺旅団も帰投する。

 

反乱軍は先に出撃した全部隊を帰投させ、約束を守る”()()()”を見せた。

 

それに合わせて鎮圧軍の第8空挺旅団にも帰投するよう命じた。

 

旅団長のメイディン大佐は何度も反論しせめて待機をと要請したがドドンナはメイディンの意見を受け入れず、帰還を命じた。

 

実際1個空挺旅団で反乱軍の2個艦隊と1個空挺旅団を帰還させられるのは割が良かった。

 

尤もその一見割の良さそうな提案こそターキンの最大の罠だったのだが。

 

当然最初から罠と疑っている人物もいた。

 

ウィラードとライカンである。

 

ウィラードはライカンに連絡を入れ状況を報告した。

 

既に司令部に着いていたライカンはこの提案を受け入れたことに激怒した。

 

あり得ない、相手の思う壺だと。

 

『第8を帰投させれば我々は相手に勝利する術がなくなります!冗談じゃない!』

 

「分かっています…!ですので是非説得を!」

 

ウィラードは首都警備司令官に頼み込んだ。

 

ライカンは少し考えた上である人物の名を上げた。

 

『それなら私より余程説得力のある人物がいます、今そちらに繋ぎます』

 

ライカンは素早くある人物に通信を繋ぎ、それをB2地下バンカーの通信に繋いだ。

 

ウィラードは彼の声を聞き、少し話をした。

 

「はい、通信を全体回線に繋いだので、ぜひ大声でお願いします」

 

ウィラードが直通回線のスイッチを押し、今まで話していた人物の声をバンカーの作戦室に聞かせた。

 

特戦司令官、ピット・オノランの声を。

 

『私は特戦司令官のピット・オノラン中将です。少しの間私の話を聞いて下さい』

 

全体回線で流れたオノランの話は指揮本部に対する叱責に近かった。

 

彼は一度第2空挺旅団に裏切られているからこそ今回の協定も疑わしいと考えていた。

 

『紳士協定とは全く話にもなりません。第2空挺旅団のウルリック・タッグ大佐は上官の命令に背いて指揮本部を襲撃しようとした奴です』

 

作戦室から将官達が姿を現しウィラードの前に寄ってきた。

 

まずママートが「中将、通信を消しなさい」と命じた。

 

しかしウィラードはコムリンクを頑なに握って離さなかった。

 

その様子を見てオッゼルやメオリがウィラードに詰め寄る。

 

彼からコムリンクを取り上げようとする間にもオノランの話は続いていた。

 

『そんな恩知らずな奴らと一体何の交渉が出来ると!』

 

刹那、ある1人の将校が全体回線のスイッチを切った為それ以上通信は繋がらなかった。

 

オノランは作戦室で項垂れた。

 

やがてここにも反乱軍がやって来るのだろう、オノランはそう確信していた。

 

副官のウィルコは迷彩服の上にアーマーを着始めた。

 

その頃ライカンはメイディンに対して説得を行っていた。

 

首都警備司令部も指揮本部の判断に皆が苛立っていた。

 

彼らはターキンを舐めているのだ、そこまでやる人間ではないと過信していた。

 

『メイディン大佐、撤収はせずその場で待機を。反乱軍の発言は全て罠です』

 

『申し訳ありません司令官、合同参謀本部の命令でオノラン中将ですら逆らえません』

 

『ではせめてそこで待機を!』

 

『待機もするなというのが参謀次長の命令です……!』

 

メイディンは帰投するべきではないということは分かっていた。

 

しかし指揮本部の命令は絶対であり、逆らえばそれこそ反逆者だ。

 

『合同参謀本部は皆奴らに騙されています。それはメイディン大佐も分かっているだろう』

 

『……申し訳ありません、味方の命令には逆らえません』

 

そういってメイディンは心苦しそうに通信を切った。

 

ライカンも苦虫を噛み潰したような表情で状況を受け入れるしかなかった。

 

しかしたった1人、彼らの会話を聞いて邪悪な笑みを浮かべている人物がいた。

 

通信傍受室のラックスである。

 

彼は腕を組んで目を瞑り、最後まで通信を聞いたところで第8空挺旅団が確実に撤退することを確信した。

 

ヘッドホンを外し、コムリンクを手に取って帰投中の全部隊に連絡する。

 

「第8が帰投します、各員作戦を開始してください」

 

反乱軍の全面攻勢が始まった。

 

 

 

ー首都惑星コルサント アンダーワールド・ポータル付近 第2空挺旅団ー

旅団は帰投するふりを見せて一旦待機し、ラックスからの命令を受けて行動を開始した。

 

「大佐、先遣隊の準備完了しました」

 

フル装備のメイズはウルリックに敬礼し状況を報告した。

 

メイズ麾下のARCトルーパー小隊は装備を整えてウルリックの命令を待っている。

 

「よし、SnM-09を実行せよ。後から我々も行く」

 

「了解」

 

メイズはガンシップに乗り込み、先遣隊は移動を開始した。

 

ガンシップは限界まで高度を下げて飛行し、ポータル付近まで移動した。

 

ポータル付近に辿り着くとメイズは部下に命じて一斉にガンシップから飛び降りた。

 

ジェットパックを吹かし、暫く空中を飛行した。

 

それから各員がポータルを移動するエアバスやエアスピーダーに着陸して、移動を続けた。

 

当然運転手達はARCトルーパー分の重みを感知し、何があったと確認したが大抵の場合助手席の人物が「機械の誤作動だろ」といって特に気にしなかった。

 

スピーダーがある地点まで移動すると全員がスピーダーから離れ、非常用トンネルを用いて反対側のポータル警備室に向かった。

 

ARCトルーパー達は少しでもジェットパックの燃料を節約する為にDC-15AやDC-17にアセンション・ケーブルを接続して移動していた。

 

僅かな熱量で移動距離を稼ぎ、速やかに移動した。

 

トンネルを抜けると反対側のポータルに辿り着き、全員が一旦ポータルの壁にへばり付いた。

 

メイズがハンドサインでアセンション・ケーブルを外壁に設置せよと指示し、全員が一斉にケーブルを発射する。

 

ケーブルがしっかり固定されるとそれをアーマーのベルトに接続し、まるで壁を歩くかのようにARCトルーパー達がポータルを移動した。

 

少数部隊の特殊な移動は当然警備室の面々には感知出来ていない。

 

隊長の大尉も周りのTKトルーパー達も二度引き返した第2空挺旅団の話題で持ちきりだった。

 

そしてARCトルーパー小隊はついにポータルの上階まで辿り着いた。

 

周辺を警戒しつつトルーパー達が警備室まで接近する。

 

まず前衛のARCトルーパーが警備室前のTKトルーパーを格闘戦で制圧し、もう1人が警備室のドアを蹴り破った。

 

「うわぁぁなんだっ!?」

 

ARCトルーパーが警備室に入って部下のTKトルーパーに暴行を加えている。

 

これは間違いなく反乱軍だと思い大尉は自身の身を守る為にDC-17をホルスターから抜いて構えた。

 

もう既に部下は全員武器を奪われ地面に伏せられていた。

 

最後まで抵抗しようとする大尉に対し、メイズは抵抗をやめるよう諭した。

 

「おい、銃を下ろせ。どうせ撃てないだろう?」

 

メイズは銃口など一切気にせず大尉に近づいた。

 

大尉は恐怖に負けて引き金を引けなかった。

 

彼のブラスターはメイズに取り上げられ、おとなしく拘束された。

 

こうしてポータルは第2空挺旅団の手に渡った。

 

メイズはコムリンクを用いてウルリックらに報告する。

 

「先遣隊より旅団司令部へ、ポータルを占拠しました。旅団全隊の出動を要請します」

 

『旅団長タッグ大佐了解、直ちに向かう。よくやった』

 

そこからの第2空挺旅団の動きは早かった。

 

いつでも発進出来る状態にしていたリパブリック・ガンシップと輸送部隊が一斉にポータルに侵入し、緊急用トンネルを用いて移動を開始した。

 

その間に警備室ではメイズらがポータルに非常事態管制を通達し、軍用機の移動を最優先とした。

 

もうトンネルにはジェダイも首都警備司令官もいない。

 

旅団の移動は早かった。

 

ガンシップが次々と反対側のポータルを出て連邦管区へと突入する。

 

メイズらが乗ってきたガンシップも到着し、彼らも旅団に続いた。

 

もう彼らを止められる者は誰1人いなかった。

 

 

 

 

-首都惑星コルサント 合同参謀本部センター B2地下バンカー-

第2空挺旅団に続いて第9艦隊も艦列を整えて再び進撃を開始した。

 

しかも先行させて艦内の常駐部隊を展開した為地上部隊の到着はほぼ同タイミングとなる。

 

更にとんでもない報告が混乱状況の指揮本部に入ってきた。

 

「閣下!宇宙軍本部より緊急入電!宇宙軍本部に第6空挺旅団が突入!現在防衛部隊と戦闘中」

 

ヘッドホンをつけたまま報告したチェノの表情は引き攣っていた。

 

当然諸将にも同様が広がる。

 

即座にオッゼルとママートはドドンナの下へ駆け寄って撤退を促した。

 

「参謀次長、時期にここにも反乱軍が来ます!指揮本部を移して態勢を立て直しましょう!」

 

「幸い首都警備司令部は指揮能力もあり、ライカン中将が死守しています」

 

「センターを反乱軍に明け渡せというのか?」

 

「指揮本部が全滅するよりマシです!」

 

オッゼルははっきりとそう進言した。

 

実際軍官庁街は既に反乱軍によって包囲されつつあった。

 

第9艦隊と第2空挺旅団は数十分で到着するし、空軍本部の守備隊から入ってきた報告では離反したショック・トルーパー1個師団と交戦状態になっているらしい。

 

数分ほど前から特殊作戦司令部とも連絡がつかなくなっているし、何よりコルサント本国防衛艦隊も反乱軍によって鎮圧されたと報告を受けた。

 

各所で反乱軍の攻勢が始まっており、現在の守備戦力では守り通すことは不可能であった。

 

既に外では警備隊のTKショック・トルーパー達が土嚢を積み上げ、防御陣地を構築し始めていた。

 

一部の将校は機密資料を保管し、反乱軍の手に渡らぬよう運搬の手筈を整え始めている。

 

かく言うオッゼルとママートもジャンパーを着ていつでも外に出れる態勢であった。

 

外で防衛の指揮を取っていたウィラードが戻ってきたのは丁度この時であった。

 

周りの将軍や提督達は既に逃げるつもりのようで一部は「他の宙域軍から援軍要請は出せないか?」と話し合っていた。

 

丁度ウィラードが参謀次長が座っている席に辿り着くとまだ口論が続いていた。

 

「ここにいても仕方ないでしょう!まだ距離的にも反乱軍から遠く、戦力もしっかりしている司令部に指揮本部を移した方が賢明です!」

 

「単純戦力で言えばこちらの本部の方が上だ。態々移すことはないだろう」

 

「次長、お呼びでしょうか」

 

ウィラードが声をかけるとドドンナはすぐに命令を出した。

 

「おっ、国防部ビルの戦力を一部センターに回して防衛戦力を増強させろ。最悪向こうが堕ちても指揮本部があるここだけは守り通したい」

 

「了解です」

 

「それよりライカン中将、移動用のスピーダーはどうなっている?」

 

ママートはウィラードにそう尋ねた。

 

ウィラードは怒りを抑えながらママートを逆に問い詰めた。

 

「あなた達指揮本部の将官がここを離れたら誰がここを守るのですか?」

 

「それは憲兵総監たる君の職務だろう」

 

ウィラードは唖然とした。

 

彼らにはもうここから退避することしか頭にないようだ。

 

そこへ最悪のタイミングで1人の大尉が報告にやってきた。

 

「ドドンナ将軍、非常時の退避用スピーダーの手筈が整いました」

 

「誰がそんなものを用意しろと命じた!」

 

ドドンナが声を荒げるとママートらが「我々将官の命令です」と大尉を庇った。

 

すぐにオッゼルやママートだけでなく周りの将官、メオリやゴーリン*1少将、ソトラス・ラムダ*2少将らが集まってきた。

 

皆ドドンナ将軍を連れてセンターから退避するつもりでいた。

 

「皆、ここを手放す気ですか!?」

 

ウィラードは周りの召喚に向かって怒りをぶつけた。

 

ここで抵抗せねばいつ抵抗するのだとウィラードは誤った判断を下す将官達を叱責する。

 

「あなた達はそれでも国家を守る共和国軍の将官達ですか!戦うべき時に戦わずしてその肩章の星は何のために付いているんですか!」

 

「ウィラード中将!私は仮にも提督だぞ!上官を侮辱する気か!」

 

ママートは階級を理由にウィラードを叱りつけた。

 

されどウィラードはもう止まることはない。

 

近くにいたショック・トルーパーのDC-15Aを拝借してブラスター・ライフルを構えた。

 

安全装置を外す姿を見て周りの将官達は「中将落ち着け!」と宥めた。

 

「皆さん目を覚まして下さい!」

 

奥の方で見ていた佐官や尉官の将校達も近づいてきた。

 

ウィラードはそんな彼らの前で宣言した。

 

「この私が、なんとしてでも合同参謀本部を守って反乱軍を食い止めます!ですから皆さんもここに留まって鎮圧の指揮を続けて下さい!」

 

最後にウィラードは彼らに向けて話した。

 

「もしこの国が覆った時、指揮本部から将官達が逃げ出したとなれば軍の恥であり屈辱です。皆さん、心からお願いします」

 

ウィラードは頭を下げて彼らにお願いした。

 

もし指揮本部の将官達が統一会のように1つの絆で結ばれた戦士達だったらここで折れて最後まで留まっていただろう。

 

だがウィラードと志を共にしようとする者はたった1人しかいなかった。

 

参謀次長のドドンナである。

 

彼が共に戦おうと同調しようとしたその時、最悪のタイミングで報告が入ってきた。

 

「参謀次長!コルサント・ガード本部方面より1個師団程度の反乱軍勢力が合流!空軍本部はもう持ちません!」

 

再び諸将に動揺が広がった。

 

不安に煽られた諸将は撤退を決意した。

 

「次長、ここは早急に指揮本部を移動させましょう!」

 

「早く脱出を!」

 

「皆さん落ち着いて!ここを死守するべきです!」

 

ウィラードとその他の将官達の対立は更に深まった。

 

それももう修復不可能な程に。

 

それにもう守備戦力では守り切れないほどの部隊が集まっていた。

 

このままではどの道勝てないが指揮本部を放棄する訳にはいかない。

 

ドドンナは最悪だがある決断を下した。

 

「…指揮本部の一部幕僚及び将官の移転を許可する。移動場所は首都警備司令部、ここを予備本部とする」

 

「参謀次長!そんな!」

 

「ただし!鎮圧本部司令官の私は本部の維持と責任を取る為ここに残る。もし陥落した場合は首都警備司令官のライカン中将を野戦昇進させ将軍とし、次の鎮圧司令官に命ずる」

 

ドドンナは最後に「残りたい者はここに残れ、残った以上は共に戦え」と全員に命じた。

 

この選択はドドンナにとってある種諦めに近かった。

 

本当は全員を説得してここに留まるべきなのだろうがその時間も説得に応じる相手の器量もない。

 

であれば最後に責任だけは取らなくてはならない。

 

生き残るであろう者に最後の希望を託しながら。

 

第2空挺旅団の到着までもう間も無くであった。

 

 

 

 

指揮本部の一部移転は鎮圧軍、反乱軍両陣営にそれぞれ全く違う影響を齎した。

 

まず鎮圧軍の主力として対処に当たっていた首都警備司令部は誰しもがこの決定に怒りを覚えた。

 

移転とは名ばかりの放棄であり、センターの将官達は眼前の反乱軍に怯えて逃げ出したのだ。

 

その報告を受けたのは丁度ライカンらが非統一会の将校らに応援要請を掛け合っている頃だった。

 

「知り合いの元ジェダイには全員声をかけたがやはりダメだった。皆反乱が起きているからといって自分は関わるべきじゃないと言っている」

 

コスは俯きながら結果を彼に伝えた。

 

プロ・クーン*3やカレラン・ベク*4、キット・フィストー*5など特殊技能の分野で軍に教官として雇われたままの元ジェダイはまだいる。

 

彼らの力を少しずつ集めれば多少は使い物になる戦力が手に入るのだがやはり協力はしてくれなかった。

 

ジェダイは変わった、少なくともそう見せる為には如何なる政の事象にも関わらないというのが元ジェダイ達の暗黙の了解であった。

 

彼らは自身のやっている不正義を感じながらもすまないとコスの頼みを頑なに断った。

 

「特にクーンはコバーン提督が誘拐された事もあって助けてくれると少しは期待したのだが…」

 

「顧問就任を最初に断った人です、仕方ないでしょう。各宙域軍司令官はどうだ」

 

ライカンは地図を見ながら部下に尋ねた。

 

当然幕僚達から出る言葉も嬉しい報告というものは1つもなかった。

 

「前線宙域軍は当然出撃を拒否、ヴァント元帥、ドナシウス*6元帥、サータン*7元帥ら前線三元帥は前線司令官と協議して正式に中立を宣言しました」

 

「第2から第7までの隣接宙域軍も皆出動出来ないと言っています。したとしても恐らく統一会の妨害でまともな戦力は期待出来ないかと」

 

ヒュームとポジョははっきりとそう報告した。

 

彼らも粘ったのだ、大佐や中佐の階級でありながら4つ星以上の将官達に要請を出し続けた。

 

それでも皆前線の分離主義者や統一会の存在を恐れて協力はしてくれなかった。

 

「それと……先ほど入ってきた情報ですがコルサント・ガード本部が陥落しました…」

 

「なんだと?」

 

ライカンは指揮棒をテーブルに置き、報告を行ったディヴィン*8大佐に聞き返した。

 

「それでコマンダーソーンと本部の守備隊はどうなった?」

 

「…全滅です、コマンダーソーンは最後の1個大隊を首都警備司令部に回して本部内で抵抗し拘束されました」

 

「サリマ少将の”サクリファイス”からも連絡が途絶えたままです、恐らくは艦隊も……」

 

ついに犠牲者の出現は首都警備司令部までやってきた。

 

推定2名の指揮官が拘束され、反乱軍の手に堕ちた。

 

彼らと最後まで通信出来た訳ではないが最後まで抗戦した意味は容易く理解出来た。

 

少しでも敵兵を拘束して我々の勝利を助ける為に戦ったのだ。

 

ソーンが最後に送った大隊もそうだろう。

 

彼らの為にも戦って勝たなくてはならない、ライカンは身が引き締まる思いだった。

 

「首都機械化兵団長に命じて攻勢部隊を第30首都警備師団と戦闘するよう命じよ。第8空挺の代わりにこちらが臨時の戦闘部隊を編成して後背強襲をかける」

 

「…はい!」

 

「皆、首都警備司令部の友軍が最後まで抵抗して作ったチャンスを逃すな。可能な限り全ての戦力を…」

 

「司令官!」

 

合同参謀本部センターと連絡を取っていたタントールが作戦室に入ってきた。

 

彼の表情は正に血相を変えて飛び出してきたというのが正しく、その感情の中には怒りも含まれていた。

 

ライカンが尋ねる前にタントールは報告を開始した。

 

「B2地下バンカーの一部指揮要員がこっちに来ます!予備本部の設置という名目ですが奴らは指揮本部を放棄するつもりです!」

 

「落ち着け大佐、正確に状況を教えてくれ」

 

タントールを宥めながらライカンはそう要求した。

 

一呼吸置いてからタントールは伝えられた情報を聞いた。

 

「宇宙軍本部、空軍本部で戦闘が発生したことにより鎮圧指揮本部は首都警備司令部を予備本部に設置することを決定。センターの一部幕僚及び指揮官をこちらに向かわせているということです。現在、センターの地下バンカーに残っているのは憲兵総監と、参謀次長と一部幕僚のみだと…!」

 

「なんだって!?」

 

「一部どころかほぼ全てじゃないか!」

 

首都警備司令部の幕僚達は動揺し、声を荒げた。

 

タントールがああなるのも分かる。

 

明らかにこの判断は悪手であり本部が一部逃亡を図っているようにしか見えないからだ。

 

「そして予備本部が機能する際は司令官を本部責任者にして指揮を取れとのことです!あのセンターから来る連中は司令官を隠れ蓑にして司令官1人に責任を負わせるつもりです!どうしてこんな!」

 

「ブレン・タントール!」

 

フルネームで彼の名を呼び、ライカンは発言を注意した。

 

「発言に気をつけろ、仮にも彼らは同じ共和国軍だ」

 

「…申し訳ありません司令官」

 

ライカンも冷静になろうと大きく息を吸って吐き出した。

 

されど彼の心は落ち着かず怒りが全身を駆け巡った。

 

その雰囲気はコスが察知し「司令官、落ち着け」と宥めた。

 

ライカンも分かってはいるが合同参謀本部に残ったウィラードやドドンナ、拘束されたソーンやサリマ、そして多くの友軍将兵のことを考えれば怒りが込み上げてきても無理はなかった。

 

ライカンは指揮棒を地図が貼られた壁に叩きつけ、何度も拳を打ちつけた。

 

それをコスや周りの幕僚達が必死に止めた。

 

どこにもぶつけようのない怒りであった。

 

一方その頃反乱軍司令部こと第30首都警備師団司令部では指揮本部からの移転を聞いて大いに喜びの声が上がった。

 

連中は戦わずして様々な機能が詰まった合同参謀本部センターを放棄しようとしているのだ。

 

ターキンが言った通り、あそこにいるのはジェダイよりバカな将官達だ。

 

「なんて哀れな連中だ、あそこを戦わずして手放すとはな。手間が省けた」

 

ジャージャロッドの発言を聞いて諸将から笑顔が溢れた。

 

さっきまで全員今にも死にそうな顔をしていたにも関わらずだ。

 

人間の心が移り行くのは早いなとターキンは感じだ。

 

「まだこれからです、ドドンナとウィラードはあそこに残っている。それにライカンもオノランも逮捕出来ていない。スクリード」

 

「どうした保安司令官」

 

「ドドンナ将軍と連絡は取れたか」

 

スクリードは首を横に振った。

 

スクリードとドドンナはウェスタン・リーチ攻防戦において大きな戦果を挙げた軍人であり、2人の仲は良かった。

 

「ここまで追い詰めたドドンナが今更私の声を聞くとは考えられん。ひと思いにやってやれ」

 

「スクリード提督の分析を信じよう。タッグ、スミール大佐の第4空挺旅団は?」

 

「特殊作戦司令部に到着しました。間も無く交戦を開始するそうです」

 

ターキンはホロテーブルに移る戦況図を凝視した。

 

革命の成功まで後一押し、勝利までもう少しであった。

 

 

 

 

-首都惑星コルサント ギャラクティック・シティ 特殊作戦司令部-

特殊作戦司令部は秘密裏に出動した第4空挺旅団によって包囲された。

 

オノランはあえて警備兵に抵抗を止めるように命じ、部下の犠牲を減らした。

 

その為司令部の敷地内に第4空挺旅団はすんなり侵入出来た。

 

クローン・メジャー、CT-1284通称スパーク*9は待機する全部隊に前進するよう命じた。

 

旅団はARCトルーパーやクローン・コマンドー、TKコマンドーなど様々な特殊部隊員で構成されていた。

 

スパークも元は特殊部隊トルーパーから将校教育とARC課程をクリアしてARCトルーパーになった人物であり、クローン戦争を戦い抜いた歴戦の特殊部隊員である。

 

そして司令部の中にかるウィルコとは戦争が終わってから4年間の長い友人関係にあった。

 

その様子をウィルコは司令部の窓から確認していた。

 

司令部の電気が消され、緊急時用にシャッターが閉じていった。

 

その様子をエレクトロバイノキュラーで確認しながら突入準備を開始した。

 

すると旅団が展開した方向から旅団長のスミールと副官が歩いてきた。

 

「専属副官のウィルコとは親友だとか」

 

「将校教育課程からの付き合いでした。官舎も隣でよく飲みにも行った」

 

スパークはどこか後悔を残した表情でそう語った。

 

スミールとて人間でありクローンに対しても人として接する良識があった。

 

それ故に部下の私情を上官として抑制した。

 

「私情を挟まないようにな、軍人らしく命令を遂行しろ」

 

スパークにヘルメットを被せてそのまま彼の顔をがっしりと掴んだ。

 

スミールの体温は感じなかったが彼の強い意志は感じ取れた。

 

「自分はクローンです、優秀な兵士は命令に従う」

 

そう言ってスパークは自身の気持ちを割り切ろうとした。

 

自分が間違った命令に従っているということも理解しながら。

 

その頃司令部の中では幕僚達がバリケードを構築し、司令官と共に司令部から撤退する準備を始めていた。

 

彼らにとって不安だったのは司令官のオノランが撤退をしないつもりでいたことだ。

 

オノランはここで責任を取って戦死するつもりでいた。

 

「なあウィルコ、お前もここに残るつもりか?」

 

幕僚の中佐はアーマーを着ていつでも戦闘出来る状況のウィルコに尋ねた。

 

「司令官が残る以上俺もここに残る。上官を置いて逃げられはしない」

 

ウィルコの意志は硬かった。

 

それでも中佐はなんとか彼を説得して共に逃げようとした。

 

「ウィルコ、お前は優秀なARCトルーパーだ。何もここに留まって戦うことはない。司令官を連れて一旦退避しよう、まだ第8空挺旅団だって残ってるし…」

 

そんな話をしていると執務室のドアが開いてオノランが出てきた。

 

オノランは幕僚達に「みんな揃ってるか?」と尋ねた。

 

辺りを見渡し全員が揃っていることを確認するとオノランは話を始めた。

 

「お前達幕僚は外に出て退避しろ、みんな優秀な特戦司の幕僚だから仮に捕まっても明日がある」

 

「では司令官もお逃げを!」

 

中佐がそうせがんだがオノランは笑みを浮かべると首を横に振った。

 

「私のことはいい、さあみんな早く行け。早く外に出ろ、急げ!」

 

幕僚達は皆申し訳なさそうな顔をしながらまるで何かに引きずられるような足取りでゆっくりと外に出た。

 

何人かは去り際に「申し訳ありません司令官」と呟いて幕僚待機室から離脱した。

 

ただ1人、ウィルコだけがオノランの方に来た。

 

「司令官もまずは退避を」

 

「ウィルコ少佐、お前も幕僚達と一緒に退避しろ」

 

そういうとオノランは力強くウィルコを押し出し指を差して早く行くよう命じた。

 

オノランはたった1人、司令官の執務室へと戻っていった。

 

その間に外では突入準備を整えた旅団員が命令を待っていた。

 

「侵入!」

 

スパークの合図と共にトルーパー達が一斉に司令部の中へと突入する。

 

司令部内では殆ど抵抗がなく全員を無傷で拘束することが出来た。

 

1発の銃声も響かぬ中、トルーパー達は皆司令官の執務室に向けて前進する。

 

オノランを逮捕すればこの作戦は終了だ。

 

無論オノランとてそう簡単に捕まる訳にはいかない。

 

勝てはしないかもしれないが最後まで抵抗するつもりでいた。

 

ブラスターのパワーセルを手にしDC-15sサイドアーム・ブラスターに弾薬をチャージした。

 

腰のベルトにつけたホルスターには予備としてDC-17も挿さっている。

 

すると執務室のドアが開く音がした。

 

アーマーを着てヘルメットを被ったウィルコが執務室に入ってきたのだ。

 

彼は静かにブラスト・ドアを起動して施錠し、バリケードを作り始めた。

 

「ウィルコ、何してるんだ。外に出ろと命じたぞ」

 

オノランの命令を無視してウィルコはバリケードを作り続けた。

 

「司令官が残るというのなら自分もここに残ります」

 

「なあ、私だって特戦司だ。自分の身くらい1人で守れる」

 

だから出て行けと言おうとしたらウィルコは「分かってますよ」と告げた。

 

ウィルコは近くにあったソファーを持ち上げて壁に寄せる。

 

「だとしてもお一人では寂しいでしょう。それに自分は司令官の専属副官ですから最後まで任務は果たしますよ」

 

ウィルコはヘルメットの奥でニコリと笑い、バリケード作りに戻った。

 

その様子を見ながらオノランは複雑な表情を浮かべた。

 

ここで死ぬのは1人で良かったのに、もう後戻りは出来ない。

 

オノランは部下1人を道連れにすることを覚悟した。

 

幕僚達を拘束した部隊と入れ替わる形でスパークが率いるTK、クローンARCトルーパー混成部隊が走った。

 

襲撃者の手はもうすぐそこまで迫っていた。

 

ようやくバリケードの構築を終えたウィルコはDC-15Aを手に取り、再度状態をチェックした。

 

オノランはドッグタグを身につけ最後に特戦司の黒いベレー帽を被った。

 

ふとオノランはウィルコに尋ねた。

 

「なあウィルコ、お前は怖くないのか?」

 

クローンにとっては無駄な質問だったかもしれない。

 

彼らは感情、ストレスを抑制されて生産された兵士だ。

 

もしかしたら何も感じていないのかもしれない。

 

彼のこの行動だってプログラム化されたものかもしれない。

 

「自分はクローンです、戦う為に生まれてきた。怖くはありますが頼れる司令官がいればなんともありませんよ」

 

オノランは微笑を浮かべ、ブラスターを手に取った。

 

「ウィルコ、賢いARCトルーパーだと思って目をかけてたが少し抜けてる個性を持ったな。負け戦に首を突っ込むなんて」

 

「司令官が頑固者だからですよ、それに自分は優秀な兵士じゃありません。何せこうして司令官の命令に逆らってる訳ですから」

 

「ハハッ、そうかもな」

 

外では幕僚室を塞いでいたバリケードを突破しようと何度も轟音が響いた。

 

もうすぐそこまで反乱軍が迫っている。

 

ついに最初のバリケードが破られて反乱軍ARCトルーパーが突入した。

 

その音を聞いてウィルコはDC-15Aを構えた。

 

ピリついた空気がブラスト・ドアと壁を通り抜けて双方の部屋に伝わる。

 

TK・ARCトルーパーの1人がハンドサインでブラスト・ドアが作動していることを伝えた。

 

スパークは一旦全員を下がらせ中にいるオノランと恐らくウィルコへの説得を試みた。

 

「ここは我々が制圧した!もうここは包囲されている、直ちに投降せよ!」

 

スパークは叫んだ。

 

されどオノランもウィルコも戦う姿勢を崩さなかった。

 

「5つ数えたらドアを破って発砲を開始する!実弾射撃だぞ!」

 

サーマル・デトネーターを用いてドアを破っても完全には破壊出来ない。

 

それにバリケードが邪魔をして突破を難しいものにするだろう。

 

であるならば実弾射撃、つまりキル・モードでバリケードを貫通して発砲する他なかった。

 

既にスミールもキル・モード射撃の許可を出している。

 

部下のTK・ARCトルーパーは「少佐、もう撃ちましょう」と進言したがスパークは彼を押しのけてドアの方へ近づいた。

 

恐らく中にいるであろう親友に声を掛ける。

 

「ウィルコ、俺だ。スパークだ!返事をしてくれ!俺は出来ればお前達を撃ちたくない…!無理ならせめてお前だけでも出てきてくれ!」

 

スパークは必死に懇願した。

 

クローン・トルーパーにとって兄弟とはもう1人の自分のようなもの。

 

それを撃つことは自分を撃つことも同義であり、出来れば撃ちたくはなかった。

 

しかしスパークの説得むなしくウィルコは戦う意志を伝えた。

 

「奥にいるのが誰であれ……どんな顔であれ…!司令官の執務室に1歩でも入るなら発砲する!」

 

ウィルコの宣言はブラスト・ドアの奥にいる兵士達にも聞こえた。

 

即座に全員がブラスターを構え、副隊長のTK・ARCトルーパーがスパークを引き下がらせた。

 

部屋の中でもウィルコがDC-15Aを構え、戦闘準備を整える。

 

「ウィルコ、援護しろ」

 

オノランはハンドサインでウィルコを横へずらし、自身もDC-15sを構えた。

 

双方戦闘状態のままどちらからの発砲命令も出ずに1分が経とうとした。

 

そんな状況に痺れを切らしたスミールから通信が入った。

 

『こちら旅団長、スパーク、早く突入しろ。相手は司令官ではなくもう敵だ…!速やかに戦闘を終結させろ!』

 

スミールの命令を受けてスパークは突入を決意した。

 

前衛のTK・ARCトルーパーにサーマル・デトネーターを接着するよう指示し、一旦隊員を引き下がらせた。

 

セットしたサーマル・デトネーターは僅か10秒で起爆し、ブラスト・ドアを破壊して奥のバリケードも少し押しのけた。

 

爆風を避ける為にウィルコとオノランはその場に伏せてブラスターを構えた。

 

ドアが吹き飛んだことによりこれでようやく戦闘が出来る状態になった。

 

「全隊……!撃て!」

 

3個分隊18名の一斉射撃が放たれ、次々と扉の向こうに青いブラスター弾を叩き込んだ。

 

執務室まで届いた弾丸はオノランが飾った部下との思い出の写真を全て粉々に破壊した。

 

父親との決別である。

 

ウィルコとオノランも反撃を開始した。

 

彼らの正確な狙いはドアの向こうにいる敵兵も撃ち抜いた。

 

前衛のARCトルーパー2名が負傷し、更にスパークの隣のARCトルーパーもポールドロンに一撃を喰らった。

 

ARCトルーパー・アーマーはクローン・コマンド―程ではないが通常のアーマーよりも頑丈で1発、2発ならフルパワーのブラスター弾も防ぐ。

 

それでもオノランとウィルコの狙いが正確だったため2名は二の腕にブラスター弾を喰らい、負傷した。

 

更に2人は敵兵の太ももや二の腕、頭以外の増加装甲がない部分を集中して攻撃した。

 

既に8人のARCトルーパーが被弾し悶えていた。

 

「一旦後退!後退!」

 

スパークと副隊長は右手にDC-15Aを持ち、左手にDC-17を持って二丁からの牽制射撃で味方の後退を援護した。

 

負傷兵を後方へ下げ、トルーパー・メディックの資格を持つクローンARCトルーパーが負傷兵を治療した。

 

「イム軍曹!」

 

スパークの命令で2名のARCトルーパーがサーマル・デトネーターを投擲した。

 

数十秒後に起爆し、残りのブラスト・ドアとバリケードを打ち破った。

 

衝撃が2人を襲う。

 

「司令官!大丈夫ですか!?」

 

ウィルコが尋ねるとオノランは「当たり前だ」と返ってきた。

 

態勢が崩れたところにARCトルーパーが接近してくる。

 

すぐにウィルコはDC-15Aを用いて応戦した。

 

数人に被弾したが逆にブラスター弾でDC-15Aが破壊されてしまった。

 

弾丸を受けたライフルを捨ててホルスターからDC-17を取り出す。

 

オノランもDC-17を持ってARCトルーパーを迎撃した。

 

しかし状況は余りに多勢に無勢、2人は徐々に追い込まれていった。

 

ウィルコも次第に被弾し、アーマーの増加装甲部分には何発もの黒い弾痕が残った。

 

それでも彼は最後まで懸命に戦った。

 

やがて増加装甲のない腕や太ももにも被弾しウィルコは立てなくなった。

 

「ウィルコ!」

 

オノランはDC-17とDC-15sで牽制射撃を行いつつウィルコを引きずって安全地帯まで運ぼうとした。

 

しかしスパークが放った1発の弾丸がオノランに命中した。

 

あくまで肩に被弾しただけだったがアーマーを着ていないオノランにはダメージが大きかった。

 

「司令官!ご無事ですか!」

 

今度はウィルコがオノランを引きずって運ぼうとした。

 

その間にオノランはブラスター弾を放ち続ける。

 

そこへARCトルーパーの一斉射撃が繰り出された。

 

何発ものブラスター弾がオノランとウィルコに命中した。

 

姿勢が低かったオノランは腕や足など致命傷にならない箇所に被弾したがウィルコは違った。

 

アーマーを貫通し弾丸が身体を引き裂く。

 

スパークが錯乱しながら「撃つのをやめろ!」といった時点でウィルコはもう助からなかった。

 

オノランの隣に斃れ、彼のヘルメットが静かに転がっていった。

 

スパークはその姿を唖然としながら見つめていた。

 

「ウィルコ…!ウィルコ…!!」

 

オノランは何度もウィルコの身体を揺すったが返事はなかった。

 

そこへ増援を引き連れてきた第4空挺旅団長のスミールが現れた。

 

オノランが手に取ろうとしていたDC-15sを足で避け、司令官を見下ろした。

 

彼はクローン・コマンド―1個分隊を引き連れ自ら戦うつもりだった。

 

スミールはかつての上官に敬礼した。

 

「司令官、逮捕します」

 

「それより衛生兵を呼べ……ウィルコを助けなければ……」

 

オノランは最後までウィルコの心配をしていた。

 

そこへスパークが駆け寄り、脈を測った。

 

「おいスパーク…!どうしてもっと早く止めなかった……お前の一番の親友だろう……」

 

本来ならサーマル・デトネーターでバリケードを破壊した後にスタン・モードに切り替えるべきだった。

 

しかしあの混乱の中ではそれは無理だった。

 

結果的に優秀なクローンがまた1人死んだ。

 

スパークはヘルメットの奥で涙を流した。

 

彼は首を振り、もう助からないとスミールに告げた。

 

「衛生兵を呼べ、司令官を運べ」

 

「ジェン・スミール…!クローン戦争の時から我が子の様に育ててやったがまさかターキンの手下になるとはな…!」

 

オノランはかつての部下に恨み言を述べたがスミールは冷たく言い放った。

 

「司令官に恨みはありません、全ては歴史を繰り返さぬためです。衛生兵、早く運べ!お前達も突っ立てないで手伝え!」

 

「了解!」

 

後方から来たトルーパー・メディックと周りのARCトルーパーによってオノランだけが運ばれた。

 

だがオノランはずっとウィルコの手を掴んだまま離さなかった。

 

逆にオノランを運ぼうとしたトルーパー達に「離せクソ野郎!」と抵抗した。

 

しかしもうオノランに抗える力は残されていなかった。

 

スミールによって手は離されオノランは運ばれていった。

 

彼がウィルコを呼ぶ声は幕僚室の通路を出るまでずっと聞こえていた。

 

執務室にはスミールとスパークの2人だけとなった。

 

スパークはずっとウィルコを抱き抱えながら泣いていた。

 

スミールは決してそれを止めず、執務室のコムリンクが鳴った為それを手に取った。

 

『ライカンです』

 

「特戦司令官は逮捕されました」

 

スミールの報告にライカンは『貴様は誰だ』と声を荒げた。

 

ライカンの問いにスミールは答えることなくライカンに告げた。

 

「勝敗は決しました、更なる犠牲が出ないよう懸命なご判断をお願いします」

 

そういってスミールは通信を切り、膝を下ろして斃れたウィルコを見つめた。

 

「どう思ってくれてもかまわない、だがこれ全てナブーの悲劇を繰り返さまい為だ」

 

そういってスミールは最良の兵士に向けて敬意を表し、敬礼した。

 

クローン・メジャーウィルコ、この反乱の最初の戦死者であり最後の忠実な兵士であった。

 

本来の歴史より5年長く生きた彼の死がより良いものだったかは定かではない。

 

 

 

 

-首都惑星コルサント 連邦管区 軍官庁街 合同参謀本部-

ついに第2空挺旅団と第9艦隊の分艦隊が官庁街に到着した。

 

第2空挺旅団は全員がジェットパックを装備している為、空中機動戦に移行して守備隊を翻弄した。

 

一方の第9艦隊は分艦隊司令官のシュメルケ少将が何を考えたか軍官庁街に戦艦イオン砲を放って次々と防衛機能を沈黙せしめた。

 

この予想外の行動に流石の統一会も難色を示したがターキンが許した為作戦は続行した。

 

戦艦イオン砲の近距離砲撃によって官庁街を守る各種砲塔は機能を停止した。

 

そこへ第9艦隊の陸戦隊がリパブリック・ガンシップやセンチネル級に乗って地上へと展開される。

 

その頃には第1艦隊の地上戦力と特殊作戦司令部を制圧した第4空挺旅団も合流しつつあった。

 

これらの部隊は全て地上軍本部を目指して攻撃を開始し、合同参謀本部と国防部を除く3つの本部が反乱軍によって攻撃された形となった。

 

地上では既に各所で防衛線が破綻しつつあった。

 

元々軍官庁街を守るのはTKショック・トルーパー1個連隊であり、そこへコマンダーストーンが連れてきたショック・トルーパー約2個師団が展開した。

 

その為初期の段階では数の上では鎮圧軍が圧倒していたが第9艦隊と第2空挺旅団の到着がそれを変えた。

 

しかもそこへ第1艦隊の野戦軍と第4空挺旅団も到来する。

 

鎮圧軍の防衛部隊は徐々に手が回らなくなり、徐々に押され始めた。

 

そこへ艦隊が砲撃を加え、空中機動する第2空挺旅団が防衛線を引き裂いていく。

 

各地のビルや地上には空中を飛び交うジェットパック・トルーパーに銃撃を加える鎮圧軍の将兵達の姿見受けられた。

 

「撃ち落とせ!これ以上奥に入れるな!」

 

「反乱軍めえ!!うわッ!」

 

DC-15Aブラスター・ライフルの銃撃で屋上にいたクローン・ショック・トルーパーを気絶させる。

 

第2空挺旅団の兵士達はスタン・グレネードと弾幕射撃を多用して守備兵を蹴散らしていった。

 

しかもLAAT/cがAT-TEを運んでくる為下手に空中に気を取られていると正面から装甲部隊の攻撃を受ける可能性があった。

 

守備隊は徐々に防御線を後退させ、反乱軍に追い詰められていった。

 

「後退だ!!後退!」

 

「無理ですガンシップがッ!!」

 

後退を指揮する小隊長のクローン・ルテナントと伍長ら数人のショック・トルーパーにブラスター砲をつけたガンシップのスタン・モードによる銃撃が始まった。

 

リパブリック・ガンシップが本来使えるはずの合成ビーム・レーザーとレーザー砲の代わりに兵員ハッチの部分にブラスター砲をつけた機体が敵の後退を阻止する為に飛行を続けていた。

 

ある地点まで前進した第2空挺旅団が友軍の第9艦隊へ連絡する。

 

「着陸地点確保!」

 

警備の人が与えられたジェットパック・トルーパー以外は前進し暫くすると第9艦隊の地上部隊が着陸した。

 

近代化回収されたリパブリック・ガンシップは小隊付属AT-RTドライバーを入れて1個小隊36名が搭載出来るようになっている。

 

ガンシップの両脇のハッチが開き、TKトルーパーが一斉に降り立って前進した。

 

後部ハッチからはAT-RTが出撃して小隊より前に出た。

 

トルーパー達は皆反乱軍を示す青色のテープが巻かれていた。

 

第2空挺旅団と第9艦隊の地上戦力が国防部の正面門に到着する頃には空軍本部と宇宙軍本部が陥落していた。

 

本部の防衛戦力は合同参謀本部センターへの後退すら許されず全員が拘束された。

 

正面門がAT-TEのマス=ドライバー砲によって破壊され反乱軍が雪崩れ込んだ。

 

ファルシオン級アサルト・タンクがRTTらと共に先陣切って突入する。

 

第9艦隊から陸上戦力が投入されたことにより第2空挺旅団は空中強襲に専念出来た。

 

『FTC-12、正面の憲兵隊を片付けろ!』

 

『了解!』

 

戦車中隊長の命令を受けてファルシオン級が対人ブラスター砲を掃射した。

 

当然スタン・モードでの射撃の為気絶で済んだが、かなりの将兵が戦闘不能になった。

 

そこへTKトルーパー部隊が前進し国防部ビルへ突入する。

 

国防部ビル自体は合同参謀本部センターや地上軍本部よりも防衛に適した施設ではない。

 

「残りの戦力をセンターに回せ!ここはもう放棄しろ!」

 

「コマンダー!スタン・グレネードが!!」

 

「これまでかッ!」

 

最前線で戦っていたコマンダーストーンもスタン・グレネードを受けて気絶した。

 

指揮権は全て憲兵総監に移り、残存兵力は合同参謀本部センターへ集結するよう命令が出た。

 

尤もこの時点で分断された地上軍本部は陥落しており、防衛戦も各所で分断されている為残存兵力がセンターにどのくらい辿り着けたかは分からない。

 

何はともあれ国防部ビルは陥落した。

 

悠々とスピーダーをかっ飛ばしてウルリックは国防部ビルに入った。

 

正面門では同旅団の少佐が敬礼しウルリックを迎え入れた。

 

「ご苦労さん!」

 

ウルリックは数時間前とはえらい違いの笑顔で将兵に手を振った。

 

もうこの時点で軍官庁街は3/4が反乱軍の手に落ちた。

 

気絶したトルーパーの回収の為に艦隊の宇宙軍トルーパーまで動員され、制圧は進んだ。

 

全部隊が合同参謀本部センターへと突撃する。

 

守備隊も持っているウォーカーや装甲戦力を全面展開して抵抗を続けたがやはり数の差で負けていた。

 

鎮圧軍のAT-TEが1台反乱軍のAT-TEを行動不能にすると必ず2台のAT-TEが姿を現す。

 

厄介なことに依然として空挺部隊が空中を抑えている為時折上空からのイオン攻撃で車両群が撃破された。

 

前方の装甲戦力が破られるとそこに反乱軍の装甲戦力がぶつけられる。

 

AT-TE、初期型AT-AT、ファルシオン級が正面から押し上げている間に、超古代の騎兵部隊のようにAT-RT隊が防衛陣地を打ち破って回った。

 

守備隊の将兵はクローン・トルーパー、TKトルーパー関わらずよく奮戦した。

 

反乱軍からの降伏せよという呼びかけに応じた兵士は誰1人いなかった。

 

それ故に悲劇は起きた。

 

反乱軍はついに合同参謀本部センターまで辿り着いた。

 

ここまで来ればもう鎮圧軍に勝ち目はない。

 

『こちら第2空挺旅団、上空は確保した。これより我々は上階からの突入を開始する!』

 

「110憲兵師団、了解。我々はバンカーの制圧に向かう。行くぞ」

 

コマンダーカーギーはメイズとの通信を終了し部下の特殊兵装及び戦術トルーパー、通称SWATトルーパーと共にバンカーの制圧に乗り出した。

 

『守備隊の全将兵に継ぐ。センターは包囲された、降伏すれば決して暴行を加えることはない。繰り返す、センターは包囲された』

 

ガンシップからは降伏勧告が流れ、中庭には制圧した守備隊の兵士が並べられていた。

 

まだ残って抵抗を続ける部隊はB2地下バンカーの守備隊か建物の中の将兵だけだ。

 

とはいってもB2バンカーの守備部隊は1個小隊も残っておらず簡単に蹴散らされた。

 

「後退!後退!」

 

数人のTKトルーパー達が崩れ落ちるかのようにバンカー外から降りてきた。

 

すぐに数人の反乱軍ショック・トルーパーが突入し残りのTKショック・トルーパー達を蹴散らした。

 

「手を上げろ!武器を捨ててこっちに来い!」

 

SWATトルーパー達によってバンカーのブラスト・ドア前にいた5人のTKショック・トルーパーのうち4人を武装を解除した。

 

しかし最後の1人、ある兵長だけは絶対に降伏しないと宣言した。

 

彼はコルサントの相対的貧困層出身の徴兵されたTKトルーパーである。

 

徴兵以前は格闘技を習っており決して愛国心は低い訳ではなかった。

 

貧しい家庭ながらも家族の為によく働き、その甲斐あってコルサントの工科大学に進学した。

 

そこで丁度徴兵で共和国軍に入隊し、共和国軍憲兵隊としてショック・トルーパーの赤いアーマーを授けられた。

 

彼はあまりにアーマーと軍服姿が似合うことから友人からは”将軍”というあだ名を付けられていた。

 

基本的に共和国軍の徴兵期間は2年であり、彼は後3ヶ月で軍を退役することが出来た。

 

夢の退役までほんの僅かな時間であった。

 

「ここは絶対に通さない!」

 

兵長は震えてブラスターが撃てなかったが決してブラスターを離すことも、投降する事も、反乱軍を中へ入れる事も許さなかった。

 

前衛のSWATトルーパーが「邪魔だ!」とブラスターを取り上げようとしたが彼は抵抗した。

 

「どけ!」

 

「ダメだ!」

 

「早くどけよ!」

 

「ここは絶対に通せないんだ!!」

 

そういって兵長はSWATトルーパーを跳ね除けた。

 

説得は時間の無駄だと感じたSWATトルーパーの1人が彼をスタン・モードで撃った。

 

普通はこれで気絶するのだがこの兵長は運悪く衝撃で全身を背後のブラスト・ドアに強打し別の痛みで意識を覚醒させた。

 

「この野郎!」

 

意識が覚醒した兵長はSWATトルーパーに飛びかかろうとした。

 

それを見ていたショック・トルーパー・キャプテンが急いでブラスターをキル・モードに換えて発砲した。

 

スタン・モードでは制圧出来ないと勘違いしてしまったのだ。

 

弾丸は彼の胸を貫き、一撃で絶命させた。

 

それでもキャプテンの部下が同じようにキル・モードで発砲した為兵長は全身をブラスターで撃たれそのまま地面に斃れた。

 

ウィルコと並ぶ数少ない直接の戦死者であった。

 

長年軍に仕えた者達は裏切り、徴兵された僅か2年の兵士が軍人としての使命を全うした。

 

SWATトルーパーの隊長はキャプテンの方を見たが特に責めはしなかった。

 

それよりもブラスト・ドアを破壊する方が重要だと考えたのだ。

 

急いでサーマル・デトネーターを2、3個付けたものをセットし、一旦その場から退避した。

 

サーマル・デトネーターは予定通り起爆しブラスト・ドアを粉々に吹っ飛ばした。

 

当然その音は作戦室にいるドドンナとウィラードにも聞こえた。

 

彼らは最後に唯一の希望であるライカンに通信を行っていた。

 

『参謀次長、憲兵総監、そちらの状況をお知らせ下さい…!こちらも直ちに増援の準備をします』

 

「司令官、申し訳ありません。こちらはもう限界です」

 

「立て!」

 

反乱軍のトルーパー達が作戦室に入ってくる。

 

最後にドドンナはライカンに命令を与えた。

 

「ライカン司令官」

 

SWATトルーパーらが牽制射撃を放ち、銃声がコムリンクに入った。

 

その音声を聞いてライカンは『何があったんですか!?』と聞き返してきた。

 

声を振り絞り勇気を出してライカンに伝える。

 

『反乱軍を鎮圧せよ』

 

そういって通信は切れた。

 

ライカンは唖然とした表情でコムリンクを元の位置に戻した。

 

合同参謀本部センターは陥落した。

 

軍官庁街は反乱軍の手に堕ち、振り返ればそこから逃げ帰ってきた将官達が作戦室に居座っている。

 

もうライカンは彼らにかける言葉もなければ叱責しようという気にもならなかった。

 

それよりも与えられた命令をこなす事が重要だと感じたのだ。

 

「タントール大佐」

 

「はい!」

 

「首都警備司令部の全将兵を武装して練兵場に集結させろ」

 

「司令官!何をするつもりだ!」

 

ママートはライカンに尋ねた。

 

ライカンは当たり前だと言わんばかりに彼らに告げた。

 

「ターキンを逮捕します」

 

それだけ告げてライカンはその場を離れた。

 

いよいよ最終決戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

ライカンは司令官室に入ると自身のアーマーとヘルメットを手にし戦闘準備を開始した。

 

するとかつてジェダイ将軍時に着ていたアーマーを着たコスが入ってきた。

 

ライカンはコスに「何か」とだけ尋ねてベルトに弾薬ポーチと止血帯の入ったポーチをつける。

 

「ターキンを逮捕すると言ったが生死は問わないで良かったのか」

 

ライカンの手が止まった。

 

それから彼は躊躇う事なく「はい」と答えた。

 

「宣言した通り射殺しても構いません。奴らは反乱軍、情けは無用です」

 

「そうか…」

 

「ジェダイとしては反対ですか」

 

ジェダイとて戦わねばならない時は当然戦う。

 

しかし彼らは無益な殺生を嫌い、いざ戦うにしても余裕があるならば相手の命を奪わぬよう心掛けてきた。

 

コスとて戦争が始まるまではそうだった。

 

「いや、1つだけ策がある。もしかしたら最も成功率が高い策かもしれない」

 

「聞くだけ聞きましょう」

 

「ありがとう、内容はこうだ。まず攻勢部隊を敵戦力の正面に配置して戦力を吸わせる。そして裏からライカン中将が率いる強襲部隊が攻撃を仕掛ける、ここまでは一緒だ」

 

コスは口頭で説明を続けた。

 

ライカンは黙って彼の話を聞いていた。

 

「強襲部隊が注意を引いている間に私が司令部に潜入して作戦室にいるであろう反乱軍の首謀者を殺害する。以前より剣技は衰えただろうが出来ないことはないはずだ」

 

「反乱軍首謀者の暗殺ですか、確かに短期間かつ最も高い成功率で終わるかもしれない」

 

しかしライカンは不安そうな目で見ていた。

 

それから彼の策を否定した。

 

「ですが認められません。そういった命令を下すのは私の仕事です、あなたが直接手を汚す必要はない」

 

そういってライカンはコスの肩を軽く叩いた。

 

悲しげな笑みを浮かべて彼に耳打ちする。

 

それはライカンが考えた作戦内容だった。

 

「……では手を汚すのはあなただと」

 

「首都警備司令官兼、反乱軍鎮圧司令官としての責務です。だからあなたのフォースは、この時誰かを守る時に使って欲しい」

 

そうライカンが説得した。

 

そしてライカンは彼にあることを尋ねた。

 

「マスターコス、ご家族に連絡は取りましたか」

 

「いえ…今は作戦中では?」

 

「今日が最後になるかも知れない。私の頼みを聞いてくれたあなたへのせめてもの責任です」

 

ライカンはコスに家族と連絡を取ることを許した。

 

コスは徐に個人用の通信機を取り出し、妻であるミラの元へ通信を繋いだ。

 

もうてっきり娘を寝かしつけて寝てしまったと思っていたが思いの外すぐに通信に出た。

 

「ああ、もしもし?起こしたか?」

 

『いえ、まだ大丈夫。あなたはまだ帰れそうにないの?』

 

昼ぶりに聞いたこの世で最も愛おしい妻の声だ。

 

コスはバツの悪そうな顔をしながら「悪いな」と答えた。

 

「今夜も帰れそうにない、すまない」

 

『ヌーナのスープでも久しぶりに作ろうと思ったんだけど…朝帰れない?』

 

ミラの声音は少し嬉しそうであった。

 

それに釣られてコスにも笑顔と明るい声音が戻ってくる。

 

状況は逼迫していたが今この瞬間だけが喜ばしい時間だった。

 

「本当にすまない」

 

『そう何度も謝らなくていいわ。とにかく忙しくても食事は抜かないでね』

 

「食えないならこんな仕事辞めてやるさ」

 

コスはあえてライカンの方を見ながらそんなブラック・ジョークを呟いた。

 

ミラは『そんな冗談やめてよ』と言っていたが当のライカンは苦笑を浮かべ悪くないといった表情だった。

 

暫くの静寂の後、ふとミラはあることを尋ねた。

 

『あなた、何の問題もないわよね…?』

 

その事を聞かれた瞬間コスは一瞬だけ心を乱されたがジェダイ時代に覚えた落ち着かせ方で平静さを取り戻した。

 

「ああ、もちろんだ」

 

『良かった、1つ言おうと思って言い忘れていたことがあったの。持って行った鞄の中にマフラーが入ってるから良かったら使って。あなたの為に買ってみたの』

 

ライカンはひたすらに外を見つめた。

 

彼は自身の心にひたすら自分は指揮官で全ての責任を負う代わりに冷酷でなくてはならないと暗示をかけた。

 

そうでもしなければここでコスを家に帰してしまいそうだった。

 

今から行う作戦には絶対にコスが必要なのにも関わらずだ。

 

一方のコスはひたすら感謝と罪悪感でいっぱいだった。

 

後悔はない、ライカンの誘いを受けて反乱を対処した事には後悔はなかった。

 

それでもこれから家族には確実に迷惑が掛かる。

 

その事を思うと罪の意識が芽生え始めた。

 

『最近寒いでしょ?外出る時に巻いてみて』

 

「ありがとう、それじゃあもう切るよ。おやすみ」

 

『ええ、帰ってくるのを待ってるわ』

 

そういうとコスはコムリンクを切ってライカンのデスクに両腕を突いた。

 

「マスターコス、今夜はきっと寒いぞ」

 

一才顔を見せず、ライカンはコスにそう告げた。

 

コスは「装備を整えてきます」といって執務室を後にした。

 

すると今度はコスと入れ替わるようにタントールが入ってきた。

 

「全隊員を集結させました」

 

「規模はどの程度だ」

 

ライカンの問いにコスはバツが悪そうな表情で答えた。

 

「司令部直轄のAT-AT4台、RTTが5輌、ガンシップ3機、重火器部隊合わせて210人ほどです」

 

「ソーンが連れてきた最後の大隊を合わせても800人弱か……非戦闘員にも武装させろ」

 

「非戦闘員も入れて210人です」

 

タントールは深刻そうな顔で答え、ライカンはそれ以上何も言わなかった。

 

ライカンがヘルメットを被ろうとするとタントールが「司令官」と彼を呼んだ。

 

「司令官に話があります」

 

「手短にな」

 

「司令官は”()()”やりました」

 

「十分?そういうのは戦ってからいうものだぞ大佐」

 

タントールは俯きながら「もう終わりです」と呟いた。

 

彼は鎮圧を諦める気だった。

 

ライカンと残された数百名の将兵達を危険から遠ざける為に。

 

「もうこれ以上の抵抗は無理です。あそこに居座っている将官達だってこんな事自殺行為だと…!」

 

「では反乱軍に共和国を明け渡せというのか!」

 

ライカンは悲観的になるタントールを叱責した。

 

それでもタントールは諦めずにライカンを説得しようとした。

 

タントールはライカンを素晴らしい上官だと思っている。

 

部下思いで職務に忠実で頭の回転も早い優秀な司令官だ。

 

だからこそ優柔不断な本部のせいで敗軍の将にされる事を防ぎたかった。

 

「B2バンカーまで制圧されたんですよ?連中に強襲をかけても時期に官庁街から増援が来て終わりです」

 

「だからと言って……もしかしてお前にも通信が掛かってきたのか?」

 

ライカンはタントールに尋ねた。

 

タントールは少し考えながら全てを打ち明けた。

 

「司令官、説得の通信は首都警備司令部の幕僚達全員にかかってきています!私は悪態をついて切りました、他のみんなも多分そうでしょう」

 

タントールの予測は正しかった。

 

首都警備司令部の幕僚達にも鎮圧作戦をサボタージュするよう説得の通信が様々な人物から来た。

 

かつての上官、同じ惑星の出身者、アカデミーの同期や後輩など。

 

時に心が揺らぎそうにもなったがそれでも彼らはライカンに付き従い、軍人の使命を果たす為に頭を捻った。

 

それを聞いてライカンはタントールと幕僚達に「よくやった」と労いの言葉を送った。

 

「ですが司令官…!その幕僚達ももう諦めています!こんな状況で戦っても勝算はありません!」

 

「それで」

 

「…司令官ももう一度ご家族に会いたいですよね」

 

タントールは言葉を選んだがライカンは「生意気言うな!」と声を荒げた。

 

「私がターキンに投降する姿を見たいのか?共和国の理念が反乱軍の手で滅びつつあるのに、最後まで戦う者がいないとは……それでも軍隊なのか?」

 

ライカンの声が震え、目は潤んだ。

 

彼だって人間だ、恐怖や悲しみといった感情はある。

 

それでも感情を殺してライカンは戦うのだ。

 

共和国が共和国である為に。

 

共和国軍の軍人として。

 

「他人は気にしない、皆自分の信念に従い生きている。だから反乱も起きるのだろう、だが私の肩書きは何だ?首都警備司令官が首都を守らなくてどうする?今夜、コルサントは我が首都警備司令部が守る」

 

そういってライカンはタントールの説得を跳ね除けた。

 

タントールはこの分からず屋めと思いながら目尻に涙を浮かべてブラスター・ピストルに手を添えた。

 

「出動命令を撤回してください!」

 

ライカンは振り返りタントールに尋ねた。

 

「私に命令を?」

 

タントールはブラスター・ピストルの安全装置を解除し、キル・モードに設定する。

 

「上官の誤った判断で部下を死には追いやれません!どうか判断のご再考を!」

 

「撃つ気があるのか?」

 

「司令官が命令を撤回されないのであればッ!」

 

タントールはブラスター・ピストルを構えた。

 

されどライカンはどこか満足げであった。

 

彼はタントールを叱責するどころかその行動を受け入れた。

 

「決心したなら撃て、共に戦った部下の中で一番優秀な幕僚だ。自分の判断を信じるなら撃て」

 

そういってライカンは振り返り、執務室の外に出ようとした。

 

タントールはあくまで「止まれ!」というだけで発砲はしなかった。

 

「それ以上動いたら撃ちますよ!」

 

「ならば早く撃て、もう時間がない」

 

タントールは唖然とした。

 

彼は本気でタントールのことを信じているのだ。

 

最後にライカンはタントールに告げた。

 

「撃たないなら武装して練兵場に来い」

 

そういってライカンは執務室を後にした。

 

タントールは引き金を引くことはなかった。

 

彼は急いで武装して仲間達の下へ急いだ。

 

 

 

練兵場には首都警備司令部の武装した210人と、コマンダーソーンが最後の命令で連れてきたメジャーデルテの大隊567人が整列していた。

 

兵員の後ろと左右には最後の決戦の為にかき集められたウォーカーと戦車が列をなしている。

 

ライカンはただ1人、司令部から姿を現して全員の前に立った。

 

前列には副司令官と軍事顧問のコス、そして首都警備司令部の幕僚達が並んでいる。

 

コスは通常の装備の他に妻から貰ったマフラーをつけていた。

 

これでどれだけ寒くても戦える。

 

次列にはデルテや各部隊の隊長と下士官が将兵を統率し司令官の命令を待っていた。

 

前列では司令官の命令が出るまで幕僚達が何かを話していた。

 

「…結局最後まで戦うことになったんですね」

 

武装したヒューム大佐にポジョ中佐が小声で話した。

 

ポジョは宇宙軍出身の為宇宙軍トルーパー用の装備を身につけている。

 

ポジョの隣にはダーリン少佐が最後に父と撮った写真を眺めて自らの命に区切りをつけようと覚悟を決めていた。

 

ヒュームはコルサントの夜空を眺めながらふと呟いた。

 

コルサントの都市夜景は星空を隠すが目を凝らせば星々を移動するスターシップが見えた。

 

「…司令官と幕僚は一蓮托生、あの方が戦うというならどんなに無茶でも戦うさ。きっとすぐにタントールも来るよ」

 

「はい」

 

幕僚達は覚悟を決めていた。

 

ライカンは全員の前に立つと早速命令を将兵に伝えた。

 

彼はセンターを脱出してきた将校から与えられた将軍の階級章を身につけている。

 

「合同参謀総長を拉致した反乱軍が第30首都警備師団に集まっている。国権を簒奪する為に起こされた反乱に、私の部下までもが参加してしまい面目ない。そして、最後まで戦った部下達には可能な限りの栄光を授けたい」

 

ライカンは隊列の間を歩きながら1人1人兵士の顔を見た。

 

皆ヘルメットを被っている為素顔は見えないがそれでも不安そうな兵士や落ち着きのない兵士は雰囲気で分かった。

 

そんな兵士達の肩を軽く叩いて緊張をほぐしながら命令を伝える。

 

「連中の行いを黙認するのは軍人として許す事は出来ない」

 

そう進言していると司令部からDC-15Aを担いだタントールが走ってきた。

 

仲間の幕僚達は「遅かったな」とタントールを暖かく迎え入れた。

 

ライカンも微笑みを浮かべている。

 

「今夜は厳しい戦いになる、死にたくない者、同胞との戦いを望まぬ者は今からでもこの場を離れていい。諸君らにはそれだけの恩義と権利がある」

 

そういうと将兵達は顔を見合わせ一瞬だけ相談した。

 

しかし奥の方からある1人のTKトルーパーが叫んだ。

 

「自分は!司令官閣下と最後まで共に戦います!」

 

そのトルーパーはかつて首都警備司令部の入り口で警備を行っていた時に寒冷服を忘れてしまった。

 

すると見かねたライカンが「体に気をつけろよ」と彼を労って寒冷服を持ってきて着せてあげた。

 

そうした小さなライカンの気遣いはこの場にいる全ての将兵が目撃したことだ。

 

故に彼らは一兵卒であろうとライカンに付き従うことを決めた。

 

その場から動く兵士は1人もいなかった。

 

「諸君は首都警備司令部の名誉と任務を守る本物の勇士だ!私は司令官として、有志と共に反乱軍を鎮圧しに行く!」

 

「生きて首都を守れ!」

 

コスは全員にそう告げた。

 

全ての将兵達からはそれの対となる言葉が返ってくる。

 

「死して忠誠を!」

 

「首都警備司令官に敬礼!」

 

忠誠(충성)!!」

 

忠誠(충성)

 

かき集められた強襲部隊は司令部を出発した。

 

この日最後の決戦が始まったのだ。

 

 

 

 

首都警備司令部の強襲部隊が出動したのに合わせて本来の攻勢部隊も進撃を開始した。

 

機甲部隊の指揮官が統一会側であった為重戦力が少ない攻勢部隊であったが、指揮官達は陽動作戦と割り切り可能な限り反乱軍の戦力を拘束した。

 

結果的に第30首都警備師団は主力部隊を攻勢部隊の侵攻方面に展開し、後方の守りは僅か1個大隊と予備戦力のみとなった。

 

その間にライカン率いる強襲部隊がリパブリック・ガンシップに乗って最大の速度で司令部に近づく。

 

ある地点まで移動すると地上からの対空攻撃を警戒し、機械化部隊を下ろすようライカンは命令を出した。

 

ライカンが乗り込む軍用スピーダーを先頭にRTTやISPスピーダー、AT-TEやAT-ATが続く。

 

ガンシップ部隊は硬度を下げつつ地上部隊と足並みを揃えて確実に前進を続けた。

 

無論この行動を反乱軍たる統一会側が見逃すはずがない。

 

SARFトルーパーが接近する強襲部隊を発見し司令部に報告した。

 

「連中は消防庁の市庁舎を抜けてオナーシ像へ、司令部の背後へ回るつもりです。戦力としては1個大隊教ですが最新鋭のAT-ATを4台投入したのが気がかりです」

 

指揮棒を用いながらホロテーブルでタッグは状況を説明した。

 

AT-ATは近年になってようやく正式配備が始まった最新鋭のウォーカーでその戦闘力はAT-TEとは比べ物にならない。

 

基本的にAT-ATは爆撃か砲撃でも喰らわせないと撃破する事は出来ない代物だ。

 

「防御はどうなっている?」

 

ターキンはタッグに尋ねた。

 

「背後からの強襲対策として後方の市街地にバリケードを展開ウォーカー1個中隊を含めた1個大隊を展開しています。第8空挺ならともかく、あの程度の戦力なら大隊でも30分は持つかと」

 

「その間にウルリックの第2空挺旅団がこちらにくると言っています」

 

タッグとラックスはターキンにそう報告した。

 

ターキンは少し考えタッグに命令を出した。

 

「タッグ准将、予備の1個大隊を後方の防衛に回せ。それと防衛線の後列にいるAT-AT2個小隊もだ」

 

「よろしいのですか?そうなれば前線が破られた際対処が困難になりますが」

 

「交戦中の首都警備司令部の部隊は君の師団を突破する能力はない。それより危険なのはライカンが指揮する強襲部隊、ライカンには戦う大義名分があるということだ」

 

かつての部下の思考をターキンは完全に読んでいた。

 

ターキンは分かっていたのだ、合同参謀本部センターが陥落した程度でライカンが戦うことを止める訳がないと。

 

彼は南アウター・リム掃討戦の時と同じように最後までターキンに喰らい付いてくる。

 

であればこちらもそれ相応の態度を持って迎え撃たなければ1人の戦士として恥である。

 

ターキンはライカンを厄介な相手と思いつつも敬意は払っていた。

 

「タッグ准将、以上の命令を実行し連中を阻め。絶対に先に発砲してはならんぞ」

 

「ハッ!」

 

タッグは師団の直接指揮の為作戦室を離れた。

 

その頃ライカンの強襲部隊は司令部のかなり近くまで接近していた。

 

頃合いを見計らってライカンが全部隊に命令を出す。

 

「全隊、戦闘隊形で移動せよ。反乱軍をここで撃滅する」

 

命令と共に強襲部隊が戦闘隊形に変更し、ライカンのスピーダーに続いた。

 

ふとライカンが顔を上げるとそこには旧共和国の英雄、カース・オナーシ*10の像があった。

 

クローン戦争中にプロパガンダとして建設された像で、コルサントにはテレトー*11提督やフォーン・ドドンナ*12提督、ルーン・バンジャール*13提督やペヴェル・クロナラ*14提督など様々な戦争の英雄が像として建てられた。

 

ライカンはオナーシの像に向かって誓った。

 

あなた達が守った共和国は今夜は我々が守ります、と。

 

強襲部隊が首都警備司令部前に辿り着くとそこには既にバリケードが展開されていた。

 

ファルシオン級やセイバー級が無理やりこじ開けようとするがそう上手くはいかなかった。

 

すぐに工兵隊がやってきてバリケードの破壊を開始する。

 

その間にライカンは前面に展開する第30首都警備師団の将兵に向かって叫んだ。

 

「第30首都警備師団にいる反乱軍に告ぐ、私は首都警備司令官のカーリスト・ライカン将軍である」

 

ターキンは作戦室の窓を開け、エレクトロバイノキュラーを用いて状況を確認した。

 

「直ちに武装解除して投降せよ。特に首謀者を除く諸君は私と同じ地上軍人であり首都警備司令部所属だ。諸君が自分の意思で加担したものではないと私はよく知ってるだから諸君はどうか武器を捨てて帰ってきてくれ」

 

様子を確認したターキンはホロテーブルを囲んでいるテナントに尋ねた。

 

「第2空挺旅団はどこまで来ている」

 

「後数十分は掛かると言っている」

 

「では全速力で来るよう命じろ」

 

第2空挺旅団が来なければ状況は打開出来ない。

 

前線では戦車がバリケードを押し上げているうちに工兵隊が連結部を破壊し、確実に少しずつ前進していた。

 

「司令官、AT-ATでバリケードを吹き飛ばしますか」

 

ヒューム大佐がライカンに尋ねた。

 

AT-ATの身長であれば高所からバリケードを狙い撃ってまとめて破壊することが可能だ。

 

しかしライカンはその提案を受け入れなかった。

 

「無駄な発報は連中に攻撃の大義を与えることになる。やるなら一撃で、だ」

 

「了解…!」

 

反対側でも同様の会話が行われていた。

 

「連中突進してきています、応戦しましょうか?」

 

「焦るなホームズ*15少佐、いいか向こうが撃つまでは絶対に撃つな」

 

タッグは焦る部下に命令を伝えた。

 

どの道連中はここで潰される、バリケードを崩している間に後方から(ウルリック)の空挺旅団が来て終わりだ。

 

タッグはいつにも増して冷静な面持ちで敵と対峙した。

 

そこへ近くの通信拡張機を用いてターキンからの声明が放たれる。

 

『聞こえるか、私は保安司令官のウィルハフ・ターキン提督である。これは一体なんの真似だ、首都警備司令官が状況判断も出来んとは』

 

あえて煽るようにターキンは言葉を続けた。

 

『数十台のウォーカーと2個大隊にも満たない戦力で我々を制圧出来ると思ったのかね?』

 

ターキンの煽りに対抗するようにライカンはスピーダーの通信機を広域放送に拡大して上空にいる最後の味方に命令を伝えた。

 

ライカンが今の今まで隠していた奥の手だ。

 

「カールセン艦長、首都警備司令だ。準備出来たら報告しろ」

 

ライカンの呼び掛けに軌道上のブリッジからカールセンは答えた。

 

『軌道爆撃目標、首都警備師団司令部。二連重ターボレーザー砲6門、四連重ターボレーザー砲2門、三連中型ターボレーザー砲3門、XX-9重ターボレーザー砲60門、60秒間最大出力砲撃、準備完了です!』

 

その言葉を聞いた瞬間作戦室にいた全員顔青ざめた。

 

宇宙軍の者はターボレーザー砲の種類と数を聞いてすぐに今から砲撃してくるスター・デストロイヤーの艦種が分かった。

 

インペレーター級スター・デストロイヤー、共和国宇宙軍最新鋭の主力艦だ。

 

そして地上軍の者は砲数を聞いてこの作戦室は持たないことを悟った。

 

ターボレーザーは2秒に1発のペースで発射出来る、つまり60秒間なら半分の30発になる訳だ。

 

それが単純な門数では71門、二連装や三連装を考慮すれば砲弾数は1分間で2,550発以上になる。

 

この絶大な砲火力をある1点に集中したら、さてどうなるであろうか。

 

司令部全体は偏向シールドで守られているとはいえ最新鋭艦のターボレーザーを最大出力で1分間も浴びれば破れてしまう。

 

そうなれば作戦室は共同墓地どころか跡形も残らない。

 

そこでライカンが正式に砲撃目標を指定する。

 

「砲撃目標は反乱軍のいる第30首都警備師団司令部だ」

 

『了解、砲撃手は各砲区画長の指示に従い砲角度を調整せよ』

 

軌道上でインペレーター級”アルティメイタム”のターボレーザー砲が稼働し角度を合わせた。

 

アルティメイタム”は度重なる地上への砲撃支援訓練で通常のスター・デストロイヤーよりも正確な射撃が繰り出せた。

 

おかげで作戦室は再び阿鼻叫喚である。

 

「テナント提督!!早く主力艦隊を送ってインペレーター級を抑えろ!!」

 

「今呼び出していますがもう間に合いません!」

 

「モッティはどうした!」

 

「こっちの艦隊は全部同じところにいるんですよ!シュメルケの分艦隊もジャージャロッド提督の第1艦隊だって今更間に合わない!」

 

ターキンは黙って再び窓の方へ寄った。

 

その頃にはもう”アルティメイタム”の砲撃準備は終わっていた。

 

「艦長、全砲門砲撃地点を固定しました」

 

副長のカマス中佐がカールセンに報告する。

 

「命令を待て、我々だけで判断出来ん」

 

そう言ってカールセンはライカンの命令を待った。

 

何せ今からカールセンが砲撃を加えようとしているのは反乱軍とはいえコルサントの自軍拠点である。

 

心の中では考え直してくれないだろうかと思っていた。

 

「ライカン司令、君1人が意地を張ってコルサントを火の海にする気かね?一先ずここに来て我々の話でも」

 

「話し合いとは人同士でするものだ」

 

野心の為に国を裏切るような獣とライカンは対話するつもりは毛頭なかった。

 

その言葉を聞いて作戦室は益々騒がしくなった。

 

「ターキン提督!!どうするつもりだ!!」

 

「このままじゃあ纏めてここは吹き飛ばされてしまうぞ!!」

 

「奴は説得に応じるつもりがありません!提督指示を!」

 

「静かにしたまえ、共和国軍の将官ともあろう者がこの程度で騒ぐとは情けない。ラックス、エヴァックス、武装して共に外に出るぞ。こうなれば陣頭で直接思い上がったオルデラニアンを叩き潰さねばならない」

 

「了解!」

 

「直ちに準備します」

 

ラックスとエヴァックスは命令を受けて自分達のヘルメットとブラスターを取りに行った。

 

今この瞬間にも外ではライカンが「首謀者ら指揮官は全員極刑に処する」と反乱軍を脅していた。

 

その裏でターキンはテナントにあることを耳打ちした。

 

「奴は私が出ていって必ず食い止めるから、君はここを抑えておいてくれ」

 

「…分かった!死ぬなよ…!」

 

友人と固い約束を交わしてターキンは外に出た。

 

文字通り陣頭で敵を粉砕する為に。

 

その頃ライカンはカールセンに細かい命令を送っていた。

 

「艦長、確実に当てるんだぞ。この意味は分かっているな」

 

『司令官…!砲撃地点をご再考ください…!本艦の性能ではどうしても数発の流れ弾がそちらに直撃する可能性があります…!無理でしたらせめて距離をっ!』

 

「そのことは心配するな艦長、流れ弾は全て私が”()()()()()”」

 

コスはカールセンに向かってそう断言した。

 

ライカンがこの戦場に元ジェダイかつフォース使いの達人を呼んだのにはこういう訳があった。

 

アルティメイタム”から放たれた砲撃をコスがフォースを用いて可能な限り一点に収束させて周りの被害をなくしつつ敵には最大の損害を与える。

 

かつてあるジェダイが軌道上の軍艦をフォースで地上に叩きつけたことが由来の戦術だ。

 

とんでもない数のターボレーザーを自身1人の力で収束させる為コスには計り知れない負担が掛かるだろう。

 

それでも彼は愛する家族が安心して生きていける未来を作る為に戦うことを選んだ。

 

『分かりました…!直ちに実行します!』

 

その頃にはターキンらを乗せたスピーダーが最前線の地点に到着していた。

 

タッグやホームズ少佐は敬礼し、ターキンは乗ってきたスピーダーの上に立った。

 

ラックスから拡張器を受け取りライカンら鎮圧軍に向けて時間稼ぎを始めた。

 

「首都警備司令官に付き従う者はよく聞け。もし貴様らが危険な行動に出たら即刻全面戦争を起こして貴様らを殲滅する」

 

ライカンはエレクトロバイノキュラーでターキンの姿を確認した。

 

彼は珍しくヘルメットを被っており、ベルトにはブラスター・ピストル、片手にはE-11を持っていた。

 

「今から5分後、インペレーター級の軌道爆撃を開始する」

 

ライカンは折れなかった。

 

そうだろうと思いターキンはライカン以外の将校達を揺さぶりに掛けた。

 

たった1人が英雄であろうとそれに続く者がいなければ真っ先に噛み殺されるだけだからだ。

 

「ここに砲撃を加えたらどうなると思う?巻き込まれて死ぬのは君たちも同様だ。それは勝利ではなく共倒れだ」

 

その言葉を聞いて動揺する者も投降したり裏切ろうとする者は誰もいなかった。

 

ターキンは今更になって眼前にいる敵が1個師団をも上回る危険な相手だということを認識した。

 

テナントから通信が掛かってきた。

 

彼はツテを利用して”アルティメイタム”の砲撃をやめさせようとしたらしいが失敗に終わった。

 

アルティメイタム”には珍しく統一会のツテが届かなかったのだ。

 

バリケードの向こう側でライカンが砲撃開始時刻をカウントする。

 

「砲撃開始まで後2分!」

 

「そうか!では撃てばいいさライカン司令官!そうなれば君は分離主義者以来の存在だ!コルサントに砲を叩き込んだのはグリーヴァス将軍と並んで君が2人目だ!」

 

ターキンは「そうなれば全ての責任は首都警備司令官たる君にある」と脅した。

 

その上でライカンに問うた。

 

「君は覚悟しているのだろうな!」

 

勿論その答えはターキンも知っていた。

 

でなければこんな大胆な行動に出るはずがない。

 

ライカンはあえて通信機を使わずに答えた。

 

「覚悟ならとっくに出来てるさ」

 

いよいよ砲撃開始まで1分半を切った。

 

ライカンは全将兵に命令した。

 

「砲撃が終了したら一斉に攻撃を仕掛ける、総員着剣し待機せよ」

 

「了解!」

 

この裏でライカンもターキンも予想だにしなかった人物がギデオンの案内で司令部に入っていた。

 

その人物に最初に気づいたのはランパートとモロック、そしてテナントであった。

 

ランパートとモロックがトイレを理由に作戦室から出ようとしていたのを引き留めていたら3人はその人物と出会った。

 

既に砲撃開始まで残り30秒を切った。

 

師団司令部全域に張り詰めた空気感が流れる。

 

皆、死にたくはないし負けたくもなかった。

 

両者一歩も引かず、着々と砲撃開始時間だけが過ぎた。

 

残り20秒のところで作戦室から全体にある通信が流れた。

 

ターキンの奥の手がついに到着したのだ。

 

『ライカン司令官、私は国防長官スライ・ムーアです。今すぐ軌道爆撃を中止しなさい』

 

透き通った冷たさを含んだ女性の声、アンバラン特有の標準語の訛り。

 

その名が嘘ではないと分かり、カールセンは砲撃を一時中止した。

 

スライ・ムーアが統一会の下に辿り着いたのだ。

 

しかも最悪のタイミングで。

 

「長官が何故反乱軍の通信を用いているのですか」

 

ライカンはムーアに尋ねた。

 

するとムーアはさも平然のように呟いた。

 

『私は国軍同士の戦闘を望みません。コルサントに砲撃を加えようとするあなたとは違い、冷静な彼らに接触するのは当然のことです』

 

「もう少し高圧的にお願い出来ますか?」

 

コムリンクを持っているテナントはムーアにそうお願いした。

 

ムーアは「やってみましょう」と呟いて彼の要望を叶えた。

 

『私はターキン司令官と話をつけました。だからこれでこの動乱は終わりです、直ちに全部隊を駐屯地に戻して待機しなさい』

 

「そうはいきません、相手は反乱軍です。”ロズ=ウルフ1”も出ている!」

 

『これは国防長官の命令ですよ、早く帰投しなさい』

 

ライカンはこの時、ムーアが統一会側だとは知らなかった。

 

それ故反意を促そうとムーアを説得し続けた。

 

「長官!帰投命令を撤回してターキンの逮捕を命じてください!」

 

『ライカン司令官、国防長官は首都警備司令官の部下ですか?私の部下があなたであって、あなたが私に命令を下す権限はない!』

 

ライカンは絶望しターキンは勝利を確信した。

 

やはり今日この日に至るまでの道は正しかった、閣下(パルパティーン)も認めて下さっていると。

 

ムーアは長官の権限を使ってライカンにあることを伝えた。

 

『この瞬間を持って首都警備司令官の任を解く、”あなたはもう何者でもない”。カーリスト・ライカンはもう首都警備司令官ではない!』

 

ライカンはこの瞬間にもう何者でもなくなった。

 

指揮権を持たぬ、ただの将軍である。

 

ターキンは司令官を失った首都警備司令部の兵士達に向かってはっきりと宣言した。

 

「いいかね諸君、国防長官の命令は皆聞こえただろう。もうライカン”()()”は首都警備司令部の指揮権はない、諸君が下されていた命令はもうなくなったのだ!」

 

ライカンに今まで付き従っていた全ての将兵に動揺が走った。

 

明らかに間違っているのはターキンなのに、国防長官がそれを肯定するから従わざるを得ない。

 

そうやって動揺していると後方から眩い光が放たれた。

 

共和国軍が夜間に時折用いる発光弾だ。

 

振り返って見ると彼らの背後には大量のガンシップとAT-TEやAT-RTらで構成された共和国軍の部隊が接近していた。

 

タッグがターキンに報告する。

 

「来ました!ウルリックの第2空挺旅団です!」

 

部隊の最前列でスピーダーに乗り込んでいたウルリックは全部隊に命令を出した。

 

「総員武装して前方の部隊を無力化しろ!1人も殺すなよ!」

 

RTTやガンシップからトルーパーが降り立ち、ブラスターを構えて突っ込んできた。

 

それを見てタントールは部隊員に「戦闘隊形を維持しろ!司令官に近づけさせるな!」とライカンを守ろうとした。

 

情勢が目紛しく変わる中タッグはあることに気がついた。

 

「おいそこ!ブレンナ中尉*16!民間人を近づけるな!」

 

ブレンナ中尉率いる小隊の近くに騒ぎを聞きつけた民間人がやってきた。

 

民間人の被害はなんとしても避けたかったし、何より民間人が近くにいると軍事行動に支障が出る。

 

タッグの判断は正しかったがターキンはあえてそのままにするよう命じた。

 

「タッグ准将」

 

「はい」

 

「民間人はあのままにしておけ。彼ら彼女らにも見せてやるがいいさ、共和国が変わる瞬間をな」

 

ターキンは言葉を選んでこう言ったが内心はこうだ。

 

誰が新しい主人か見せつけてやれ。

 

「しかし危険です」

 

「二度は言わんぞ」

 

「了解…!放置しろ!」

 

ターキンの指示はある意味では合理的だった。

 

バリケードの向こう側にいる強襲部隊も民間人を見つけた。

 

「司令官!向こうに民間人が!」

 

ダーリンがライカンに報告した。

 

ライカンはエレクトロバイノキュラーでダーリンが指差した方向を見た。

 

確かにそこには民間人が数人いた。

 

これではいくら軌道爆撃を収束させて撃ったところで民間人に被害が出る。

 

ライカンは奥の手を諦めるしかなかった。

 

勝利が確定したことを受けてテナントが作戦室からターキンに会いにきた。

 

「やったな!これで勝ちだ!」

 

ターキンの手を強く握り締めて喜びを噛み締めた。

 

「いいタイミングでムーア長官が来てくれた」

 

2人は余裕を取り戻した。

 

一方ライカンはカールセンからの通信で敗北を噛み締めていた。

 

『司令官、申し訳ありません……国防長官の命令には逆らえません……申し訳ありません……』

 

カールセンは最後まで味方だった、それが唯一の救いだ。

 

この時点でライカンは”()()()()()”でターキンを逮捕するのは無理だと考えた。

 

最後に司令官として不甲斐なかった事を全員に謝罪した。

 

指揮官達、幕僚達、そして全ての兵士達の顔がスピーダーの上から見える。

 

コルサントはこの日、雪が降っていた。

 

まだ小降りだったが十分に気温を下げた。

 

「諸君、ここまでだ」

 

ライカンは正式にこれ以上の戦闘を止めるよう命じた。

 

「みんな、ご苦労だった……諸君は共和国で最も無能な司令官に従って苦労したな」

 

「司令官と共に戦えて光栄でした!」

 

デルテはライカンに敬礼し、感謝を述べた。

 

ライカンはただ一言だけ「ありがとう」と例を述べ、ヘルメットをタントールに預けた。

 

「司令官……」

 

「全員を帰投させて休ませろ」

 

首都警備司令官としてのライカンの仕事はここで終わった。

 

全員が俯き、唯一笑みを浮かべていたのはバリケードの先にいるターキンだけだった。

 

「この日の動乱はこれで終わりだ、我々も必要以上に諸君を傷つけたくない。武装解除して投降せよ、ただし万が一正気を失って抵抗する者ものあれば断固としてこれを処断する!」

 

ターキンの宣言の裏で幕僚達は自分たちの不甲斐なさを謝罪していた。

 

「司令官…すみません……我々が至らぬばかりに…」

 

「申し訳ありません…」

 

そんな彼らに向けてライカンは一つだけ頼み込んだ。

 

「いいんだ、だが司令官の最後の頼みを聞いて欲しい。どうかみんな、私を止めないでくれ」

 

そういうとライカンは振り返ってバリケードの方へ向かおうとした。

 

だがコスが彼の肩を持ち、止めた。

 

「私は軍事顧問で君の部下じゃない、だから君の頼みは聞かなくていい」

 

そういうとコスはライカンの前に立って、この日初めてライトセーバーを起動した。

 

闇夜に光り輝く緑色の光剣はバリケードの向こうからもよく見えた。

 

「共に行こう将軍、君個人の頼みを私は遂行する」

 

コスはライトセーバーを構えて眼前のバリケードの鎖を破壊した。

 

そしてフォースでバリケードを吹き飛ばし1歩ずつ前に進む。

 

ライカンもDC-17を手にしてコスの後に続いた。

 

たった2人、ジェダイと兵士の組み合わせが今夜だけ復活した。

 

「司令官!マスターコス!」

 

タントールは呼びかけたが2人は前に進み続けた。

 

コスが鎖を千切り、バリエードを破壊して進む。

 

ライカンはDC-17で周囲を警戒しながら確実にターキンの下へ進んだ。

 

これで全てが終わったと思い、ターキンは作戦室に帰ろうとしていた。

 

だがコスとライカンの姿を見て彼は再び最前線に戻った。

 

周りの将兵が「危険です」というのを遠ざけて2人を迎え撃った。

 

これは決闘だ、彼らは自らの名誉と地位と命を賭けた。

 

であればこちらもそれ相応のものを賭けなければならない。

 

ターキンはたった1人、この上ないほど嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 

「このペースではもう間も無く射程距離です」

 

「彼らは抗命しています。狙撃してもいいですよね?」

 

ラックスはE-11を構え、周りのTKトルーパー達も一部がブラスター・ライフルを構えた。

 

しかしテナントが彼らを止めた。

 

「よせ、民間人も見てるんだ。それに……もう勝ち目はない」

 

コスとライカンが鉄条網に辿り着いた瞬間背後にいた首都警備司令部の仲間達は皆第2空挺旅団によって拘束されていた。

 

しかもコスが破ったバリケードの道を通って近づいてくる。

 

左右からも回り込んだ第30首都警備師団のTKトルーパー達が集まっていた。

 

それでも2人は諦めずに前へ進もうとした。

 

鉄条網を切り裂き、がむしゃらにターキンに近づく。

 

ターキンはようやく自身のホルスターからDC-17を取り出し、セーフティを外した。

 

だがその頃にはもう四方八方を反乱軍に囲まれていた。

 

「手を上げろ!武器を捨てるんだ!」

 

コスはライトセーバーを構え、ライカンもブラスターの銃口をターキンに向けた。

 

それでもターキンはブラスターを構えなかった。

 

彼らの周りには既に大勢のTKトルーパーがいる。

 

彼らはもう孤立した存在なのだ。

 

もしここでコスがライトセーバーを投げたり、ライカンがブラスター弾を放っても彼らの前には偏向シールドがあった。

 

インペレーター級であれば容易く打ち破れるシールドでも、彼らの持つ武器では破るには力が足りなかった。

 

ターキンと2人の距離は最後の鉄条網と1列のバリケードを挟んだ僅か1メートルしかないのに、その距離は遠かった。

 

完全に勝負はついた。

 

ライカンはライトセーバーを構えるコスの手を下ろし、自身もDC-17を投げ捨てた。

 

そして最後にシールドを貫通して唯一与えられる最後の攻撃を言い放った。

 

「ターキン、お前は銀河共和国の軍人としても、人としても失格のただの獣だ。”獣はいつか、人に狩られる”」

 

刹那、ライカンとコスはTKトルーパーに拘束され、ターキン達から引き剥がされた。

 

最後の最後まで抵抗した指揮官達が拘束される姿を見て、ターキンはテナントと顔を見合わせた。

 

これで全てが終わったのだ、粉雪が降り頻る中、古い共和国は敗北を迎えた。

 

彼らの新しい時代が始まる、春ではなく厳しい冬の時代が。

 

後ろでは部下を労う為にタッグの幕僚が「ご苦労だった」と笑いながら話していた。

 

ターキンはそれを「笑うな」と一言だけ述べた。

 

古き時代の戦士達がまだそこにいるうちは笑っていられない。

 

勝利を噛み締め、笑顔を見せるのは彼らが退場した後だ。

 

ターキンはテナントと同じスピーダーに乗って作戦室へと帰投した。

 

その途中でターキンはスピーダーから降りた。

 

「おいどうした、みんな待ってるぞ?」

 

テナントはターキンを連れ帰ろうとしたが彼は首を振って「少し外の空気を吸ってくる」と言い、誰もいない中庭の方へ歩いて行った。

 

先に戻ったテナントは作戦室の全員と勝利を祝った。

 

お互いに持ち寄った酒を酌み交わし、お決まりのフレーズを述べる。

 

我々は(우리는)!」

 

一つだ(하나다)!」

 

乾杯し、今宵の勝利を祝した。

 

今日はあのラックスやギデオンですら互いに肩を組んで上機嫌にしている。

 

普段は無口でミステリアスな彼らも所詮は俗世的な人間ということだ。

 

テナントは1本のワイン瓶を持ってソファーに座るムーアに話に行った。

 

「先ほどは発言の訂正など差し出がましい事をしてしまい、申し訳ありません」

 

「テナント提督、そう気に病まないで。愛国心からしたことを私は責めません」

 

「ありがとうございます、では長官も1杯どうぞ。ターキンが態々アンバラン・ワインを取り寄せたんです」

 

グラスにワインを注いでムーアにワインを献上する。

 

「提督は気が利きますね。では私達も乾杯しましょう、提督の勝利を祝って」

 

「はい、提督の勝利を祝って」

 

2人がグラスを交わしている間に今宵の主人公がやってきた。

 

一番最初に見かけたジャージャロッドがその名を呼んだ。

 

「さあ主人公様のご登場だ!我らが保安司令官!」

 

ターキンが作戦室に入ると拍手喝采で迎えられた。

 

テナントはムーアに頭を下げてエリアドゥ・ブランデーの瓶とグラスを持ってきた。

 

「何してたんだ!さあ早くこいよ!」

 

グラスを差し出し、テナントはブランデーを注いだ。

 

無二の親友はずっとターキンを褒め続けた。

 

「結局お前はやり遂げた!」

 

ターキンはテナントが入れたブランデーを一口で飲み干した。

 

それからテナントはターキンの肩を掴んで「俺たち友達だよな?」と尋ねた。

 

ターキンは少し間を置いて答えた。

 

「当たり前な事を聞くなよ、我が友よ」

 

そう言ってターキンはグラスを渡し、どこかへ歩いて行こうとした。

 

「おい!どこへ行くんだ?」

 

テナントが嬉しそうに尋ねた。

 

「なあに、少しトイレだよ。すぐ戻ってくるからそのボトルは守っておいてくれ」

 

「分かったよ!」

 

そう言ってターキンは曲がり角を曲がって姿を消した。

 

結局ターキンが行ったのはトイレではなく司令部の屋上であった。

 

さっきまでここに待機していた地対空迎撃班は一旦陣地を移動し、屋上には誰もいなかった。

 

屋上からはコルサントの景色を一望出来る。

 

そして下を見れば幾千の将兵達、空を見上げれば粉雪と宇宙を征く船の数々。

 

エリアドゥとは全く違う全銀河の首都に相応しい風景だ。

 

ターキンは後ろに手を組み、制帽を被って俯いた。

 

静かで冷たいコルサントの空気が微風によって伝わる。

 

この静けさが全身を巡る度に興奮していた脳が冷静になり、自身が成し遂げた高揚が湧き上がってくる。

 

勝ったのだ、成し遂げたのだ、革命は成功したのだ。

 

誰も彼もが無理だと思っていたことをやり遂げた、自分の力で。

 

一体誰がアウター・リムから成り上がってきた人間がコルサントを舞台に革命を成し遂げられると思っていただろうか。

 

いるとすればやはり閣下(パルパティーン)だろう。

 

やはりあの方の跡を継ぐのは私なのだとターキンは確信した。

 

勝利を噛み締める度、押さえ込んできた喜びと笑みが膨れ上がる。

 

ライカンやコスに見せた余裕からなる笑みではない、本物の勝利を掴み取ったが故の笑みだ。

 

「フフフフッ……ハハハハハッ……ハハハハハハッ……!ハハハハハハハッ!」

 

まるで獣が敵を威嚇するような笑みをターキンは浮かべた。

 

この獣はやがて共和国という巨大な国家そのものを飲み込むのであろう。

 

この動乱はその序章に過ぎない、長い一夜は始まりなのだ。

 

かくしてコルサントの一番長い日は終わった。

 

春風は今宵の動乱によってかき消され、冬の時代がやってくる。

 

後に粛軍クーデター12.12.軍事反乱と呼ばれる一連の事件はターキンという反逆者の勝利に終わった。

 

この世界でも反乱軍は勝利したのだ。

*1
英: Gorin 登場作品:ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

*2
英:Sotorus Ramda 登場作品:ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

*3
英:Plo Koon 登場作品:スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナスなど

*4
英:Kelleran Beq 登場作品:ジェダイ・テンプル・チャレンジなど

*5
英:Kit Fisto 登場作品:スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃など

*6
英:Jok Donassius 登場作品:スローンなど

*7
英: Sartan 登場作品:スローンなど

*8
英: Divin 登場作品:Pirates & Privateers

*9
英:CT-1284"Spark” 登場作品:クローン・ウォーズシリーズ

*10
英:Carth Onasi 登場作品:スター・ウォーズ:ナイツ・オブ・ジ・オールド・リパブリックなど

*11
英: Telettoh 登場作品:スター・ウォーズ:ナイツ・オブ・ジ・オールド・リパブリック(コミックスリーズ)など

*12
英:Forn Dodonna 登場作品:スター・ウォーズ:ナイツ・オブ・ジ・オールド・リパブリック

*13
英:Lune Banjeer 登場作品:The Essential Guide to Warfare

*14
英:Pevel Kronara 登場作品:ハイ・リパブリックシリーズなど

*15
英: Holmes 登場作品:バッド・バッチシリーズ

*16
英: Brenna 登場作品:スター・ウォーズ・バトルフロントⅡ

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