異世界から持ち帰ってきた相棒をオタク沼に落とそうと思う(いせぬま)   作:ニキ/バハちゃん

32 / 32
長い一日が始まります


1-4:?̵̢͖͒̿͝?҉̧̱̬̭̎̆̌͝?̴̧͎͖̀͡
1-4-O:誰も知れない君を知る


 ──例えば、家族がペットを拾ってきたとして。

 感情論を除いてしまうのならば、それ(・・)の世話に実利や実益は無い。

 食費、病院費、世話の手間、飼育スペースの確保、必要ならば散歩やおもちゃの用意。切って捨ててしまうのなら、それらは自分が普通に生きる上で本来負う必要の無い(・・・・・・・・・)負担だ(・・)。

 

 もし、そのペットを飼い主本人が連れてきたのならば、背負うことになる(それで発生する)負担の数々は──責任の所在は飼い主にある。

 本来存在しなかった飼育の負担は、そもそも飼い主が拾わなければ生まれなかった。

 飼い始めたのはお前なのだから、責任を取る必要があるのは飼い主だけだ。

 

 では、もし仮に。

 本来飼うつもりの無かった飼い主の家に、ペットを飼うには余裕の無い家に、ペットの方から無理矢理"ここに住む!"と押し掛けてきたとしたならば──生まれる負担の責任の所在はどこになるのだろう。

 

 飼い主が優しい人だった? 飼うつもりは無かったけど飼い主はそのペットを気に入っていた? ……だからその負担は受け入れられるって?

 情(・)という物で煙に巻くのは簡単で。

 思い出(・・・)を人質に見て見ぬふりをするのは気が楽で。

 

 

 

 それでも直視するのなら……私(・)は、飼い主(・・・)が本来背負う必要の無い負担だった。

 

 

 

 誰にも言わずに彼(・)は帰るつもりだった。

 それを知ったのは当日で、私にも隠し通す筈だった彼(・)の前に、私は無理矢理押し掛けた。

 彼(・)は誰にも話さなかった。私にも話さなかった。私が帰還を知ったのは、彼の唯一の協力者(・・・・・・・・)が私だけに裏切ってくれたからだ。

 

 私は現実を逃避しない。

 彼(・)が全く私を負担に思っていないことは知っている。

 私を楽しませるのが好きなのが本心なのも知っている。

 こんな思考を話せば確実に笑い飛ばされるであろうことも、知っている。

 

 それでも、それだとしても……何も知らない異世界で一方的にお金と手間をかけさせている事実(・・)は、どうやったって消えはしない。

 

「…………」

「ん? どしたエミ?」

 

 そんなこと気にするなとか、今まで助けてくれたんだから今更だろとか絶対に言うだろう……今は黒髪の彼(・)を見る。

 

 彼(・)はただの学生だった。

 滅茶苦茶お金を持ってるわけでも、特別な才能で暴れてるとかでも、優れた頭脳や身体能力があるとかでも無い、15歳の少年だった。

 軽い運動だけでへばり、気を張りすぎて寝不足で倒れたり、家族に頼ることを躊躇する、ちょっと辛い過去があるだけの等身大の少年だった。

 

「……いや、アランと比べると改めて身長低いなぁって」

「あ゛ぁ゛ん゛!?」

「上城くん、電車の中では静かに出来る?」

「アッすいません……」

 

 恨めしげに私を見上げる彼(・)の視線。それを知らんぷりして窓の外の景色を見る。

 

 移り変わっていく速度は馬車より速く、彼(・)が人力ブレーキで止めたあの魔導列車より揺れない、彼(・)の故郷の乗り物から、彼(・)の生まれ育った世界を知っていく。

 

 晴天に照らされた田園が後ろへと、シックな配色の角張った民家達が後ろへと、背の高いアパート? が時々車窓の全てを塗り潰して、けれどそれも後ろへと。

 揺れて、揺れて、揺れながら、空中を走る謎の配線と共に彼(・)の暮らす世界(景色)を知っていく。

 

 

「…………」

 

 

 ──彼(・)を知れない友達に代わって、私だけが彼(・)の世界を知っていく。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→(作者:ぱちぱち)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

タイトル変更しました▼【旧題:最安10円レンタルチート ブラック労働で過労死数歩前だった俺の心の癒しだった動画アプリがマジモンの神アプリだった 】▼山里一也は金がない。時間も無ければ彼女もない。健康診断結果も20代とは思えない。▼唯一の娯楽は通勤退勤時にスマホのアニメ視聴。このまま会社の社畜として緩やかに死に向かって進んでいくだけだった一也の人生は主人公をレ…


総合評価:5095/評価:8.57/連載:159話/更新日時:2026年10月02日(金) 07:01 小説情報

余命2年の強化幼女を甘やかしまくったら最凶パイロットになった ~オズとシンデレラ~(作者:富士伸太)(オリジナル:SF/冒険・バトル)

俺、小津翔一は日本のごく平凡なサラリーマンだったはずなのだが、気付いたら宇宙生物と戦う巨大ロボに転生していた。▼そんな俺のコックピットに乗り込んできたのは戦闘知識以外はなんにもしらない、情緒も体もペラッペラのうすほそ幼女(遺伝子強化済)。▼地獄のような戦場に理由もわからずブチ込まれ、自分が不幸だということさえ理解できないこの子をほんの少しでも幸せにしようと思…


総合評価:2225/評価:8.74/連載:14話/更新日時:2026年10月01日(木) 21:00 小説情報

ラスボス機体の癖に、スーパーロボット系の主人公機を気取っているんですけど?(作者:げげるげ)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

やめろぉ! 邪悪系の力で敵を洗脳するのは絆の力じゃない!!▼違う! 愛とエロを混合するんじゃあない!!▼ええい、貸せっ! 僕がやってやるよぉーっ!!!▼※カクヨムにも投稿しています。


総合評価:8763/評価:8.59/連載:13話/更新日時:2026年10月01日(木) 23:06 小説情報

【2章完結】女性だけが戦う世界で、脳内の特撮オタクが俺に「ヒーロー」を押し付けてくる(作者:maki@)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

▼【 ――いいから黙って変身しろ! 俺の考えた最高のヒーローを見せてやる! ―― 】▼若い女性だけがその生命を燃やして戦う世界。▼『魔障対策局』の雑用係・神代蓮は、戦う力を持たない無力な男として、非日常を虚構に貶める日陰の仕事を淡々とこなしていた。▼だが、彼には誰にも言えない秘密があった。▼その脳内に人類の敵、【魔障】を飼っているということ。▼『戦う力』が欲…


総合評価:5140/評価:8.89/連載:25話/更新日時:2026年09月24日(木) 20:00 小説情報

ホラー系の世界に転生したのにあまりにも怪異がカラっとしている(作者:ない因習村:図書館に呪い本コーナーがある)(オリジナル:現代/コメディ)

 ホラー系の世界に転生しました。夜道を歩くと大概出会いますが、妙に冷めていたり、カラっとしています。どうすればいいでしょう?


総合評価:8289/評価:8.67/連載:37話/更新日時:2026年09月29日(火) 15:08 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>