異世界から持ち帰ってきた相棒をオタク沼に落とそうと思う(いせぬま) 作:ニキ/バハちゃん
世界観が広がるため書きました
「──それで、今日対応してた子らってどのくらいヤバそう?」
「男の子の方は技能受けなかったから正確な返答は出来ないすけど、女の子……エミさんの方は化け物ですね、最低で特二ライン」
「うっわぁ……」
「特異性じゃなく出力で殴るタイプみたいですけど、手の内見せずにただ単純な火力だけで魔王粉砕してたんで相当危険です」
「それ二で済むの?」
「だから最低つったんですよ」
ここは魔道管理局の休憩室。
絶賛
簡単なハローワーク業務や資格の発行に加え、小さいながらも図書室も併設されてはいるが、なんせこの界隈に属す総人口が少ない。その分職員の数すら不足気味ではあるものの、特殊業務が発生しない限り、彼ら彼女らが仕事に追われることは少なかった。
以上のことを踏まえた上で、今話している二人の顔色は全くもって優れない。異世界課と魔法技能検定所の受付である両人は、唐突に降って湧いた特殊業務のせいで頭を抱える羽目になっていた。
特殊業務。
それは異世界からの帰還者及び来訪者が発生した場合において、管理局の職員が御上──魔法省というトップ機関に提出しなければならない、
新とエミが管理局を訪れたことで発生したこの業務は、条件が条件だけにさほど起こることはない。
何故ならば『そもそも奇跡的な確率で現代から異世界に迷い込み』『過酷な異世界で生き延びて』『その上で永住を選択せず』『世界転移という神業に近い魔法を研究・開発・成功』させた人間しか、異世界から現代社会に帰還することは不可能であるからだ。
──そう。畢竟、異世界の帰還者とは必然的に化け物の集まりなのである。
特殊業務とはつまるところ、その化け物共をもし万が一
「能力の方受けた子は?」
「提出が早過ぎるからほぼほぼ調べてないでしょうね。帰還方法の回答的に、多分あの子自力でこっちに帰ってきてる」
「滞在期間は?」
「七年だと」
「超特?」
「肉体の再構築をしたらしくて、魔力量が一般人並に落ちてるから処理だけなら特二で足りる予想。エミちゃんも絡んだら知らん、それこそ超特レベルじゃない?」
「うげぇ報告書だっるぅ……」
例えば神様だのなんだのの上位存在から授かったチート能力を使ってのケースや、転生・転移時に課された目標クリアへの褒美に世界の管理者が元の世界に送り戻す等の、比較的楽な手段でこちらに帰ってきた人間はさして危険視されることは無い。
前提として最初から快適に異世界で暮らせる者が、現代社会に戻りたいと思うこと自体が稀であり、仮に帰還を志す場合、他者の権能によって
上位存在によって世界の壁を超えたケースなら、それは自力で帰還するだけの能力を持ち合わせていないということになる。無論それなりの戦闘力は持つのだろうが、仮にこちらに帰ってきたとてそれが
逆に危険視されるパターンは『他者の干渉を受けずに帰還手段を自力で用意した者』と『異世界からこちらに渡ってきた現地民』の二つ。
チート持ちに比べれば数は極めて少ない。が、一定数存在する彼らは『別世界に渡る魔法を組める程の実力』を持つということであり、そんな奴らがナーフを食らわず唐突に地球に生えるのは脅威以外の何者でも無いのだ。
「特級って今何人居たっけ?」
「公務? 30人と少し。ただ要人警護とかで実働出来るのは良いとこその半分以下」
「それで超特って上に出さなきゃいけないの? 報告書。絶対何か言われるって私ぃ……エミちゃん本当に特二あるの?」
「オブジェクトの使用無し、固有魔法判別不可、素のフィジカルと基礎出力が上限並み、データ取られてるの分かってるのか大技を隠す戦闘IQも余裕もあるし、その上で討伐タイムも文句なし。魔王あんな弱かったか? って感想がウチの部門から出るレベルの内容でしたね」
「見事に対策方法分からなくて特二不可避じゃぁん……」
魔法技能検定。特殊な術式によって仮想空間を作り出し、データで作られたモンスターで戦闘力を測るその試験は、特殊業務対象の脅威度の測定にも使われる。
最高位レベルである『仮想幻想体:魔王』を倒せる人間を『特級』と認定するこの世界において、手の内も切り札も
「……願わくばこの子達が問題を起こさない良い子でありますように」
──そんな子を相棒に据え、たったの七年で次元の渡航魔法を組んだと述べた
凄まじいまでに杞憂……!