『一章完結』異世界から持ち帰ってきた相棒をオタク沼に落とそうと思う(いせぬま)   作:ニキ/バハちゃん

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前話のコメント欄の皆様の頭が爛れていらっしゃいました

この作品に年齢対象はR15しかありません!!!正気に戻れ!!!(尚前話を書いた作者が元凶では?)


1-3-A5:例えば異世界で無双ハーレムが出来なくもない奴が日本に帰ってくる場合の理由

「……それで? どうして直ぐ私に連絡しなかったの?」

 

 魔法で洗い物を秒殺してきたエミが"これ以上話しかけるなオーラ"を出して部屋の隅で毛布に引き篭る最中、ふとそんな質問が投げかけられた。

 ……答えないという選択肢ははなから無いけど、流石にこれは恥ずかしいなぁ。

 

「……これまで未遥さんには滅茶苦茶お世話になってきたじゃないですか」

「うん」

「だからこれ以上迷惑は掛けたくないなっていう、子供みたいな意地ですよ」

 

 顔を背けながら、そっけなくそう話す。

 肉親を失い途方に暮れたあの日の俺を有無を言わさず引き取ってくれたこの人に、これ以上進んで頼みごとはしたくない。

 きっとこの人は何だろうと頼れば助けてくれるし、それを迷惑だとは思わないのだろう。

 

 そう、そんなことは分かっている。だからこそ連絡に踏み切れなかったのは、言語化してしまえば余りにも情けない、子供の意地でしかない。

 

「お金は?」

「向こうの物品の換金は終わってます。それとバイトも始めました」

「身分証は?」

「なんとか作れました」

「日用品は?」

「足りない分は都度買い足ししてけば……」

「スマホやベッド、あと女の子なんだから化粧品とか、そこら辺は都合出来るの?」

「……それは」

 

 穏やかな顔で俺の言葉を受け止めた未遥さんは、やがて静かに聞いてきた。

 無情なまでの現実問題。返しは用意していたつもりだった。自分でどうにかなると思っていた。

 でもいざ聞かれてみれば悲しいくらいに言葉に詰まり、自分でどうにもならない事が俺の口を止めてしまう。

 

「……いい? 私はね、家で邪魔だったからあなたに一人暮らしを勧めた訳じゃないの。こうして休みが取れたら見に来る程度にはね? 君のこと心配してる。……ちゃんとうちの子だと思ってるんだよ?」

「……」

「聞くね? ──何か困ってることはある?」

 

 諭すような話し方に刺されている。

 俺の中での大人のモデルケースは彼女だった。

 或いは人間性の見本でもあった彼女の在り方は、どれだけ真似しようとしても容易になぞれるようなものじゃない。

 大人は子供を守るものだと彼女から学んでいたが故に、当時8歳のアラン君の体に憑依した高校生の俺から見たあの世界(・・・・)は……同年代にあたる子達は皆、遥か年下の守るべき子供達でしかなくて。

 良い人間になりたくて異世界で未遥さんのように振る舞った。

 困っている子が居れば助けて、手の届く範囲なら何とか救って、立ち塞がる悲劇の運命(シナリオ)を破壊して……経験を積んで大人になった気でいたけれど、こうして長年振りに対面してみて分かるのは、敵わないなぁという呆れにも似た笑い。

 

 子供扱いなんてされたのは、果たしていつ以来なんだろう。

 

「……異世界に七年居て、精神年齢なら多少大人になれたかなぁとか思ってたのに、まだまだガキですかね」

「ジェネレーションギャップに吐血したことない奴を私は大人だと思ってない」

 

 照れ隠しに不貞腐れてみれば、彼女らしく思想の強い謎の返しをされた。

 相も変わらず私の母は愛深くおもしれー女である。

 キリッとした顔で言い放った途端、何かを思い出したのかシームレスに虚無顔でその場に崩れ落ちるところとか、やっぱ真似したくても出来ねぇよ。

 さっきまでの大人ムーブからの落差が酷い、唐突に何?

 

「……最近彼方(かなた)ちゃんの学校の話を聞いたんだけど、今の子はVtuberや3Dモデルは知っててもMMDは通じないんだって……寧ろMMDの亜種としてVtuberや3Dモデルがあると認識してたから、それ聞いた時危うく泡吹いて死にかけたわ」

「草とでも言えばいいですか?」

「全盛期が10年以上前? はははそんな訳無いでしょう」

「あなたに叩き込まれたから知ってますけど、MMDの出来た頃って俺まだ生まれてませんよ?」

「かひゅっ……」

 

 彼方(義妹)ちゃん、俺以上にこの人から英才教育受けてるからなぁ。"MMD? 何それ?"とか中学校で言われてる姿想像したら何か俺も悲しくなってきた。

 トドメ刺されて悶絶してる未遥さんであるが、将来俺もこうなるのかなぁとか思ったら寒気してきた。……え、てか待って、これ常識の線引きちゃんとしないとエミも似たような場面に出会すのでは? …………この件を考えるのは後にしよう!

 

「……てかサラッと流したけど、新君七年も異世界に居たの?」

「ええ、まぁ」

「永住しようとかは思わなかったの?」

「あ! それ私も気になってた!」

 

 話だけは聞いていたらしい。端っこで拗ねていたエミが好奇心全開で急に俺と未遥さんの会話に入ってくる。……気になってた?

 

「最初はあにめ? や漫画、あとは楽曲とかをもう一度見聞きするために帰りたがってたんだと思ってたけど、別にそんな素振りこっち来てからまるで見せてないわよね? 私に勧めるだけ勧めておいて、自分からは寧ろ遠ざけてない?」

 

 本当によく俺のこと見てるね君? ちょっと一回静かに出来る?

 

「向こうでの暮らしは快適だったの?」

「お金は死ぬ程あったし、私以外にも仲の良い親友が何人か居たわ。世界そのものを嫌ってはいたけど……なんか理由としてはそれだけじゃ足りてない気がするのよね」

「アラン君……体の元の持ち主と、お前は帰れ、俺の残滓にお前の居た世界を見せてくれって約束したんだよ!」

「うわ重」

「いや? あんた絶対にそれだけじゃないでしょ。その理由が嘘じゃないのは知ってるけど、長年の勘がまだある(・・・・)って言ってるわ!」

 

相棒が相棒をし過ぎてる……! お前こういう時くらい少しはにぶくなっててくれよ!?

 

「うーん? でも二次元文化以外に心残りになるようなものあったかしら? 新君恋人以前に友達も少ないわよね?」

「……黙秘していい?」

「「ダメ」」

 

 ちくしょう追求を躱せねぇ、でもこれ話すのクソ恥ずかしいんですけど……?

 ──エミの推測自体は合っている。確かに俺は二次元文化を求めてこちらに帰ると決めたわけじゃない。時間が経ち過ぎて話の前後が思い出せなかったり、連載を追うまでの当時の情熱が冷めていたり、そもそもエミで忙しかったりと。

 諸々の理由で今は後回しに出来るそれら(・・・)は、俺の本当の帰りたい理由に比べれば些事でしかない。

 

 これを言えるかどうかで言えば別に言える。

 ただ、エミはまだギリセーフとして、終わってるのがここに未遥さんも居ることなんだよなぁ。

 居なきゃ普通に話せるけれど、この人が居るからこそ、ここでバラすのが嫌過ぎる……!

 

「あ、恥ずかしがってる。聞いたらそんなダメなこと?」

「爛れるだのえっちだの、私を散々辱めといて自分だけ逃げようとするのはズルじゃないかな〜? あ♡ら♡た♡ク♡ン♡」

 

 腕掴まれて耳元でエミに猫撫で声で囁かれた。一旦詰みか? これもしかしなくても詰んでるのか?

 俺が腰を浮かした瞬間に物理的に捕らえてきたエミさんは、なんとも嗜虐的な笑みを浮かべてらっしゃる。わぁ捕食者の目だぁ、俺今日この場で死ぬのかな?

 

 暫しの逡巡。

 逃げられないと、逃がす気は無いと、その体温で以て俺に伝えてくる少女に対し、俺は時間をかけて心に折り合いをつけていく。

 

 何度も深呼吸を繰り返し、殺していくのは羞恥心。

 誰の顔も見たくなく、明後日の方向に逸らした顔で。頬の熱さを自覚しながらやがて俺が吐いたのは……

 

 

 

 

「…………親孝行、出来てないからさ」

 

 

 

 そんな、親の前では凡そ絶対に言いたくない理由だった。

 

 

「……結局、一番辛い時期に救ってくれたのは今の家族だから、それを忘れて一人異世界で生きてけないって言うか……」

 

二つある理由の内、話したくなかった方の帰還の動機。

 

 母が死んでから虐待が始まり、やがて牢屋で狂って父が死に、心身共に衰弱していた俺を助けたのは未遥さんと彼方ちゃんだ。

 ご飯を貰い、学校に通わせてくれ、そして何も無かった俺に趣味をくれた。

 人として扱われず、自我と呼べるものを亡くしていた俺を、人に戻したのは今の家族だった。

 

 それなのに、俺が家族に返せた物はまだ何一つも無い。

 

 この恩を忘れて異世界で暮らす? そんなこと、出来るわけが無いだろう?

 

 快適に暮らせようが、仲のいい友達が出来ようが、金があろうが、モテようが、そんな自分個人の幸福なんざ全てこの人達の幸せに比べれば瑣末事でしかない。

 

 異世界で定期的に想像していたことがあった。"俺の日本での体はどうなっているんだろう?"と。

 俺の過ごした時間分、同じだけの時間が地球でも過ぎていたとしたならば。

 折角打ち解けてきた最中だったのに、失踪という形で法的に処理されていたとしたならば。

 こんな俺が相手でもきっと悲しんでしまうだろう家族を思う度に、泣いてくれる人達の顔を想う度に、何時だって死にたくなった。

 

 まだ俺は受けた恩を何一つ返せていないというのに、どうして未練が無いと嘯き異世界で暮らしていられようか。

 

 だからこそ俺は研究した。

 覇天祭の報酬と私財を徹底的に注ぎ込み、異世界人生の大半を用いて、俺が異世界へ渡った当日に戻れる次元渡航魔法を。

 

 日本へ帰還するためのモチベーションはいざ換言してみれば小っ恥ずかしい、きっと誰しも持っているだろう普遍的で小さな理由(もの)。

 

『家族への恩返しがしたい』

 

 異世界で叶うことのない夢を追い、今漸く実行の権利を得たというのに、初っ端から当の親に「私を頼れ」と言われているこの現状。

 情けなさと恥ずかしさが綯(な)い交ぜになって、俺は未だまともに未遥さんの顔が見れずにいる。

 どうせ笑い飛ばされるんだろうなぁとか思いながら、小さな声で言い訳のようなことをボソボソと話していると、大きく息を吸いこむ音がした後に──

 

 

「もう頼むから誰かこの子を幸せにしてくれよ!」

 

 

 ──などという、悲痛100%の未遥さんの叫びが何故かアパートにこだました。

 

 ……この人は相変わらず発言の文脈が読めねぇなぁ?




用語:MMD
正式名称『MikuMikuDance』、3Dモデルを動かしてダンスや動画を作れる無料の3DCG制作ソフト。稼働は2008年2月
初音ミクを始めとしたキャラクター達を躍らせた動画がニコニコ動画で大量に作られ、一時代を築いたネット文化の一つ
Vtuberの3Dモデルみたいなものを動かすソフトだよ! と説明しないとダメな時代らしいっすよ今(吐血)

MMD杯だと"本能寺で待ってるっ!!"が一番好き(隙自語)
あとは"繁栄しました"や"MMDDFF"、"かーにばるフレンズ"や"            "も大好き(二撃決殺)
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