異世界から持ち帰ってきた相棒をオタク沼に落とそうと思う(いせぬま) 作:ニキ/バハちゃん
「──上城さん、宜しければあなたの居た別世界についてお話して貰うことは可能ですか?」
「え?」
「魔道管理局はこれまで応対した方々の別世界についての情報を、記録として可能な限り残しています。御協力頂ける場合、過去にあなた方と同じ世界からの来訪者が居たかどうかこちらで検索することも可能ですが」
「……そういうことなら、まあ」
保険用の書類を書き終え、エミだけ追加で身分証に必要な書類と格闘している最中、係員さんに想定外な話の振られ方をした。
……同郷の帰還者が居るかどうかか、割と気になる話題だな。一応聞くだけ聞いてみよう。
「世界や星に名前はありますか? ミッ
「無いですね。大陸名も西大陸とかそんな感じで分けてて、名称が付く単位は国からでした」
「では……この用紙に覚えてる限りの簡単な地図と、国の名前をお願い出来ますか?」
「……主要国家だけになりますけど」
白紙を渡されるが、俺絵心無いんだよなぁ……本当にサラッと大陸を3つ描き、雑な国境線で分けて国名の注釈を付ける。
「アルバロイ……リベルグラム……ハラル……ローエンタリア……イルドルシア……ロマルサナル……コルネア……魔族領…………魔族領は兎も角、国名でのヒットはありませんね」
「……そっかぁ」
地図を見ながらパソコンにカタカタ打ってくれたものの、どうやら過去にあの世界から帰還した人は居ないらしい。
嬉しいのやら、悲しいのやら。まぁ仮に居たとて反応に困るだろうし、なんとも言えない複雑な感情が心中に渦巻いている。
……
「──続けます。転移や転生等の形がありますが、向こうの世界に上城さんはどのような形で着きましたか?」
「既存の人間へ意識だけの憑依転移の形で。名前はアラン・アーバント、肉体の制御権は俺側です」
「元の人格は?」
「心中に同居してました……ある時、俺を庇って消えましたけど」
「……すみません、聞くのが仕事ですので」
「あ、大丈夫ですよー」
何か言いたげなエミを制すように手を重ねる。
気にしなくていいからさっさと用紙書きなさい、こっちの話を聞いてるんじゃありません。
「その姿は帰還の際に戻ったんですか? それとも視覚偽装でしょうか?」
「戻る際に再構築しました。借り物の体を借りパクするのは良くないですから」
──それに
お陰で鍛えた魔力も才能も無くなったけど、別に日常生活に要らんしな、それ。
「ご自身が転移対象に選ばれた理由は分かりますか?」
「俺を
「帰還方法について伺っても?」
「大昔に使われてた異世界人召喚装置を改造して。理論構築にかなり時間を喰いました」
「……滞在期間は?」
「七年ほど」
ぶっちゃけ問題だったのは理論の方より
「……その他、特徴のあることはありますか?」
「なんだろう……原作は知らないけど、多分ゲーム世界だったことくらい?」
「それはまた何故?」
「まず、言語が日本語」
横で頭を抱えてる女の子が読むのも話すのも書くのも全部日本語だ。そのクセ人物名や地名が英国式なのだ、最初の違和感がやばかったよマジで。
「それだけなら創作物の世界としか絞れないんスけど、出会うイケメン美少女全員がなんか
「ぶふっ……し、失礼」
あ、ウケた。向こうで薄々思ってたけど、やっぱすべらない話としてこれ使えそう。
他にも病弱で幸薄そうな途中退場する子の声がなんか私服のセンスをdisられてそうな人に激似だったり、エミだってなんか聞き覚えある声してんだよな……生憎その界隈に詳しい方じゃないから、有名どころしかパッとは名前出てこないんだけど。
ボイスレコーダーに録音して持って帰って来たら一山稼げてそう。
「次に設定とシナリオ。メタ読みしたら実際に当たるんですよ、次に何が起こるのか。
例えば"起承転結で考えたらこのタイミングで大ボスの襲撃来そー"とか"唐突に新キャラ増えたから章のラストでこの子が突破口になって逆転するんだろうなー"とか、トラブルの
設定面も色々あるけど極めつけは『次元の穴』。簡単に言うと他世界と繋がる門のことなんですけど、これ、仮にゲームだとしたら、すっげぇ他社IPとのコラボに都合のいい現象だと思いません?」
「視点が捻くれ過ぎてません!?」
「俺、展開的に多分主人公のライバルポジだった臭いんすよ。モノローグ形式で話が進む作品とかだと他キャラの時間経過や修行パートとか雑に流されがちですけど、その手のヤツだったのか
ミステリーでは無いが、
展開を章で分けた時に伏線はちゃんと最初に埋められていて、某UFOエンドのような脈絡の無い唐突なイカれたオチが用意されてることもなかったし。
俺のような凡人の
「最後にネーミングセンス。まんま
「あぁ……それまた大層なものを……」
「──ここで出そうか?」
にゅっと横からエミが生えてくる。呼んでないよー?
「結構です。……ていうかエミ、それまだかかる?」
「名前どうしよっかなーって悩んでるのよ。苗字? が無いと変なんでしょ?」
「あー……」
エミの用紙を覗くと、確かに名前以外の空欄は全部埋まっている。……さっき頭捻ってたのってこれか、道理で時間が掛かる訳だ。
「ハーフ設定で横文字……英語とか国聞かれてボロ出るか。クォーター設定で日本語しか喋れませーん日本名でーすが丸いんだろうか」
「こっちのセンス分かんないからアランが決めてくれない?」
「…………うーん」
"あ、もうお話は大丈夫ですよー"といった顔でこっちに手を振る係員さんに甘えて少し考える。
苗字……苗字か。イメージから取るのがいいか? なら
「もし私と結婚したら、あんたその苗字に出来るのよ?」
「マジかよ、じゃあ伊集院とか神宮寺とかにしたろかな」
「えー? 可愛くなーい」
下らない冗談はさておき、エミの可愛くなーいから思い付いたわ。俺の知る限り一番可愛い娘から一文字貰ったらいいんじゃんか。
「──これで良し」
ノリと勢いのまま代わりに書いてフリガナを振る。……うん、響きも悪くないし、何よりこの子のイメージに合ってるや。
目線で確認するが、返答はシンプルな笑顔だった。
「
──本当、実にエミっぽい苗字になったよ。
備考:声帯
本当に何かの間違いでこの作品がアニメ化した場合アレなので完全指定はしませんが、作者脳内でのエミの声は内田真礼さんに近いです
備考:無人島での遭難
シナリオライター(神)の都合上、コイツらが学園に居たら邪魔な時期だったんでしょうね
用語:SCP
異常な能力を持つオブジェクトの確保、収容、保護を目的とした組織についての怪異物創作サイト、見てるだけで一日潰せる
この単語の世界観及び著作権は"SCP_Foundation"のクリエイティブ・コモンズ表示-継承4.0ライセンス (CC BY-SA 4.0) に基づきます。
用語:渚カオル
CV石田彰、察せる人はそれだけで察せる
用語:ノックスの十戒
推理作家ロナルド・ノックスが提唱した、推理小説を書く上での十個のルール
要は『作者しか知らない情報でいきなり解決すんな』『読者にもちゃんと推理材料寄越せ』みたいな、推理物における作者側の作法
新「お前(神)がまともなシナリオライターなら、このシナリオ(物語)はノックスみたいな『作劇の作法』を守っているよな?」
後の作劇推理のメインエンジンの一つ